へぇ~(ヘタレチャラ男を見つつ)
※未成年飲酒の描写がありますが、フィクションですのであしからず。
繋ぎの回です。
「自己紹介も済んだところで…言っちゃおう!杯を乾かすと書いて~!」
「「「「「「「かんぱ~い!!!!」」」」」」」
居酒屋、始まってしまった新歓。二年の同期は遠慮せずに生や度数の高いものを飲んでいる。三年に至ってはボトルだ…。主役の一年も、俺があらかじめ置いたソフトドリンクで乾杯するヤツもいれば、早々に飲み干して、お酒を飲んでる奴もいる。
「はぁ…」
烏龍茶を傾けながら人知れず溜息を吐く。これから俺はひたすら未成年飲酒の影に怯えながら新歓を乗り切らないといけないらしい。うぇーいと叫ぶ同期を遠い目で見ながら、ひたすら注文に徹する。そうそうに空いた皿を集めたりグラスを片づけたり。
ふと俺は本当に何やってんだって思うけど…誰かがやんなきゃいけないんだから、やるしかないだろ。なんて、誰に対する言い訳を心の中で吐いて、面白くもない話に愛想笑いして、別にどうでもいい後輩の話を聞いて…そこで事件が起こった。
「あれっ?立川ちゃん飲んでなくない?飲まなきゃもったいないよ。せっかく参加したんだからさ」
同期の一人が、後輩の一人に話しかけていた。…いや正しくは絡んでいた。
その後輩は、この新歓が始まってから注目されている子だった。自己紹介の時から他の子と一線を画していた。
「立川 絆。一年で、まぁ新歓だけでもって誘われました。よろしくお願いします」
毛先が外に跳ねた青のインナーカラーに黒のウルフカット。切れ長の目は瞳が大きく、黒水晶のような透明さと漆黒を保っていた。
へそ出しのオフショルダーに男性もののジャンパーを着崩している。下は太ももあたりに短めのベルトがそれぞれ右足に一つ、左足に二つ巻かれた黒のボンテージパンツを履いていて、首にはヘッドホンをかけた姿…正直に言おう。身体のラインがはっきりと出る服を着ているから、目のやり場に困る。
男共は逆にラッキーと言わんばかりにガン見している。セクハラで訴えられるぞ。女子共は視線で人を殺せそうなほどの殺意と嫉妬を込めて見つめている。結構顔がいいからってちやほやされてた女子もいるからそれが奪われると感じたのだろう。ふと、同じく参加していた彼女と目が合うが、俺は苦笑いで見返してやる。心配しないでくれ。浮気はしねぇ。理解したのか一歩引いて周りを諫めに入ってくれたのはナイスだ。女子共は俺は絡みにくい。いや、絡むに絡めるが、その勇気がない。ヘタレだ。
肝心の立川さんだが、口は真一文字で閉じられていることから、まぁ視線が嫌なんだろうし、あまり来たくはなかったのだろうことが伺えるが、顔面偏差値からして言えばダントツだ。同期のヤツが誘ったか…押しが強いからな。押し負けたんだろう。美人だしな。
だから男共は新歓が始まってすぐに女子を放っておいて立川さんに集中した。
「立川さんすっごい綺麗だね。最初見た時びっくりしたよ!」
「お酒飲む?お酒強い方だったり?」
「え、どこ出身?一人暮らしとかしてんの?」
オブラートに欲を包んで容姿を褒めるヤツ。酔わせようという欲望を隠しきれてないヤツ。下心を匂わせるヤツ。その周りにもぞろぞろとまぁ…。ただ顔面が良いヤツが周囲を固めてるのは…醜い序列だからか…?俺にゃ関係ないがね。
そんな中で、会話を仕切っていた同期…此処で一番のイケメン。肉食系だけどな。悪いうわさしか聞かねぇし。正直、あんま関わりたくねぇ部類の奴だ。
そんな奴が、立川さんにお酒を勧めた。…が、見たところ立川さんはソフドリをちびちびとと飲んでやり過ごそうとしていたらしい。だがバレてしまった。
「あぁいや…まだ未成年なんで」
「いやいや…このサークル入ったんだから飲まないと…!一杯だけでもね?ね?」
「いや…」
ぐいぐいと押されていく立川さんとここぞとばかりに押していく同期。とうとう酒の注文をされてしまった。ウーロンハイだ。
俺は咄嗟に、店員から渡されたウーロンハイを自分の烏龍茶と入れ替えた。アイスペールから氷を取って減った分を水増しする。それをバレないように平然と立川さんに渡した。グラスを回して間接キスは避けたが…後で謝ろう。見過ごせるわけねェからな。確かに、俺は飲みたくないヤツにってソフドリを渡してしのげるようにしたさ。そんでもって明らかに立川さんは飲みたくない人間だった。それなのに無理やり飲ますのはダメじゃねぇかよ。
「ほら、立川さんの~!ちょっといいとこ見てみたい!それイッキ!イッキ!イッキ!イッキ!」
完全に悪いノリだ。立川さんの周りでコールが起きており、飲まざるを得ない状況となっている。とうの立川さんも飲むしかない現状に追い詰められてか、とうとう口を付けていっきにグラスを空にした。
「…んっ?」
「良い飲みっぷり!んじゃもういっぱ…「待ちな待ちな、待ちなって」あっ?」
さらに飲ませようとする同期を止める。一瞬、素のどす黒さが透けて見えたが臆せず話す。コイツにとっちゃあ俺は場を作っただけの邪魔者だろう。だからといって見捨てられるわけがない。さっきのはお酒に注目が言っていない状態だったからできたことだ。でも二度目が通じるかわからない。
「お前も男を魅せるモンだろうよ。立川さんがせっかく飲んでくれたんだ。お前の番だろ。おらっ、焼酎ハイのジョッキ。あーい!なーんで持ってんの!なーんで持ってんの!飲み足りないから持ってんの?はい!飲んで飲んで飲んで!飲んで飲んで飲んで!」
「はっ!やってやるよ!立川さん見ててくれ!俺の勇姿…!」
同期のいいところ見せたいっつー欲を利用して酒をじゃんじゃか飲ましていく。もちろん周りのやつもだ。イッキ飲みを囃し立てる。そうして合間を縫って、立川さんに近づいて声をかける。
「立川さん、ちょっといい?」
「……なんすか?」
あーらら。警戒されてんな。まぁそらそうだろうよ。俺だってこの間に話しかけてきたら抜け駆けしようとするヤツだって思うわ。
「ちょっと頼みたいことがあってさ…テキトーでいいからさ、お酌して褒めてくんない?バンバン飲んでダウンしてくれると思うからさ。こっちでお酒どんどん運ぶから…あぁ飲まなくていいよ。ホント、立川さんからお酒渡すだけでいいから」
「…んまぁそんくらいなら」
「ごめんね…頼まれちゃって。あと飲み会終わったらちょっと時間いい?あぁ別に二次会とか飲みの誘いとかじゃなくて謝りたいことだから…」
「謝りたいこと?」
「本当に他意はないから…。あー…信じられなかったら警察呼ぶ準備してもいいよ」
「…なんすか?本当に」
「ただ謝るだけだよ…此処では無理だけどね…ほらもう一杯必要だろ!これ飲めたら立川さんお酌してくれるってさ!」
小さく頭を下げながら、声を張り上げる。立川さんは一瞬びっくりして…その後すごい半目で睨みつけるよな目線を向けた後…小さくため息を吐いて、頷いた。本当にごめん…。
立川さんからの協力もあって、そうそうに同期を潰すことができた俺は、死んでる同期や先輩をタクシーに突っ込んで、まだ飲み足りないヤツは二次会指示して、後輩はさっさと帰して…居酒屋に残って支払いと同時に散らかしやがったごみやらを片づけ…一通り終わって店を出た後、店の外で声をかけられた。
「忘れられたかと思いました」
「ごめんごめん…思いのほか時間が掛かって…」
「で、なんすか?謝りたいことって。パイセンに謝られることないと思うすんけど」
「あぁまぁ…新歓無理に誘われたんだろ?同期…アイツ等に。それに対しての謝罪が一つかな。…すまなかった」
「…そんなことっすか。別に、断り切れなかった私にも非があると思ってるんで。パイセンが気にすることじゃないと思うんすけど」
「なぁそれだけじゃなくてね…。お酒イッキ飲みさせられそうな時あったじゃん?あれ…とっさに俺の烏龍茶とウーロンハイ入れ替えて渡したんだよね…間接キスになるっつーか…人が飲んだものを飲ませたから…本当にごめん」
再度謝る。知らん男と間接キスとかフツーにぶん殴られてもおかしくないからな。謝るしかできないが、それでも役得ラッキーで済ませられるわけないだろ。
「…あれパイセンがやったんすね。まぁ…助かったんでいいっすよ」
「ホントか?あぁーいや…普通に殴られてもおかしくないし、まぁ…未成年にお酒勧めたでアウトだから脅されるのも致し方ないかなって思ってたんだが……」
「なんすかソレ……面白いっすねパイセン。それなら私もアウトじゃないっすか。まぁ…申し訳ないって思うんなら、ちょっと付き合ってくださいよ」
「あ、俺彼女いるから」
「定番の返しっすね。てか彼女さんいたんすか…。んま、二人で飲み行きましょうよ。詫びも兼ねておごってください」
「さすがに彼女に申し訳ないんだが…てかお酒」
「学校に言ってもいいんすよ。今日のこと。お酒はあの人たちが嫌だったので…お酒自体は飲みますよ」
「はいアウト…お酒飲むんなら大丈夫…でもないか。はぁ…内緒にしてくれ。彼女に限らず周りのやつにも……やっかみやらで死にそうだ」
「わぁーってるっすよ。ほら、行きましょ。パイセン」
そんなわけで…二人で二次会に行くことになったが…正直、あそこで帰っていればよかったなんて思う。あそこから狂い始めたんだ。飲みすぎたっつーか、いろいろ愚痴とか溜まってて…後輩が聞いてくれたのもあって…ガンガン酒飲んで……まぁ…酒の失敗っつーか、“してやられた”って感じの…。
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まぁパイセンとの出会いはそんな良いものじゃなかったっすね。正直なところ、怪しい人ってのが強かったってのもありますし…それにあの人たち…私の容姿目当てで無理やり誘われた人の仲間って印象のほうが強かったってのもありますからね。見た目もThe・遊んでる人って見た目で…金髪でチャラチャラしてるっすから話があるって言われた時から、怪しさ全開って感じっす。
話してみたら、なんでこの人チャラい見た目してるんだろうなぁって思うくらいクソ真面目でお堅い人でギャップで笑っちゃいましたよ。飲み会の事も機転が利いて、たかが間接キスでそんなガチガチに謝るなんてすっごいピュアだなぁって思って、そんなの役得で済ませればいいのに、あと恩売ってそれで二次会とか誘えばいいのに謝るだけっすからね?なんで飲みサー入ってるんだろうって思いますよ。
話してみると面倒見がよくて、彼女さんのこともちゃんと尊重してて、ちゃんと異性との線引きしっかりしてて、聞けば見た目に似合わず課題遅れたことなくて成績もいいっていうじゃないっすか。将来の話を聞いてみればめちゃくちゃ考えてて、ますますなんでチャラい感じになったのか気になって。
聞いてみれば、大学デビューしたくてこの見た目になってこの飲みサークルに入ったり、遊んだりしてるけど本当にこれでいいのかって悩んでるって話が出てきて…。
パイセン、お酒弱いっすねぇ。お酒を二、三杯勧めたらべろんべろんに酔っちゃって…まぁ度数高いお酒勧めたの私っすけど…めちゃくちゃ愚痴ってくれたっすよ。
話聞いて、すっごいかわいい人だなぁって思って。でも彼女さん居るっていうじゃないっすか。見ず知らずの私を助けてくれて、話を聞けばめちゃくちゃちゃんとしてるのに弱いところ見せてくれるってところが見た目とのギャップで、彼女さんに悪いって酔ってるときもずっと言ってるんすよ?すごい誠実で…羨ましいなぁって…でも、彼女さんとちょっと関係離れてるって話が出てきて…どうすればいいかわからないって言うじゃないっすか。
新歓の無理やりお酒飲ませられそうになった時からずーっと見てたんすよ。お皿下げたり、コップが開いたら次を注いであげたり新しいのを注文したり…会話も回して、吐きそうな人がいたらトイレに連れて行ったりして、また私が飲まされそうになったら話し逸らしてくれて…気遣いがすごい出来る人で良いなぁって…。
まぁ端的に言えばすごい欲しくなったんすよ。私の容姿は人を惹きつけるから、私のことをちゃんと見てくれる人ってすごい少なくて…それでいてこんな優良物件をなのに放置気味の彼女さんがすごい羨ましくて…じゃあ私が貰ってもいいかななんて、思ったりして。
寝取り…逆寝取りっていうんすかね?まぁ最初はこんな感じだったんすよ。ただ、羨ましかったんっす。そんな今みたいにずっとパイセンのお世話したい、ずっと傍に置きたいっていうものじゃなくて、ただ羨ましくて…でもそんなの人としてダメだからちょっと揶揄うくらいなら許されるかなぁーって。最初は。そんだけだったんすよ。
でも…想像以上に私の容姿ってのはやっかみや嫉妬を生むって後から気付いて…彼女さんにも申し訳ないことしたなって…でもそれがその時の私にはすごい都合がよくて…パイセンがどんどん弱っていく姿を見て…私は……私は………。
まぁ端的に言うなら…
私は自分が思ってるより最低な人間だったってことっす。
なんでこんな奴がチャラ男をやってるんだ。もっとまじめに生きろ。