稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第99話 案件配信 (2)

「それじゃ、頑張って」

「またくる」

「あぁ、ありがとう。俺が世界を救えることを祈っていてくれ」

「ばいばーい!」

 

いかないで

仲間離脱イベントの新しい形

ニッコリ探偵団の旅、終了

二人だけになっちゃった……

 

 月宮さんとアザミを見送り、スタジオに満と二人取り残される。

 有識者によると、全体的な進捗度は25%くらい。昼から夜まで、それも初見の人間がやったにしては上出来だろう。まぁ、頭のいい月宮さんとアザミがアドバイスをしてくれたというのも大きいが……。

 『Farstar Road』には、ステータスという概念が存在する。体力だったり力だったり、そのまま戦闘に影響するそれを強化するアイテムもある。それをすべて俺に注ぎ込み、見事ドーピング勇者への道を歩んでいる。今回の企画の性質上仕方のないことだが、ゲームの世界でも介護されているように見えて少し複雑だ。

 

「さて、二人が帰ったことだし、そろそろ休憩にするか」

「そうだね。すっかり夜だし」

 

休憩助かる

これまでにもちょくちょくあったけど、風呂入るには微妙な時間帯だったし

次は誰がくるんだ?

深夜帯がいけるってなると結構限られてきそう

 

「誰がくるかは俺にもわからん。星菜さんは未成年だからないだろうし、そうなると自動的に明さんもないだろうな」

「最初聞いた時はきっつーい縛りだと思ったけど、ワクワクできるからいいかも!」

 

 まさか俺のもとに誰がくるかワクワクできる日がこようとは……。VTuberになる前の俺では考えられないことだ。過去に戻って俺自身に「お前は数か月後、多くの人に認められ、支えられることになる」と言っても、自分のオカルトセンスの方を信頼して俺をドッペルゲンガーか何かと思い込み、決死の勝負を挑んでくることだろう。よし、過去に戻れるとしても戻らないことにしよう。恐らく相打ちになってこの世から俺がいなくなってしまう。

 

「……そういえば、俺はいつ寝ればいいんだ? まさか数時間休憩するわけにもいかんだろう」

「私と交代とかは?」

「満はぐっすり寝るべきだ。これは譲らん」

「ぶー。けち」

 

満ちゃん、寝なさい

子どもは寝なきゃダメだ

ニコ、お前は寝るな

命を削って俺たちを楽しませろ

 

「お前たちを楽しませるのは当然だが、視聴者も寝ろよ? 見てくれるのは嬉しいが、それ以上にお前たちが体調を崩すと申し訳ない」

「一回寝るっていうタイミングで配信切ってもいいしね!」

「いや、それでは企画としてリアルさが欠けてしまう。実は帰ってるんじゃないか? と思われることがないよう、少なくとも俺だけは見える位置にいるべきだ」

「んー、確かに? でも、私は企画のリアルさとかより、ニコさんが元気な方が嬉しいけどなぁ」

 

ニコ、寝ろ

命を削るな

命を大事にして俺たちを楽しませろ

満ちゃんと一緒に寝てくれ

多分その画だけで数時間は楽しめる

 

 満め……! 俺がちょうど困るようなことを言いおって! 俺にはわかっているぞ。本心で思っていることだろうが、俺を困らせようとして言ったということを。俺の考えていることが満に伝わるように、満の考えていることは俺に伝わるんだからな。

 ただ、どちらにせよ満が本心から俺が元気であってほしいと思ってくれていることも事実。正直なところ、一日二日は寝なくても耐えられるとは思うが、最大限のパフォーマンスを維持できるかと言われればそれはできない。どこかで休む必要がある。

 

 となると、その間どうするかだ。こういう企画系で数時間空けてしまうと、熱が冷めてしまいかねない。せっかくスタジオを借りて『クリアするまで終われない』と銘打っているのなら、配信はクリアするまで続けるべきだ。クソ、なぜ俺は今これを思いついたんだ! あと贅沢を言うのなら事務所側でその辺りは考えておいてほしかった! いや、それはない。これは俺の考えが至らなかったがあまりに起きてしまった事態であり、そもそも『project:eden』はライバーのやりたいことをやらせてくれる事務所。俺の自主性を尊重してくれたに過ぎない。

 

「満がそう言うのなら、俺も数時間は休みたいが……やはり配信は続けておきたいな」

「それなら、この俺にクールに任せろ」

 

 背後から声が聞こえた。慌てて振り向くが誰もいない……かと思いきや、ソファに寄りかかってしゃがみこんでいるルイスがいた。俺と目が合うと口の端を僅かに上げてクールに微笑む。

 

「ルイス! いつからそこに!」

「野暮なことは聞くな。ここは、クールなお前をクールに助けにきたこの事実を、クールに喜んでくれ」

「やった……」

「満が精いっぱいクールに喜んでいる……」

 

悪口じゃないけど、満ちゃんにクール似合わなさすぎるな

ルイスだけなのか?

よかった、深夜帯に一期生が集まったら終わってた

 

「もちろん私もいるわよ!!」

「なにっ!? イベリス!? 別にいるとは思っていたが、一体どこに!」

「上よ!」

「上!?」

 

 上を見上げれば、天井が大きく開いて、そこからメリーゴーランドのような乗り物に脚を組んで乗っているイベリスが下りてきた。いつも思うが、金の使い道を間違えていないか? イベリスのことだろうから私財なのだろうが……あとこの事務所、天井開きすぎだろう。俺が忍者だったら忍ぶところに困るくらい開くぞ。

 

「あなたたちのオシャレな雄姿、見せてもらったわ! あなたたちが休んでいる間、私たちがオシャレに繋いでおくから安心してオシャレに休みなさい!」

「あぁ、ありがとう。できるだけ早く帰ってくるようにする」

「ふっ、俺たちへの気遣いまでクールな男だな」

「どちらかというと視聴者に気遣っている」

 

深夜帯に一期生……?

まだシゲキがいないだろ

どうせいるだろ

衝撃に備えろ!

 

 視聴者と同じくどうせシゲキもくるだろうと身構えていると、エンジン音が聞こえてきた。スタジオにいるのにエンジン音が聞こえることに今更驚きはしない。

 そちらに目を向ければ、バイクに乗ったシゲキがこちらに向かってウィリーで爆走してきていた。そして画角に入ると同時に急停止し、正体不明の爆発音とともに飛び上がって、イベリスが乗ってきたメリーゴーランドに乗り込んだ。

 

「よォ!!!! 随分シゲキ的なことしてんじゃねぇか!! もっとシゲキ的にしてやるために、シゲキ的にきてやったぜ!!!!!!」

「ちょっと! 私のオシャレを汚さないで!」

「黙れ!!!!!」

「黙れ!!!??」

「さぁ、クールに休憩する準備は整ったな」

「むしろこの場に残らねばならない使命感に駆られているが……」

「カオスだね……」

「「「なにっ、カオス!!?」」」

 

一期生が揃った!!

別に珍しいことでもない

大体こういう時はセットだしな

ニコ、一刻も早く満ちゃんを連れて逃げろ

 

 なぜか『カオス』に敏感な三人に見られて怯えた満が、俺の腹に顔を埋める。

 俺たちが休憩している時間を埋めてくれるのはありがたい。ありがたいが、かなり不安だ。これは案件であり、既にゲームと関係ないところで大盛り上がり(少なくともこの三人は)してしまっている。普通の配信であれば問題ないが、ゲームに妙な悪評がついてしまっては申し訳ない。

 ……いや、普段好き勝手していても一期生なんだ。最低限の常識はあるだろうし、任せてもいい、のか? 何かあれば俺が責任を取ればいいし、なんなら一、二時間程度休憩すれば一日二日は耐えられる。ここはこの場にいて体力を削るより、さっさと休憩した方が俺のためだろう。

 

「さてと、シゲキ的にゲームシステムの穴ァついて、シゲキ的難易度にしてやるか!!」

「いいえ、まずはオシャレよ! オシャレな装備を整えるのよ!」

「いや、まずはクールにティータイムと行こう」

「ある程度は好きにしてくれていいが、ゲームをいじるような真似はするなよ! 案件だからな!」

「案件じゃなくてもダメだと思うけど……」

 

三人の職業なんだっけ?

ルイスはパラディンで、イベリスはスーパースターで、シゲキはならずもの

シゲキ以外上級職じゃん

上級職って?

どれかの職業経由して、一定の条件を満たす必要があるやつ

 

 ……なんとなく、俺が休憩している間は進まなさそうなことがわかった。いや、俺が勇者で配信のメインだからそれでいいのだが。

 むしろいいのか? 企画の都合上、俺はクリアまで最短で行こうとしてしまうが、三人はそんなこと知ったことかと好き勝手してくれる。そうした方が、ストーリーとはまた別の視点でこのゲームの楽しみ方がわかる。信じられないことに、一期生が一番バトンタッチするのに向いているかもしれない。

 

「よし、それじゃあ俺たちが休憩している間を頼んだぞ」

「お願いします!」

「あぁ、クールに任せろ」

「オシャレにお任せよ!」

「シゲキ的に任せろ!」

 

 三人同時に胸を張って送り出してくれる姿を見て、なんだかんだいい人たちなんだよなぁ、とほっこりしながらスタジオを後にする。

 ……念のため、二時間後に配信を確認して、大丈夫そうなら一時間刻みで休むことにしよう。何の心配もなくちゃんと休憩したいが、俺にくれた案件なのだから俺が責任を持つべきだ。できることなら、やらかすなら俺の責任でなんとかなる範囲でやらかしてほしいが、あの三人が言うことを聞くわけがない。それなら、何かやらかす前に俺が入るべきだ。

 

「お風呂入って寝る?」

「そうだな。俺は二時間後に起きるが、満は寝ててもいい」

「私も起きる!」

「どうせあったかくしたらぐっすり寝るだろう?」

「寝ないし! そんな子どもじゃないもん!」

 

 ぷんすかする満に笑いながら、スタジオの騒音を背にして仮眠室へと向かった。不安だ。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part21

 

511:このライバーがすごい! ID:qiCOoX6rM

一期生にバトンタッチ後、進捗

・ルイスがパラディンになった

・イベリスがスーパースターになった

・シゲキが逆賊になった

 

512:このライバーがすごい! ID:JqMNORN8B

>>511

逆賊って?

 

513:このライバーがすごい! ID:+z2dMYVTJ

>>512

ならずものの上級職で、戦闘中に命令できず好き勝手やる上、普通に味方に攻撃する

 

514:このライバーがすごい! ID:VaHYnVhjA

>>513

人生プレイに不向きすぎて草

 

515:このライバーがすごい! ID:fqOm8kcgZ

でも、戦闘終了後のお金とかアイテムとかめちゃくちゃよくなるんだよな

 

516:このライバーがすごい! ID:PEwDjQHBt

しかもステータスが全職業中一位

 

517:このライバーがすごい! ID:3QCfT7+w9

全職業中一位のステータスが戦闘中牙向いてくんのかよ

 

518:このライバーがすごい! ID:kSVvl71pG

Fastar Roadにしかないってくらい珍しい職業だから、案件っぽいっちゃ案件っぽい

 

519:このライバーがすごい! ID:6bGaTBz8C

あと、イベリスのスーパースターは全職業中回避率一位で、

ルイスのパラディンは全職業中防御力一位だから、

逆賊と一緒にいてもやられにくくはある

 

520:このライバーがすごい! ID:TIU9uKF0o

【悲報】全財産を使い、各地の装備を買い占める

 

521:このライバーがすごい! ID:1qvJUz764

イベリス「オシャレに必要だからオシャレに仕方ないことなのよ!」

ルイス「しかし、クールな使い方ではないな」

シゲキ「テメェ!!!! シゲキ的ギャンブルができねぇじゃねぇか!!!」

 

522:このライバーがすごい! ID:Zr+u+DZFf

ちなみにストーリー進捗は?

 

523:このライバーがすごい! ID:4+ox0xsBr

>>522

進んでない

 

524:このライバーがすごい! ID:yFqgK1goC

>>522

有用なアイテムも全部シゲキ的に使うし、お金も今無くなったから正真正銘ゼロ

 

525:このライバーがすごい! ID:7sZmOEoZF

ま、まぁ、レベルは上がってるから……

 

526:このライバーがすごい! ID:toEkD3mdj

企画のシステム上、再度パーティ入りってなった時にレベル高いと嬉しいしな

 

527:このライバーがすごい! ID:MXmR/LTv1

【朗報】ニコ、起床

 

528:このライバーがすごい! ID:rs4xqmurv

ニコ「金が無くなっている!?」

イベリス「オシャレに使ったわ!」

ルイス「安心しろ、ニコ。またクールに稼げばいい」

シゲキ「シゲキ的ギャンブルの時間ってことか!!!!!」

ニコ「ギャンブル……いや、ゲームの楽しみの一つでもあるな。やろう」

 

529:このライバーがすごい! ID:hwYKVcnXs

ニコ+一期生でギャンブル……?

 

530:このライバーがすごい! ID:GebizNn/x

カジノが破壊される……

 

531:このライバーがすごい! ID:+fEPARYFY

ていうか満ちゃんは?

 

532:このライバーがすごい! ID:/M6+vK7D6

>>531

ルイス「そういえば満はどうした?」

ニコ「俺と一緒に起きると言っていたが、あったかくしてやったらぐっすり眠った」

イベリス「あらあら、オシャレすぎるわね」

シゲキ「シゲキ的ではねぇな」

 

533:このライバーがすごい! ID:dBsMZrMnn

かわいい

 

534:このライバーがすごい! ID:trg3UbQ0E

かわいい

 

535:このライバーがすごい! ID:wp4Gj1zeg

ぐっすり寝てくれ、満ちゃん

 

536:このライバーがすごい! ID:VOqTXOqIR

深夜帯じゃなけりゃ、もっと楽しめたのに……

 

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