稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「そういえば、俺にはクールな用事があるんだった」
「そういえば、私にはオシャレな用事があるんだったわ!」
「そういやァ、俺にはシゲキ的な用事があった!!」
それだけ言い残し、一期生の三人はスタジオを後にした。カジノで一度大勝ちし、シゲキがシゲキ的に全財産を賭けた後、一文無しになった直後のことである。
「あいつら……!!」
ま、まぁ、育つのは育ったし
お金で上級職三人を買ったと思えば
結局カジノとかばっかだったから、逆賊に勇者がやられるってのもなかったし
むしろ一期生三人が集まってこれで済んだと考えよう
「確かに……再度スタジオにきてくれたとしたら、即戦力とはいかないまでも普通に戦力になるしな……」
そう考えれば、配信全体的なバランスを見てくれていたのかもしれない。装備で見た目が変わるというシステム、カジノという本筋とは関係のない遊技、上級職という職業システムの醍醐味。それらをすべて味わった上で、ストーリーを進め過ぎず、万が一に備えてレベルだけ上げておくというバランス感覚。流石一期生というべきか。恐らくそんなことは考えていなくて好き勝手やった結果こうなっただけだとは思うが、好意的に捉えておくことにしよう。そうした方が心情的に楽だ。
しかし、勇者一人になってしまった。別に一人でも進められなくはないが、寂しいというのも事実。誰かきてくれないものかと期待はできない深夜帯。
「まさか、一人で旅をすることになるとは……」
一人は慣れっこだろ
いや、いつも満ちゃんは隣にいたから慣れてないだろ
この時間帯なら誰もこないよなぁ
一期生くらいしかこないだろ
視聴者もあまり期待はしていないのが助かる。視聴者の期待に応えられないことが一番ダメなことだからな。俺と同じ温度感で同じことを思っているのなら、俺一人でやっても問題がないだろう。もちろん、俺一人で楽しませることが前提だが。
……今思ったが、勇者である俺が死んだら最初からやり直しだよな? だとすると、一人で旅を進めるのって危険じゃないのか? ここまで協力してもらっておいて、一人になった途端やられてリセットなど、協力してくれた方々に合わせる顔がない。あと満を起き抜けに絶望させたくない。
が、やらなければならないことも事実。ここは堅実にレベル上げをして、次に仲間がきてくれるまで地道にコツコツやっていくしかないだろう。
「よし、見ておけ視聴者! 勇者たるこの俺の雄姿を!」
「こんばんはー!」
「ウワー!!」
今のが勇者の悲鳴か?
誰かきたのか?
画面上にはいないぞ
音的に落ちてきたことはわかる
意気揚々とコントローラーを握った瞬間、開きっぱなしだった天井から誰かがソファに飛び降りてきた。ちくしょう、意気込んだ直後に情けない悲鳴を上げさせられた! でも仕方がないだろう! 天井から降ってくるのは一期生くらいだと思っていたんだ! 油断していた!
天井から飛び降りてきたそいつは、青みがかった黒髪を前分けにしている、無邪気で幼い印象の少年。にこにこと笑っているその表情は子どもらしく可愛いように見えるが、なぜか生意気な印象も受けた。
「はじめましてニコさん! 僕はルーシィっていいます!」
「ルーシィだと!? はじめまして、我が名はミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ」
「うわ! ほんとに言うんだその恥ずかしい自己紹介! ダッサ」
「なんだ貴様!!!!」
ルーシィ!?
なんでこの時間帯に
初手からボコボコで草
ニコはルーシィにとって格好の獲物だからなぁ……
こいつ、初対面の相手に言うことか!? しかも俺を擁護するコメントがないということは、みんな薄々そう思っていたということか!? なんということだ。つまり俺はデビューしてから今まで、配信冒頭で恥を晒し続けていたということか!?
であれば、感謝すべきだろう。後輩であろうと感謝をし、経緯を払うべきだ。静かに頭を下げると、「まだハゲてないよ」と言われた。ハゲチェックをしてほしいわけではないんだよ。
「なぜここにいるんです?」
「敬語じゃなくていいよ。一応僕の方が後輩だし」
「であれば、なぜ先輩である俺に敬語ではないんだ?」
「えー。ニコさんってそういうの気にしちゃうんだ。もっと器大きいと思ってたから大丈夫かなーって思ってた」
「別に構わんが?」
面白いくらいルーシィの思い通りになってるな
ニコが簡単すぎる
デビュー当初から相性いいとは思われてたしな
ルーシィに3Dの体がないのが悔やまれる
後輩に対しては威厳を保たねばならん。いつもなら敬語を外さないところだが、遠慮なくタメ口でいかせてもらおう。年齢的にも俺の方が上……そういえば年齢はどうなんだ? 見た目は未成年に見えるが、非行少年でもない限りこの時間帯にここにいるということは、成人しているのだろうか。
いや、確かルーシィは天使だったはず。それならば俺より年上ということもありえるのか? そもそも天使相手にタメ口でいいのか? よく考えれば階級的には人間の方が天使の下だろう。しかし、事務所の先輩後輩という関係を考えればタメ口でもいいような気もする。
……まぁいい。ルーシィがタメ口でいいと言ったのなら、それに従おう。
「それでさそれでさ。僕も一緒に冒険させてよ!」
「それは願ってもいない話だ。このままでは一人で冒険するところだったからな」
「やった! あとね、もう二人くるからちょっと待ってて!」
「もう二人?」
「小言がうるさいのと、うるさいの」
「とにかくうるさそうだな……」
なんとなく想像はできた。ルーシィの交友関係を考えれば、デビューしてほとんど経っていないから、同期の二人だろう。魔王様とセレナさんだ。
ほどなくして、足音が一つ聞こえてくる。一緒にくるわけではないのかと目を向ければ、ライトグリーンのボブカットの女性と、その肩に乗っている黒いネズミがいた。ネズミ!? まさか、やはり本当に魔王様だったのか!?
「お初にお目にかかります。私はセレナ、魔王様の側近です」
「こっ、これはどうもご丁寧に。我が名はミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコ。深夜の狂騎士です」
「フン、深夜の狂騎士か。人間界の騎士というのは、随分軟弱らしい」
よく見れば、ネズミの首に小さな機械的でシゲキ的なネックレスがかけられている。魔王様の声の出所は恐らくあそこだ。そしてあの機械を作ったのは恐らくシゲキだ。あいつの作品は見た目でわかりやすすぎる。
揃った!
ニコ、初対面が三人って大丈夫か?
魔王様がネズミかどうかだけ教えてくれ
今思ったけど、Fastar Roadの世界観的に新人はぴったりか
あの機械越しに喋っているということは、無粋な話だがやはり本体はどこかにいるのか。だとしても同僚相手に姿を見せないのは、徹底していて好感を持てる。全魔力を使って元の姿に戻れるという設定上、普段はネズミの姿でなければおかしいからな。
「魔王様とセレナさんも助けにきてくださったのですか?」
「勘違いするな。我輩は我輩以外の塵芥が世界を支配するなど考えられんからきてやったというだけだ」
「ゲームの中の話なのに。現実と混同するのバカみたいだからやめた方がいいよ?」
「ナニィ!!? 魔王たるもの、一切の妥協は許されん! たとえゲームの世界であろうとも、我輩以外の者が君臨させてはならん!」
「そういえば魔王様の職業は魔法剣士を考えているのですが、よろしいでしょうか」
「まぁ、魔王という職業がないのであれば仕方がない」
「妥協してるじゃん」
「うるさい!!!」
魔王様初めて見たけど、初めて見た感じがしないな……
ニコを尊大にした感じ
ニコがギリギリで保ってきた炎上ラインを踏み越えそう
人間界にきて炎上する魔王様面白すぎだろ
いつまでも立たせているのはなんなので、セレナさんにも座ってもらう。もちろんルーシィを挟んで向こう側に。初対面の女性が隣に座るなど、何か失礼を働いてしまっては社会的に俺が死ぬ。
それにしても、こうして実際に見てみると賢いネズミだ。魔王様の声に合わせて体を動かしているし、おちょくってきているルーシィにシャドーボクシングしている。まさか、あの機械はネズミの言葉を人間の言葉に翻訳するもので、本当に魔王様なのか? マリーが並行世界を観測できて、聖麗がオカルトパワーを振るえる以上、ファンタジーなことがあってもおかしな話ではない。
……ただ、ここで変につついてもしそうではなかった場合、設定を崩すことになりかねん。VTuberとして失格だろう。VTuberとは、非現実が現実に近い位置にあることを面白がるコンテンツだ。あくまで俺の考えだが。
「ねーねー、僕の職業は?」
「天使だ。僧侶から賢者になって、その先だな」
「私は調停者とお聞きしましたが、失礼ながら詳しくなく……」
「魔法使いと僧侶を経由してなる職業で、サポートのエキスパートといったところですね」
「セレナにぴったりだな! 中々わかっているではないか、人間」
「ありがたき幸せ」
ニコが普通に敬ってて草
ダメだ、元厨二だから魔王とかが好きなんだ
ていうか、またクソ上級職じゃね?
二つの職業経由するから、最上級職だな
そういえば、パラディンやスーパースター、逆賊といった一期生がなっていた職業は、パラディンは戦士、スーパースターは旅芸人、逆賊はならずものを経由してなる職業だが、今回は二つの職業を経由してならなければならない、所謂最上級職。もしかしたらストーリーを進めるのは数時間後になるかもしれない。
ただ、ゲームシステムを紹介するにはうってつけだろう。それに、ストーリーを進めながら最上級職を目指せばいい。
といったところで、さっきカジノで全財産を失い、装備を買う金がないことに気が付いた。よかった。イベリスが全装備を買い占めていて。
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part21
601:このライバーがすごい! ID:zbmwq54YF
ここまでの職業まとめ
ニコ:勇者
満ちゃん:武闘家
優姫ちゃん:僧侶
アザミん:魔法使い
ルイス:パラディン
イベリス:スーパースター
シゲキ:逆賊
魔王様:魔法剣士
ルーシィ:天使
セレナ:調停者
602:このライバーがすごい! ID:Vc0f4Fe1d
綺麗に初級職、上級職、最上級職を見せてくれてる
603:このライバーがすごい! ID:YxrsTOZww
正直、魔法剣士は勇者の下位互換だけどな
604:このライバーがすごい! ID:sj4ZCVojg
>>603
魔王様の職業が勇者に負けてるのは逆にいいだろ
605:このライバーがすごい! ID:fyX4Lz8AS
ニコが必死に下位互換だってこと気づかれないようにしてて草
606:このライバーがすごい! ID:PgmaLiZxj
魔王様がゲーム知識ないから誤魔化せてる
607:このライバーがすごい! ID:r0Ve/9LDY
魔王様「一番強い装備は我輩によこせ!」
ルーシィ「でも魔王様ってそのままでも強いから、強い装備なくても平気なんじゃない?」
魔王様「当たり前だ!!」
ニコ「い、いいんですか……?」
セレナ「ふふ。はい」
608:このライバーがすごい! ID:hpjIaNcm7
>>607
セレナは魔王様を敬いつつ、ルーシィのことも可愛がってそうでいい
609:このライバーがすごい! ID:NYDEM1qk5
ニコと魔王様が並んだら、ニコがおとなしく見えるな
610:このライバーがすごい! ID:fPqIw6zxh
魔王様が暴れすぎなんだろ
611:このライバーがすごい! ID:alr1HK4+V
あとニコが魔王様を敬いすぎ
612:このライバーがすごい! ID:F8CUW1Kx1
ほんとに魔王だと思ってるよな
613:このライバーがすごい! ID:yX6Bt70D6
【悲報】魔王様、眠くなる
614:このライバーがすごい! ID:EHO9MncMP
魔王様「ねむい……」
ルーシィ「ネズミのクセに夜行性じゃないの?」
セレナ「夜行性であるのに、日中に活動なさっていますから」
ニコ「スタッフさん、ちなみに寝てしまった場合は……あぁ、はい。離脱ですよね」
魔王様「ねる」
615:このライバーがすごい! ID:DquZG44l3
最上級職になるために無駄に時間使った後に寝た……
616:このライバーがすごい! ID:PJXquutHY
まぁネズミだししゃあない
617:このライバーがすごい! ID:Lz/2Jj5CB
幸い最上級職二人と勇者だから、三人パーティでもなんとかなる
618:このライバーがすごい! ID:USfWn7w03
ルーシィ「なんかこの三人でデビューしたみたいになってる」
セレナ「こら。ニコ様には素晴らしい同期のお二人がいらっしゃるのですから、失礼ですよ」
ニコ「そういえば、セレナさんは月宮さんと仲良くなりたいと仰っていましたね」
セレナ「見てくださっていたのですか。はい。その、勝手ながら意気投合できそうだなと」
619:このライバーがすごい! ID:r593TisWE
ニコお前、女の子と普通に会話できるのか……!?
620:このライバーがすごい! ID:FWrEyoFa/
俺たちのニコはどこにいった!
621:このライバーがすごい! ID:+otGtz32x
返して……
622:このライバーがすごい! ID:QUUBHsHhG
ニコも成長してるってことだろ
623:このライバーがすごい! ID:VZfA2K0xY
優姫ちゃんなら、仲良くしたいって言ってくれる子を無下にしないだろうし
いつかコラボしてくれそう
624:このライバーがすごい! ID:sAYGQIGph
親近感沸いてるだろうしな
625:このライバーがすごい! ID:1tpIM0AUq
ちなみに、魔王様は満ちゃんの隣で寝させてるらしい
626:このライバーがすごい! ID:KZD2PIY08
中身が魔王様だからアレだけど、小動物と満ちゃんは絶対かわいい
627:このライバーがすごい! ID:/RfGhv21n
でも、魔王様だろ? 人間と一緒に寝ていいのか?
628:このライバーがすごい! ID:FycuUnVS/
>>627
見た目ネズミだから、誰かと一緒にしないと間違えて駆除されるだろ
629:このライバーがすごい! ID:NQkUad4OR
草
630:このライバーがすごい! ID:oMSEBFbKG
草
631:このライバーがすごい! ID:eDMwi/gpb
人間界にきて寝てる間に駆除される魔王様
632:このライバーがすごい! ID:Eltsh+YCx
笑っちゃいけないけど笑っちまう