稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「さて、満が成長するようになり、それを今の今まで黙っていたことについて、何か言い訳があるなら聞かせてもらおうか」
「ま、待て! 3Dお披露目なのにいいのか!?」
俺たちには聞く権利がある
聞かせてもらおう
ニコにとって、ニッコリ探偵団とはその程度だったのか?
アザミんかわいそう……
アザミは言わずもがな、月宮さんもアザミ側、視聴者もアザミ側。俺の味方をしてくれそうなのはチラチラと俺を見ている満だけ。終わった。
アザミの3Dお披露目配信。アザミはそもそも交友関係をそこまで広げるタイプでもなく、ニッコリ探偵団とエルさんとロイさんくらいしか呼んでいなかったようで、エルさんとロイさんでたっぷり30分使い、残り30分が俺たちに与えられた時間。その時間を使って、アザミは裁判を始めようというつもりらしい。正直逃げたい。
「いや、忘れていたというわけではなく、もちろん伝えるべきだとは思っていた」
「ほう、それで?」
「その、経緯が経緯だったから、完全に信用できるものではなく……」
聖麗を信じていないわけでもない、こともないが、歴代の最高峰陰陽師が眠る、その切り株に座っただけで満が成長するようになりました、だぞ? 実際に満が成長しているから効果はあるのだろうが、いつ何が起こるとも限らん。いくら聖麗とはいえ非人道的なことはしないとは思う。ただ、慎重にならざるを得ないというのが本音だ。
というのは言い訳で。
「すまん。満の成長を喜んでいたら、喜びすぎて他のことが頭から抜けてしまった」
「初孫にでも恵まれたのかお前は」
「ごめんなさい。私も最初の方は伝えるべきだと思ってたけど、あまりにも毎日祝ってくれるから気持ちがよくて」
「ニコ。満ちゃん、あんたから悪い影響受けてるわよ」
嬉しくて、じゃないのが悪影響を示してる
毎日パーティしてそう
友人には止められなかったのか?
止めたらブチギレそう
帝斗と透華は止めてこなかった。むしろ透華はかなり乗り気だったし、俺と一緒に涙ぐんでいた。俺たちの中で唯一冷静だったのは帝斗だろう。ただ、あいつも人が喜んでいるところに水を差すようなやつではない。一緒になって喜んでくれたし、成長した満に合うサイズの服と、更に花束をプレゼントしてくれた。「私、普通に成長してたら西園寺さんに惚れてたかも」と言った瞬間、流石に帝斗に呪いをかけようと思ったが、どう考えても男として負けていることを思い出し、そっと呪いを収めた。
しかし、これで満が順調に成長すれば、いずれ結婚もできるということになる。なっ、なにっ!? 満が結婚するだと!!?
「ちょっ、ニコ、何泣いてんのよ」
「あー、なんか、成長したら私が結婚できるって想像したみたい」
「……」
「……」
「……」
「……え? なんでみんな神妙な面持ちになってるの?」
……
……
……
……
「さて、ニコへの糾弾は置いておこう。満にどのような男が相応しいか、全員で考えようじゃないか」
「賛成。生半可な男にはやれないものね」
「助かる。正直、俺は人生経験が薄すぎて、相応しい男を考える脳が足りん」
「これ、アザミさんのお披露目だよね?」
「だから私がやりたいことをやるんだ。口を挟むんじゃない」
「今から私のこと考えるんだよね? 当事者だよね? 私」
混乱する満に「わがままを言うな」と言ってひとまず口を閉ざさせ、姿勢を正す。
満に相応しい男。満にはなんとしてでも幸せになってほしいと思っているが、考えるだけで頭が痛くなる。可愛がっている妹が、ともすれば娘が嫁に行くようなものだ。彼女もいたことがないのに娘とは片腹が痛いと煽られても仕方がないが、感覚的にはそういう感じだと思う。
満に相応しい男。満からすれば大きなお世話だとは思うが、心配になるのが親心というもの。それは月宮さんもアザミも同意らしく、月宮さんは顎に指を添えて、アザミは腕を組んで俯き、思考の海に飛び込んでいる。
「……いや、考えるのはいいけど動こうよ! お披露目だよ!? 3Dだよ!? 視聴者のみんなが納得しないでしょ!」
「このように、満は子どもっぽく見えて、しっかりと場を客観視できる一面もある。要は気遣い上手ということだ」
「あぁ。私もどのような男が相応しいか考えていたが、満が完璧すぎて釣り合う男が思い浮かばない」
「同意ね。どこからどう見ても完璧だもの」
「う、うれ、嬉しいけどっ!!」
怒りながら照れてる満ちゃんかわいい
アザミんに動くことは期待してないから別にいいよ
ていうか、ニッコリ探偵団が大好きなアザミんが大好きまであるから、むしろいい
アザミんはやりたいことしてるのが一番だ
「アザミさんが甘やかされてる……!!」
「時々、『いつも見てくれてありがとう』と言えば、面白いくらいに喜ぶんだ。滑稽でチョロくて正直笑いが止まらん」
「俺をバカにしたな!?」
「多分したつもりはないと思うけど、心当たりがあるみたいね」
だ、だって!! どうせからかってるだけだろうなと思いながらも、アザミは本心で言ってくれているはずだと期待して、それで嬉しくなってしまうんだ! そうでなくても、普段見せない柔らかな笑みを浮かべ、『いつも見てくれてありがとう』などと言われれば、アザミのことが好きであれば誰だって喜ぶだろう!! あっ、いや、今の好きというのはファンとかそういう意味で、決して恋愛的な意味ではない。
それに、満は心配していたがアザミの視聴者であれば問題ない。既に調教済みだ。アザミの計算づくの不意に見せるあざとさを摂取しつつ、いつでも素で振る舞い、だからこそ嘘がないと信用できるそういう面に惹かれた者たちがアザミの視聴者。それに、アザミは視聴者をからかって面白がってくれるから、一定層には大ウケする。今までの『project:eden』にはいなかったキャラだしな。
アザミもアザミで、物事を考えて実行し、トライアンドエラーを繰り返すのが大好きな人種だから、どのような振る舞いが視聴者にウケるかをちゃんと考えている。そういった視聴者のことを考えているということが視聴者にも伝わっているから、アザミはこうも人気なのだろうというのが俺の推測だ。配信はすべて見ているから恐らく間違いではない。
「話を戻そう。やはり一番必要なのは財力だ」
「もちろんだ。今まで満は俺の隣にいたから、満をもらう男には、満を財力で包み込み、俺といた時のようなひもじい思いをさせないことが第一条件になる」
「でも、ニコさんと一緒にいると毎日楽しいしあったかいし、大好きだよ?」
「うおおおおおおおん!!!!!」
「ニコ、落ち着いて! 今のは両親へのお礼の手紙じゃないわ!」
「あまりにも嬉しすぎてニコが勘違いしてしまったか……」
草
泣き声が獣すぎる
地味にニコがお礼の手紙だと勘違いしたってことがわかる優姫ちゃんすごくね
お礼の手紙の途中で獣の泣き声出す父親迷惑すぎだろ
月宮さんに背中を撫でられ、冷静になる。そ、そうか。あまりにも嬉しくて感動的すぎて泣いてしまったが、今はアザミの3Dお披露目だった。ダメだな、満が成長するようになって、色々夢に描いていたことが現実味を帯びてきたことで、ちょっと最近情緒が狂っている。何? 最近ではなく前からずっとだと? 心当たりがないな……。
「すまない。思わず男泣きをしてしまった」
「原始時代の男基準で話してる? 男泣きはもっと渋いよ」
「渋いというのはニコからもっとも遠い属性だな」
「なにおう!? 俺のどこが渋くないのか言ってみろ!」
「そういうところだと思うわよ」
この世界が舌戦により地位を決定する世界だったのであれば、恐らく俺は最下位だろう。いつも月宮さんとアザミに舌戦で負けている気がする。満には勝てるのに。そもそも、満に勝てたところで年齢差があるから、まったく誇るべきことではない。
また脱線してしまった。話を戻して、満に相応しい男……。俺としては、十分な貯蓄と収入があり、満だけを大切に想ってくれていればそれでいい。満を泣かせるようなやつであれば、お父様と共に焼き討ちをする自信がある。もしかしたら俺の隠されたオカルトパワーが開花し、人類に反逆の翼を翻すかもしれん。
俺がまだ見ぬ浮気男に怒りの炎を燃やしていると、アザミが思いついたように口を開く。
「そうだ、満はどういう男が好きなんだ? そもそも、満の好みを知らなければ始まらん。確か、恋人に求める条件は……」
「一緒にいて幸せになってくれる、いっぱい褒めてくれる、くっついても嫌な顔しない、だな」
「わー! 恥ずかしい! やめて!!」
「AI恋愛診断のときに言ってたやつよね。よく覚えてるわね……」
「満のことだからな。当たり前だ」
聞けば聞くほどかわいいな
そもそも、満ちゃんにくっついてもらえて嫌な顔するやついるのか?
一緒にいて幸せにならないやつもいないだろ
いっぱい褒めないやつもいない
確かに視聴者の言う通り、満の恋人に求める条件は大体の男が当てはまる。満がいい子すぎて絶対幸せになるし、いっぱい褒めるし、くっついても嫌な顔をしない。満ほどいい子であればもっと高望みをしてもいいというのに、俺に似て謙虚なやつだ。
「恋人に求める条件がそれで、更にその先。好みというものがあるはずだ。見た目や性格なんでもいい。教えてくれ」
「やだ! 恥ずかしい!」
「お願い満ちゃん。あなたの将来のためなの」
「えー、うー……あ、でも最近、いいなって思った人はいるかも」
「ナニィ!? なぜ俺に言っていないんだ! ちゃんと教えなさい!」
「うるさ」
いいなと思った人がいるだと!? ずっと俺の隣にいたが、まったくそんな素振りはなかったじゃないか! いったいどこでだ!? 自慢じゃないが俺はほとんど外に出ないから、出会い自体もないはずだ!
いやまさか、オカルト的な出会い方をしたのか? 例えば夢の中とか。ありえる。オカルトパワーを授かって成長できるようになったんだ。何かしらの副作用的なものが起きていても不思議ではない。
そんな俺の予想は容易く外れた。
「え? ニコさんは知ってるよ? えーっと、みんなにもわかるように言うと、ニコさんのお友だち! 服と花束くれた時に、ちょっといいなって思った!」
「ほう」
「へぇ」
「……」
おい、もしかして満ちゃん目的でニコに近づいたのか?
確かイケメンだって言ってたよな
収入も十分だ
満ちゃん狙いかよ
そいつは信用できるやつなのか?
視聴者のヘイトが帝斗に向いた。配信終了後、『なんで俺の方が先に炎上してんだよ』と連絡がきた。本当にすまん。
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part22
273:このライバーがすごい! ID:7bUNt6VO8
えー、ニコの友人について考える会を開催します
274:このライバーがすごい! ID:if3mF9Mtd
異議なし
275:このライバーがすごい! ID:BBCQvheyB
異議なし
276:このライバーがすごい! ID:Bryog7XdG
意義あり
277:このライバーがすごい! ID:hR1aVSIyS
ニコの友人スペック(ニコの今までの配信より)
・イケメン
・家事○
・気配り○
・運動○
・収入○
278:このライバーがすごい! ID:e+pDNfHjW
……
279:このライバーがすごい! ID:WnxxJmQ0j
……
280:このライバーがすごい! ID:wYcbneyCq
……
281:このライバーがすごい! ID:yJxDUlDYC
ぐぅの音も出ない
282:このライバーがすごい! ID:Kl+CFOyK5
ニコがあいつは絶対にそういうのじゃないって言ってたけど
283:このライバーがすごい! ID:LsgyVJKdu
>>282
そいつがどう思ってるかじゃなくて、満ちゃんがいいなって思ったのが問題なんだ
284:このライバーがすごい! ID:BB3AXab00
まぁ本気で叩こうとしてるやつはいないだろ
285:このライバーがすごい! ID:kFP8uEf+l
ニコのお世話をずっとしてる人だから、まともじゃないけどまともだろうしな
286:このライバーがすごい! ID:A62qRoy2o
ていうか、満ちゃんのアレはどっちかっていうと憧れ的なやつだろ
287:このライバーがすごい! ID:chZsee42V
本気でそういう意味でいいなって思ったなら、配信で言わないだろうしな
288:このライバーがすごい! ID:j2Ykexnr6
でも満ちゃんが成長かぁ
289:このライバーがすごい! ID:RPuxnyf1d
アザミんが自分の3Dお披露目を取っ払うのも納得なくらい感慨深い
290:このライバーがすごい! ID:M9Xryy5Qr
俺、満ちゃんが大人になったら泣いちまうよ……
291:このライバーがすごい! ID:XoMvV5FGr
アザミん「満、大人になったらやりたいことはあるか?」
満ちゃん「えーっとねぇ、みんなとお酒飲みたい!」
優姫ちゃん「ふふ、いいわね。その時は一緒に飲みましょ」
満ちゃん「うん!」
ニコ「(静かに涙を流し、微笑む)」
292:このライバーがすごい! ID:qk4zuUUAR
満ちゃんが大人になるっていうワードだけで泣ける
293:このライバーがすごい! ID:D2slCy2nq
これで、あとは優姫ちゃんのお披露目だけか
294:このライバーがすごい! ID:UNfJJFQkA
ニコとアザミんが内容考えたっていうあの!?
295:このライバーがすごい! ID:hbTBrXKvO
優姫ちゃんは視聴者の希望にできるだけ応えてくれるから、期待できる
296:このライバーがすごい! ID:aPDAlupdX
アザミんがこの前配信で言ってたけど
二人でお披露目について話してる時普通にオタクらしい
297:このライバーがすごい! ID:eKHLOU1Hn
そりゃ優姫ちゃんのお披露目配信の内容考えるんだから、オタクにもなるだろ
298:このライバーがすごい! ID:f0TMSsJVL
でもなんだかんだ、ニッコリ探偵団が集まるならなんでもいい