稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
『月宮優姫がミッドナイト・サイコナイトに10回好きと言って、ミッドナイト・サイコナイトが耐えきれたら成功』
「別に、そういう意味で好きって言うわけじゃないし大丈夫でしょ」
「いや、そういう好きという言葉は大切にするべきであって、このような形で軽々しく言うものではなく」
「好き」
「!!!?????」
結果:失敗
理由:ニコが動揺し、10回ほど後転したため
『おでこを1分間くっつけ合う』
「うーん、これはちょっときついけど、何もクリアできなかったっていうのは癪だし……」
「無理をする必要はない! やめておこう! さぁ次の指令をっ、何近づいてきているんだ!! やめろ!! 助けてくれみんな!! 殺される!!」
「この程度で危なくなる命なら、ちゃんとどうにかしておいた方がいいわよ」
結果:失敗
理由:優姫に接近され、ニコが命の危機を察知したため
『ミッドナイト・サイコナイトが、1分間月宮優姫を後ろから抱く』
「うーん……別にいいけど」
「だっ、ダメだ!! 後ろから抱くということは密着するということであり、それはつまり月宮さんの体温と匂いがダイレクトに伝わるということで、それがどういうことかと言うと恋仲である男女でしかやってはいけない行為であることは明白ということで」
「言い訳で時間潰されそうね……」
結果:失敗
理由:ニコがぐだぐだと長ったらしく同じようなことを言い始めたため
『ミッドナイト・サイコナイトが月宮優姫を3分間マッサージする』
「無理だ!! 俺が月宮さんに触れられるわけがないだろう!!」
「盲目ファンみたいなこと言ってんじゃないわよ。これくらいならいけるでしょ?」
「これくらいならだと!? 男が女性をマッサージするなど、えっち以外の言葉が見つからんだろうが!!」
「とりあえずマッサージ屋さんに謝っておきなさい」
結果:失敗
理由:ニコの貞操観念がとても27歳のものではなかったため
『月宮優姫がミッドナイト・サイコナイトを1分間胸に抱く』
「もうめんどくさいわね。ほら」
「!!?!????」
結果:失敗
理由:優姫が腕を伸ばしてニコを迎え入れる姿勢になった瞬間、ニコが気絶したため
『キスしろ』
「無理」
「無理だ!!」
結果:失敗
理由:やはりダメだった
「──何ならできんのよ!!」
「すまん!! でも無理なんだ!! 俺はすさまじい童貞なんだ!!」
優姫ちゃん、ついにキレる
別の見方をすれば、ニコは偉い
男なら、強制されてるからっていう理由でやっちゃいそうなのに
しかも相手は優姫ちゃんだぞ?
何度失敗したかは、指令が出る度に動揺してしまっているせいかまったく覚えていない。ただ、月宮さんがイラっとするくらいには俺が原因で失敗してしまっているようだ。
しかし、月宮さんもおかしくなってしまっている部分はあると思う。『アザミから出された指令を一つもクリアできないというのは癪に障るから』という負けず嫌いを発揮して、普段やらないようなこともやろうとしているんじゃないか? だったら、元々俺はすさまじい童貞だから、俺が原因ですべて失敗すれば月宮さんも後で「なんであんなことやっちゃったんだろ……」と後悔することもない。
というのは建前で、本当に俺がすさまじい童貞だから失敗しただけだ。
「っていうか、男女の意識をしないっていうのはやっぱり無理なわけ?」
「む、無理だ! 月宮さんは美人でいい人で、誰がどう見ても好ましい! それなのに女性として意識をしないというのは嘘になるだろう!」
「ありがと。あんたがそう言うなら仕方ないと言えば仕方ないけど、それにしてももうちょっとどうにかなんないの?」
「どうにかならなかった結果、今の俺がある」
「なんかカッコつけてるみたいだけど、普通にカッコ悪いわよ」
俺も優姫ちゃんにありがとって言われたい
あんなストレートに褒められて、まったく照れてないのは完全に脈なしか
ニコと優姫ちゃんはそういうんじゃないから
優姫ちゃんが男前だからっていう説もある
まずいな、月宮さんが本当にイライラしている。基本的には優しく懐の深い人だが、負けず嫌いが関わってくると途端に感情が激しくなる。『キスしろ』という指令を無理だと言ったからまだある程度冷静ではいてくれているようだが、いつ枷が外れてもおかしくない。俺は貧弱だから、月宮さんに強行されたらあっさりと敗北する自信がある。
クソッ、アザミめ。月宮さんの性格をよくわかっている。『3Dお披露目』という特別な空間であること、『内容を考えていい』と承諾してしまったこと、『指令を与えられている』ということ。そのすべてが月宮さんの負けず嫌いを刺激している。
そして俺の性格も。この場に満がいたのならすぐに助けてくれたし、月宮さんも満がいたのならここまで感情が荒ぶることはなかった。改めて満の存在のありがたさを実感する。思えば、満はいつも地獄のような空気を緩和させてくれていた。もっと労わってやるべきなのかもしれない。
「せめて軽いやつが出たらクリアするわよ!」
「アザミの性格的に、軽いやつが入っているとは思えんが」
「私からすると、これまでもいくつか軽いやつあったけど」
「かっ、価値観というのは人それぞれであって、月宮さんからすれば軽いとは言っても俺からすれば十分重いものであり」
「はいはい。次行くわよ!」
月宮さんがとんでもない指令ばかりを出してくる箱に腕を突っ込み、勢いよく引き抜く。折りたたまれた紙を乱雑に開けば、眉間に皺を寄せた。
「何と書かれていたんだ?」
「『1分間添い寝する』だって。別にベッドで一緒に寝たことあるし、これならいけるでしょ」
「えっ、あっ、おっ、いっ、わっ、あっ」
今なんて言った!?
ベッドで!?
一緒に!?
ニコと!?
優姫ちゃんが!?
ニコがめちゃくちゃ動揺してるぞ!
なっ、なななな、なにっ!? 俺と月宮さんが、ベッドで一緒に!? いつの話だ!? まっ、まさか、月宮さんが指令に対して普通に遂行しようとしていたのは、その経験があるからか!? それはつまり、月宮さんは俺と付き合っている認識だということか!? キスだけはみんなの前ではしたくない、みたいな!
そうなってくると話は変わってくる。まず俺は月宮さんと付き合っていないと伝えるべき……どう伝えればいいんだ!? 交際経験もないのに、付き合っていないと本人に伝える方法なんてわかるわけがない!! 第一、付き合っているつもりだった人に付き合っていないと言うのはかなり残酷なことなのではないか!? だからといってそのままにするわけにはいかないが、どうすれば月宮さんを傷つけずに伝えられる!?
「なに? どうしたの。さっさと寝るわよ」
「やっ、あっ、そっ、はっ」
「……? 前はもっと落ち着いてたでしょ。何今更動揺してんの」
冗談じゃ、ない!?
きっとニコのせいで失敗し続けてるから、断りにくくしようとしてるだけだ
ニコなら騙せそうだしな
まさか、本当に……
というかいつだ!? 俺は満とずっと一緒にいる。離れた時も時々あったが、何日も離れたことはなかった。だとすると、月宮さんと寝るタイミングなんてまったくないし、月宮さんと会った時は満と一緒にいた。なんらかの理由で満が離れていた? そんなことあるか? 酒で酔っていた? いや、酔いつぶれて記憶がなくなるような真似はしていないはずだ。一体どこで……!!
目の前には焦っている俺に訝し気な視線を向ける月宮さん。俺と一緒に寝たことがあると信じて疑っていない。嘘はついていない。じゃあ俺が覚えていないだけか? 本当に?
《佐藤さん! ゲーム! 奇紀怪解! パラレルワールド!》
混乱する俺の脳内に、満の声が響く。そして思い出した。
奇紀怪解。マリーが観測したパラレルワールドを元にしたそのゲーム内で、俺と月宮さんは確かにホテルで、同じベッドで寝た。更に俺と月宮さんはパラレルワールドの記憶があり、それを実体験として捉えてしまっている節がある。
まさか、月宮さんは負けず嫌いで感情が荒ぶるがあまり、正常な判断ができなくなって、一緒に寝たことがあると言ってしまったのか?
「月宮さん! それはゲームの話だろう! いやぁ、月宮さんもおっちょこちょこちょこちょいだな!」
「……!! あ、あー。そうね。ゲームの話。あれ、結構リアルだったからちょっと混同しちゃってた。ごめんなさい。そうね、ゲームよね」
ちょこが多い
うんちょこちょこちょこみたいに言うな
あ、ゲームの話か
奇紀怪解だっけ?
詳しくはニコの配信を見よう
月宮さんが目を見開き、珍しく視線を泳がせる。俺の予想は当たっていたようだ。ただ、ここから視聴者をどう納得させるか……。月宮さんのキャラを考えれば、ゲームの話をそのまま現実のものだと考えることはない。いくらイライラしているとはいえ、言うなら「ゲームでは一緒に寝たんだから」と言う。だが、今は実際に一緒に寝たことがあるかのように言ってしまった。これを覆すのは至難と言っていいだろう。
優姫ちゃんにしては珍しい
なんか誤魔化してね?
うっかり言っちゃったのをニコがフォローしたように見える
朝凪真理 mari ch え?
マズい!!
ニコ、逃げろ!!
へへ、マリーさんが作ったゲームの話じゃないですか
マリーも出てきた!! マリーはわかっているだろう!! わかっていて火をつけにきたな!?
……いや、ゲームを作ったマリーが今現れることで、ゲームの話だという方向に持っていこうとしている? 俺の視聴者はめちゃくちゃ俺の味方をしてくれる。現に、『落ち着け、マリー! 自分で作ったゲームの話だろ!』『ニコが女の子と一緒に寝るような、いや、寝られるような男だと思うか!?』『ニコの童貞を信じろ!!』と俺の視聴者が全力で庇ってくれている。
「そうよね。よく考えたら、あんたが満ちゃん以外の女の子と一緒に寝るわけないし」
「あぁ。むしろ、一緒に寝たことがあるのなら、手も繋げるし膝枕もできるだろう」
ニコがキャラを守ろうとしてたとかは?
そんな器用なことができるようなやつに見えるか?
ニコは不器用の語源だぞ?
確かに
優姫ちゃんでもそういう間違いするんだ
休んだ方がいいんじゃないか?
月宮さんが俺に「あんたのキャラに助けられたわ」とアイコンタクトを送ってきた。それで言うと、俺は普通にいつも月宮さんに助けられているからお相子だな。
結局、なんとか誤魔化せたが、帰ったら帝斗がグローブとボールを持っていた。本当にすまん。
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part22
511:このライバーがすごい! ID:VFAIG4W06
ニコと優姫ちゃんが、一緒に寝た!!???
512:このライバーがすごい! ID:FBs5RGkP6
>>511
それは優姫ちゃんがゲームのことと間違えたってことで片付いただろ
513:このライバーがすごい! ID:FGipIownv
でも優姫ちゃんがそんな間違いを……
514:このライバーがすごい! ID:QGTdCjRT/
一緒に寝たことがあるなら手も繋げるって言ってたけど
むしろニコなら毎回初めてみたいなリアクションしそうじゃね
515:このライバーがすごい! ID:28EC5lAoV
深堀するのはやめよう
もしかしてあの二人……? っていう状態が一番楽しいんだから
516:このライバーがすごい! ID:toXoGDpdf
ニコと優姫ちゃんなら燃えないだろうしな
517:このライバーがすごい! ID:5wzq7kTdh
そうならないだろうけど、そうなってほしさがある代表
518:このライバーがすごい! ID:TEhnQ9X9H
というかもしそうだったとしたら、アザミんはあんなことしないだろ
519:このライバーがすごい! ID:CCD4/So88
しなさそうだし、しそうでもある
520:このライバーがすごい! ID:YcM1Gz5Hw
大好きな同期二人だから、隠してることを晒し上げするようなことはしないんじゃないか
521:このライバーがすごい! ID:xOlEGzVF/
でもアザミん、興味のあることに対しては倫理観ぶち壊れるから……
522:このライバーがすごい! ID:CTryHgb9q
アザミん、二人が結婚するってなったら静かに号泣しそう
523:このライバーがすごい! ID:SamlRcsjn
そろそろやめとこう
俺たちはこのことを一切話題に出さず、もし本当にそうだったらお祝いするだけにしよう
524:このライバーがすごい! ID:WBc5WnE/5
>>523
よくいい男だって言われないか?
525:このライバーがすごい! ID:Vinngpmxf
イベリス様が治安維持した結果か……
526:このライバーがすごい! ID:ycNbaMoOb
ユニコーンはほぼ駆逐済みだし、ライバー同士の恋愛はむしろコンテンツだろ
527:このライバーがすごい! ID:8/vPKkUqC
プロエジェは平和だ
528:このライバーがすごい! ID:I0B8cYv0J
とても平和だとは思えないライバーが結構所属してるけど……
529:このライバーがすごい! ID:bUnqDtITm
なんとなくだけど、ニコと優姫ちゃんのお出かけボイス聴いてくるわ
530:このライバーがすごい! ID:Hw9v39brs
俺も
531:このライバーがすごい! ID:hBHSdEkOU
僕も
532:このライバーがすごい! ID:9ud2VUWBy
あちきも
533:このライバーがすごい! ID:va0NST1PM
某も
534:このライバーがすごい! ID:YLrEFFa5g
いざ