稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
『project:eden』事務所、その会議室。
そこに集まったのは、俺、満、月宮さん、アザミ、そして俺たちの後輩にあたるセレナさん。集まったのは、セレナさんから俺たちに「相談したいことがあります」と声をかけられ、はじめての後輩からの相談だと息巻いている俺と、面倒見がいい月宮さんと、俺たちが行くならと可愛いことを言ってくれたアザミが快く引き受けて今に至る。
セレナさんの隣に月宮さんが座り、その対面に俺とアザミ。満はいつも通り俺の隣にふわふわと浮いている。セレナさんは月宮さんと仲良くしたいと言っていたこともあるが、ちらちらと月宮さんを見ては緊張している様子を見るに、恐らく憧れに近いものを抱いているようだ。月宮さんは素晴らしい人だからな。憧れるのもわかる。
「まずは、本日は急なお願いにもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございます」
「構いませんよ。後輩の面倒を見るのは先輩の務めですからね!」
「では聞くが、なぜお前は友人に面倒を見てもらっているんだ? お前は後輩というわけではないだろう」
「すまん……はじめての後輩だから嬉しく……調子に乗ってしまって……」
「そんなすぐにけちょんけちょんにしなくても……」
はじめての後輩だと張り切ったら、一瞬でボコボコにされてしまった。アザミは俺をボコボコにしてご満悦な様子。俺をおもちゃにしおって……!
が、言われたことは間違いでもなく事実。確かに、普段面倒を見てもらっていてばかりの俺が張り切るのは鼻につく。セレナさんは勉強熱心なようだし、俺のキャラも把握してくれているだろうから、あまり調子に乗りすぎないようにしよう。
「それで、相談って?」
「はい。その……私の同期にあたる魔王様とクソガキ……失礼。ルーシィのことなのですが」
クソガキ、と言った瞬間セレナさんから発せられた怒気にびくつくと、「怖がらせてしまい申し訳ございません」と謝られた。情けなさ過ぎる。後輩の女の子の怒気にビビらされて、すぐに謝られるなど先輩の風上にも置けん。どうやら俺は先輩に向いていないらしい。
いや、向いていないと決まったわけではない。かかわりのある後輩は透華くらいしかいなかったし、俺が先輩としての立ち振る舞いに慣れていないのも当然のことだ。元々社会に出て一年も経っていないのだから、最初に何度失敗しても問題ない。そもそも、今は月宮さんとアザミがいるからな。先輩としての立ち振る舞いを勉強させてもらおう。
「どちらもどうにかしたい、というのがありまして」
「どうにかって?」
「まず魔王様なのですが、視聴者と喧嘩をし続け、低スペックのPCで変身し、処理落ちして配信終了と言うのをずっと続けているのです」
「学習能力がなさすぎるな。本当に魔王か?」
「いや、魔王様は素晴らしいお方だ」
「なんであんたは最初っからザミリエルのこと敬ってるのよ」
いや、ほら。パラレルワールドとか俺のオカルトセンスとか、普通じゃありえないことがあるから、まだ魔王様は本物の魔王様の可能性があるし……その場合、俺が仲良くしておけば、魔王様が世界征服に乗り出した場合、会話という平和的な解決方法でどうにかできる可能性もある。それに、俺に秘められし力があるかもしれんからな。
《ないよ》
わざわざ脳内に語り掛けてきてまで否定するな!!
「次にルーシィなのですが、誰に対しても態度を変えず、舐めた態度を取ってかなりの迷惑を方々にかけており、本当にどうにかしたいと思っていて……」
「それに関しては問題ないと思うがな。一般社会に出るのであればともかく、『project:eden』の方々はみな素晴らしい方ばかりだ」
「ハハハ。ニコが一般社会とは。面白いことを言うじゃないか」
「そ、そうか? そんなに面白かったか……」
「ニコ。照れるとこじゃなくて怒るとこよ」
なに? そうなのか。面白いことを言えたのだと嬉しくなってしまった。ただ、アザミが笑っているからやはりいいことだと思うことにしよう。
しかし、ルーシィが先輩方に失礼を働くのは本当に問題ないと思う。『project:eden』の視聴者は今までの先輩方のキャラである程度耐性がついてるし、とんでもなさで言えば一期生とか聖麗とかの方が上だ。ルーシィの俺に対する態度がそのまま他の先輩方にも表れる程度であれば、ただ生意気なだけでむしろ可愛いくらいだろう。容姿も相まって、キャラ的に受け入れられることは想像に難くない。まぁ、同期であるセレナさんからすればたまったものではないだろうが。
魔王様の方は、ここ最近忙しくて魔王様の配信を見ていないからどういう風に喧嘩をしているかがわからなければなんとも、と言ったところか。魔王様の倫理観は人間と異なっていてもおかしくない。そこが受け入れられるかどうかだが、そこもやはり『project:eden』の視聴者であれば受け入れてくれるはず。変身して処理落ちし配信が強制終了するというのも視聴者は面白がっているだろうからな。俺の視聴者にそういう層が多そうだからほぼ間違いない。
「ううん……セレナさんがどうにかしたいというのもわかるが、俺から見れば問題なさそうに見えるがな」
「まぁ、ニコとアザミを見てきた私からしても問題ないと思うわよ」
「おい優姫。まるで私が問題行動を起こすような輩みたいな言い方はやめてもらおうか」
「あぁ。アザミは理性的だ。問題行動を起こすのは俺だけだ」
「正確に言うと、月宮さんとアザミさんのおかげで問題行動じゃなくなったんじゃない?」
確かに。月宮さんとアザミが俺を受け入れてくれたからこそ、俺の童貞や社会不適合が問題ではなくなった側面が強い。月宮さんとアザミだけではなく、視聴者にもそういう耐性があったからだろう。だからこそ、俺がこれまで大した問題になっていないのだから、やはり問題ないのだと思う。が、セレナさんが気になるというのなら、そこを解消しなければ相談の答えにはならない。
「セレナさんは何を問題とし、どうしたいんだ? 俺としては、魔王様とルーシィの行動自体は問題ではないと思っているが」
「そう、なのですか? そもそも、私は魔王様とルーシィの行動が問題だと思っているのですが……」
「まぁ、後輩としては問題起こしてほしくないものね」
「はい。ルーシィは言わずもがなですが、魔王様に関しては視聴者の方々に面白がっていただき、チャンネル登録者数も増え続け、『やはり、我輩のミリョクが留まるところを知らんようだな』と勘違いなさっているのが見るに堪えず……」
「アザミ、なぜ俺を見ている」
「いや、滑稽だな、と」
「それは魔王様の話だよな?」
「ニコさんもだと思うよ」
他人事とは思えんかったから、ここは受け入れてやろう。ちくしょう……!
要は、身内が人気のベクトルを勘違いして受け取っているのが恥ずかしいという話だろう。これが身内でないというのならそういうキャラだしと受け入れられそうだが、身内となると話は別だ。共感性羞恥、と呼ばれるものに近いと思う。思えば、セレナさんが魔王様とルーシィの話をしている時は身内の恥を告白するときの表情だった。なぜ俺がその表情を正しく理解できるかというのは聞かないでもらいたい。
しかし、どうするか。事務所上問題ない行動であっても、セレナさんとしてはなんとかしたい。セレナさんが我慢すれば済む話、といって片づけてしまうには、セレナさんへの負担が大きすぎる。心労を感じる観点やその重さなどは人それぞれで、尊重されるべきだ。尊重されるべきだが、何も思い浮かばん……!
「ニコは何も思い浮かんでいないようだが、つまり、このままでは尊大で傲慢な印象のみが植え付けられる、ということを危惧しているように見える」
「ニコが受け入れられてるのは、負けが似合ってて、それがエンターテイメントとして成立してるからっていうのもあるのよね。だから、一回負けさせればいいんじゃない?」
「エンターテイメントだと!!?」
「リニスさん、帰ってもらっていいですか」
「失礼した!」
“エンターテイメント”という言葉に引き寄せられて現れたリニスが退室する。
そうか、俺が受け入れられているのは負けが似合うからか。その観点で言えば、魔王様は負けが似合いそうな気もする。ルーシィも傲慢だからこそ負けず嫌いで、負ける姿が似合うことだろう。問題は、どう負けさせるかだが……何も思い浮かばん……!
「ですが、ルーシィはあれで相手を選んでいます。傲慢だからこそ、負けそうな相手は見極める能力が高く……証拠に、一期生の方々からは逃げ回っています」
「音声収録のみでいいのであれば、やってみるか」
「何か思いついたの? アザミ」
「子どもの遊びというのは、単純明快だからこそ勝ち負けがはっきりしている」
アザミがテーブルの裏でなにやら操作すると、天井が開いてモニターが下りてきた。やっぱり天井が開きすぎだろう、この事務所。
下りてきたモニターに表示されているのは、このビルの立体的な館内図。どこに何があるのかが細かく描かれている。
「1月を迎え、新年らしくバカらしい遊びをするのも悪くない。『project:eden』で賞品つきの館内鬼ごっこを企画しよう。そうすれば、魔王とルーシィは強制的に先輩と絡み、負けることもできて、なおかつ馴染める」
「ビル全体を使うのか? 『project:eden』でするのは許可が下りんだろう」
「いいわよ!!」
「ビルの持ち主であるイベリスからの許可は下りた」
「今どちらからいらっしゃったんですか……?」
天井からだ。一瞬だけ顔を出してどこかへ去っていった。セレナさんは事務所に入ったばかりだからわからんだろうが、『project:eden』にいるとイベリスがどこから現れるのかは大体想像がつく。
しかしなるほど、鬼ごっこか。確かにわかりやすい。問題は、それを視聴者にどう届けるかだが、『project:eden』の技術力は業界一と言っても過言ではない。天井から現れるメリーゴーランドのようなものを3D化できるくらいだ。鬼ごっこの様子を視聴者に伝えるくらいならやってみせてしまうだろう。
「さて、イベリスが聞いていたということは企画成立まで早いはずだ。そこで徹底的に魔王とルーシィを敗北させ、土の味を覚える姿を視聴者へ届けよう」
「言い方には少し疑問がありますが、ありがとうございます」
「ニコさん、何も思いついてなかったね」
「別に触れなくてよかっただろう!!」
このまま終われば俺の無能は露呈しなかったのに!!
project:edenを語るスレ part670
670:このライバーがすごい! ID:m4sx0aDzx
【速報】プロエジェ、ビル鬼ごっこ開催
671:このライバーがすごい! ID:NDU+LN1UM
子どもの頃マンションでやって怒られたやつじゃん
672:このライバーがすごい! ID:qb5hkeDFl
ビルはイベリス様の持ち物だから、好きに使っていいらしい
673:このライバーがすごい! ID:1BQ8cnTdL
あとルールはなんでもありらしい
674:このライバーがすごい! ID:uMRrOXmYI
増え鬼で最後まで残った人に賞品があるらしい
675:このライバーがすごい! ID:5kQILNbmJ
シゲキの優勝か……
676:このライバーがすごい! ID:DUaS9BVQb
全員参加?
677:このライバーがすごい! ID:TbcM+TTTg
全員参加
678:このライバーがすごい! ID:Fizz4eJ4p
だとしたらヴァールハイトの誰かが優勝の可能性もあるな
679:このライバーがすごい! ID:Y5cfDMzTk
全員参加って三期生もくるのか!?
680:このライバーがすごい! ID:5gObOKNac
ヴァールハイトのボスも!?
681:このライバーがすごい! ID:T17DE5o3b
>>679
>>680
参加者情報見てこい
682:このライバーがすごい! ID:kY7NMc9DJ
おるやんけ!!
683:このライバーがすごい! ID:GHfNnZzyy
三期生見るの久しぶりすぎる
684:このライバーがすごい! ID:aStR+fB2x
いらっしゃるんですね、ボス……!
685:このライバーがすごい! ID:59SUFVh9T
全員参加のやつって何気に初めてか?
686:このライバーがすごい! ID:iei8DOQYN
三期生がいるなら、優勝全然わからんな……
687:このライバーがすごい! ID:pQRHqJnqI
満ちゃんが優勝じゃね?
688:このライバーがすごい! ID:1fr+pi+D1
>>687
ニコとマリーと聖麗なら捕まえれる
689:このライバーがすごい! ID:xrawCjOWo
『壁の中に埋まるのはなし』っていうルール作らないとな
690:このライバーがすごい! ID:aQaBN6FrK
現在発表されてる公式ルール(追加予定)
・命は奪わない
・大怪我はさせない
691:このライバーがすごい! ID:1PK9vUXU1
なんでもありすぎる
692:このライバーがすごい! ID:5jmI+I7ad
破壊はありってことか……?
693:このライバーがすごい! ID:JVMShqj5q
星菜ちゃんとか未成年がいるから、流石に……
694:このライバーがすごい! ID:jPK5F3Z0U
>>693
シゲキがそんな配慮すると思うか?
695:このライバーがすごい! ID:6pnzh7AaL
鬼ごっこを境に見なくなるライバーが出てきそうだな……
696:このライバーがすごい! ID:LFcWVAck6
というか、増え鬼って最初の鬼は賞品なしってこと?
697:このライバーがすごい! ID:RnUSA+GS6
>>696
全員捕まったら、捕まえた数が多い鬼が賞品貰える
698:このライバーがすごい! ID:AwHtYq2od
ちなみに、優勝予想当てたら抽選で視聴者にも賞品あるぞ
699:このライバーがすごい! ID:uOxX+57Ca
シゲキ
700:このライバーがすごい! ID:VNo46YsT5
シゲキ
701:このライバーがすごい! ID:aLvX7IkMt
ボス
702:このライバーがすごい! ID:xRek6jTaZ
シゲキ
703:このライバーがすごい! ID:3mWNu/GxB
大穴でニコ
704:このライバーがすごい! ID:BwAWE/BFP
>>703
真面目にやれ
705:このライバーがすごい! ID:SQxKJyy3i
>>703
人と違うことしてるのがカッコいいって思うタイプか?
706:このライバーがすごい! ID:gLy0Rsui9
>>703
ニコじゃないんだから、卒業しろよ
707:このライバーがすごい! ID:tVajw+sOt
でも、こういうときあいつはやってくれるはず