稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第109話 project:tag (1)

 『project:eden』の事務所があるビル、そのロビーに、30人近くの男女が集まっていた。顔の知らない人もいるが、恐らく、というより今日やることを考えれば確実に『project:eden』の所属ライバーだ。俺もデビューして半年以上経ち、結構な人に関わらせていただいたが、まだ知らない人もいるのかと思うと緊張して仕方がない。

 

 周りの人は同期で固まっている。この光景だけで、同期単位で推しているファンにはたまらないだろう。俺も色々配信を拝見しているからか、心なしかテンションが上がっている気がする。少し気になるのは、アザミとシゲキの姿が見当たらないこと。今日やる『project:eden』全員参加の鬼ごっこ、名を『project:tag』はアザミ発案だから、恐らく主催側に回っているのだろうが……。

 

「アザミ、シゲキさんと一緒にいるのかしら」

「普段の嫌悪感を見るに、あまり想像できないが……ビル全体を使った単純な鬼ごっこをするのも考えにくい。であれば、あの二人が組んでものすごいことをやろうとするというのも納得はできる」

 

 同じことが気になっていたのか、少し心配そうに月宮さんがぽつりとこぼした言葉にはっきりとしない肯定で返す。この場にいないとなったらもう答えは出ているようなものだが、アザミがシゲキを嫌っていたのも事実。シゲキは別にそんなこともないどころか、気に入っている節もあったように思う。基本的にシゲキ的なことが好きだから、嫌われるわけがないしな。

 

「私たち、今日帰るまでに命あるかな……私はもうないけど」

「板についてきたな、死人ジョーク」

「えへへ」

 

 ただ、身内しか笑えないから気をつけろよ。知らない人にやっても「こんな小さな子が……」って悲しむだけだからな。

 もう一つ気になるのは、前まで設置されていなかった巨大なモニターがロビーにあること。今は何も映し出されていないが、あそこに『project:tag』のルールが表示されることは想像に難くない。あの日から一週間程度しか経っていないのに、どこから調達したんだ? 元々あったのか? あの一期生がいるのなら、元々あっても全然おかしくない。

 

「ていうかあんた、運動できるの? 結局詳しいルール聞かされてないけど、鬼ごっこでしょ?」

「舐めるな! 今日のためにイメージトレーニングを重ねてきた」

「イメージだけじゃなくて運動しなさいよ」

「さて、もうそろそろ始まりそうだな」

「どうせ負ける舌戦ならやらない方がいいよ?」

 

 『project:tag』は配信されるらしく、説明開始と同時に音声のみ配信に乗ることは説明を受けている。そのためか、モニターの電源が着いた瞬間、全員話すのをやめてモニターに目を向けた。

 モニターに映し出されたのは、シゲキとアザミ。シゲキはいつものように極悪な笑顔を浮かべており、アザミはどこか居心地悪そうにシゲキとは逆の方へ視線を向けている。

 

『よく集まったな、クソシゲキども!!!!! シゲキ的じゃねぇ前置きはシゲキ的に必要ねぇ!! 『project:eden』全員参加のシゲキ的イベント、『project:tag』のルールをシゲキ的に説明する!!!!!』

『そろそろ声量を抑えることを覚えたらどうだ。耳が痛くてかなわん』

『むしろシゲキ的にうるさくねぇ俺の方が嫌だろうが!!!』

『確かにな。もうすぐ死ぬのかと喜んでしまう』

『いいねェ!!! シゲキ的じゃねぇか!!!!!』

 

 本当にアザミとシゲキが並んでいる……。楽園都市の時もシゲキのイベントにアザミが出ているのは見たが、アレは遠隔で、しかも何も繋がっていない状態だった。しかし今回は同じ空間にいる。同期でアザミがシゲキを嫌っている姿をずっと見てきたからか、何か妙な感動を覚える。もっとも、嫌そうであることには変わりはないから、やはり嫌いは嫌いなんだろう。

 

『テメェらには今からこの二つを配る!! 一つは『シゲキ的デバイス』、もう一つは『シゲキ的タグ』だ!!!!!』

 

 シゲキが手に持っているのは、ちょうど前腕に収まるくらいの大きさの、バックル付きのタブレットと、真っ黒なベルトと、それにくっつけられている太い紐。さっきのシゲキの説明を合図にしていたのか、スタッフさんから全員にタブレット……シゲキ的デバイスと、ベルトと一本の太い紐……シゲキ的タグを配られる。満にも配られ、大喜びで飛び跳ねてはしゃいでいる。かわいい。

 

『シゲキ的結論、その『シゲキ的タグ』を一番多く集めたやつが優勝だ!!!!!』

『どうせこいつはこれ以上説明せんだろうから、私から説明する』

 

 呆れ顔のアザミの言葉とともに、画面が切り替わる。すっきりとまとめられた文字のみのルール説明。こういうイベントごとなら絵付きのファンシーなルール説明資料があってもよさそうだが、それがないのは流石と言うべきか。いつもなら用意していただろうが、シゲキと一緒にいるのが嫌すぎて突貫でルール説明の資料を作ったのだろう。

 

『まず、そのタグは全員に一本ずつ配られている。最初の持ち点というわけだ。先ほどシゲキが言ったように、最終的に一番多くタグを持っていた者が優勝となる。つまり、『project:tag』はそのタグを奪い合うゲームだ。タグはベルトに装着できるようになっている。そして、その数はこちらで把握できるようになっている』

 

 市場で見たことがないから、もしかして作ったのか? これ。一週間程度だぞ? いや、元々そういうシステム自体はあって、今回用にアレンジしたとかそういうことか? それでも結構な時間がかかりそうだが……。『project:eden』の技術チームが頑張ってくれたのだろうか。なんとなく、シゲキとアザミだけでもできそうな信頼感はある。

 

『次に、そのタブレット。それは腕に装着できるようになっている。どのような機能があるかだが、上位5名のポイント数が表示される機能、ビルのマップを表示する機能、そして最後に、アイテムを使用する機能……タブレット側面を見てくれ』

 

 タブレットの側面を見ても、何もない。なにっ、不良品か!?

 

「逆側よ、逆側」

「もちろんわかっていた」

 

 逆側を見てみると、カードが差し込めそうな箇所があった。恐らくこれを用いてアイテムを使用するのだと思うが、あまりイメージがつかない。そもそもカードはどこにあるんだ?

 

『察しがつくと思うが、その差込口にカードを差し込むことでアイテムを使用することができる。そのカードはこのビル内にバラまかれている。その効力は、例えば特定の誰かの位置をマップに表示させたり、逆に自分の位置を相手から隠したり、数分間ベルトにタグを完全に固定し、取られなくしたりと様々だ。ぜひ活用してくれ。最後に優勝賞品だが、大金だ。以上、10分後に開始するから、各々好きな場所に散らばってくれ』

「待て!! 我輩はどうする!! デバイスを装着したら潰れて死ぬぞ!!」

 

 説明を終えてどこかに行こうとしたアザミを、セレナさんの肩に乗っている魔王様が呼び止める。そういえばそうだ。魔王様はネズミの姿だから、タブレットもタグも使えない。だからか、そもそも配られていないようで、集められたのに参加権がないと言われているようでご立腹みたいだ。小さな腕をじたばたさせて憤怒を表現している。

 

『あぁ、すまないザミリエル。見ての通り、ザミリエルはネズミであり、今回のタブレットとタグは使用できない。そのため、ザミリエルは誰かとチームを組んでもらう。この場合、チームとしての得点となり、タグ一本につき2点。ただしこれはザミリエルチームがタグを持っている場合のみで、ザミリエルチームのタグを誰かが取って装着すれば1点として扱う。また、数分に一度居場所が全員にバレる。ちなみに、チームは抽選で決める』

「アハハ!! 疫病神みたい!! 魔王様らしいじゃん!」

「なにおう!? 向かってきたものすべてを蹴散らせば、得にしかならんだろう!! さぁ、我輩と組める豪運の持ち主をさっさと決めろ!!」

 

 心苦しいが、魔王様自体は何もできないと考えた方がいい。ネズミの姿であればタグも取れないだろうし、よくてネズミの姿でしか見つけられないカードがあるとかそのくらいだろう。ただ、それだけなのに居場所がバレるようなハンデをつけるか? 一本2点だとしても結構なハンデだと思うが……。

 いや、絶対に何かある。面白いことが好きなアザミと、シゲキ的なことが好きなシゲキがその程度のルールを設けるはずがない。恐らく魔王様が同じチームとなることでもっと特別な何かがある。

 

『さて、ザミリエルと組まされるかわいそうなやつは……お、ニコか』

「ニコ? あぁ、深夜の狂騎士か。喜べ! 我輩とともにこの有象無象の頂点に立てるのだからな」

 

 魔王様がセレナさんの肩から降りて、俺のところに猛ダッシュ。その勢いのまま俺の体をよじ登り、肩に乗った。満と月宮さんが羨ましそうにしている。まぁ、見た目だけ見ればかなりマスコットだし可愛いからな。というか、

 

「覚えていてくださったのですね」

「当然。我輩を敬う、自分の立場をわかっている人間だったからな」

『私の調べによると、ニコはこの中で運動能力が一番低い。頑張れよ』

 

 え!!? 俺が!!? いや、驚くことでもないか? 俺はほとんど外に出ないし、もうすぐ30歳だし、『project:eden』は年齢層が若めで、俺より年上であっても普段から運動をしていそうな人たちばかりだ。クソッ、マズい。俺が使えない人間だとわかり、魔王様が機嫌を損ねるかもしれん……!

 

「フハハ!! ちょうどいいハンデだな!! 我輩の能力を考えれば足らんくらいだ!!」

「なんと広いお心を……申し訳ございません。俺にもう少し力があれば」

「よい。ともに戦うとなった以上、貴様も我が家臣同然だ。家臣の足らん能力を補ってやるのが魔王たる我輩の務め。死力を尽くさんというのであれば話は別だが、貴様はそうではないだろう?」

「はっ!! 死力を尽くし、魔王様の糧となる所存にございます」

「フハハ!! わかっておるではないか、深夜の狂騎士!!」

「これ終わった時、ニコさんが昔みたいになってたらどうしよう……」

「そうなったらしばらくうちにきなさい」

 

 魔王様と一緒ならば、優勝以外は考えられん!! さぁ行くぞ!!

 

 

 

 

 

project:edenを語るスレ part671

 

318:このライバーがすごい! ID:XhvMn27Rr

増え鬼は?

 

319:このライバーがすごい! ID:rR2EdWxOk

プロエジェだから元々とごっそり変わるのはよくあることだろ

 

320:このライバーがすごい! ID:jyYaSVJbV

視聴者は参加者全員の場所がわかるのか

 

321:このライバーがすごい! ID:fBwMfYkkC

点数の動きもわかる

 

322:このライバーがすごい! ID:uMkOF2uh+

音声はそれぞれミュートにしたり解除したりできるぞ!

 

323:このライバーがすごい! ID:A56G7XBEs

シゲキとアザミんは参加しないのか……

 

324:このライバーがすごい! ID:Te9347+xQ

シゲキが参加してたらシゲキに投票してたのに

 

325:このライバーがすごい! ID:TQdXLy1wH

アイテムとかあるなら、ニコ&ザミリエルも十分ありえるんじゃないか?

 

326:このライバーがすごい! ID:QaUB/ZM8j

あの二人なら何かが起こりそう

 

327:このライバーがすごい! ID:TTg7Iwn63

現在人気

ボス

イレ姉

サラ

グレイヴィー

フレイル

 

328:このライバーがすごい! ID:ZsiBTKZzs

>>327

やっぱりヴァールハイトが強い

 

329:このライバーがすごい! ID:kRQAGaWM0

フレイル以外ヴァールハイトか……

 

330:このライバーがすごい! ID:f5NQ5WbVB

>>329

最近プロエジェを見始めたぼく、ボスの存在を知らない

 

331:このライバーがすごい! ID:iUmRJ9DHk

ボスはフレイルと同じ四期生で、ヴァールハイトのボス

シェリー・マクスウェルっていう人

 

332:このライバーがすごい! ID:eCoNaYBwv

ヴァールハイトが元々化け物集団だからな……

 

333:このライバーがすごい! ID:GF+qJMiTl

普段の言動行動で優勝予想のTOP5に入るグレイヴィーカッコよすぎだろ

 

334:このライバーがすごい! ID:u8TahK5KA

>>333

あいつ、窓から飛び降りて別の階の窓枠掴んで飛び込めるからな

 

335:このライバーがすごい! ID:2bz2oVmNH

しかも壁蹴って天井蹴ってっていう忍者みたいな動きもできる

 

336:このライバーがすごい! ID:GjILrWAZS

でもあいつ、女の子に弱いからなぁ……

 

337:このライバーがすごい! ID:n1nmvawq3

女の子のケツ追いかけられるならむしろ強いだろ

 

338:このライバーがすごい! ID:tGstnOSGL

ニコって、片っ端から幽霊実体化して仲間にできるの強くね?

 

339:このライバーがすごい! ID:A/f4LNBCJ

>>338

前言ってたけど、何かを怖がってるからプロエジェビル内に幽霊全然いないらしい

 

340:このライバーがすごい! ID:peThKh0BP

絶対シゲキだろ

 

341:このライバーがすごい! ID:iqSNB56Ql

プロエジェで幽霊が出たらすぐおもちゃにされそうだしな

 

342:このライバーがすごい! ID:40MsfimVq

ニコは運動能力がなぁ……

 

343:このライバーがすごい! ID:RcYBeCwZb

バラエティ的には面白そうだから見る

 

344:このライバーがすごい! ID:RMU87p9Ti

魔王様と一緒にボコボコにされてほしいな

 

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