稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第110話 project:tag (2)

「さて、どうする深夜の狂騎士。当然頂点以外はありえんが、無策というわけにはいくまい」

「はい。まず俺は運動能力が著しく低い。つまり、アイテムなくして優勝はありえないということです」

「フン。我輩が真の姿であれば蹴散らせたものを」

 

 確かに、魔王様なら可能かもしれない。

 

 ロビーを離れ、それぞれビル内にばらけたというのが今。俺たちがいるのは13階。ここから数分間作戦を考える時間とアイテムを探す時間が与えられており、タブレット……シゲキ的デバイスに表示されている館内図を魔王様と見ながら作戦を立てようとしている。

 ビルは14階まであり、エレベーターは四つ。1階から14階まで行けるエレベーターと、9階から14階までに行けるエレベーターで二つずつだ。つまり、1階から8階までは警戒するべきエレベーターが二つで済むということ。ただ、そんなことは誰でも考え付くことであり、かといって逆をついて9階から14階にいようというのも同じこと。結論として、どの階が一番いいという正解はない。

 

 できれば、最初は誰とも遭遇せずにアイテムを集めたい。一部の好戦的な人は除いて、他の人も同じことを考えているだろう。運動能力が低い俺にとっては、開始までのこの時間が勝負の時間だと言える。

 

「まずはアイテムを探しましょう。魔王様、恐縮ですが魔王様しか入れなさそうな場所を探していただけませんか?」

「今は我輩と貴様は一心同体。頂点に立つのであれば、貴様に使われるようで癪だが仕方がない」

 

 少々納得いっていない様子で俺の肩から降りた魔王様は、ネズミの姿でしか入れない机の隙間へと入っていった。衛生面が不安だが、このビルがイベリスのものなのであれば、オシャレが行き届いているはずだ。あ、清掃が行き届いているはずだ。

 

「おい!! 見つけた! 見つけたぞ! フン、我輩の手にかかれば見つけるのも一瞬だ!」

「流石です魔王様!」

 

 しばらくして、興奮した様子の魔王様がカードを加えて走ってきた。しゃがんで掌を差し出すと魔王様がそこに乗ってくださり、そのまま肩まで駆け上がってくる。「失礼します」と断りを入れてカードを受け取れば、そこには『配信のコメントが確認可能になる』と書かれていた。

 

「おぉ! めちゃくちゃあたりですよ、魔王様!」

「んん? コメントが見れるからなんだというんだ。我輩たちの状況がわかるわけでもあるまい」

「いえ、視聴者は参加者全員の居場所がわかります。つまり、視聴者に参加者の情報を教えてもらうことができるんです!」

「もちろん我輩もわかっていた。今のは貴様を試したのだ」

「もっ、申し訳ございません。そうとは知らず出すぎた真似を……」

「よい。貴様の頭脳が使えるかどうか知りたかったというのもあるからな」

 

 器が大きい……。やはり、上に立つ者としての風格がある。いくらネズミの姿だとはいえ、魔王様は魔王様なのだと認識させられる。

 

 魔王様の器の大きさも重要なことだが、このアイテムはかなり使える。配信は公式チャンネルの一枠。ただ、参加者のミュート切り替えが視聴者側でできるかなりすごい仕様を搭載している。俺の視聴者であれば、自惚れでなければ俺の音声を聞いてくれているはずだ。であれば、視聴者に助けを求めれば、他の参加者の情報を教えてくれるはず。そうでなくとも、流れるコメントを見れば状況が把握できるはずだ。

 

『さァ準備はいいかシゲキ的虫けらども!!!! そろそろ始めるぜ!!!!!』

 

 アイテムの活用法を考えていると、タブレットからシゲキの声が爆音で鳴り響く。飛び跳ねて俺の肩から落ちそうになった魔王様をなんとかキャッチすると、『3、2、1!!!!』とカウントダウンが始まり、

 

『ゼロ!!!! スタートだ!!!!』

 

 その声とともに、俺がいるフロアのドアが開かれる。あ、危なかった! 魔王様をキャッチしてバランスを崩して倒れていなければ、すぐに見つかるところだった!

 しかしなぜこのフロアに? 早すぎる。もしかしてここにくるまでにつけられていたか? マズい、持っているアイテムはコメントが見られるようになるだけ。対抗手段がない。せめて相手が誰かというだけでもわかれば……。

 

「あ、やっぱりいた」

「ひょえぇ!!」

「うおぉっ!! る、ルーシィ!! 貴様、なぜここに!!」

 

 いつの間に背後に回っていたのか、かけられた声に情けない悲鳴をあげそうになったが、なんとか堪えて振り向けば、ルーシィがへらへらして手を振っていた。よ、よかった、初対面の人じゃなくて。

 

「なぜって、魔王様の場所なら大体わかるし」

「流石魔王様! オーラというものは隠せないようですね!」

「無理もない。我輩は魔王だからな!」

「なんかドブ臭いから」

「え!!??? 我輩くさい!!???」

「く、臭くないです臭くないです!! むしろ、手入れが行き届いていて清潔感があります!」

「当然だ。セレナに毎日手入れさせているからな」

 

 ……めちゃくちゃ親近感が沸く。もしや、別世界の俺なのか? パラレルワールドが存在するのであればありえるかもしれん。オカルト的才能が爆発している俺ならば、別世界では魔王だと言われても信じられる。

 いや、そんな場合ではない! シゲキ的タグを取られないようにしなければ! 策士め、俺にパラレルワールドの可能性について考えさせ、その隙にシゲキ的タグを奪おうとしたのだろうが、そうはいかん!

 

「何? 急に姿勢変えて……あぁ、タグは取らないよ! むしろ、協力してあげようかなって思って」

「フン。見上げた忠誠心だな。我輩の部下たるものそうでなくてはならん」

「協力してもらえるのはありがたいが、いいのか? 賞品は優勝者のみだぞ? 複数人が得するものとは限らんだろう」

「多分そうでしょ。だって、魔王様とニコがチームなんだし」

 

 そういうことか!! 魔王様は誰かとチームを組むということは、そのチームが優勝する可能性が考慮されていて当然。つまり、優勝賞品は複数人が得するものである証明になる。元々俺とチームを組ませ、どうせ優勝しないだろうと舐め腐っていたら話は別だが、それならそれで鼻を明かせるというもの。

 

「なるほど。それならばぜひ協力してくれ!」

「おい、勘違いするな深夜の狂騎士。こいつは我輩の部下だ。つまりこいつは我輩の下。協力してもらうのではなく、協力させてやるのだ」

「ハハハ」

 

 ルーシィが適当に笑ったが、魔王様は気持ちよさそうにしている。もしかしたら、魔王様はかなり純粋なのかもしれない。やはり魔王様に関してはセレナさんが心配していたようなことはなさそうだ。傲慢であろうと純粋であれば可愛げがあるというもの。

 ……そういえば、元々は魔王様とルーシィを負けさせるために『project:tag』を企画したんだった。忘れていた。ということは俺は負けるように動かなければならないということか?

 

 いや、ありえない。魔王様とチームになり、ルーシィと協力するとなった以上、全力で優勝を取りに行く。わざと負けに行くなどという不誠実な真似はできん。

 

「奪ったタグはお互いにつけるってことで。どっちかに偏っちゃうとランキングに表示されて目立っちゃうし」

「わかった。ちなみに俺たちの居場所は数分ごとにバレるが、それは問題ないのか?」

「それがいいんじゃん。寄ってきたやつらを蹴散らせるんだから」

「それでこそルーシィだ!! 見習えよ、深夜の狂騎士。騎士たるもの、堂々と構えておくものだ」

「はっ、精進いたします」

「ところでなんでニコは魔王様ごときにへりくだってるの?」

「そうするべきだからだ。あと別に気にせんが、いつの間に呼び捨てになったんだ?」

「そうするべきだから」

 

 こ、こいつ、舐め腐りおって……!! 協力関係でなければ今すぐタグを奪い取ろうとして、ボコボコに負けるところだった。俺に力があれば……!!

 

 これからの行動を決めるために、再度館内図を確認する。どちらにせよ、アイテムの回収は最優先事項。優勝賞品が複数人の得するものである可能性は、恐らく他の人も気づいているだろう。それなら、俺たち以外に協力関係を結んでいる人がいてもおかしくない。情けないことに俺は戦力に数えるには力が弱すぎるから、今のうちにアイテムを回収するべきだ。

 

「とりあえず今いる13階を回って、アイテムを回収しよう」

「そうだね。魔王様はネズミらしく床を這いつくばって探してくれる?」

「なに!!??? 這いつくばるというのは我輩と最も遠い言葉だ! 絶対にやらん!」

「這いつくばるってこの世を統べるって意味だよ」

「では我輩に最もふさわしい言葉だ。這いつくばってやろう」

 

 俺の肩から降りた魔王様が先頭に立ち、「さぁ行くぞ!!」と勇ましく先陣を切って部屋を出た。ルーシィを見れば、完全に嘲笑している。『project:eden』には色々な人がいるが、普通に性格がねじ曲がっているやつは初めて見たかもしれない。あと、魔王様の言動と行動が俺と重なって本当に他人とは思えない。

 

「さぁ行こっか。魔王様が踏み潰されちゃおもしろい、あ、間違えた。いけないし」

「魔王様であれば、踏み潰されそうになっても避けられるだろう。むしろ、シゲキ的タグを奪っているかもしれん」

「まさか。あるとしたら誰かに捕まって、捕まってるのにそれを認めたくないから捕まってないみたいな顔してると思うよ」

「それこそまさかだな」

 

 魔王様とはぐれないよう、少し速く歩いて部屋を出る。

 

 そこには、魔王様を掴んで笑うイレイナさんと、その隣で魔王様を興味深そうに眺めるイオスさんがいた。魔王様は捕まっているのに捕まっていないみたいな顔をしていた。ルーシィは爆笑している。貴様、それでも家臣か!!

 

「お、久しぶりだなぁニコ! そっちはルーシィか。悪いねぇ、珍しいネズミがいるもんだから、反射的に捕まえちまってよ」

「お久しぶりですニコさん! すんません、バケモン連れてきちゃいました」

「ハハハ!! 魔王と天使を前にしちゃあ流石にバケモンは名乗れないだろ!!」

「そうだ! 我輩は別に捕まっていないしな!」

「ニコ。あの生贄はどうする?」

「ルーシィの中では方針が決定しているようだが、助けるぞ」

「はーい。じゃあサクッと勝っちゃおう」

「へぇ?」

 

 イレイナさんはルーシィの言葉に笑みを深くし、イオスさんに魔王様を手渡すと、近くの壁を殴ると、明確な破壊音とともに思いきり壁に穴が空いた。

 

「殺しと大怪我なしってぇのは自信ないねぇ。ある程度加減はしてやるが、ぶっ飛んじまっても許してくれよ?」

「最初に力を振りかざすのは、知能がない証拠じゃない?」

「イオスさん!! 俺のシゲキ的タグを差し上げるので、イレイナさんを止めてください!」

「俺の顔面がぐしゃぐしゃになっていいなら……」

「じゃあどちらにせよどちらかの顔面がぐしゃぐしゃになるじゃないですか!!」

「おい!! 我輩は捕まっていないぞ!!」

 

 申し訳ないですけど捕まってますよ!!!!!

 

 

 

 

 

project:edenを語るスレ part671

 

381:このライバーがすごい! ID:TXPlROkpG

【悲報】ニコ、ルーシィと協力関係を結ぶも、イレ姉とイオスにエンカウント

 

382:このライバーがすごい! ID:kUNguIcsg

優姫ちゃんとセレナも協力関係になったぞ!

 

383:このライバーがすごい! ID:Yr/Knik3g

あの、早速グレイヴィーがボスに蹴散らされたんですが……

 

384:このライバーがすごい! ID:jisCTY5NV

グレイヴィー「久しぶりに俺とダンスでもどうです?」

ボス「千鳥足をダンスとは呼べないな」

グレイヴィー「アレェ!? 俺のタグがない!?」

 

385:このライバーがすごい! ID:5P0uZKMns

いい加減にしろよ酒カスおじさん

 

386:このライバーがすごい! ID:1E+OltY3q

【悲報】明星姉妹、オシャレに捕まる

 

387:このライバーがすごい! ID:FuOC59hTJ

イベリス様「さぁ、あなたたちのオシャレを見せてみなさい!」

星菜ちゃん「はい! がんばろ、お姉ちゃん!」

姉御「タグは?」

 

388:このライバーがすごい! ID:RK05QbWDp

イベリス様はオシャレなやり方でしかタグ奪わないに決まってるだろ

 

389:このライバーがすごい! ID:ZVFpzcQw2

【悲報】純花さんとリック、エンカウント

 

390:このライバーがすごい! ID:EknQzqJl1

純花さん「ふふふ」

リック「ま、茉莉さんはどこに!?」

純花さん「いませんよ。ふふふ、運がよかったです。私を止める人がいなくて」

リック「ヒィ!! 許してください! いつもからかってるのは出来心で!」

茉莉「出来心で俺の妹をからかってたんスか?」

リック「最悪のタイミングだ……」

 

391:このライバーがすごい! ID:woOuwwCsM

悲報まみれで草

 

392:このライバーがすごい! ID:SO4K2+aZf

リックは二人の頭脳となることで命は助かったぞ!

 

393:このライバーがすごい! ID:cd7ZZONR5

あんまり日常で命は助かったって言うことないだろ

 

394:このライバーがすごい! ID:24mu1j8tw

開始早々結構動いたな

 

395:このライバーがすごい! ID:WImRIjsgQ

ていうかエルロイは一緒にいるけど、2ポイントとかじゃないの?

 

396:このライバーがすごい! ID:Q78/5mrkN

エルロイは二人で一人だろ

 

397:このライバーがすごい! ID:2Dsoj7Wpq

現在順位

1位(2pt) ボス

1位(2pt) 純花さん

1位(2pt) ニコ&ドブネズミ

1位(2pt) ルーシィ

グレイヴィーとリックとイオスは0ptで、他は1pt

 

398:このライバーがすごい! ID:HNoCyrEaK

ニコが1位なのは今だけだろうな……

 

399:このライバーがすごい! ID:I79G2oI80

つかまだイレ姉に負けてないのか?

 

400:このライバーがすごい! ID:+JA6+/fH8

>>399

ざっくり言うと、ルーシィがアイテム使ってイレ姉とイオスを行動不能にしたはずだけど、

イレ姉が暴れ回るからイオスのタグだけ取って逃げた

 

401:このライバーがすごい! ID:L0fM3TM0e

何そのアイテム

 

402:このライバーがすごい! ID:n6TDc79CD

イレ姉、獣すぎた

 

403:このライバーがすごい! ID:UKKGcY6lM

>>401

シゲキ的麻痺

選択した周囲にいる人を麻痺させる

 

404:このライバーがすごい! ID:5nUAFgaw+

もしかして、デバイスから何か打たれたのか……?

 

405:このライバーがすごい! ID:o/Z2TeZwy

怖すぎる技術力

 

406:このライバーがすごい! ID:mBU+3/iA3

ニコの音声聞いてたけど、破壊音聞こえてきて怖かったぞ

 

407:このライバーがすごい! ID:b11wWpFmr

これ、イレ姉に狙われます

 

408:このライバーがすごい! ID:AGsQtoyiS

終わったな、ニコ

 

409:このライバーがすごい! ID:YH/PoaEfA

ニコといえば、満ちゃんは?

 

410:このライバーがすごい! ID:TrLW00Qit

【悲報】満ちゃん、聖麗に見つかる

 

411:このライバーがすごい! ID:mtooAXWu5

【朗報】フレイルが救出

 

412:このライバーがすごい! ID:5FRBOdcP0

何が起きた

 

413:このライバーがすごい! ID:UTpAO5UVw

満ちゃんが聖麗に見つかる

⇒満ちゃん「たすけて!!」

⇒フレイルが颯爽と現れる

⇒聖麗、普通に体術でフレイルに敗北

 

414:このライバーがすごい! ID:s2KzaLcjD

フレイルめちゃくちゃアイテム持ってるらしい

 

415:このライバーがすごい! ID:J1Sz6c3tN

流石探検家

 

416:このライバーがすごい! ID:Qqoz51NDv

チームができ始めてきたな……

 

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