稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第115話 エンターテイメントオブエンターテイメント (2)

「まず初めは、『エンターテイメント・ライディング』だ!」

 

 リニスに連れてこられたのは、サーキット場。エンターテイメントオブエンターテイメントを外から見た時かなりでかいと思ったが、中にサーキット場があるのであれば納得だ。

 サーキット場は、未来的なデザインと最先端の技術が融合した光景が広がっている。全体的に暗めだが、ネオンの光がサーキット全体を彩り、SF的な雰囲気があった。コースには人工の水流や光の演出が広がり、ループやスパイラル状のセクション、直線区間と急カーブがバランスよく配置されている。そして、観客席や電光掲示板まであり、かなり本格的だ。

 

「うわー……すごいっスね」

「エンターテイメントオブエンターテイメントって言うだけのことはあるね!」

「マジですげぇな。これ、設計はリニスさんがやったんですか?」

「当たり前だ!! 『EOE』のすべては、エンターテイメントの頂点であるこの俺がデザインし、設計している! もちろん、技術的な部分はシゲキに頼んだが」

「今の一言でかなり不安になったな……」

 

 何か見た目がシゲキ的だなと思っていたら、やはりそうか。レースとかめちゃくちゃ好きそうだもんな、シゲキ。

 ただ、技術的な協力だったらまだマシかもしれない。シゲキの思想がアクティビティ自体に反映されていたら大問題だった。多分冗談抜きで死人とか出る。シゲキはまだ捕まっていないだけで、完全に野放しにすれば国に牙を剥きかねないレベルでシゲキ的だからな。

 

「それで、これってどんなアクティビティなんですか?」

「『エンターテイメント・ライディング』は、自動操縦機能搭載のバイクに乗り、サーキットを駆け巡るレースエンターテイメント! 安全性については安心しろ。機体同士の接触はまず起こらず、メンテナンスはこの俺自らが毎日行っている。シゲキの技術によって開発された安全装置により機体から振り下ろされることも100%ありえん!」

「自動操縦……ってなると、スピードとか、色々こっちでいじれるって感じですかね」

「貴様、エンターテイナーとしての見込みがあるな」

 

 マズい! 帝斗は論理的に考えただけなのに、エンターテイナーとしての素質を見出されてしまった! ルイスも「ふっ、クールだな」って言ってるし、イベリスも「あら、オシャレね」って言ってるし、シゲキも「ん? シゲキ的か?」って言ってるし。帝斗が変なやつらにめちゃくちゃな速度で好かれようとしている。俺のせいか? 俺がこいつらに好かれているから、俺を面白がってくれている帝斗も自動的に好かれるようになってしまっているのか?

 

「スピードはハイ・ミドル・ローの三種類から選択できる。もちろんレース中の切り替えも可能だ。ただし、機体は搭乗者の体調の変化を自動で検出し、エラーが検出された場合には自動で速度を調節する。自分の身の丈に合ったエンターテイメントをしろということだな」

「チッ、気に入らねぇぜ」

 

 シゲキが文句を言っているということは、設計段階で大揉めしたのだろう。リニスの意見が勝ってよかった。シゲキならハイ以上しか用意しないし、体調なんか気にしないだろうしな。

 

「更に、ハンドリングは機体に搭載されたモニターにサーキットのコースが表示され、そこにラインを描くことでその道筋になぞって機体が動くことで行う。マップの表示は2D、3Dで選択が可能だ」

「ぐちゃぐちゃにやるやつとかへの対策は?」

「ふっ、やはり貴様はエンターテイナーの素質がある。もちろんエンターテイナーの風上にもおけんようなやつらは、エンターテイメントを勘違いしてラインを無造作に描くことだろう。その場合は失格だ! 強制的に機体が停止し、エンターテイナーとしては相応しくないとして『EOE』から強制退館となる!」

「あー。まぁ、問題起こされる前に対策できるならそれが一番ですしね」

「西園寺帝斗と言ったな。俺とエンターテイメントを作り上げる気はないか?」

 

 スカウトされた!? ど、どうする。帝斗ほどの男であればスカウトされるのは当然とも言えるが……いや、リニスはまともといえばまともな男だ。見た目は危険に見えるこのサーキットも安全性が重視されている。俺が口を出すようなことでもない。第一、帝斗は自分の道を他人に気にされるような男でもない。ここは静観だ。

 どうなるかとドキドキしながら見ていると、帝斗はリニスからの誘いに「ありがとうございます」と言って笑った後、俺をぐっと引き寄せ、

 

「でも、こいつといるのが一番面白いんで。遠慮しときます」

「て、帝斗……!!」

「フッ、そうか。ニコほどのエンターテイナーであれば仕方あるまい」

 

 やはりお前は親友だ! ルイスが「やはり、クールだな」と言っていて、イベリスが「お、オシャレすぎる……!」と言って口元に手を当てながら涙を滲ませ、シゲキが「シゲキ的にしてやりてぇなァ……!!」と言って凶悪な笑みを浮かべているのが気にならないくらい親友すぎる。いや、やっぱり気になる。なぜこんなにも順調に帝斗がロックオンされるんだ。

 

「さて、もちろんそれだけではないことはエンターテイナーであるニコと帝斗であればわかっているだろうな。……羽崎透華と言ったな。ニコの伴侶であれば、貴様もエンターテイナーであるべきだ。『EOE』の最大のエンターテイメントは何だと思う?」

「は、伴侶ってわけじゃないですけど……えっと、自動操縦とかはすごいですけど、それだけだと見た目は普通のレースと変わらないから……妨害要素、みたいなのがあるとか?」

「ほぼ正解だ! やはり、貴様にもエンターテイナーの素質があるという俺の直感は間違っていなかったようだな。……そして、伴侶ではなかったか。すまなかった。配慮に欠けた発言だった」

「い、いえ! 気にしてないです」

 

 もしかして、リニスはいい男なのか? 俺は透華が伴侶だと言われた瞬間に動揺して腰を抜かし、満に軽蔑の眼差しを向けられながら「確かにエンターテイナーだけど……」と言われていたというのに。しかし満、エンターテイメントとは人によって異なり、俺のエンターテイメントは恐らくコメディ寄りで、リニスのエンターテイメントは人々を熱狂させるもの。「こんなのがエンターテイナー……?」みたいな軽蔑はお門違いだ。わかったか!

 

「わかったー」

 

 適当に返事された。悲しい。

 

「『EOE』は二人乗りで楽しむエンターテイメント。操縦者はハンドリングを、同乗者は各ポイントに設置されているターゲットを撃ち抜き、手に入れた『エンターテイメント・アクション』を手に入れる役割がある」

「ガンシューティング的なことか」

「あぁ。ターゲットを撃ち抜くことに成功すれば、『エンターテイメント・アクション』が入手できる。手に入れた『エンターテイメント・アクション』はモニターに表示され、好きなタイミングで使用することができる。例えば、相手の機体の速度を限定したり、コースを制限したり、相手の『エンターテイメント・アクション』を防いだりな。ターゲットには撃ち抜く難易度があり、難易度に比例して効果のいい『エンターテイメント・アクション』を手に入れることができる。説明は以上だ! そして今から、チーム分けを行う! 俺たちと貴様らでそれぞれ二人組を作り、三回レースを行い、勝利数の多い方の勝利となる! 三回目のレースを走る際は、好きに二人組を作り変えても構わん!」

 

 そう言ってリニスは背中を向け、ルイスとイベリスとシゲキの下へ向かった。よく考えれば、今からあの四人とレースするんだよな……。全員普通に最高難易度のターゲットを容易く撃ち抜きそうだ。誰と当たっても強敵であることに変わりはないだろう。

 

「さて、どうする? 操縦者は一応バイクの免許持ってるやつがいいだろうから……つっても、満ちゃん以外は持ってるか」

「私も多分運転できるよ?」

「満の運動能力を考えればできるだろうが、万が一自動操縦が壊れてしまった場合を考えれば満は後ろの方がいい。というか後ろ以外許さん」

「えー……わかった」

「納得はいかんだろうが、成長できるようになったんだ。免許を取れればまたここに来ればいい」

「! うん!」

 

 にこにこ笑う満が可愛かったのか、透華が後ろから満を抱きしめる。本当に満はいい子だな。納得いかないことがあってもそうした方がいいと思えればすぐに引けるし、すぐに立ち直れる素直さもある。こんなに可愛くていい子に万が一にでも怪我をさせるわけにはいかん。一生守ってやらねば。

 

「同様に考えれば、透華にも怪我をしてほしくない。俺と帝斗は分かれた方がいいだろう」

「佐藤にしては珍しく男らしいな」

「珍しくと言う必要はないだろう! 俺は普段から男らしい!」

「じゃあ透華も完璧に守れるってことか?」

「当たり前だ! 俺の後ろが心地よすぎて、離れられなくなるだろうな!」

「だってよ透華。満ちゃんは俺と乗ろうぜ」

「はーい!」

 

 ……ん? 何かいつの間にか組み分けが決まっているぞ? 何が起きた。よくわからんが、満が「流石だね、西園寺さん」と言って帝斗とハイタッチしているから、うまく乗せられたということはわかる。まぁ、透華を後ろに乗せることに何も不都合はないから構わんが……待て、バイクで二人乗りということは俺にしがみつく可能性があるということではないか!? いや、透華であれば俺の童貞を理解し、控えめにしてくれるはずだ。それに、自動操縦だから俺が動揺したとしてもクラッシュを起こすことはない。大丈夫だ、落ち着け。

 

「あの、先輩? 大丈夫っスか?」

「ん、んん? なにがだ?」

「なにがって……あ、そういえばそっか。私のこと、女として見てないんスもんね」

「え、あ、いや、それは」

「ぎゅーってしちゃうかもしんないスけど、問題ないんですよね」

「わ、あ、いや、ちがっ」

「……ふふ。嘘っス。ちゃんと配慮しますよ。だから大丈夫っス」

 

 ぽんぽん、と俺の背中を優しく叩き、微笑む透華。な、情けない……!! 後輩に動揺させられ、落ち着かされるなど、日本男児としてあるまじき姿だ!

 

「だったら随分前からあるまじき姿だよ」

「うるさい!!」

 

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