稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

12 / 227
第10話 project:radio

「《えっと、金曜日の夜、みなさんいかがお過ごしでしょうか! ニッコリ探偵団の満です! みなさん、改めまして、はじめまして!》」

「同じく月宮優姫です」

「アザミ・フレンジー」

「同じく、我が名はミッドナイト・サイコナイト! またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ」

 

満ちゃん!?

開幕で!?

もっともったいぶれよ!!

 

 『project:radio』当日。開幕を務めたのはご存知、俺の相棒である満。『満が声を乗せるタイミングをどうするか』という問題は、満場一致で開幕に決定した。途中から満を持してという形にしてしまうと、なんとなく満にゲスト感が出てしまう。ニッコリ探偵団の一員なのであれば、全員が最初に挨拶をしないとおかしいだろう、という理屈だ。

 

「いやぁ!! 嬉しい!! 満の声を届けられて、俺は嬉しいぞ!!」

「ふふ、そうね。ニコ、今日のラジオすごく楽しみにしてたものね」

「一応説明しておくが、満の声はニコがボイスチェンジャーで届けている。都合上、満の反応が少し遅れることもあるだろうが、そこは容赦してくれ」

「いえ、その心配はないですよ!」

「《ニコさん、家ですっごく練習してくれて! 私が喋り出すのとほぼ同時で声乗せられるんですよ!》」

「当たり前だろう。俺はミッドナイト・サイコナイト、深夜の狂騎士だぞ?」

 

ニコ、その才能があってなんで無職だったんだ?

脳がめちゃくちゃ疲れそう

ボイスチェンジャー使うってなって、そんなに経ってないよな?

ニコ、俺は信じてたぞ

 

 ボイスチェンジャーのツールをありがたくもアザミさんから譲り受けた俺は、家で猛練習を重ねた。帝斗と透華を交えて会話をすることで満の声を届けることに慣れつつ、数年ずっとともにいた経験を活かし、満の性格、その日のテンション、表情などのデータに基づいたセリフの予測を可能とした。俺は俺の才能が怖い。

 

「俺は無職じゃないぞ! 今こうして、立派にラジオのパーソナリティも務めていることだしな」

「《でも普段全然依頼ないじゃん》」

「いつ連絡してもすぐ反応があるしな」

「褒めるとしたら、連絡が円滑に進んで助かるっていうくらいね」

「さぁ、早速コーナー参りましょう!」

 

逃げた

連絡する回数多いのか?

どこからどう見てもどう聞いても仲良しだろ

 

 仲良しではある、と思いたい。俺だけがそう思っていたらショックで一週間は寝込み、その間帝斗と透華が世話を焼いてくれて健康体になる自信がある。最近、配信のことばかり考えて睡眠時間が削られているから、休むのにはちょうどいいかもしれない。永遠に休みそうだが。

 

「《『project:plan』! 『project eden』の箱企画を、視聴者から募集するコーナーです!》」

「うちは人数が多いから、結構やれること多いのよね」

「かといって全員が参加しなければならないというわけでもない。自由な発想での企画案を期待している」

「ラジオネーム『トンデッタ・ジローラモ』さんからだ」

 

 

【project:plan】

企画名:ゲームリレー対決

概要:何らかのゲームをユニット対抗、リレー形式で競う

 

 

横スクロールアクションとかよさそう

あんまりプレイングスキルで差が出すぎるとよくなさそう

むしろありなんじゃないか?

アンカーみたいな役回りできるし、よさそう

 

「私が推すのは恋愛ゲームだな。リレー形式で一人の女性を攻略する。月宮優姫は恋愛ゲームが驚くほど苦手で、どうせニコは得意だろうからバランスがいい」

「……恋愛なんてしたことなかったんだから、仕方ないでしょ」

「《月宮さんかわいい!》」

「ところで、なぜ俺が得意だと思ったんですか?」

「友人が少なすぎるがあまり一人の時間が多い。そして友人が少ないのであれば、当然恋愛経験も皆無と見ていい。そして肌の色を見る限りかなりのインドア派だ。すさまじい童貞なら、恋愛ゲームに手を出して、少しでも恋愛の気分を味わいにいくだろうと思ってな」

 

 正解……。どうしよう、満の声を届けられることが嬉しくて泣きそうだったけど、今は悲しみの涙が出そうだ。

 いいだろ別に、恋愛ゲームが得意でも。別に買い漁ってなんでもかんでもやってるわけじゃなくて、正しいと思う行動を取ったら自然とクリアできるんだから。「現実の恋愛はする気ねぇの?」って帝斗に心無いことを言われて傷つきもしたんだから。

 

「形式的には各々配信してリレーをするというのでもできますけど、こういうのって実際に集まってやるのが一番楽しそうですよね」

「《でもニコさん、大丈夫? 知らない人と会うの辛くない?》」

「あんた、満ちゃんになんて情けない心配させてんのよ」

 

そして絶対大丈夫じゃない

未だにマネージャーと連絡とらないから、最近は友人に連絡が行くらしい

そんだけコミュ障なのに、ニッコリ探偵団だと自然体なんだよな

優姫ちゃんとアザミんがすごいからだな

 

 それは本当にそうだと思う。月宮さんとアザミさんは二人とも優しいし、俺の自覚ナシの変な言動も、ツッコんだり流したりと適切に対応してくれる。しかも俺のことを友だちだと言ってくれる。

 でも、一つ問題がある。帝斗も透華も月宮さんもアザミさんもいい人過ぎて、もうこれ以上友だちいらないんじゃないかと思ってしまうこと。友だちが増えているのにコミュ障が加速するジレンマ。つまり、コミュ障は俺のせいじゃないんじゃないか?

 

「まぁ、知らない人がいても満と月宮さんとアザミさんがいるなら大丈夫です」

「当然よ。あんたが何かやらかしてもなんとかしてあげるわ」

「私はなんとかするフリをして、ニコを転がすことに専念しよう」

「《アザミさんって、ニコさんをおもちゃにすることに躊躇ないよね》」

「面白いものを面白がるのに躊躇など必要ないだろう」

 

アザミん、俺も転がしてくれ!

ニコに対して唯一羨ましいと思うところ

満ちゃんが常に隣にいて、優姫ちゃんとアザミんの同期?

ムカついてきたな

社会的信用と社会性の代わりに得たものだから許してやれ

 

「確かに、月宮さんとアザミさんと同期になれたのは幸運でしたね。俺自身、自分は面倒な人間だという自覚があるので」

「《二人と仲良くなるの早かったもんね》」

「面倒だと思ったことないわよ? キモいって思ったことはあるけど」

「私は面白いと思ったことしかないな」

「そんなことを言う月宮さんには、オリジナルコーナーで恥ずかしい役をやってもらいます」

「賛成だ」

 

 そんな風に、レギュラーのコーナーをこなして、ついに月宮さんに恥ずかしい役をやらせられるオリジナルコーナーの時間がやってきた。その名も、

 

「《ニッコリ演劇団! 視聴者にセリフを送ってもらって、私たちでそれを演じるコーナーです!》」

「さぁ、月宮優姫を恥ずかしい目に遭わせよう」

「それならあんたにもやってもらうわよ! 恥ずかしい役!」

「別に私はダメージがないから構わない。一つ目はラジオネーム『優姫ちゃんをなんとしてでも赤面させ、可愛さを供給いただくことで明日を生きる糧とする』からだ」

「もうラジオネームだけでどんな内容か察せられるわね……」

 

 最初このコーナーを考えた時は台本を送ってもらおうと思っていたが、できるだけ多くの視聴者の要望に応えたいということで、セリフに絞った。もちろん俺たち四人で掛け合いをするのも、一人だけでもなんでも構わない。

どれを選ぶかはラジオが始まる前に全員で納得の上で選、ぼうとしてアザミさんが却下した。「そっちの方が私たちも楽しめるだろう?」なんてことを言っていたが、月宮さんをなんとしてでも恥ずかしい目に遭わせようという信念が見える。

 

 

演者:優姫ちゃん

セリフ:私に解けないものはないのよ。あなたの心もね。

演技:「あなたの心もね」は内心恥ずかしいセリフだなと思いつつも、言い始めてしまって引っ込みがつかなくなった感じでお願いします。

 

 

「うわぁ……ねぇ、これほんとにやらなきゃだめ?」

「当たり前だ。視聴者の厚意を無下にする気か?」

「《恋愛関係のセリフを想像してたけど、こういうのが一番きついかも……》」

「そうか? 全然普通のセリフだと思うが」

「ニコからすればそうでしょうけど」

「普通は恥ずかしいんだぞ。ニコは普段から恥ずかしいからわからないだろうが」

「これって俺をひどい目に遭わせるコーナーでしたっけ?」

 

どんな時でもニコへの精神攻撃に余念がない

優姫ちゃんがこんなクソダサセリフを言うのか……

テンションがめちゃくちゃ高かったらギリ言いそう

期待

 

「覚悟を決めろ、月宮優姫。時間をかければかけるほどハードルが高くなるぞ」

「わかったわよ!」

 

 月宮さんが目を閉じて、気持ちを落ち着かせるように深呼吸する。そして目を開き、俺からすれば恥ずかしくなく、一般的には恥ずかしいらしいセリフをマイクに乗せた。

 

「私に解けないものはないのよ。あなたの心もね

 

ちゃんと演技してくれる優姫ちゃん

俺の心を解き明かしてくれ!

その前にニコの心を解き明かしてやれ!

社会復帰させてやれ!

 

 月宮さんはしっかり演技してセリフを言い終わると、じわじわと頬が赤くなっていく。なんだ、可愛いなこの人。顔が赤くなるくらい恥ずかしいのにちゃんと演技するのは好感が持てる。

 

「ふふっ、私の心も解き明かしてくれるのか? 楽しみだ、興味がそそられる」

「うっさいわね! 次あんたのいくわよ! ラジオネーム『アザミん、俺だ。転がしてくれ』さんから……さっきからラジオネームキモいのよ!」

 

 多分俺の視聴者だ。俺の視聴者は悪ふざけが大好きで、満に言わせてみれば「佐藤さんと同じくらいキモい人がいっぱいいるね」らしい。なぜ俺は隙あらば精神攻撃されるんだ?

 

 

演者:アザミん

セリフ:我が名はトワイライト・プリンセス! 宵闇の姫だ。

演技:ニコみたいに

 

 

「……!! 月宮優姫、なんという仕打ちを」

「珍しく動揺したわね」

「まさか本当に私の心が解き明かされそうになるとは」

「こんなに恥ずかしいセリフ、あんたに言えるかしら?」

「二人とも。俺をいじめたいのなら素直に言ってください」

「《言えばいいってわけでもないと思うけど……》」

 

宵闇の姫と深夜の狂騎士か

優姫ちゃんにも何か与えるべきじゃないか?

というか思ってた恥のベクトルと違う

 

 トワイライト・プリンセスか、いいな。プリンセスというのはアザミさんのイメージとは合わないが、『宵闇の姫』ならまだ違和感がない。かなりセンスがいいな。俺と気が合いそうだ。

 

「覚悟決めなさい。さっき自分で言ってたでしょ? 時間をかければかけるほどハードルが上がるって」

「……ねぇ、ほんとに言わなきゃだめ?」

「なんでその媚び声は恥ずかしくないのよ」

「ニコがにやにやして、好意的な反応をしてくれるからな」

「《キモ……》」

 

 仕方がないだろう。アザミさんのキャラじゃないとわかっていても、可愛いものは可愛い。体を縮こまらせて上目遣いでなんて、俺に対してやられていたら「代わりに俺がやってあげましょう!」と立ち上がっていた自信がある。全然恥ずかしくないしな、あのセリフ。

 アザミさんは覚悟を決めたようで、猫背気味の背筋を伸ばし、いつもの落ち着いた声とは異なる、はっきりと自信に満ち溢れた声を乗せた。

 

「──我が名はトワイライト・プリンセス! 宵闇の姫だ!」

 

下僕にしてほしい

転がしてほしい

ちょっと声飛んでたから、よっぽど恥ずかしかったんだろうな

 

 アザミさんはすぐに肩を落とし、すぐさま月宮さんを恥ずかしい目に遭わせられるセリフを探し始める。月宮さんも負けじと対抗し、アザミさんを恥ずかしい目に遭わせられるセリフを探し始めた。なんでこう同期同士で争うのに躊躇がないんだ、この人たちは。

 

「あの、俺のセリフも選んでもらえませんか?」

「私やアザミに対して告白とかプロポーズするやつがきてるけど、それでもいいの?」

「月宮さんとアザミさんがよくないでしょう。俺のようなやつからなんて」

「私はそうでもない。偽物だとわかっていれば感情が動くことはないからな」

「《偽物じゃなかったらどうなんですか?》」

「どうだろうな。ニコ、やってみるか?」

「ア……っ、アァ……」

「アザミ! ニコいじめんのはやめなさい!」

 

 その後、時々争いながら色んなセリフを読んでいった。同級生シチュ、興奮したな。キモがられたけど。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part4

 

53:このライバーがすごい! ID:XYWrTY5nJ

ボイス、何個か命が助かるものがあった

 

54:このライバーがすごい! ID:vvGEBQ/yG

優姫ちゃんは大体恥ずかしがってくれるから、多くの命を助けた

 

55:このライバーがすごい! ID:2rxS5wnyw

アザミんは大体なんでもこなすから演技うまいの違和感ないけど、意外にもニコが演技うまかった

 

56:このライバーがすごい! ID:fD22KIwmc

そういえば満ちゃんの声もボイスチェンジャーでやってるんだもんな

それなのにまったく違和感なかったから、抑揚とかそういうのうまいのかも

 

57:このライバーがすごい! ID:8ievy4hfe

女子中学生の元気っ子の抑揚を再現できる26歳男性?

 

58:このライバーがすごい! ID:yikCkn3YC

>>57

素直に演技がうまいでいいだろ

 

59:このライバーがすごい! ID:Te6Iylz+o

俺は優姫ちゃんの「お兄ちゃん、起きて」を目覚ましボイスにすることに決めた

 

60:このライバーがすごい! ID:ntZ8cFega

>>59

ニコが解釈違いで怒ってたの、順調にキモくて草だった

 

61:このライバーがすごい! ID:P0zlxJc08

ニコ「月宮さんは絶対にお兄ちゃんなんて言わないでしょう。違和感がありすぎて俺は使えないですね」

優姫「確かに呼ぶなら兄さんとかだけど、使うとか言うの内臓縮まるくらいキモいからやめて」

アザミん「ふっ」

 

62:このライバーがすごい! ID:E/c/bRKmN

>>61

ニコがひどいこと言われたりひどい目に遭ったりしてる時、アザミん大体笑ってるよな

 

63:このライバーがすごい! ID:ULhTMiGK3

アザミんの笑顔のために毎秒ひどい目に遭ってくれ、ニコ

 

64:このライバーがすごい! ID:etgjebA3N

なんだかんだ、ニコもすごいよな

遭って一か月くらいしか経ってないのに、罵倒で嫌な顔一つしないし

 

65:このライバーがすごい! ID:gTiHWFzei

罵倒してもいいっていう雰囲気があるんだよな

あと、割と真っ当に言われても仕方がないことしか言われてない

 

66:このライバーがすごい! ID:MW1ee2VJK

ところで、やっぱりシチュエーションボイスは最高だと思ったんですが、みんなは?

 

67:このライバーがすごい! ID:mt2RMlIe/

俺はアザミんの「抱き着くな、今忙しいんだ。……気が向いたら後で相手してやる」が一番好きだった

恋人シチュはやっぱいいですね……

 

68:このライバーがすごい! ID:r662StC0h

>>67

なお、そのセリフ直後

満ちゃん「やだ! 今すぐ相手して!」

ニコ「そうだ! 今すぐ相手してやってください!」

優姫ちゃん「ふふ。どうするの? アザミ」

アザミん「仕方がないな。ほら、おいで」

ニコ「(自分を見て言われたため動揺し、椅子から崩れ落ちる音)」

 

69:このライバーがすごい! ID:NaZganUuC

なんだかんだ、普段のニッコリ探偵団が一番可愛い説ある

 

70:このライバーがすごい! ID:0FNbyKSi6

>>69

それはそれとして、シチュによる栄養を欲している自分がいる

 

71:このライバーがすごい! ID:ywpjxtZik

普段のニッコリ探偵団は定期的に供給してくれるだろ

 

72:このライバーがすごい! ID:qK9xlP5Ho

これはニコ台本のボイスが一層楽しみになってきましたね……

 

73:このライバーがすごい! ID:XOIjbnSRV

ニコって、キモいことに理解があるから期待大なんだよな

 

74:このライバーがすごい! ID:XSytNLpTN

恐らく、高いレベルで解釈一致の台本が出来上がっている

 

75:このライバーがすごい! ID:DVcmT5QBT

満ちゃん、ボイス出してくれないかな

 

76:このライバーがすごい! ID:toW+zYMFH

ニコが「満がやりたいって言ったら、事務所の人と話してみる」って言ってたし、なくはなさそう

 

77:このライバーがすごい! ID:4XcVaEXFT

マネージャーとすら全然話してないのに、満ちゃんのためなら自ら話に行くのか

 

78:このライバーがすごい! ID:OaZedebW+

ニコ、俺誇らしいよ

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。