稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「さて、お前たちに集まってもらったのは他でもない」
二人乗りか?
二人の理華?
まさか、私以外に女がいるの!?
理華フェチ!?
俺は理華フェチではない!
エンターテイメントオブエンターテイメント、通称EOEに遊びに行き、見事に惨敗した次の日。SNSを見ればイベリスが俺にバイクをあげたという報告をしていて、それに反応した星菜さんやマリー、アザミに巻き込まれた形の月宮さん……色々な人たちが二人乗りしたいと名乗りを上げ(一部、名乗りを上げさせられ)、大変大盛り上がりしていた。満からマリーとか星菜さんとかにバレる前に二人乗りを済ませておいた方がいいと言われたが、まさかこんなことになるとはと焦りに焦り、いつも俺を見てくれている視聴者に助けを求めるに相成ったというわけである。
「そうだ、二人乗りだ! 正直、俺のようなものと二人乗りをしたいと言ってもらえるのはありがたくはあるが、俺はどうするべきだ!? 教えてくれ!」
黙れ
羨ましいんだよ、カス
それは俺たちのことを童貞だと知っての狼藉か?
別に好きにすりゃいいだろ
「クソッ、冷たい! なんとか言ってやれ、満!」
「なんとか」
「もっと俺のために脳のリソースを割こうというつもりはないのか?」
「だってさー。多分みんな面白がってるだけで、二人乗りは絶対に譲らない! って思ってる人いない……まぁ一部にはいると思うけど……お、面白がってるだけだと思うよ?」
今マリーのことが過ったな。
俺もなんとなく面白がっているだけだというのはわかっている。アザミがその筆頭だろう。アザミは自身が乗りたいというわけではなく、いつもの『俺と月宮さんをくっつける』という面白がり方で今回の件に参戦している。現に、俺と月宮さんをなんとしてでも二人乗りさせるための作戦会議を視聴者と行い、途中で文句を言いに通話をかけてきた月宮さんの文句を一切視聴者に伝えず、「二人乗りは譲らないわよと言っていた」と視聴者に伝えるなどやりたい放題。あまりにもムカついたのか、dicecodeで月宮さんから「なにバイクもらってんのよ!」と送られてくる始末。俺は何を謝ればよかったんだ……?
星菜さんはどちらかというと、本当に二人乗りしたい、と思ってくれているんだと思う。初めてという点にはこだわってはいないとも思う。証拠に、「今度どっか連れてってください! 二人乗りで!」とdicecodeで届き、「もちろん私も行くから安心しなね」と明さんからdicecodeが届いた。初めてにこだわっているのなら、もうちょっと違う言い方をするだろう。
問題はマリーだ。好意を問題と捉えたくはないが、昨日配信で二人乗りデートスポットを視聴者から募っていた。なぜかイレイナさんも参戦しており、イレイナさんに引っ張られる形でイオスさんも男性側の意見を聞かされていて、帝斗からは「なんかイレイナさんから、絶対佐藤との初めての二人乗り取るなよって言われたんだけど……」と言われ、帝斗と二人乗りするという逃げ道も潰された。
もう二人乗りしたってことにするのは?
そんなオシャレじゃないことイベリス様が許すかなぁ
バレた時怖そう
特にマリーな
「流石に嘘はよくない。しかしどうするべきか……」
「ちなみに私も二人乗りしたいと思ってるけど」
「満、よく考えろ。これだけ大盛り上がりしていて、なおかつ己惚れているみたいで言いたくはないがなぜか恋愛的な意味で二人乗りが取り扱われている。そんな中俺が満を選んでしまったら、もうそういう目で見られてしまう可能性があるんだぞ?」
「キッッッッッッッッモ。ないでしょ。私とニコさんをそういう目で見る人」
「甘い! インターネットを舐めるな! 俺が長年かじりついていたんだぞ!」
「確かに」
「おい、否定してくれ」
草
俺たちはそういう目で見ないけど
でも、ニコと満ちゃんを知らないやつが見たとしたら……
なくはないけど、心配しすぎじゃね?
心配してしかるべきだ。ただでさえ俺のようなやつに憑りついているのに、これ以上不名誉な印象を満へ持たせるわけにはいかん。逃げ道だと思っていた帝斗は別に迷惑をかけてもいいからいいが、満はダメだ。インターネットとは否定しても否定しても『そういうもの』だと捉えて一生粘着し、やがてそれが事実に挿げ替えられてしまう可能性を持っている。その可能性が少しでもあるのなら、申し訳ないが満には我慢してもらおう。
「! じゃあさじゃあさ、アザミさん誘ってみようよ。多分かわいい反応してくれそうだし!」
「そっ、それはアザミを弄ぶことになってしまわないか?」
「別に二人乗りしたくないっていうわけじゃないんでしょ?」
「したくないわけではないが……さっきも言っただろう。恋愛的な意味で二人乗りが取り扱われている、と」
「アザミさんならはねのけられそうじゃん」
「まぁ……」
確かに? 俺の理論でいくと星菜さんと満はまずダメだが、自分でなんとかできそうな人ならいいということになる。ということは、今のところ月宮さんとマリーか。月宮さんはごめんだろうからマリーということになるが、マリーと二人乗りすると気づけば式場まで連れていかれそうだ。ということはつまり、満の言うようにアザミがいいのか……?
アザミんめっちゃびっくりしそう
二人乗りしたくないってわけじゃなさそうだし
アザミんの可愛いところが見れると聞いて
男になれ、ニコ
いや、いいのか? そもそも俺から誘うとなると、俺が自分との二人乗りに価値があると思っているということになるんじゃないか? ここまで盛り上がってもらえているが、俺自身は俺との二人乗りに価値があるとは思っていない。このまま乗せて乗せてと言われてそれに従うのであればまだしも、俺から誘えば『自分との二人乗りに価値があると思い、調子に乗って女性を誘った性欲魔人』という烙印を押されてしまうのではないか?
危ない。いつもアザミにからかわれてばかりだから、仕返しという意味でもいいな、と思っていたが、やはりなしだ。それに、アザミを誘って了承を得たとしても、紆余曲折あってなぜか月宮さんと二人乗りすることになりそうだし。
「すまん、アザミを誘えば俺が性欲魔人だと思われてしまうからやめておこう」
「なんで?」
「理由は言ったぞ」
「その理由に対してなんで? って言ってるんだけど……」
俺の考えていることはわかるはずなのに、なぜわからないフリをしているんだ……? まさか、思春期か!? ついに「佐藤さんと洗濯物と一緒に洗わないで!」と言われてしまう日がくるのか!? クッ、ショックだ。しかしそれも成長と考えれば仕方がない。というかよく考えれば成人男性の洗濯物と一緒に洗われたくないのは普通のことか。街を歩いている女学生に『ほぼ無職の27歳男性の洗濯物と一緒に洗うって耐えられますか?』とアンケートを取れば、100%耐えられないという結果が出るだろうし。
「そもそも、なぜ俺のような人間との二人乗りがこんなに盛り上がっているんだ……?」
「ニコさんが思ってるより、みんなニコさんのことが大好きだからでしょ」
「お、おい、よせ、照れるだろ?」
「なのに自己評価低くてうじうじぐだぐだしてこんな配信してみんなに助け求めて、それでも呆れられないからニコさんってすごいよね」
「上げてから落としすぎだろうが!! そこまで言わなくてもいいだろう!!」
いや、満ちゃんの言う通りだぞ
男らしくない
でもニコらしい
結局、ニコが選んだ結果には誰も文句言わないだろ
視聴者も満と同じ意見なようだ。最近、満が俺に対して辛辣なことを言って、視聴者がそれに乗っかるという動きが目立っているような気がする。もしかして、満が視聴者の総隊長なのか? ふふ、誇らしいな……。
結局、結論は出なかった。配信を終了し、どうしようかと頭を抱える俺の肩がちょんちょん、と叩かれる。
「どうした、透華」
「お疲れ様っス。これから買い物行きますけど、何かいるっスか?」
「ん? 俺に聞いてくれるのは珍しいな。いつも俺が欲しいものを把握し、買ってきてくれるというのに」
「それに甘えてるのが問題ってこと、いつ気づくの?」
もしこの世界がRPGだったら、今の満からの一撃で俺は息絶えていただろう。わ、わかってはいるんだ。わかってはいるんだが、その、ものすごく楽で……。
欲しいものか。正直、帝斗と透華がいつも俺の欲しいものを買ってきてくれるから、不足しているものはない。あるとすれば……そうだ! 満のヘルメット! 初めての二人乗りはしないとはいえ、いつかは後ろに乗せてやりたいし、買いに行くのもいいかもしれん。
「透華。満のヘルメットを買ってやりたいんだが、こっそり行く作戦はないか?」
「できればそういう作戦は私の前以外で立ててほしいけど……」
し、しまった! 作戦を立てたすぎて満の前で言ってしまった!! 慣れないサプライズで喜ばせようとしたのに……! でも帝斗と透華が笑ってるからいいか。帝斗に関しては「マジでバカだ!」って言ってるからいいかどうかは微妙なところだが。
「そんじゃあ、佐藤はサプライズしたいみてぇだし、満ちゃんは俺と留守番しとくか?」
「うん。佐藤さんのセンスは疑うけど、透華も一緒だし大丈夫でしょ」
「なにおう!? よし、待っておけ! 俺が満に最も似合うヘルメットを見つけてきてやる! いくぞ透華!」
「ふふ。はい」
「あ、佐藤。せっかくだしもらったバイクで行ってみたらどうだ?」
「ん? あぁ、そうだな。透華もそれでいいか?」
「はい。お願いします」
事務所を出て、古びたガレージに停めてあるバイクに跨る。透華と二人乗りするのはどれくらいぶりだろうか。あの時は満が隣で飛んでいて、「引っ張られる引っ張られる! 速い! 私すごく速く飛んでる! ヒーローみたい!」と大はしゃぎしていたのを覚えている。
「よし、行くか」
「マップで指定したところに自動で連れてってくれるんスよね?」
「あぁ。俺はわからんから指定してくれ」
「ふふ。りょーかいっス」
今の笑みは、「こいつ、いつも他人任せだな」という嘲笑か……? いや、透華に限ってそれはない。きっと、仕方ないなぁみたいなことだろう。でも俺は27歳だぞ? いつまで仕方がないんだ、俺は。
透華がマップで目的地を指定し、シゲキ的コントローラーを手渡してくる。画面には、『クールにスタート』『オシャレにスタート?』『シゲキ的にスタート!』という文字の下に、それぞれ『クール』『オシャレ』『シゲキ的』と表示されている。ここで『シゲキ的』をタップした瞬間、とんでもない速度で爆走を始めるのは目に見えており、『オシャレ』を選択すればオシャレな音楽が流れ始めそうだから、より一般的に近そうな『クール』をタップすれば、一切音を出さず、ゆるりとバイクが動き始めた。
……ん? これ、二人乗りしてないか!!!?????
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part24
278:このライバーがすごい! ID:baWX7jYMh
ニコとの初めての二人乗りはどうなるんだ
279:このライバーがすごい! ID:1RBBtd5A3
満ちゃんはないって言ってたから、妥当なところで言うと友人のどっちかだろ
280:このライバーがすごい! ID:OwjhNOUP5
マリーはがっつりデートプラン立ててるしな……
281:このライバーがすごい! ID:hfM0KJpco
ニコにガチ恋勢がいなくて本当によかった
282:このライバーがすごい! ID:e+14IZD9t
というかニコとマリーがプロエジェで本当によかった
283:このライバーがすごい! ID:oAUJKPEJy
他の箱なら燃えるどころの騒ぎじゃないだろ
284:このライバーがすごい! ID:fKbxVVuu1
未だかつてあったか? 視聴者とライバーとのデートプランを相談する配信
285:このライバーがすごい! ID:8pKhyLLhX
アザミんも負けじと優姫ちゃんとプラン立てようとしてたしな
286:このライバーがすごい! ID:cOCB/uDPl
正直、ニコに誘われるアザミんを見たかった
287:このライバーがすごい! ID:mLWSLg2ab
普通に照れてくれそう
288:このライバーがすごい! ID:DYH0gNqiY
普通に優姫ちゃんを推しそう
289:このライバーがすごい! ID:MgRCmClqh
大好きな同期から誘ってもらえたら、るんるんになりそう
290:このライバーがすごい! ID:LIzZWWZTH
>>289
流石に可愛すぎるからないだろ
291:このライバーがすごい! ID:LOi61UPPV
>>289
これだったら俺の命は今この瞬間まででいい
292:このライバーがすごい! ID:9j8+Kmw4z
優姫ちゃんも、命狙われててニコとの二人乗り以外に回避手段がないならって言ってたし
多分ないだろ
293:このライバーがすごい! ID:HDm5zk750
でも、街中でばったり出会って、ちょうどいいからって乗せてもらう画は浮かぶ
294:このライバーがすごい! ID:spE9j4igo
お互い恋愛的な意識がないからこその尊さ
295:このライバーがすごい! ID:GDHQCr9Vg
初めてじゃなくてもいいから、星菜ちゃんとマリーは乗せてあげてほしい
296:このライバーがすごい! ID:gHdBadaSK
>>295
マリーが結婚と勘違いしたらどう責任とるんだ?
297:このライバーがすごい! ID:w6apqKuFn
>>296
そんな斜め上の勘違いの責任どうやってとるんだよ
298:このライバーがすごい! ID:shAr97C5Z
いいなぁ
俺も女の子と二人乗りしたいって言ってもらいたいなぁ
299:このライバーがすごい! ID:7u9asiOkl
>>298
性欲をなくせ
300:このライバーがすごい! ID:YM6UWLYhN
>>298
いいやつになれ
301:このライバーがすごい! ID:WhBVU83Uc
>>298
幽霊が見えるようになれ
302:このライバーがすごい! ID:7xSz1TNHn
>>298
幽霊と話せるようになれ
303:このライバーがすごい! ID:o4ZLy7oEP
>>298
幽霊に触れられるようになれ
304:このライバーがすごい! ID:sHm8VMIxb
>>298
幽霊を実体化できるようになれ
305:このライバーがすごい! ID:M9YCQyvvC
>>298
職を無くせ
306:このライバーがすごい! ID: shAr97C5Z
職はないから、それでなんとかならんか?
307:このライバーがすごい! ID:ufKYOoA4c
>>306
まず職はないことをなんとかしろ