稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第120話 project:matching

「年に一度のクールな祭典、『project:festival』」

「オシャレなライバーがオシャレにみんなをオシャレにするオシャレな二日間!」

「テメェら、シゲキ的になる準備はできてんだろうなァ!!!!???」

 

 

 

 

 

 『project:festival』当日。結局帝斗に何をやるかは聞かされず、こっそり教えてもらっていたらしい満の心を読み取ろうとするも、最近心を読まれないようにプロテクトする術を身につけたらしく、ついぞ詳細を知ることはできなかった。

 そして、詳細を知らないまま一期生の開会宣言を聞いた後、スタッフに連れてこられたのは事務所が持つスタジオ。既に見知った顔が数名スタジオにいて、いつの間にか満は俺の側から離れていた。み、満!? どこに行った、満!!

 

《その企画、私は不参加だから》

《あぁ、なるほどな。せめて何か言ってから離れてくれ。心配するだろう》

《言ったけど、何やるかわからなくて不安すぎて聞こえてなかったみたいだから》

 

 聞こえてないなーとわかったのなら肩を叩くとかしてくれてもいいだろう! 最近、満の俺に対する扱いが雑になって……よく考えたら最近でもないな。ずっとだった。別に俺を敬えなんてまったく思ってはいないが、もうちょっと優しくしてくれてもいいと思う。いやしかし、俺はいつも誰かに甘えてばかりだから、それだけではだめだという満なりの戒めか? それなら甘んじて受け止めよう。ふっ、満め。気遣いがうまいやつだ。

 

「やほ、ニコちー。なんか嬉しそうにしてんね」

「あぁ、マリー。いや、やはり満はすばらしいやつだ、と思ってな」

 

 満のすばらしさに一人微笑んでいると、マリーが話しかけてくれた。よかった。見知った顔がいるとは思いつつも、みんな誰かと話していて「い、今更俺が話しかけてもいいのか……?」と思っていたところだから、話しかけてくれて助かった。

 この場にいるのは、俺、マリー、月宮さん、明さん、聖麗、グレイヴィーさん、アル、サラさん、リックさん、松風純花さんの十人。月宮さんと明さん、サラさんと松風純花さんで談笑し、グレイヴィーさんとリックさんは何をやらかしたのか、腕を縄で縛られて正座しており、アルが縄を解こうと悪戦苦闘して、その目の前で聖麗が腹を抱えて笑い転げている。あいつ、邪悪すぎるな。

 

「グレイヴィーさんとリックさんは何をしたんだ?」

「んーと、サラと純花にちょっかい出して、ブチギレられた」

「なるほど、いつものことか。ちなみに、今から何をするのか知っているか?」

「さー? 3Dってことと、さっき渡されたスマホ使ってなんかやるんだろうなーってことと、あのでっかいモニターが気になるくらい?」

 

 なにっ、スマホだと!? 俺はそんなもの……持っていた。そういえばさっき俺が不安になっていて余裕がない時に何か渡されたような気がしたが、これだったのか。

 あと、言われて気づいたが確かに巨大なモニターがスタジオに設置されている。街頭モニターくらい巨大なのに言われなければ気づかないってどれだけ余裕がなかったんだ、俺。どうやら、満が隣にいないと落ち着くこともできないらしい。

 

 しかし、詳細を聞かされていないのは俺だけかと思っていたが、マリーもなのか? それとも俺とマリーだけで、他の人は知っているとか? いや、そんなことはないはずだ。俺は帝斗がすべての情報を握っており、あいつの趣味で俺に教えていないだけだから、他の人はちゃんとマネージャーさんから聞いているはず。ということは、この企画は出演者に何も知らされていない……?

 

「あ、モニターついた」

「なにっ!? モニターがついただと!?」

「そんなびっくりすることじゃないと思うけど」

 

 モニターに目を向けると、そこに映し出されていたのはアザミだった。なぜアザミがそちら側に!? と思ったが、確かアザミは元々運営側だったか。となれば、箱企画で運営側に回るのもおかしな話ではない。一つ不安なのが、アザミの企画で出演者が男女だということ。『project:tag』や月宮さんの3Dお披露目の時のことを考えれば、恐らくまたそういう感じの企画に違いない。詳細を聞かされていないのがより俺の推測の説得力を高めている。

 モニターの中のアザミは俺たちを一瞥すると、「よく集まってくれた」と切り出した。

 

『最初に、もう配信は始まっている』

「アザミ、あんたまさか……」

『強制的にカップルを作り出し、なんとしてでもイチャイチャさせる企画も考えたが、それは却下された。優姫が考えているようなことはない』

 

何か始まったぞ!

ニコがマリーの隣にいる!?

逃げろ、ニコ!

アザミんがMC、嫌な予感しかしないな……

 

 画面の端にコメント欄が出現し、かなりの速度で流れていく。毎日配信しているからか、流れるコメントを読む力が身に付いたからか、マリーの隣にいる俺を心配するコメントが見えた。別に、マリーは激重ではあるが危険なことをしてくるわけではない。「元の企画でもよかったのになー」と言って俺にちらちらと視線を送ってくるが、行動には移さない(ただし、「大胆な」という枕詞がつく)からな。ただ、ここまで視聴者に心配されるほどならば、マリーにもう少し激重感情を抑えろというべきか……? ダメだ、「抑えられないのは誰のせいだと思う?」と更に激重感情をぶつけられる気しかしない。

 

『お前たちも知っている通り、今日の深夜帯は3Dによるリレー配信『project:relay』を行う。ただ、『project:relay』の出演者は聞かされていなかっただろう?』

 

 アザミの言葉に全員が頷く。もちろん俺は知らなかった。アザミの言葉から推測するに、ここに集められた十人がその出演者ということか? そして、リレー配信というからには何組かに分かれて時間制で交代していくんだろう。

 

『ニコの推測した通り、『project:relay』の出演者はここにいる十人で、二人ずつに分かれ、計五組でリレー配信を行う』

「なにっ!? なぜ俺の思考が読めた! 俺の思考速度は他の追随を許さないと思っていたが、やはり天才か……!」

『別に全員思いついていただろうが、面白い反応をしてくれそうだからお前の名前を出したまでだ』

 

何もかも想定通りで草

なんか「オッホ!!」って邪悪な笑い声聞こえるぞ

見るな

呪われるぞ

 

 アザミめ、俺をコケにしおって……! みんながいる前で俺に恥をかかせるとは、なんてやつだ。と思ったが恥はいつもかいているからいつも通りな気もしてきた。なんなんだ俺の人生は。どう生きれば常に恥をかき続けられるんだ?

 

『さて、まどろっこしい前置きはここまでにしよう。お前たちに集まってもらったのは、今ここで、『project:relay』の組分けを決定してもらうためだ。手元にあるスマホを見てくれ』

 

 このスタジオに入る際にスタッフから渡されたスマホを見てみれば、そこにここにいる俺以外の九人の名前が表示されていた。名前の横には『LOVE』という文字が表示されている。しかも文字の色はピンク。なんだこの悪趣味なシステムは!

 

『ルールを説明しよう。自分が一緒に配信したい相手を自分で選ぶ、それだけだ。お前たちに渡したスマホには、自身以外の九人の名前が表示されている。その横にある『LOVE』という文字をタップすれば投票完了。相思相愛となった場合にマッチングが成立する。ちなみに、投票結果は全員公開する。というわけでこれより一回目の投票を行う。制限時間は5分間だ。『project: matching』スタート』

 

 アザミの開始宣言とともに、モニターにタイマーが表示される。ぷ、『project:matching』だと!? 九人の中から一緒に配信したい相手を選ぶ!? 投票結果は公開される!? そんなことがわかっていて女性を選べるわけがない!! 相性、やりやすさ的には月宮さんがいいし、月宮さんもそう思ってくれていそうだが、これで月宮さんが俺を選んでくれていなかったらめちゃくちゃ傷つく。多分泣く。いやしかし、それを怖がって月宮さん以外を選んだ場合に月宮さんが俺を選んでくれていたらどうするんだ!? 俺ごときが月宮さんをふったことになってしまうのではないか!?

 

「アザミめ、なんということを……!」

「ニコちーニコちー」

 

 人生最大の苦悩とも言っていい事態に頭を抱えていると、服の裾をちょこ、とマリーにつままれた。

 

「私だよね?」

「一緒に組もうというお願いではなく!?」

「私だよね?」

「いや、マリー。よく聞いてくれ。深夜帯に男女二人というのは例え配信であろうとあまりよろしくないことであり」

「私だよね?」

「ダメだ壊れてしまった! というかこの時点で壊れるやつと深夜帯に一緒は流石に俺も怖いぞ!」

「オッホ! お困りのようですねェ、ニコさん」

 

 俺を見ながら「私だよね?」としか言わなくなったマリーに困っている俺のところに、いつも通り胡散臭い笑みを浮かべながら聖麗がやってくる。申し訳ないが、お前がきたところで事態が好転するとは思えない。

 

「面白そうだからワタシもニコさんにしちゃいます♡」

「は? 何やってんのあんた」

「ニコさんと配信をしたいというのは嘘ではないですし、自分の組みたい相手を選ぶというシステムなのであればなんの問題もないのでは?」

「まぁ物理的に減らせば問題ないか」

「すまない聖麗。俺を選んだばかりに……」

「なぜ止めてくれないのかは気になるところですが、ここはワタシにお任せを」

 

 事態は好転するどころか戦いが始まったが、ゆっくり考える時間はできた。どうせ聖麗のことだから死んでも死なないだろうし、安心してマリーの相手を任せられる。

 マリーから逃げるというのは不誠実な気もするが、やはり相性を考慮したとしても深夜帯に女性と二人きりはマズい。俺がまったく機能しなくなるし、問題なさそうなのは月宮さんくらいだ。月宮さんが相手でもギリギリ俺が童貞すぎて配信が成立しない可能性がある。

 

 だとすると俺が選べる相手は聖麗、アル、グレイヴィーさん、リックさんの四人。聖麗を選べばマリーが止められなくなりそうだからなしで、リックさんは俺がめちゃくちゃおもちゃにされそうだからなし、となるとアルかグレイヴィーさんか。プライベートでも関りがあるし、コミュ障な俺からすればこの二人がこの場にいるのはありがたい。

 しかし、どちらを選ぶ……!? できれば一回目でマッチングしたい。何度もフラれたら俺の心がもたない。俺を選んでくれそうなのはどっちだ。アルは誰とでも配信ができそうだが、こういうところで意外に配慮できるやつだから、まず男を選ぶはず。となると、楽しい方に舵を切る。己惚れでなければ、アルは俺を選んでくれる可能性が高い。グレイヴィーさんはサラさんを選びそう……俺が来る前に何かしらがあって縛り上げられたばかりだから選ばないか? いや、グレイヴィーさんはこういうとき『だからこそ』選ぶ人だ。

 

 つまり、俺を選んでくれる可能性が一番高いのはアル! よし、投票を……何!? 『LOVE』が消えている!?

 

『制限時間終了。ちなみに、制限時間内に投票できなかった場合は、ランダムに相手が抽選される』

 

 なっ、なにっ!!???? 考えすぎて制限時間を終えてしまっていただと!!??? ま、まずい、このままではもしかしたら女性陣と組むことになるかもしれん! が、待て、落ち着け。月宮さんは俺の性格を把握してくれているし、俺が月宮さんを選ばないということもわかってくれている。つまり俺を選ぶことはない。松風純花さんは満と仲良くしたいと言ってくれていたが、俺自身と配信したいということはないだろう。サラさんも俺と配信したいと思わなさそうだし、俺が親近感を持っているグレイヴィーさんへの対応がバイオレンスだから俺を選ばない。明さんは……わからない。時々俺を困らせにくるから、俺が明さんを選ばないとわかっていながらも俺を困らせるために選んでくれている可能性はある。マリーは言わずもがな。

 

 頼む、俺の童貞を晒すようなことにはならないでくれ……!

 

『さて、投票結果発表だ。まずは、そうだな……ニコへの投票結果を発表するか』

 

 マリーと聖麗は確定だとして、あとは他に誰が……。

 

 え?

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part25

 

246:このライバーがすごい! ID:2S6UelwYA

◇ニコへの投票

・マリー

・聖麗

・姉御

・アル

・サラ

 

247:このライバーがすごい! ID:e9Wu2qfT4

ニコ、モテモテじゃん

 

248:このライバーがすごい! ID:7bdCdqCTx

アザミん「投票理由を聞かせてもらおうか」

マリー「めちゃ好きだから」

聖麗「めっちゃ好きだから♡」

姉御「面白いから」

アル「ニコさんといるとすげー楽しいから!」

サラ「優姫がいつも褒めてるから気になって」

ニコ「えっ!」

アザミん「ほう」

優姫ちゃん「何反応してんの。ぶっ飛ばすわよ」

 

249:このライバーがすごい! ID:2du9H2wrY

優姫ちゃん照れててかわいい

 

250:このライバーがすごい! ID:x4JPRFqSI

嬉しくなってニヤついたニコ、直後に優姫ちゃんが自分を選んでいないことに気づく

 

251:このライバーがすごい! ID:rPQB1YAXR

優姫ちゃんはこういう時、見たことない組み合わせの方がいいとか考えてくれるから……

 

252:このライバーがすごい! ID:pFOM1BfS2

あと、聖麗とかいう化け物にはもう触れない決まりになったんだっけ?

 

253:このライバーがすごい! ID:s9oDo9OWv

まぁでも、ニコが人気なのは納得いくな

 

254:このライバーがすごい! ID:JkSxyOadT

このメンツなら、ニコが安定して面白くなりそうだし

 

255:このライバーがすごい! ID: pFOM1BfS2

おっけ、触れない決まりになったんだな

 

256:このライバーがすごい! ID:3iotgHxWz

◇ニコの投票先

・優姫ちゃん

 

257:このライバーがすごい! ID:PGynnGi40

ニッコリ探偵団の絆(ただし一方的)

 

258:このライバーがすごい! ID:sVQKk52+1

これはがっくり探偵団

 

259:このライバーがすごい! ID:0KrWbmXbJ

ニコ、男を見せたな

 

260:このライバーがすごい! ID:2IK6LjI0m

ニコ「いやっ、違う! 違うというのは別に月宮さんと一緒に配信したくないというわけではないが、その」

優姫ちゃん「どうせ制限時間に間に合わなかったんでしょ。わかってるわよ」

アザミん「正妻アピールか……」

優姫ちゃん「違うわよ。ニコはすさまじい童貞だから、女の子を選ぶわけないもの」

ニコ「こういう時くらい童貞に形容詞をつけなくてもよくないか?」

 

261:このライバーがすごい! ID:IKgBkEg7n

優姫ちゃんが無意識にとるマウントすき

 

262:このライバーがすごい! ID:l2s9Cjihc

マリー、無になる

 

263:このライバーがすごい! ID:IaNZxumJV

聖麗が「オッホ……」って言ってるから、これはマズいぞ

 

264:このライバーがすごい! ID:1VzpzWbuE

>>263

聖麗の「オッホ」で状況のマズさがわかるのお前くらいだろ

 

265:このライバーがすごい! ID:RsXxJ7/g7

アザミん「そんな優姫の投票先を見てみよう」

 

266:このライバーがすごい! ID:zuidG4mXN

ニコ以外となると、サラか?

 

267:このライバーがすごい! ID:uk2IMOSbr

大穴で聖麗

 

268:このライバーがすごい! ID:BEvGftE/B

>>267

お前、賭け事とかしない方がいいぞ

 

269:このライバーがすごい! ID:7AmK7Wf/2

◇優姫ちゃんの投票先

・マリー

 

270:このライバーがすごい! ID:ml3HIq2x2

バトル開幕か!?

 

271:このライバーがすごい! ID:lO1KoTLo1

正妻アピール!?

 

272:このライバーがすごい! ID:UAN6oT56x

理由によっては配信枠が消し飛ぶぞ

 

273:このライバーがすごい! ID:Tup8mqQlp

アザミん「理由を聞こうか」

優姫ちゃん「激重だなんだって言われてるけど、かわいくていい人だなって思ったから。ちゃんと話して、仲良くなりたいなって」

マリー「ヤバ。あまりにもキュン」

 

274:このライバーがすごい! ID:qUjfd+e6U

イケメン

 

275:このライバーがすごい! ID:k2sFnNFvW

男前

 

276:このライバーがすごい! ID:ISFt94vLo

これで本人は惚れさせるつもりがないってんだから

 

277:このライバーがすごい! ID:rNihz8FMV

マリーがニコ以外に投票するのか……!?

 

278:このライバーがすごい! ID:I8F4u6Zkr

いや、マリーはワンチャン狙いでニコに投票し続けるし、

優姫ちゃんは負けず嫌いだからマリーに投票し続けるぞ

 

279:このライバーがすごい! ID:kU7tPdEF0

ニコならまた未投票とかやりそうだしな

 

280:このライバーがすごい! ID:Lk2m4MSUo

せっかくこういう企画なら新しい組み合わせ見たいし、アリ

 

281:このライバーがすごい! ID:zjX1mwwPF

てか今思ったけど、男5女5だとどう頑張っても最低男女コンビが一つできるよな

 

282:このライバーがすごい! ID:G0XHw3Cpw

リックと純花さんになったら、なんやかんやでリックの命が尽きる

 

283:このライバーがすごい! ID:LdRdeki2R

ニコがサラか純花さんと一緒になったら、童貞すぎてもじもじし続けて配信が終わる

 

284:このライバーがすごい! ID:m2R7oXytg

満ちゃんがこの場にいないってことは、『project:relay』のときもいないだろうしな

 

285:このライバーがすごい! ID:Fx8N7f1M7

勝ち取れ、ニコ

 

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