稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「さて、お前たちに集まってもらったのは他でもない」
『project:matching』を終えた俺はアザミを呼び出し、月宮さんを連れて事務所の会議室にいる。途中で満も合流し、俺にただいまも言わず月宮さんとハグをしていた。別に寂しくはないが、どんどん俺から満が離れていっているような気がして寂しい。
が、今そんなことはどうでもいい。問題は、『project:matching』の結果だ。二回目の投票の時、聖麗に「ところで、ワタシのチアダンスを見てくれませんか?」と言われ、普通に無視しようとしたがあまりのキレに目を奪われ、気づけば投票時間が終わっていて。
「サラさんと『project:relay』をすることになった。助けてくれ」
「清々しいくらいいつも通りね」
「どうにかしたいなら、それこそサラと話すべきだろう」
「ニコさんがほぼ初対面の女の人とまともに話せるわけないよ」
そう、サラさんと『project:relay』をすることになった! なぜサラさんは二回連続で俺に投票してくれたんだ! それ自体は嬉しいが、このままではついに炎上してしまう。マッチング成立した瞬間のコメント欄は俺への心配で埋まっていたが、アレは俺の視聴者だろうからノーカンだ。サラさんの視聴者からすれば、得体の知れない男と深夜帯に二人でいるという風に映り、それはもう面白くない。スパダリ王決定戦で一度お会いしたことはあるが、そんなに話したこともないし、もう終わりだ。俺の人生はここで終わるんだ。
「認めたくはないが、その通りだ。サラさんとまともに話せる気がしない」
「それはそれで面白いが」
「いいのか!? 俺がずっと意味をなさない音を漏らすだけのゴミになってしまうんだぞ!」
「だから面白いって言ったんだと思うよ」
「アザミは俺のことをおもちゃと勘違いしているのか? 俺は血の通った人間だぞ!」
「血の通った人間にしかできないようなリアクションをしているからな。もちろん人間だと思っている」
「ならいいんだ」
「ならいいのね……」
なぜ月宮さんは納得いっていないんだ? アザミは俺のことをおもちゃだとは思っておらず、人間だと断定してくれたんだ。それなら俺は何も言うことはない。
しかし、由々しき事態だ。サラさんとマッチングした瞬間マリーは「せっかくニコちーと一緒になれると思ったのに……」と罪悪感を刺激することを言うし、聖麗は「ではワタシとなんてどうですか?」って聖麗なりの気遣いを見せたのにも関わらず、「黙れ」と封殺され気持ちよくなっていたし。結局マリーは月宮さんとやることになり、聖麗はアルが回収してくれた。ちなみにアルが聖麗を選んだ理由は「ニコさんと仲良さそうなんで!」というもので、聖麗がアルを選んだ理由は「アルさんのファンの方の悲鳴を聞きたいと思いまして」という邪悪なものだった。あいつは本当にどうにかした方がいい。
いや、違う。どうにかしてほしいのは俺の方だ。
「頼む、月宮さん! サラさんと仲がいいんだろう? 俺にサラさんのことを教えてくれ!」
「別にそんな心配いらないと思うけど。グレイヴィーさんとサラさんがあんな感じなんだし、ニコとも相性いいと思うわよ」
「いやしかし、月宮さんが俺のことをサラさんに話してくれていたからサラさんが俺に興味を持ってくれたんだろう? それなら、どんな風に俺のことを話していたのか教えてくれ」
「それは私にも教えてくれ」
「私も聞きたい!」
「ど、どうでもいいでしょ、それは」
月宮さんが珍しく動揺している……? もしかして、俺の悪口を言っているのか? いや、月宮さんは影口を言うような人じゃない。その人に対して思ったことははっきりその人に対して伝える人だ。だとすると、月宮さんが動揺している理由は……恥ずかしい、のか? 自惚れるようで申し訳ないが、『project:tag』の時もかなりほ、褒めてもらえたし、いい風にサラさんに伝えてくれていると思いたい。それを本人である俺に聞かれるのが恥ずかしいのだと考えれば辻褄が合う。
とすれば、あまり無理に聞くのもよくないか……? ただ、サラさんが俺に抱いている印象を知っているか知っていないかで対応が変わってくる。月宮さんが話した俺の印象と実際の俺の行動で乖離があれば、月宮さんが嘘を言ったことになってしまう。俺のせいで月宮さんが嘘つきだとは思われたくない。こんなに正直な人はいないのに。
「頼む、教えてくれ月宮さん。俺が緊張するからというだけではなく、月宮さんの友人というのなら万が一にでも失礼があってはいけないんだ」
「……わかったわよ。アザミ、スマホで録音してるのわかってるから。切りなさい」
「チッ、なら動画にするか」
「よりダメに決まってんでしょ」
アザミが頬を膨らませて抗議の視線を月宮さんに送るが、残念ながらあざといのは月宮さんには通用しない。ちなみに、俺にはめちゃくちゃ通用する。一瞬「別に撮らせてやってもいいじゃないか」と言いかけた。だ、だってかわいいから!
「まぁいい。記憶に焼き付けて視聴者に共有し、永遠の記録とすることにしよう。さぁ話せ」
「できればアザミには出て行ってほしいところね……」
「アザミ。月宮さんが他には言ってほしくないそうだ。今回は我慢してくれ」
「……わかった。嫌われたくはないからな」
「別にそのくらいで嫌いになったりしないわよ。いらない心配しないの」
「満、今度あのセリフを俺も言おうと思うんだが、どう思う?」
「ニコさんは自分の心配事が多すぎるから向いてないと思う」
そんなこと言う前に自分の心配をしろということか。何か、泣けてきたな……。
「で、どんな風に伝えてるかだけど……」
そこで言葉が切れ、月宮さんには珍しく口ごもる。目を俺から逸らして、口を開いては閉じ、まるで初対面の人を前にした俺のようだ。それは言い過ぎだ。俺はもっと醜くてひどい。そう考えれば、やはり月宮さんは美人だ。俺も似たようなことは何度もしているが、月宮さんのようにかわいらしい印象は抱かせることはできない。大体「情けない」か「童貞」と言われる。改めて思ったが、なぜ俺はここまでズタズタに言われて無事でいられるんだ?
「優姫。そんなに言いづらいほどニコのことをべた褒めしているのか?」
「ちっ、ちがっ……まぁ、違くはないけど」
「別に言えないなら言わなくてもいいぞ」
「言えるわよ! 今から言うからちゃんと聞きなさいよ!」
負けず嫌いすぎる。俺くらいチョロいんじゃないか? アザミも目を丸くしてびっくりしてるぞ。どうやらアザミの中ではもう何回かラリーすることを想像していたらしい。が、月宮さんは自分で「言う」と言った手前、「言えないなら言わなくていい」と言われたから負けず嫌いが顔を出したんだろう。そういえば、「意味わかんない!」と言って投げ出した恋愛ゲームも最終的にはクリアしていたし、『やると決めたら絶対にやる』んだろうな。流石だ。
月宮さんは逸らしていた目を俺へと向ける。今度は俺が恥ずかしくなって目を逸らすと、「目を逸らすな!」と一喝されて反射的に背筋が伸びた。笑うなアザミ!
「大体は前『project:tag』で褒めたところと一緒で」
「褒めたところ? どんなところだったか忘れてしまったな」
「絶対覚えてんでしょ! わざとらしいのよ!」
「別に言えないなら言わなくてもいいが」
「言えるわよ! 優しすぎて懐が広くて面白くて、いいやつだから幸せになってほしくて、だからほっとけなくて、満ちゃんのこと大事にしてるところが好きでほんっとーに偉いなって思ってて! 顔と声がよくて、人に褒められるのが慣れてないからかわかんないけど、褒められたら狼狽えるところがかわいくて、やっぱり人がいいんだなって思うとかそういうのよ!」
マズい、二回目なのに嬉しい! あとやはり負けず嫌いすぎる! 満は「生で聞けた!」と喜んでいる! そうか、そういえばあの時満はいなかったから、聞くのは初めてか。めちゃくちゃ嬉しそうだな。ふふ、かわいいやつめ。俺が褒められて嬉しいのか。何? そうだよ、だと? ほんとに可愛いな満。
「それで、まだあるんだろう?」
「まだあるわよ! 舐めんな!」
「まだあるのか、嬉しいな……」
「ね! 月宮さんニコさんのこと大好きじゃん!」
「そりゃ好きよ! 大事な同期で、そうじゃなくてもいい人だもの」
「それは恋愛的な意味でか?」
「いや、それはまったく」
「言えないなら言わなくてもいいが」
「ほんとにない」
満に背中を擦られる。い、いいんだ。俺も月宮さんもその気はないっていうことはもうずっとわかっているから。わかってはいるもののやはり傷つくのは変わらないが……。こう、男としての自信を無くすというか……。でもよく考えればまだ童貞なのに自信もクソもないか。でも今までの流れなら「言えないなら言わなくてもいい」って言われたら「好きよ!」って言うところだろう。どこまで正直なんだ。
「で、ニコには本当に感謝してるっていうか、ニコ自身はそう思ってないでしょうけど、間違いなく私たちが人気になれたのはニコのおかげだし、ニコがいい人で面白くて、誰にでも面白がってもらえるから隣にいる私たちも自然と見てもらえてるんだろうなって」
「それは違う! というのも、月宮さんの意見だから否定するのもよくはないが、こんな俺を二人が受け入れてくれたからこそだ! 俺がいたからというわけではなく、二人がいたからこそ今の結果がある!」
「そういうところが好きって言ってんの! っざけんじゃないわよ!」
「い、今俺は怒られたのか!?」
「いや、告白だぞ」
「だからニコは好きだけど人としてよ! 男としてなら全然好きじゃないわよ!」
「怒られていたようだな……」
「に、ニコさん元気出して! ニコさんはカッコいいよ! ほら、人には好みがあるし、ニコさんと月宮さんは戦友っていうかそういうので、もう! 月宮さん、ニコさんが傷つくような言い方しなくてもいいでしょ!」
「だってはっきり言わないと勘違いするでしょ、そいつ」
満が黙った。何負けてるんだ!!
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part25
379:このライバーがすごい! ID:Hc/phktNJ
ニコは大丈夫なのか……?
380:このライバーがすごい! ID:v2lYnHR57
俺心配だよ、ニコ
381:このライバーがすごい! ID:7sj7keXgP
ニコとサラか……
382:このライバーがすごい! ID:U9OxnYHkQ
優姫ちゃんがニコのことをどう伝えてるのかが気になる
383:このライバーがすごい! ID:ocV+zYzYl
サラのグレイヴィーに対する扱い見てたら、ニコとは相性いいと思うんだよ
384:このライバーがすごい! ID:NlkpzC7Bz
ニコははっきり物を言う人とは相性がいい
385:このライバーがすごい! ID:92XPNC5zm
あと頭おかしいやつ
386:このライバーがすごい! ID:mbdxXLfTQ
というか大体相性よくね?
387:このライバーがすごい! ID:8pW7RJO9N
相手がまともだったら自分がボケになれる
相手がおかしかったら自分がツッコミになれる
地味に両刀なんだよあいつ
388:このライバーがすごい! ID:buXfBTLQ3
実は優秀なのか……?
389:このライバーがすごい! ID:SZ5fs76pu
実際はボケてはないんだけどな
素が面白いだけで
390:このライバーがすごい! ID:4KPv8nQCj
優姫ちゃんとマリーも気になるな
391:このライバーがすごい! ID:1O5MDit3N
普通に仲良くやりそう
392:このライバーがすごい! ID:PUUHAmVFr
でも、今二人乗りの件でバチバチやりあってるところだろ
393:このライバーがすごい! ID:DnrkPzO+w
>>392
優姫ちゃんはやりあってないぞ
394:このライバーがすごい! ID:k41mMvUso
>>392
ちょっとだけマイクで拾ってたけど、友人(女性の方)と二人乗りしたみたいだぞ
395:このライバーがすごい! ID:1MFiCKx6c
マジ?
396:このライバーがすごい! ID:yeUmwa6h3
まさかニコ、お前……
397:このライバーがすごい! ID:PRrnZgNjc
嘘だ! ニコに彼女がいるわけがない!
398:このライバーがすごい! ID:gIZCIWoec
結婚式には呼んでくれるかな
399:このライバーがすごい! ID:vKUvNSZ2x
>>398
視聴者の分際ででしゃばるな
祝ってるってことが伝わればそれでいいだろ
400:このライバーがすごい! ID:8uB64IDdV
ニコは童貞だけどなんか結婚しそう感がある
401:このライバーがすごい! ID:wo3HKl2NT
そんで結婚式に一期生が乱入してめちゃくちゃにされそう
402:このライバーがすごい! ID:vyoHjUxBG
そんなことされたら結婚式中に離婚だろ
403:このライバーがすごい! ID:c/eR4Qq2N
>>402
結婚式中に離婚ってスピード離婚すぎるだろ
404:このライバーがすごい! ID:YCf/Q+GRT
でもニコと結婚するなら、そういうのも全部わかってそう
405:このライバーがすごい! ID:P8vEpJ1dT
もうそのくらいで終わりにしとけ
マリーが見てたらどうするんだ
406:このライバーがすごい! ID:bSSpuTZue
ヒェ……
407:このライバーがすごい! ID:GbP21hj3U
ヒェッヒェッヒェッヒェッ……
408:このライバーがすごい! ID:tPbEFGSpj
>>407
怖がると見せかけて笑うな
409:このライバーがすごい! ID:IzTe6x8ii
ピーマン
410:このライバーがすごい! ID:/4ttnmbSj
>>409
何しに来たんだお前
411:このライバーがすごい! ID:l4YSp4qza
>>409
荒らしか?
412:このライバーがすごい! ID: IzTe6x8ii
細切りの肉
413:このライバーがすごい! ID:q6NbtIR7d
>>412
こいつ、青椒肉絲作りにきてやがる……!
414:このライバーがすごい! ID:42Un3VDcI
じゃあ荒らしじゃないな
415:このライバーがすごい! ID:AL0tdalcl
>>413
待て、肉は細切りって言ってるのにピーマンは細切りって言ってないぞ
青椒肉絲って決めつけるには早急すぎる
416:このライバーがすごい! ID:2zq5tyeyM
満天の青空
417:このライバーがすごい! ID:J+QBU3UGM
>>416
それは蒼穹すぎる