稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第122話 project:relay

「ハァッ、ハァッ……!!」

 

 俺は今、事務所の会議室に隠れている。それはなぜか。

 

 遡ること数十分前。「ところで『project:relay』で何をやるか詳しく聞いていないんだが、知っているか?」と月宮さんとアザミに聞くと、「そろそろ真理さんと打ち合わせしてこないと」と言って月宮さんが俺の前から消え、「そろそろシゲキを地獄に落とさなければ」と言ってアザミも俺の前から消えた。残った満は「知ってるけど教えないよ」と言って、霊体となってどこかへ去っていった。

 こうなると、他の『project:relay』に出る人に聞くしかない。しかし明さんはグレイヴィーさんと一緒にどこかへ出かけており、松風純花さんは早速失礼を働いたリックさんを始末していて、聖麗とアルは別の番組に出演中。月宮さんとマリーは、月宮さんの言葉を信じるのであれば、打ち合わせ中で邪魔はできない。

 

 つまり、残されたのはサラさんだけ、ということになる。そこから勇気を出してサラさんを探し、見つけ、声をかければ。

 

「ちょうどよかった。暇だし優姫の好きなところ教えてよ」

 

 と言われ、逃げ出したというわけだ。いや別に、好きなところがないというわけではなく、ただ単純に照れ臭いのとあまり話したことのない女性だから逃げたというだけで!

 相手のいない言い訳をするのはやめよう。問題は、なぜサラさんが俺から月宮さんの好きなところを聞きたいかということだ。俺が月宮さんの彼氏というのならわかる。だがもちろんそんなはずもなく、幾度となく告白もしていないのにフラれている。ではなぜだ?

 

 いや、よく考えてみろ。サラさんが俺を選んでくれたのは、月宮さんから俺のことを聞いていたからだ。そして、月宮さんが俺のことをどういう風に伝えていたかはさっき教えてもらった。であれば、件の俺から月宮さんの好きなところを聞きたいというのは自然な話、なのか? だからといって恥ずかしすぎる! いやでもそういえば俺、『project:tag』の時に堂々と本人相手に言っていなかったか? ただあの時は月宮さんがいたから言えただけで、月宮さんがいないところで言うのでは話が違う。本人に言うより本人と親しい人に言う方が恥ずかしいんだ。わかるだろう!?

 

「というか、どうせ『project:relay』で会うんだから逃げる意味なくないか!?」

「そうね。だから、もう逃げないでくれると助かるんだけど」

 

 突然聞こえてきた声にびっくりして体が跳ね、机に頭をぶつける。い、痛い!!

 そのままゴロゴロと床を転がれば、自然と机に座るサラさんが視界に入った。表情を無に固定したまま俺を見て、手をひらひらと振っている。

 

「大丈夫? 頭を打ってまともにならないといいけど」

「俺は元々まともですよ! それよりなぜ俺がここに隠れていると気づけたんですか」

「ニコの近くは波が揺れてるからすぐにわかる」

 

 そういえば、サラさんはあらゆるものを『波』として捉える特異体質を持っていたのだったか。それで俺の近くは波が揺れている……やはり俺は特別だったらしい。つまり、俺の隠しきれないオーラが溢れ出していて、それが『波』として捉えられているということだろう。参ったな、特異体質で捉えられる力ということは、確定で特別な力ということじゃないか……。

 

「何か気持ち悪い波。ニコから出てるやつ」

「俺がわからないものを使ってバカにするのはやめてもらえませんか」

「ごめん、バカにしたわけじゃないの。ただ、聖麗と似てるなって思って」

「じゃあバカにしてますよそれ」

「確かに」

 

 俺の言葉に同意して、サラさんが薄く笑う。くっ、かわいい……! アザミもそうだが、普段無表情な人が笑うとギャップでやられてしまう。きっとサラさんのファンもサラさんが笑うだけで大盛り上がりすることだろう。そして普段無表情の人が笑うとギャップで更に可愛いという属性の何がいいかと言うと、やはり『自分にだけ見せてくれる笑顔』だ。親密な関係になっていくにつれて笑顔の回数が多くなり、それを珍しいなと思って見ていれば「……なに」と恥ずかしそうにジト目で見られる。それがまた可愛くて、可愛さに殺されると言っても過言ではない威力を誇っているといっても過言ではない。

 

「……? 何か気持ち悪いこと考えてる?」

「波を知覚するのやめてもらえませんか。それに気持ち悪いことは考えていません!」

「ふぅん。優姫が、ニコが黙ってる時は大体キモいこと考えてる時って言ってたから」

 

 月宮さんめ……!! まるで俺のいいところばかりを伝えているみたいな言い方をしていたが、しっかり悪口を言っているじゃないか!! でも本人から堂々とキモいって言われているから、陰口というわけではないのか。それならまぁいい。多分満が近くにいたら、「キモい!」って言われていただろうしな。

 ただ、黙っていたのはキモいことを考えていたからというわけではない。むしろ、その理由のせいでキモいことを考えさせられたと言ってもいい。その理由とは、何を話していいかわからないからだ!! 何を話していいかわからないから自分の世界に閉じこもるという結果になり、キモいことを考えてしまったというだけのこと。つまり……いやどう転んでも俺が悪いな。

 

「すみません、サラさん」

「いいよ。何がかはわからないけど」

 

 俺の突然の謝罪を気にした様子もなく、サラさんは机から降りて俺の隣まで歩いてきて、目線を合わせるようにしゃがむ。そういえば俺、ゴロゴロ転がって倒れたままだった!

 

「な、なに近づいてきているんですか!! 顔を覗き込まないでください! お、俺は男であなたは女性! 適切な距離を保ってください!」

「なるほど、日本の少子高齢化の原因はニコだったのね」

「自分で言うのもなんですが、俺をスタンダードだとは思わない方がいいですよ」

「自分のレベルが低い時に言うセリフじゃないわよ、それ」

 

 俺の中でのサラさんの情報が更新された。サラさんは舌戦が強い。そういえば、グレイヴィーさんも「サラは口が強くてなぁ。おまけにフィジカルもいいし、いい体もしている。俺に酒という恋人がいなきゃ、今頃サラに夢中だっただろうな」と言っていた。いっ、いい体!!? マズい、意識しないようにしなければ! ただでさえ緊張しているのに、異性を意識してしまえば本当に音を漏らすだけのゴミになってしまう!!

 

「それで、優姫の好きなところは?」

「あがっ、ぐっ、えぃ」

 

 マズい!!!! 意識しないようにと冷静になろうとしたところに、とんでもないことを聞かれて音を漏らすだけのゴミになるスタートを切ってしまった!! このままではサラさんが次に月宮さんと会った時、「あのゴミ、いつ掃除するの?」と言ってしまう!! そうなれば月宮さんは俺のことを友人だと思ってくれているから怒ってくれるだろう。まさか俺が音を漏らすだけのゴミになったことで喧嘩が勃発するとは、そんなことはあってはならない!

 落ち着け、こういう時は自分の中の感情をポジティブに置き換えればいいんだ。この前ネットで見た。例えば今は『ドキドキ』しているから『ワクワク』しているという風に考えれば……いやしかし、月宮さんとサラさんが俺のせいで喧嘩をするかもしれないのにワクワクするなんて最低ではないか!? なんて最低な人間なんだ、俺は……!! あれほど俺によくしてくれている月宮さんが喧嘩することに対してワクワクするなど、俺は月宮さんの友人を名乗る資格がないのかもしれない。

 

「ニコ、聞いてる?」

「すみません……俺は最低だ……」

「? 優姫がニコのこと大好きだから、そんなわけないと思うけど」

「いえ、それは月宮さんがいい人だからであり、俺が最低ではないという証明にはなりません」

「優姫の見る目がないってこと? そんなわけない。だってそれ、私の見る目もないってことだから……ていうかなんでカウンセリングさせてるの。さっさと優姫の好きなところ教えろ」

「というかそもそもなんで月宮さんの好きなところを知りたいんですか!!」

「私も優姫のこと好きだから。好きを語りたいっておかしなこと?」

「語りましょう」

 

 この後、サラさんと月宮さんの素晴らしいところを語り合った。俺にしてはめちゃくちゃ仲良くなれた気がする。やはりネットで見た『仲良くなるには共通点を見つける』というのは本当だったんだ!!

 

 

 

 

 

「ところで、これは何ですか?」

「あれ、『project:relay』の内容知らないんだっけ」

 

 月宮さんの素晴らしいところを語り、ノリで一緒にご飯も食べに行って、自分たちの『project:relay』の時間までいろんなことを語り合うという俺にしてはとんでもないことを成し遂げ、いざ『project:relay』の時間になって気づいた。そういえば、詳細を知らないままだったと。

 スタッフさんの案内で連れてこられたのは、『project:eden』でも一番広いスタジオ。その床にはすごろくのようなマスが表示されていて、なぜか俺たちは途中のマスに立たされている。

 

「えっと、『project:relay』は……」

『もう配信始まってるぜマイペースども! リスナーを楽しませなきゃライバーじゃねぇ!』

 

ニコがサラの隣に!?

ニコ、大丈夫か!!

またしても何も知らされてなさそうだな

ニコの高パフォーマンスを引き出すための処置だからな

 

 サラさんが説明してくれようとした瞬間、空中にモニターが表示され、空中にコメントが流れ始める。いつも思うが、どういう技術力だ!? アニメでしか見ないぞこんなの!

 モニターに映っているのは、二期生の物部(もののべ) (かたる)さん。同期のリニスと何かと小競り合いを起こしていて、仲が悪いかと思いきやリニスは自身と肩を並べるエンターテイナーとして物部さんの名前を挙げている。つまり、リニスと似たような人だと思った方がいいだろう。

 

『Ladies and Gentlemen!! ボーイとガールはもう寝る時間だが、『project:eden』が奏でる祭囃子を聞いちゃ目が覚めても仕方ねぇ!! パパとママへの言い訳をしっかり考えて、モニターにかじりつけ!! この俺、物部語と素晴らしいキャストが送る『project:relay』へようこそ!!』

 

うおおおおおおお!!!!

テーマパークみたいだ! 行ったことないけど!

ニコ目当てできました

サラ目当てできました

 

 流石はリニスと肩を並べるエンターテイナーというべきか、盛り上げるのがうまい。今が深夜2時だというのが信じられないくらいだ。しっ、深夜2時!? 俺はこんな時間までサラさんと二人きりだったのか!? 満から《星菜ちゃんのところにお泊りしてくる!》と言われて《迷惑はかけるなよ》と送り出した時から「あれ? もうそんな時間か」と思っていたが、しっ、深夜2時!?

 だ、だが、二人きりというわけではなさそうだ。これだけ盛り上げてくれる物部さんがいるのなら、サラさんと二人きりというのを意識しなくて済むだろう。

 

『ルールは簡単! 二人ですごろくをするだけだ! 計五組のライバーが一時間ずつすごろくを遊んで、途中で交代! 進んだマスは次の組に反映され、それを繰り返して最終的にどこかの組でゴールできれば100万円!』

「ひゃっ、100万円!? 遊んで暮らせるじゃないか!!」

「遊んでは暮らせないでしょ」

『俺はトラブルが起きたり説明が必要だったりしたら出てくるが、基本はお前ら二人で盛り上げろ!! 自信がねぇなら安心しな! 俺作り上げたフィールドで、輝けねぇやつは存在しねぇ! っつーわけで、『project:relay』三組目、ニコ&サラ、スタートだ!!』

 

うおおおおおおお!!!!!

ゴールしちまえ、ニコ!!

頑張れサラ!!

純花さんとリックみたいな地獄は見せないでくれ!!

 

 ……じ、地獄になるようなマスがあるということか?

 

 

 

 

 

project:edenを語るスレ part673

 

501:このライバーがすごい! ID:j7VIZ0zrO

これまでのおさらい

◆一組目(0時~1時):アル&聖麗

以下、ピックアップ

・『3分間ラブラブカップルを演じる』というマスに止まり、ノリノリで演じ切る

・『星菜ちゃんのダンスを1分以内に記憶して、完コピできなければ10マス戻る』というマスに止まり、聖麗が15秒で完コピ

・『これから三回分、どちらかが馬になり、それに乗って進む』というマスに止まり、

聖麗が「SMプレイを!!?」と発言してアルが爆笑

・『スタートに戻るかどうか選んでもいい』というマスに止まり、ノリでスタートに戻る

 

502:このライバーがすごい! ID:M48g1Mk7e

>>501

戦犯

 

503:このライバーがすごい! ID:x33WzoqgK

まぁ、結構いいペースで進んでたから、後ろの出番考えたんだろ

 

504:このライバーがすごい! ID:x63HrThhk

聖麗のキモさがアルによって軽減されててよかった

 

505:このライバーがすごい! ID:XB6huk8w/

結構いいコンビだったな

 

506:このライバーがすごい! ID:tJbQyYmna

アルは大体何でも笑ってくれるから、アルがいれば空気がよくなる

 

507:このライバーがすごい! ID: j7VIZ0zrO

◆二組目(1時~2時):リック&純花さん

以下、ピックアップ

・『3分間ラブラブカップルを演じる』というマスに止まり、空気が凍る

・『お互いを褒め合う』というマスに止まるも、純花さんが無言

・『これから三回分、どちらかが馬になり、それに乗って進む』というマスに止まり、リックが純花さんの無言の圧に負けて馬になる

・『相手に対して思っていることを言う』というマスに止まり、純花さんが「私と二人きりの時は大人しいですよね」と言って、リックが「それ、付き合ってるみたいに聞こえますね」と失言

 

508:このライバーがすごい! ID:HBHZr39/n

頼む、ニコ、サラ

凍った空気を溶かしてくれ

 

509:このライバーがすごい! ID:BT75B++6O

苦しいのを楽しめる人は大好物だっただろうけど……

 

510:このライバーがすごい! ID:9sVhgorxT

あと、いつも好き勝手してるリックがひどい目に遭うところが好きな人

 

511:このライバーがすごい! ID:16DneiG87

ニコは好き勝手してないのにひどい目に遭ってるぞ

 

512:このライバーがすごい! ID:S6/XczZgG

今回もサラと二人きりになるしな……

 

513:このライバーがすごい! ID:fWW1CSSvB

>>512

は? 羨ましいだろうが

 

514:このライバーがすごい! ID:D0Rs9LWrW

>>512

喧嘩売ってんのか、テメェ

 

515:このライバーがすごい! ID:WlQIYMt7s

>>513

>>514

ニコは童貞だぞ

 

516:このライバーがすごい! ID:FacwOdso/

童貞のニコにサラはマズい

 

517:このライバーがすごい! ID:q81PJh/vR

二連続地獄は勘弁してくれよ……

 

518:このライバーがすごい! ID:mk568iu04

始まったぞ!!

 

519:このライバーがすごい! ID:ehlEE2H6X

ニコが二本の足で立ってる!?

 

520:このライバーがすごい! ID:JEye+cWu8

本当にニコか……?

 

521:このライバーがすごい! ID:itjTg/rCf

サラの隣にいるのに!?

 

522:このライバーがすごい! ID:fvPIrimjr

どうせしばらくしたら転がるだろ

 

523:このライバーがすごい! ID:LavpK+nge

『お互い見つめ合って呼び捨てで名前を呼び合う』

 

524:このライバーがすごい! ID:VNmzIPX5Z

【悲報】ニコ、腰を抜かす

 

525:このライバーがすごい! ID:Et8NH3A3H

やっぱり

 

526:このライバーがすごい! ID:w8+VxEiRV

やっぱり

 

527:このライバーがすごい! ID:i5B464Bcx

サラ「なんで腰抜かしてるの」

ニコ「あなたが綺麗だからですよ!!」

サラ「ありがとう。ほら、ニコも名前呼んで」

ニコ「しかし、このような場で婚約などと……」

サラ「それだけで婚約になるなら、出生率で悩まされてないと思うけど」

 

528:このライバーがすごい! ID:KcAHOB+6B

相性○

 

529:このライバーがすごい! ID:go7a0T351

見つめ合って名前呼ぶだけで婚約って、童貞すぎだろ

 

530:このライバーがすごい! ID:mdkHcUsWB

童貞がおもしろコンテンツになる男

 

531:このライバーがすごい! ID:PqbQ3fESy

生き様が面白い男

 

532:このライバーがすごい! ID:qmJjTfnF4

地獄にはならないみたいでよかった

 

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