稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第128話 誠意

「なっなにー!!!???」

「佐藤さんうるさい!! どうしたの!」

「これを見ろ、満!!」

 

グレイヴィー・ドラグナー
@Groovy_DORA07

ニコとアルと俺で、バレンタインバトルでビリになったやつがホワイトデーボイスを出すことになった

 

 バレンタインバトルでどのように勝利を収めようかと考えて早数日。「俺の視聴者は俺がホワイトデーボイスを出すことになると言ったら、嬉々として俺を負けさせる……!!」と頭を抱えているときに、手軽にメッセージのやり取りができるアプリ『Σ』で先手を打ってきた。普通に見れば「応援頼む」といった内容でも、俺の視聴者が目にすれば「ニコを負けさせろ」という指令になる! マズい、グズグズしている暇なんてなかった!

 

「このままでは俺が大敗を喫してしまう! クソッ、どうする!?」

「普通は応援してくれると思うけど……」

「言いにくいが、俺の視聴者は俺が負ける姿が大好物だ!」

「でも、佐藤さんのホワイトデーボイス聴きたい人一人もいないと思うよ?」

「一人くらいいるだろう! 俺を舐めるな!」

 

 それに、聴きたいかどうかなど関係ない。視聴者は俺がホワイトデーボイスを出したくないということをわかっていて、俺を敗北させてひどい目に遭わせることが目的なんだ! あとホワイトデーボイスの枠を勝手に争っていいのか!? グレイヴィーさんのことだから運営にちゃんと確認はとっているのだろうが、もし取っていなかったら勝手に大騒ぎしている痛いやつになってしまう。いや、この場合取っていない方が嬉しいのか? 今のままではどうやっても負ける未来しか見えん!

 

「でもさ、誰のホワイトデーボイスを聴きたいかって言われるとアルさんじゃない? それならアルさんを負けさせようってなると思うけど」

「考えが浅い! 俺の視聴者が俺を負けさせる動きをするということは、当然俺以外にファンレターを贈るだろう。つまり、アルのファンがアルを負けさせようとしても、俺のファンがアルにファンレターを贈る! そして、そもそもアルのファンはアルにホワイトデーボイスを出してほしいと思いつつも、アルにファンレターを贈りたいという気持ちに嘘がつけないいい人たちばかりだ! 結果俺が敗北する!」

「佐藤さんの視聴者層、どうにかした方がよくない?」

「でも、みんないい人たちなんだ……こんな俺でも応援してくれるんだ……」

「応援の形が歪……」

 

 なんで俺がひどい目に遭っているところが大好きな人間ばかり俺の周りに集まるんだ。帝斗がその筆頭。もし帝斗が俺の視聴者のリーダーをやっているといってもいいくらい、俺の視聴者と帝斗は俺に関して面白がるポイントが似ている。

 そんなことはいい! ここからどうにかしてファンレターを獲得するために動かなければならない。このままビリになれば、誰も望んでいないホワイトデーボイスを出し、大恥をかいて『ミテラレナイヨ・サイコナイト』というあだ名がついてしまう!

 

 考えろ、ここから打開する方法。アルのファンに対してホワイトデーボイスが聴きたいだろうと誘導するのが一番簡単に勝てる方法だが、ファンの気持ちを操るような真似はしたくない。ならどうするか。

 

「万策尽きたな……」

「一策も出してなくない?」

「いや、まだやれることはあるはずだ! 月宮さんとアザミに相談しよう!」

 

ミッドナイト・サイコナイト

バレンタインバトルで勝つにはどうしたらいい!?

アザミ・フレンジー

何としてでもお前を負けさせようと考えている

月宮 優姫

あんたのファン層考えると、

グレイヴィーさんにあれ出された時点で負けね

 

「敵が増えた……!?」

「っていうより、元々敵だったけど気づいてなかっただけでしょ」

 

 そういえばアザミは完全にそっち側だった。この前もなんとしてでも月宮さんにバレンタインデーボイスを出させようとして、断る月宮さんに「そうか。まぁ恋愛経験がほとんどなく、ニコを童貞と言いつつも実際は経験で言えばトントンな優姫がバレンタインデーボイスなど無理だったか。すまない、優姫は優秀だが、できないことがあっても仕方がない」と言って、まんまと月宮さんは「出すわよ!!」と言ってバレンタインデーボイスを出すことになっていた。

 つまり、アザミは俺と月宮さんを恥ずかしい目に遭わせるのが大好きだ。あと、俺も月宮さんのバレンタインデーボイスを聴きたかったからその時助けなかったから、月宮さんからの援護も望めない。今もdicecodeで『アザミ、集計アプリいじってニコ負けさせて』と堂々と不正のお願いをしている。やめてくれ。アザミなら本当にやりかねん。

 

「月宮さんとアザミがダメとなると、他に味方をしてくれそうなのは……」

「佐藤さん、真理さんからdicecode来てるよ?」

「ん?」

 

朝凪 真理

私とラブラブ♡ボイス出すか、ホワイトデーボイス出すか、どっちがいい?

 

「一番厄介な敵がきた……!!」

「味方になってくれても敵みたいなものだもんね……」

「ライバーを味方につけるのは不可能だ。ここは誠意を見せるしかない! 配信するぞ、満!」

「え? うん」

 

 誰かの力が借りられないのであれば、自分の力でファンレターを獲得する! 元よりファンレターとはそういうものだ。何か見返りがほしいから贈るものではなく、相手に自分の気持ちを伝えたいから贈るもの。それを誰かにどうにかしてもらって得ようなど、ファンに顔向けができん!

 配信を開始すると、『一足先に負け顔を見せに来てくれたのか?』『ホワイトデーボイス楽しみだな、ニコ』『台本はアザミんが書くのか?』と好き放題コメントが飛んでくる。挨拶もなく煽り散らかしてくるのは俺の視聴者くらいだろう。

 

「我が名はミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ」

「そして、満です! みなさんこんにちは!」

 

満ちゃんだ!

こんにちは!

ニコ、お前は挨拶もできないのか?

これはバレンタインバトルで負けてもらうしかない

 

「こんにちは! 挨拶くらいできる!」

 

 そして、俺は今から俺への攻撃に余念がない視聴者と戦い、ファンレターを贈ってもらうようにせねばならん。では、ファンレターを贈ってもらうためにはどうすればいいか? そう、誠意を見せればいいんだ。俺が思っていることをそのまま伝えれば、俺の視聴者なら応えてくれるはず。

 

「みんな、聞いてくれ。俺は、バレンタインバトルでグレイヴィーさんとアルに敗北したら、ホワイトデーボイスを出さなくてはならん」

 

台本は誰が書くんだ?

楽しみにしてるぞ

普段スパチャできないからそこで金落とさせてくれ

聴くかどうかは別としてな

 

 普段スパチャできないから……なるほど、そういう人たちもいるのか。俺含めニッコリ探偵団は普段スパチャをオンにしていない。だからお金を落とす理由がほしい、ということか。それはそれでありがたいが、俺としては配信を見てくれるだけで十分だ。それに、俺が何かを演じてそれだけでお金をもらうこと自体もあまり納得もいっていない。が、月宮さんやアザミのボイスを買う時は何の抵抗もないから、そういうことだろう。

 

「はっきり言うが、俺はバレンタインバトルで負けたくないというのもそうだが、まぁ結果負けたら負けたでそれでいい。だが、本来貰えるはずだったファンレターがもらえないというのが嫌なんだ」

 

 そう。バレンタインバトルのせいでおかしなことになっているが、本来であれば普通にファンレターがもらえるはずだった。それなのにバレンタインバトルのせいで俺を負けさせる運動が起こり、俺のところにファンレターが届かなくなる可能性が出てきている。

 『楽園都市』で応援してもらっていることはわかった。だが、それはそれとしてファンレターは欲しい。それはそうだろう。ファンレターということは、俺という存在を肯定してくれているということ。普段コメントでは俺に対して攻撃ばかりしているが、他の人の目に触れないファンレターであれば、『project:talk』の時と同じように俺を褒め称えてくれるに違いない。

 

「俺はみんなの声が聞きたい。『project:talk』の時も、『楽園都市』でのステージの時にも、こんな俺を応援してくれている人がいるんだと実感できた。ただ、それぞれから直接想いは聞けていない。『project:talk』では時間が限られていた。しかし、ファンレターであれば許される限り自分の想いを文字という形にして贈ることができる。俺のホワイトデーボイスを聴きたいという人もいるかもしれないが、それと同じく、もしかしたらそれ以上に俺はみんなからの応援の声を届けてもらいたいんだ」

 

へ、へへ……

し、仕方ねぇな……

か、書いてやるか……

べ、別にニコのためじゃないんだからね!

 

 古のツンデレもいるが、どうやらみんなファンレターを書いてくれるようだ。今のところ『ホワイトデーボイス絶対に聴きたいから嫌です』みたいなコメントがないのは、本当に求められていないということだろうか。それはそれでなんかちょっと傷つくな……。

 

「あぁ、あとちなみに……なんだっけ満。注意することあったよな?」

「んーと、住所とか名前は封筒に書いて、本文には書かないように! みたいな。ニコさんには中身だけ届くから、ニコさんに見える範囲に住所とか名前とか入ってると、ファンとの直接的な関わりでトラブルが起きないようにって事務所が弾いちゃうから」

「それだ! 流石だな、満」

「えへへ。もちろん! ニコさんのフォローが私の仕事だから!」

 

 かわいくて偉すぎる。相棒として誇らしすぎないか?

 

まぁ当然か

『project:talk』でブースに入るときも似たようなこと言われたわ

うぐぅ、お返事ほしい……

バカ! そういうこと言うとニコならなんとかしようってなっちゃうだろ!

負担かけるな!

 

「負担……? 元々返事は書くつもりだったし、イベリスに何とかできないかと相談して、『オシャレすぎるから何とかするわ!』って言ってもらったぞ」

 

!?

えっ、お返事貰えるんですか!?

うそだろ

夢か?

直筆?

達筆?

毛筆?

 

 コメントの流れが速くなった。な、なんだ? ファンレターとはいっても手紙は手紙だろう? 手紙とは返事を書くものじゃないのか? 確かにファンとの直接的な交流を避けるという意味では俺の返事に対しても事務所の検閲が発生し、稼働も増やしてしまうだろうが、そういうものだと思って気軽にイベリスに提案してしまった。ま、まさか、俺って異端?

 

「へ、返事は書く! が、俺から返事してそこで終わりにし、それ以上のラリーはしない! 流石に俺も毎回大量の返事を書くのは大変だからな。だが、一度返事はする。最低限の礼儀は尽くさせてくれ」

 

だから好きなんだよ

愛してる

どれだけかかってもいいからな

無理はしないでくれ

 

 コメントがめちゃくちゃ俺を褒めている。な、何が起きているんだ!? バレンタインにはまだ早いぞ……!?

 

「それがわからないからニコさんなんだよねー」

「バカにするな!」

「褒めてるんだよ」

 

 何? ならいい。ふふふ。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part26

 

812:このライバーがすごい! ID:qlL8JAyNh

ニコがまたファンサービスしてる……

 

813:このライバーがすごい! ID:Z8BwxArUj

>>812

今度は何をやらかしたんだ?

 

814:このライバーがすごい! ID:eTk89BC1Z

>>813

バレンタインバトルで贈られてくるファンレター全部に返事するって

 

815:このライバーがすごい! ID:SLSwcNirx

エグすぎ

 

816:このライバーがすごい! ID:fKYN6fGtm

実際どれくらい贈られてくるんだ?

 

817:このライバーがすごい! ID:SGmqgIeDe

千はいくだろうなぁ

 

818:このライバーがすごい! ID:/KLxlwCGC

一人一通ってわけでもないだろうし

 

819:このライバーがすごい! ID:Psk18Iy/L

流石に「こういうのは返事しない」みたいなのもあるだろ

 

820:このライバーがすごい! ID:fFJJ9VAWO

明らかにニコが困るような内容とかな

 

821:このライバーがすごい! ID:fhOqlTpG3

ガチ恋はNG

 

822:このライバーがすごい! ID:YDp5IPkFR

>>821

本来はNGだけど、ニコならちゃんと返事してくれそう

 

823:このライバーがすごい! ID:jya9L++1S

つくづくいいやつだよな、あいつ

 

824:このライバーがすごい! ID:ig2kRfYz/

ニコのホワイトデーボイス聴きたかったけど、こりゃないな

 

825:このライバーがすごい! ID:0R1GRdKpI

返事付きってなったらニコに贈りたくなるし

 

826:このライバーがすごい! ID:5h5tfqxIh

ニコが返事を書くと聞きつけたアル

「え? 返事書けんの? よっしゃ!! ずっと書きたいと思ってたんだよなー!!」

 

827:このライバーがすごい! ID:9uAB2xf3+

こ、これは……

 

828:このライバーがすごい! ID:UXpixS84x

アルは正統な女性視聴者が多い

つまり……

 

829:このライバーがすごい! ID:6PBPYzyNq

ニコに悲しい顔させるな!! やるんだ、俺たちで!!

 

830:このライバーがすごい! ID:0h7Wbz26h

ちな、ニコとアルが返事を書くと聞きつけたグレイヴィー

「よし、ホワイトデーボイスの台本、リックに書いてもらうか」

 

831:このライバーがすごい! ID:QuzVyEPdk

 

832:このライバーがすごい! ID:bqGHCAWX6

 

833:このライバーがすごい! ID:xjXwzug2P

このおっさん、返事書くつもり毛頭なさそうだな

 

834:このライバーがすごい! ID:F0VSzoEHq

女の子限定で返事は書きそう

 

835:このライバーがすごい! ID:s1waRA+Wx

いや、これで俺たちを安心させて頑張らせない作戦かもしれない

 

836:このライバーがすごい! ID:NiZHVX2Gz

安心したから頑張らないって、どういうことだ?

 

837:このライバーがすごい! ID:Dlp2flbaI

安心したからといって、慢心するとは限らない

 

838:このライバーがすごい! ID:lpboWxfIY

自信の上には驕りがあり、謙遜の下には卑屈がある

 

839:このライバーがすごい! ID:rFf1oaiBN

んなことごちゃごちゃ言ってる暇あったら外出て働け、クソニートども

今平日の昼だぞ

 

840:このライバーがすごい! ID: NiZHVX2Gz

うえええええん!!

 

841:このライバーがすごい! ID: Dlp2flbaI

うわああああああん!!

 

842:このライバーがすごい! ID: lpboWxfIY

びやあああああああ!!

 

843:このライバーがすごい! ID:dw02BHo8W

あーあ、泣いちゃった

いじめるのやめなよー

 

844:このライバーがすごい! ID: rFf1oaiBN

じゃあ親をいじめるなよ

 

845:このライバーがすごい! ID:B2bNEyMWl

>>844

これ以上は本当にやめてやれ

 

846:このライバーがすごい! ID:vLwOnclHf

>>844

あとお前もニートだろうが!!

 

847:このライバーがすごい! ID: rFf1oaiBN

ふえええええええん!!

 

848:このライバーがすごい! ID:2UqxiwtKP

まだ自覚が足りてなかったか……

 

849:このライバーがすごい! ID:97+QVeSnL

ニートの風上にも置けんな

 

850:このライバーがすごい! ID:bC7+0mWru

風下には?

 

851:このライバーがすごい! ID:xoHHJqmPu

置いてやってもいい

 

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