稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第130話 誰のファンレター?

「やっと書き終えた!」

「お疲れ様! よっ、有言実行の男!」

 

 2月ももうそろそろ終わるかという頃。ついに、バレンタインバトルで届いたファンレターに対し、返事を書き終えた! 一通一通噛みしめながら返事を書いていたから想像以上に時間を使ってしまったが、漏れなくすべて返事を書いた。満も「佐藤さんにファンレターくれたんだから、私にくれたようなもんだし!」と言って俺の返事に一言二言添える形で返事を書いていたからか、少しテンションがおかしくなっている。今は体全体を使ったジェスチャーで『人』という字を表現しているところだ。本当におかしくなってるな。

 

「お疲れ様っス、先輩。満も」

「誰もデジタルでやっても文句言わねぇのに、全部手書きで書いたんだな……」

「少なくとも、俺を想って書いてくれたことには変わりはないからな。できるだけ俺の気持ちが乗るようにしたかった」

 

 手書きでなければ、もう少し早く終わっていただろう。ただ、デジタルでは文字の形状は誰が書いても同じものになってしまう。ファンというのは、応援している相手の命が感じられれば感じられるほど嬉しいということは理解しているつもりだ。ファンサービスとして手書きにした、というのは己惚れているようで少し恥ずかしいが、もし俺が月宮さんとアザミにファンレターの返事を書いてもらうとしたら、やはり手書きの方が嬉しい。だからそうした。

 ……しかし、何通か覚えのあるファンレターがあったような気がする。気のせいか? この前、父さんから「ファンレターに返事を書くらしいな。流石俺の子だ。受けた恩に対し誠意で返すというのはやはりいつの時代も大切で、それを実行できる者はそこまで多くはない。それを当たり前だと思っているお前を俺は誇りに思う。ところで、そこに一通くらい増えることは負担にならないか?」と聞いてきたから絶対父さんもファンレターを書いてくれたし、実際これ絶対父さんが書いただろっていうファンレターがあった。普通に「我が息子ながら誇らしい」って書いてたしな。そう考えると、父さんの血を継いでいるなら俺がわかりやすいと言われるのも納得できる。

 

「お疲れのついでに、来週3Dで配信あるんだけどよ」

「3Dで? 何をするんだ?」

「それは当日のお楽しみってことで」

「また教えないつもりか! いじわる!」

「可愛い彼女みたいな怒り方すんな」

 

 なぜか既に来ていた『project:eden』の社員さんにファンレターが積まれた箱を渡しながら、帝斗がまたしても内容不明の予定を告げてくる。俺はいつになれば万全の状態で収録に挑むことができるんだ? 内容を知ってから挑めるのは『EDEN’s:School』くらいだぞ。

 いや、そうか。もし俺がすべて内容を知ってから挑めば、他の追随を許さないパフォーマンスを発揮してしまうからだな? 帝斗は俺の能力を過大評価しているらしい。俺の親友なら無理もないな。仕方がないから許してやることにしよう。

 

「普通に慌ててる姿が面白いからだと思うよ」

「正解」

「悪魔め!!」

 

 やはり許せん! 俺を一番コントロールできる立場にあるからと、俺で遊びすぎていないか!? いつかぎゃふんと言わせて……でも俺で遊んでも誰にも文句言われないくらい色々やってくれているしな……。やはり許してやることにしよう。別に遊ばれても仕方がないからとかではなく、俺の心が広いから許してやるんだ。おい満! 「やれやれ、仕方ないな」みたいな感じで肩を竦めるな!

 

「というか今回は私も内容知らないんだよね」

「なに? 満もか。珍しい」

「満、大丈夫? いつもは先輩をフォローしなきゃって感じで緊張なくなるけど、本来は先輩に引っ張られて緊張しちゃうし」

「大丈夫! だと、思う……」

「もう緊張してる……」

 

 ふっ、仕方がない。今回ばかりは俺がしっかりしてやるか。何? いつもしっかりしておけだと? うるさい!!!!!

 

 

 

 

 

「はじまりました! 『誰のファンレターか当てろ! 当てられなければ好き好き♡ボイス収録!』。司会の朝凪真理でーす」

「おい!! ふざけるな!! よくわからんが何かに失敗すればマリーの欲望が満たされるということは理解できたぞ!!」

「うん」

「うん、じゃないだろうが!!」

 

マリーとニコと満ちゃんだと!?

よかった、満ちゃんがいて

密室じゃないよな?

無事か?

 

 どうやらマリーの激重はしっかり視聴者に把握されているようだ。マズいな、ネタとして受け入れられたら、マリーのブレーキがなくなってしまう可能性がある。そこの尺度がわからないようなやつではないと思うが、そろそろ護身術を体得しておいた方がいいかもしれない。

 いや、そうじゃない! 『誰のファンレターか当てろ! 当てられなければ好き好き♡ボイス収録!』だと!? 何通か違和感あるなと思っていたが、やはり俺の知っている人からファンレターがきていたのか!

 

「ここまできてしまったのであればやること自体は構わん。だが、『好き好き♡ボイス』はどうなっても収録せんぞ!」

「そうだよ真理さん! ニコさんのそんなおぞましいボイスなんて誰が聞きたいの!」

「そうかなぁ。結構聞きたい人いると思うけど……みんなも聞きたいよね? 聞きたいって言え」

 

聞きたい

聞きたい

聞きたい

聞きたい

 

 マリーに凄まれた俺の視聴者が全員負けてしまった。情けなさ過ぎる。まるで俺を見ているようだ。誰が情けないだと!?

 

 コメント欄を見てマリーが満足気に頷くと、その手にあるリモコンを鼻唄交じりに操作する。すると、天井が開いてモニターが下りてきた。久しぶりな気がするな、天井が開くの。普通の人生を送っていれば人生にそう何度も経験しないとは思うが、『project:eden』なら日常茶飯事だ。

 

「それじゃ、ルール説明します」

「待て! まだやるとは言っていないぞ!」

「ちなみに言ってたよ」

 

 そういえば言っていたことを思い出し、おとなしくルール説明を聞くことにした。男に二言はない。

 

「バレンタインバトルでニコちーがもらったファンレターの中に、ニコちーと満がよく知ってる人のものが混ざってます。今からモニターにその文面を表示するので、誰のものかすべて当てることができれば、私をプレゼント」

「どうなっても真理さんしか得しないじゃん!」

「えっ、私はもうニコちーのものってこと……?」

「まったくそんなこと言ってない!」

 

ダメだ、話が通じない

ここにきた時点でニコの負けは確定してた

浅はかだったな、ニコ

満ちゃんがニコ庇うように浮いてるのかわいい

 

 クソッ、どうする? このままでは『好き好き♡ボイス』を出すか、マリーが俺のものになってしまう! 後者が嫌かと言われればそうでも……やはり嫌だな。人を所有物のように扱うのは好きじゃない。というよりそこに俺の意思がなさすぎる。なんだクイズにすべて正解したから女性を自分のものにするって。景品扱いが過ぎるだろう。

 とにかく、全問正解した場合のご褒美を変えてもらう必要がある。クイズに正解して女性を我が物にしたら、そんなにクイズが得意ではないのに『クイズ王』と呼ばれてしまう。

 

「うそだよ。流石に冗談。全問正解したら、渡せてなかったチョコをニコちーにあげる。遅刻したバレンタイン? みたいな」

「よ、よかった、冗談か……ちなみに、そのチョコにマリーの遺伝子が含まれていたりしないよな?」

「そんなわけないじゃん。ちゃんとおいしく食べてもらいたいし」

 

まだもらってなかったのか

いの一番に渡してると思ってた

普段こんななのに、いざ当日となったら恥ずかしくて渡せなかったとか

それだとあまりにも可愛すぎるからマリーのファンになる

 

 コメント欄で様々な憶測が飛び交っているが、事実としてはdicecodeで『他の子と違う日に渡した方が印象的だから、別の日にチョコあげるね』と送られてきて、その別の日が今日というだけだ。ただ、それを視聴者に伝えるのは野暮だろう。人間、好き勝手想像している時が一番楽しいものだ。それが誰かに対して失礼に当たるならまだしも、ただ楽しいだけなら止める必要もないだろう。

 

「さて、それじゃあ第一問行くよ。準備はおーけーですか」

「あぁ、いつでもこい!」

「えっ……」

「真理さん。勘違いしてそうだから言うけど、胸に飛び込んでこいってことじゃないからね」

 

 マリーの前で迂闊な発言は控えようと思う。なぜか満がどんな勘違いをしたのか完璧に理解してくれているからなんとかなっているものの、俺とマリーの時に今のような勘違いをされたら、流れで結婚しているかもしれない。どんな流れだと自分でも思うが、俺はそういう星の下に生まれてきたと帝斗から口酸っぱく言われているからな。気を付けよう。

 

「じゃあまずはこのファンレターから」

 

 マリーがリモコンを操作すると、モニターに文字が表示された。

 

 いつも配信を興味深く見させてもらっている。

 ニコを見ていると、安心感がある。それは下に見ているとかそういうことではなく、いつでも隣にいるような。視聴者と気安い関係でいるから、対等であろうとするからこそそのような感情を与えてくれているのだと推測している。周りからひどい扱いを受けがちだが、見方を変えれば信頼感の表れで、更に見方を変えればニコの人間性が好ましいものだからこそだと思っている。人間性というのは物心がつき、成長していく過程で形成されるものだが、一体どのような成長をすればそのようになるのかと興味が溢れるほど、ニコの人間性は好ましい。

 また、距離が近いからこそ応援したくなる。どんな扱いを受けても、『ミッドナイト・サイコナイト』であろうとする姿を支えたくなる。きっと、ニコが大勢に支えられているように、ニコも誰かを支えているのだろう。私もその一人だ。ニコの言葉には心がある。裏表がない。社会に出る上で裏表がないのは時に不利となるが、それもまとめて力に変えられる運命を背負っているように思える。

 だらだらと続けるのは趣味ではない。要約すると、私はニコを応援していて、ニコに支えられている。少しでも重荷に感じるものがあれば、無駄な遠慮はせず吐き出してほしい。それを誰かに背負わせることをニコはよしとはしないだろうが、それと同じように私も、そして他の者もそれをよしとしないということを理解しておいてほしい。

 では、また笑わせてくれることを期待している。

 

「アザミだ!!」

「はっや、正解って、泣いてる……」

「お返事してるとき必死すぎて気づいてなかったけど、めちゃくちゃアザミさんだ……」

 

 あいつ、隠す気がなさすぎる……!! こういう企画があるのなら、少しは擬態するだろう! それに、ファンレターを書くというキャラでもないだろうに……! アザミのことだから気持ちを受け取って号泣する俺を見て面白がることが目的だとは思うが、だとしてもこのファンレターに嘘偽りはない。

 この、自分が思っている事実を淡々と打ち込んだようにも見えるファンレター。だが、俺を理解してくれているのだと感じられる。クソッ、視聴者からもらうファンレターももちろん嬉しいが、相手のことを知っていて、なおかつ普段本音を話さないような人の自分に対する気持ちをストレートに知ると、かなり嬉しい。涙が止まらん!!!!!

 

「……このままニコちーが泣き続けてればクイズに答えられないから、『好き好き♡ボイス』がゲットできる……?」

「ニコさん! 泣き止んで! 私、絶対やだ!」

「もういい……クイズに答えた上で、みんなに『好き好き♡ボイス』でお返しする……」

「それ、仇で返してるよ」

「なにおう!!?」

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part27

 

689:このライバーがすごい! ID:p+Po3ukxO

ニコは一体何度泣かされるんだ?

 

690:このライバーがすごい! ID:su5WqRBYg

ニコ、クイズに答えるって感じじゃなくて、ちゃんともう一回読んでるからな……

 

691:このライバーがすごい! ID:VwxiyeZBR

読むたび泣いてる

 

692:このライバーがすごい! ID:bA2AOZYAx

満ちゃんももらい泣きしてる

 

693:このライバーがすごい! ID:kW0Zibnkr

マリーがめちゃくちゃ慈しみの微笑みしてるぞ

偽物か?

 

694:このライバーがすごい! ID:OXvO8hxxy

>>693

いや、これは「やっぱり好きだなぁ」の微笑みだ

 

695:このライバーがすごい! ID:DU7wQ0qOn

いつもこうなら素直に可愛いのに……

 

696:このライバーがすごい! ID:IRDFjB7oi

これまでのまとめ

一通目:アザミん(正解)

二通目:星菜ちゃん(正解)

三通目:姉御(正解)

四通目:優姫ちゃん(正解)

 

697:このライバーがすごい! ID:5qj6JVo4v

泣きすぎてて気づいてなかったけど、地味に全問正解すごいな

 

698:このライバーがすごい! ID:5S7d1IfSp

姉御と優姫ちゃんの時は迷ってたけどな

 

699:このライバーがすごい! ID:sDNexTel8

アザミん、星菜ちゃん⇒隠す気一切なし

姉御、優姫ちゃん⇒一般ファンに擬態

だから無理もない

 

700:このライバーがすごい! ID:T1AlOsuVA

姉御と優姫ちゃんはしっかりしてるなぁ

 

701:このライバーがすごい! ID:LfYxmbick

プロエジェに必要な人材

 

702:このライバーがすごい! ID:GnyZAwcTY

常識人増えてきてるのに、一期生のパワーがすごくてまだおかしい集団だと思われてる

 

703:このライバーがすごい! ID:m75y+VOBf

五通目誰だこれ?

 

704:このライバーがすごい! ID:AJbjDvTfB

タメ口で書かれてるから、この人も隠す気はなさそうだけど

 

705:このライバーがすごい! ID:ZfDPPcvSm

男っぽい

 

706:このライバーがすごい! ID:9mXOR2TJG

男でニコと仲よくてタメ口なのって、全員自己主張ものすごいよな?

 

707:このライバーがすごい! ID:7K4ohVTG7

ニコが動揺してるぞ

 

708:このライバーがすごい! ID:Hnhi7JY1z

ニコ「なんて答えればいい?」

 

709:このライバーがすごい! ID:RumqkBDtp

どういうことだ……?

 

710:このライバーがすごい! ID:IM5iosqxo

!!

友人か!?

 

711:このライバーがすごい! ID:DXcgovmu6

なにっ!? あの!?

 

712:このライバーがすごい! ID:Be2Ddg1K5

社会性がまったくないクソニートのニコを支えるあの友人か!?

 

713:このライバーがすごい! ID:RKoeymWFQ

友人だ!!

 

714:このライバーがすごい! ID:4C6of9Hxk

文字だけど、表に出てきたの初めてじゃね?

 

715:このライバーがすごい! ID:9Fu2nS0WG

ニコ「あいつ、なぜファンレターを……」

マリー「どうせ男同士だからってこういうの言ってないだろうなって思って、絶対ニコちー喜ぶからって頼み込んだ」

満ちゃん「ちなみに私も」

ニコ「なんだ、こう……照れ臭いな」

なお、ニコは涙声すぎるため、セリフは予想8割

 

716:このライバーがすごい! ID:1y3amNi5Z

なんかこう、ライバーの裏側が表に出てくる瞬間ってドキッてするな

 

717:このライバーがすごい! ID:n5tMHo4xR

今日枯れるのかってくらい泣いてる

 

718:このライバーがすごい! ID:nFFRj0n3z

自分が出したファンレターも、これくらい感動してくれてるのかなって思うといい企画だな

 

719:このライバーがすごい! ID:afXyQXIIA

でも、このままだとニコの『好き好き♡ボイス』がなくなってしまう……!!

 

720:このライバーがすごい! ID:XTkDDAZrv

>>719

この世から一番なくなるべきだろ

 

721:このライバーがすごい! ID:CHAfcTnnW

>>719

生まれるべきじゃない

 

722:このライバーがすごい! ID:2eNwzTuVe

>>719

本当にマリーしか喜ばない

 

723:このライバーがすごい! ID:vU5U6qrBr

>>719

多分マリーでも喜ばない

 

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