稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第158話 project:conflict (4)

「クソッ! 俺としたことが!」

「黙ってて。うるさい」

 

サラに踏まれてるの羨ましすぎる

勇猛果敢に飛び出してやられてるの情けなさ過ぎる

これが署長の姿か?

不用意に動くとどうなるか、身をもって教えたんだろ

 

 『project:conflict』四日目。昨日ヴァールハイトがおとなしかったのはカジノを襲撃する準備をしているからだという情報を受け、カジノで防衛体制をとっていたら堂々と正面から襲撃。「俺に続け!」と勇猛果敢に飛び出したら一撃でノックアウト。あまりにも情けなくて涙が出てくる。しかも誰も俺に続いていなかったし。もしかして俺、ハブられてるのか?

 ここから見えるのはサラさんのみ。一階にロビーがあり、中階層までがカジノ、高層はホテルという造りのビルで、俺が張っていたのは一階。そこにサラさんのみがいるということは、他のヴァールハイトの人たちはどこにいるんだ? というか堂々と正面から入ってきたと思ったが、思いきり陽動なんじゃないのか? つまり、俺はそれにまんまと引っかかったバカだということか?

 

「サラさん! こんなバカな真似はやめてください!」

「できればそういう説得は撃つ前にしてほしかったけど」

 

 ダウンさせた俺を拘束しながらの言葉に、確かになと頷いた。初めての大事件だからと勇み足になっていたことは事実。まずは投降を呼びかけるべきだった。だというのに「覚悟しろ!!」とダッシュして一撃で頭を撃ち抜かれてダウン。仲間と繋がっている無線では《ニコが一階ロビーでサラ・ルフェーブルと接敵。予想通りダウンした》とアザミから冷たい一言。接敵と同時にダウン報告されるの俺くらいだろ。

 

「起こされると面倒だし……殺しとこうかな」

「これ以上罪を重ねるつもりですか!」

「カジノ襲撃してる相手に愚問でしょ」

 

 俺の額に銃口を突きつけながらの言葉に、確かになと頷いた。いや頷いている場合じゃない!

 『project:conflict』のシステムとして、『ダウン』と『死亡』がある。『ダウン』はプレイヤーに設定された体力がゼロになるか、食糧値もしくは水分値がゼロにってしばらく経つと倒れてしまい、行動できなくなるというもの。この場合、医者によって起こしてもらうことができる。『死亡』はダウンして十分経つか、ダウン時に一定以上のダメージを受けると、持ち物すべてを失ってリスポーンするというのもので、『死亡』してからリスポーンするのにも五分間のインターバルを要する上、リスポーン後もしばらくはダウン前の怪我を引きずり、満足に動くことはできない。

 だから、できるだけ『死亡』したくはない。リスポーン後の治療のために、リスポーン地点である警察署で医者に待機してもらっているが、ヴァールハイトが相手なら、移動中に狙撃されるということも十分ありえる。カジノ内にいるこの状況を少しでも長くするべきだ。

 

 ということは、今俺がやるべきはサラさんをこの場に留めて時間稼ぎをしつつ、生き延びること!

 

「サラさん、少しお話しましょう」

「いいよ」

 

 いいのか……。

 

「カジノを襲撃した目的はなんですか?」

「お金。あとボスが芥川想を脅威とみなして、早めに摘もうって言ってたかな」

「ここにいるのはサラさんだけですが、他の方は?」

「それは教えない。ダウン中は無線で話せないとはいっても、リスポーン後は使えるし」

 

お話してくれるの優しい

サラ♡

化け物も見てます

でも本当に何してるんだ? カジノって他に入り口あったっけ

 

 カジノの入り口は、一階と屋上くらいしかないはずだ。壁を伝って窓から侵入という芸当をできる人がいるのであれば別だが……。

 ……? 何か引っかかる。壁を伝って窓から侵入と考えた時に引っかかったということは、そんな芸当ができる人に心当たりがあるということか? ヴァールハイトになら普通にいそうな気はするが、あっ!

 

「なら言い当てましょう。グレイヴィーさんは窓から侵入していますね?」

「グレイヴィーはカジノで遊んでる」

 

ニコの推理、外れる

いつカッコよくなるんだ?

流石にこの高さのビルはなぁ

襲撃先で遊んでるの頭おかしいだろ

 

 めちゃくちゃ推理が当たったと思ったのに、一瞬で否定された。恥ずかしい。

 グレイヴィーさんならできると思っていたが……。あの人はバランス感覚がすさまじかったはずで、どれだけ酒を飲んで酔っていてもふらふらしているところを見たことがない。だからといって流石にこのビルの高さでは無理があるか。三十階くらいあるしな。

 

「カジノで遊んでいるのか。相変わらずだな、グレイヴィーさんは」

「普通に仕事したら優秀なのにね。もったいな」

 

 サラさんの声は、銃声によってかき消された。サラさんが俺から離れて壁に隠れていて、俺の周りの床に弾痕がないということは、サラさんが狙われたらしい。もしかして、仲間がきてくれたのか? だが、他の人が配置から動いたという報告は聞いていない。俺がダウンしたと聞いて、アルがいいやつすぎて飛んできてくれたとかか? それならいきなり撃つのではなく、対話でどうにかしようとするはずだ。じゃあ誰だ?

 

「悪いな、サラ。お前ほどのいい女から離れるのは心苦しいが、ニコは友だちなんだ」

「グレイヴィーさん!? なぜ!?」

 

グレイヴィー!?

カジノで遊んでるはずじゃ!?

負けすぎておかしくなったか?

酔ってるのか!?

いつも酔ってるぞ

 

「グレイヴィー、正気?」

「正気さ。ヴァールハイトらしく傭兵活動だ。実は初日、カジノで負けすぎてた時に想から『有事の際に手を貸してくれ』って依頼があってな」

「ふぅん。なら仕方ないね」

「あぁ、仕方ない」

「ま、待て、仲間じゃないのか!?」

「常日頃から殺し合いするし、今更かな」

 

ヴァールハイトが世界を制圧できない理由

当たり前のように繰り広げられる内部分裂

グレイヴィーが仲間になった!

でもサラが相手ならもうすぐ仲間が減る

 

 グレイヴィーさんが味方してくれるのはありがたい。単純に向こうの戦力が削れただけでも意味がある。それに、普段の様子から想像はつかないが、グレイヴィーさんは強いはずだ。お酒が大好きでいつもふらふらしている人が、戦闘になればめちゃくちゃ強いというのはお決まりだろう。

 あとは、グレイヴィーさんが戦ってくれている間に、誰かが俺を起こしてくれればいいが……流石に戦場となるであろうカジノ内に医者はいない。起こすとすれば外から入ってきてという形になるが、サラさんがいる今それも厳しそうだ。あれ? じゃあ俺はこのまま死ぬのか?

 

「し、死にたくない……! グレイヴィーさん! 必ず勝って俺を医者の所へ連れて行ってください!」

「もう負けた」

「音もなく!?」

 

 どうやら俺がぐるぐる考えている間にグレイヴィーさんはやられてしまったらしい。コメントを見れば、頭を一撃で撃ち抜かれたそうだ。しかもサラさんの圧に負けて撃たれてもいないのに回避行動をとった瞬間に。そんなことあるか?

 いや、グレイヴィーさんはサラさんを撃てないから弱体化していただけだろう。相手が相手なら容易く勝利していたはずだ。相手が悪かった。

 

《ニコさん、俺もう我慢できねぇ! 助けに行くっ、うわああああ!!!》

《バカお前窓があるとこ行くなって言われたろ!》

 

 しかも俺を助けようと動いてくれたアルが一瞬にしてやられた。信じられない速度で警察の戦力が削れていく。アルの近くには茉莉さんがいるから大丈夫だとは思うが……。だが、これで最低でも一人は外にいるということがわかった。恐らく、アルは外から撃ち抜かれたのだろう。

 ……いや、待てよ? このビルは窓が多い。だというのに、アルは一瞬で撃ち抜かれた。流石にヴァールハイトであろうと、アルの位置がわかっていないとできない速度で。もしかしたらビル全体を見て、動いたところを見た瞬間に照準を合わせて撃ったのかもしれないが、それは考えにくい。現場を見ていないから断定はできないが、窓のある場所に出てから撃たれるまでの速度が異常すぎる。

 

 そして、『project:conflict』の世界観は科学が発達した世界。その証明は、聖麗が扱ったという情報のある、光線銃や光化学ステルス迷彩にある。

 

「もしや、既にカジノ内部にヴァールハイトがいて、ステルス迷彩を纏い、俺たちの位置を外にいる仲間に連携していたのか……?」

「正解だ、ニコ。このグレイヴィーをもってしてもグルーヴィーと言わざるを得ないな」

「グレイヴィーさん。俺たちの味方になってくれたのだとしたら、警察の誰かにそれを伝えてくれていればよかったのでは?」

「サラ、俺を撃ち殺してくれ」

「死を救済だと思うタイプ? グレイヴィー、無宗教じゃなかったっけ」

 

ニコが論破しただと!?

頭は回る方だから……

ステルス迷彩で姿が見えないヴァールハイトとか怖すぎだろ

どうにかしてこの情報を伝えられないか?

 

「まぁ、気づかれたところで別にそれを伝えられる手段もないし。隣に時限爆弾置いて私も制圧しに行こうかな」

「そんな気軽に人殺しの道具を置いて行かないでください! 待って! 死にたくない!」

「ごめん無理。仕事だから」

 

 無慈悲な言葉とともに俺の隣に時限爆弾が置かれる。デザインがシゲキ的だ。絶対作ったのシゲキだろ! マズい、シゲキが作った爆弾なら、ビルごと破壊される可能性がある! 大きさは掌サイズだからそこまで破壊力のあるものではないとは思うが、それは常識の話であって、『project:eden』に常識は通用しない!

 

「サラさん! もしかしたらこの爆弾はとんでもない威力があるかもしれません! 一階すべてを巻き込んで爆発してしまえば、ビルが崩れるかもしれませんよ!」

「仕事道具の威力を試してないわけないでしょ。心配しなくてもあなたたち二人を殺すくらいの威力しかないから」

「自分の命を失うとわかっていて安心できる人がどこにいるんですか!!」

「よかった、サラが無事ならそれでいい」

「いるみたいだけど」

「たとえ俺が死のうと、俺の部下たちが必ず貴様らを捕まえる!!」

 

ニコ(今のカッコよかったから俺もそんな感じで言ってみよう!)

サラ、無言で去る

リスポーンしたら情報伝えられるし……

すぐリスポーンしないための時限爆弾なんだろうな

 

 マズいマズいマズい! このままではサラさんが一人でかき乱し、その間にステルス迷彩を纏った他のヴァールハイトが警察を蹂躙してしまう! いや、落ち着け。さっき自分で言っただろう。たとえ俺が死のうと、みんながなんとかしてくれると! でも信じてはいるがそれはそれとして死ぬのはいやだ!

 

「ニコ」

「グレイヴィーさん?」

 

 焦る俺の耳に、落ち着いたグレイヴィーさんの声が聞こえてくる。コメント欄で「酒をとったら本当に何も残らない男」「史上初の役立たずの裏切り者」「裏切っただけの酒カス」と好き放題言われている。恐らくグレイヴィーさんの配信でも色々言われていることだろう。この前、「俺とニコのコメント欄は似ているな」と言われたし、俺もそう思う。

 

「ヴァールハイトは普通に戦っても最強だ。それなのに、相手を侮ることなく確実に仕事をこなす。今回のステルス迷彩もそうだな。アザミがフリーに動けるなら戦力差もそこまで広がらなかっただろうが、シゲキの妨害を受けてこっちにつきっきりとはいかない。そのうえで、想から頼まれた『有事の際に手を貸す』をクリアするためには、外部の協力が必要だった」

「外部の協力……? 一体何の話を」

「早い話、ギャングだとか警察だとかそんな小さな話は飲み込んで、手を組もうってことさ!」

「貴様! 魔王である我輩がカッコよく登場しようとしたのに、最初のセリフを奪うな!」

「そういうところを気にしてるからザコっぽくみえるんじゃない? 何度も言ってるのに省みないから本当に芯からザコなんだろうけど」

「なにおう!!???」

「魔王様に愛人さんにルーシィ!? なぜここに!」

 

 俺たちの会話に割り込んできたのは、魔王様と愛人さんとルーシィ。ギャング『魔王軍』として活動し、今もなおその勢力を伸ばし続けている。恐らく数だけで言えば最大勢力であり、正直言えば『魔王軍』が引き起こす細かな犯罪に追われ、警察は自由に動けていない。

 その『魔王軍』と手を組む。普通に考えれば、よくはない。だが、俺が起き上がるだけで『ステルス迷彩でヴァールハイトが潜んでいる』ことを伝えられるのも事実。それが伝えられるだけでも状況は大分変わる。

 

 ……仕方がない。ここは協力をって、あれ? 医者いなくないか?

 

「あの、つかぬことをお聞きしますが、魔王様。医者はいらっしゃいますか?」

「フッフッフ、安心しろ。この『シゲキ的クスリ』があれば、30分起き上がれる! その後は知らん!」

「その後は知らん!? 怖すぎませんかその薬!」

「なら問おう。今ここで何もできず、仲間が蹂躙されるのを待つことと、この薬を飲んで、30分後にくる未知を待つこと、どちらが怖いんだ」

 

 ……!!

 

「失礼いたしました、魔王様。薬をください」

「貴様ならそう言うと思っていたぞ。ミッドナイト・サイコナイト」

「ちなみに、その薬飲んだら30分後に花火みたいに弾け飛んで肉片になって死ぬよ」

「飲んだ後に言うな!!!!!」

 

 

 

 

 

『project:eden』について語るスレ part684

 

924:このライバーがすごい! ID:+YCb2OBTA

カジノ襲撃事件まとめ

・サラによりニコダウン⇒グレイヴィーが助けにくるも、一瞬でダウン

・アルが助けに行こうとするが、外にいるボスによりダウン

・『魔王軍』合流⇒オペレーターがアザミんからセレナに

・『魔王軍』所属のNPCがカジノに集結し、混沌へ

・『魔王軍』が言うことを聞かず、協力関係である警察も攻撃し始める⇒大乱闘

・大乱闘に我慢できなくなったイレ姉がステルス解除し、大暴れ

・エル&ロイ、暴れ始めたイレ姉にぶっ飛ばされてダウン

・ヴァールハイトに「イレイナを置いてカジノを脱出しろ」というボスの指令が届く

⇒直後、想の手によってカジノの出口がすべて封鎖される

・想「これからカジノに毒ガスを放出します。でも、ジャックポット出せば止められます」

・カジノにいる全員で協力することになり、想を探すグループとジャックポットを出すグループに分かれる

・魔王様が一発でジャックポットを出す

・数十のダミーとともにカジノから戦闘機で飛び立つ想

・行動をすべて読んであらかじめ戦闘機で待機していたルイスにより、想が逮捕される

・ニコとグレイヴィー、生き返ったものの特に何も活躍がないまま、花火のように弾け飛ぶ

 

925:このライバーがすごい! ID:wVBudKtCO

想「僕がただ怯えて守られるだけだと思ってましたか? 想像力が足りてませんね!」

って言ってたのに対して、

ルイス「俺から逃れられると思っていたのか? クールに想像力が足りていないな」

って返した場面は流石にクールすぎた

 

926:このライバーがすごい! ID:tDknf9lIc

魔王軍かき回しすぎだろ

 

927:このライバーがすごい! ID:EfrWOk6Qq

当の魔王様はジャックポットで「大金持ちだー!」って喜んでた

 

928:このライバーがすごい! ID:jZ0SOm7hp

かわいい

 

929:このライバーがすごい! ID:/lPVcvJDZ

ルイスはなんで戦闘機に乗り込めてたんだ?

 

930:このライバーがすごい! ID:RDsHZNwZk

>>929

ゲームシステム的には、戦闘機に乗るには暗証番号突破しないといけないけど、

アザミんが離脱する前に一瞬で突破してくれたらしい

あと逢生が「ルイスさんと想さんは出会えますよ」って断定した

 

931:このライバーがすごい! ID:UKbbObmUQ

有能すぎるアザミんを縛り付けるシゲキ、厄介すぎる

 

932:このライバーがすごい! ID:MWIwX6iMB

>>929

ルイスのアーカイブ見てきた方がいいぞ

最初っから最後までの流れドンピシャで当ててたから

 

933:このライバーがすごい! ID:rry9cCO5D

ルイスって実はすごいのか……?

 

934:このライバーがすごい! ID:rbwyZ2qPQ

ルイスが副署長なら、署長はどんだけすごいんだ……

 

935:このライバーがすごい! ID:lCAei6eo1

署長は無意味に生き返って無意味に弾け飛んだぞ

 

936:このライバーがすごい! ID:cwFZ45eqg

グレイヴィーは魔王軍と手を組んだ功績があるから無意味じゃないとして……

 

937:このライバーがすごい! ID:NsGPTkqGI

解決と同時に二人弾け飛ぶのおもしろすぎた

 

938:このライバーがすごい! ID:+gKLRDHFx

でも相手が悪かっただけで、カジノに閉じ込めて毒ガスで一網打尽にしようとするの、

芥川って感じだな

 

939:このライバーがすごい! ID:JX9nGWnjN

 

 

940:このライバーがすごい! ID:yQjpTd9Uh

ヴァールハイトが成果を上げられなかったのが珍しい

 

941:このライバーがすごい! ID:qXbKhjSha

イレ姉が暴れるから……

 

942:このライバーがすごい! ID:/GNNjqERm

エルロイかわいそうだった

 

943:このライバーがすごい! ID:y3DCfI9ES

エルロイ「なにすんの!!」

イレ姉「私に近づくのがワリィんだよ!! 戦場では自分の命は自分で責任持て!!!」

 

944:このライバーがすごい! ID:PQS5wmnCm

イレ姉、ついていきます

 

945:このライバーがすごい! ID:yUFgLpCzL

正直カッコいい

 

946:このライバーがすごい! ID:CkyoSJnbX

イオス「それはそれとしてイレ姉が悪いですよ」

 

947:このライバーがすごい! ID:+pzl2/AJE

イオス、漢

 

948:このライバーがすごい! ID:NvifsmT8c

明日はとりあえず落ち着きそうか?

 

949:このライバーがすごい! ID:L+ZigY1XZ

魔王軍が何もしなければ

 

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