稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第164話 project:excite (3)

 シェリアーク・ルイス。未来予知レベルの推理を可能としているのは、他者へのシゲキ的理解。言動行動、性格心理その他諸々。他者のすべてを把握して理解する。過程はまだ理解できるが、その結果が未来予知レベルになるってのがシゲキ的に理解できねぇ。そもそもの脳の構造が違ェんだろうな。

 ルイスには、イレイナ・ガーランドのような強靭な肉体も、イオス・エアハルトのような超人じみた反射神経もねェ。ただ、その場その場を的確に把握して、これから起こることを推理っつぅ形に落とし込むことができる。はっきりと目に見えるわけじゃねぇからルイスのシゲキ的な部分はわかりにくいが、どんな状況においても腐ることがねぇシゲキ的能力だ。

 

 イベリス。ルイスのような知能もねェ、ヴァールハイトのようなフィジカルもねェ。ただ、それを補って余りあるシゲキ的カリスマがある。つぅかそもそもフィジカルがねェとは言ったが、常人と比べりゃあ十分なフィジカルはある。『オシャレ』みてェな俺の理解が及ばねぇ力が働いて、常識じゃありえねぇことをすることもある。『オシャレ』な気配を察知するとか、『オシャレ』じゃない攻撃は効かないとかな。もし神ってやつがいるんだとしたら、その加護を存分に受けてんのがイベリスだ。

 

「つーかよォ、お前ら二人で俺に挑んでくる時点で、シゲキ的に格付けは済んだってことでいいのか?」

「格? そんなものを気にするとは、クールになったな」

「わかってるわよ。実はあんまり余裕ないでしょ? 私がオシャレ過ぎて身動きが取れないなんてこと、お見通しよ!」

 

 黙れと言うのもめんどくせぇからシゲキ的ビームで返事をしてやろうとすると、ルイスがまた銃でシゲキ的兵器を撃って軌道を逸らしやがった。イベリスは無意味にI字バランスしてグルグル回ってやがる。シゲキ的に鬱陶しいが、シゲキ的に流石だな。理屈じゃ証明できねぇ理不尽だ。

 

「さて、あなたがオシャレにしてもらいたい気持ちは痛いほど伝わったわ」

「シゲキ的に妄言だな。夢でも見てんのか?」

「えぇ、無理もないわ。私がオシャレすぎるせいよね」

「オイ、ルイス。イベリスはシゲキ的に疲れてるらしいな。言語機能もぶっ壊れてやがる」

「連日、医者の業務でクールに大忙しだったからな。無理もない」

 

 会話しながら両断しようとシゲキ的兵器をぶん回しても、ルイスは最小限の動きで、イベリスは最大限に無駄な動きで避けやがる。両極端に人の神経を逆なでしてきやがって……!! シゲキ的じゃねぇか!!

 やっぱ避けきれねぇ範囲攻撃で蹴散らすしかねぇか……? 恐らく、こいつらは時間稼ぎの役割も担ってる。殺しきれなかったヴァールハイトがこの間に治療されてりゃあ脅威が復活する。ってなると猶更範囲攻撃が最適解だ。

 

「読めてるわよ!」

「チッ、ヌルヌル動いてへばりついてくんじゃねぇよ!!!!」

「そろそろ範囲攻撃をする頃だと思っていた。なら、お前に近づけばいい。近距離にいれば、自身が巻き込まれることを避けるために、範囲攻撃は撃てないからな」

「ハッ、だからっていくらテメェらでもずっと避けんのは無理だろ!! 得意気な顔してジリ貧か!?」

 

 つっても、ジリ貧になったら困るのは俺だ。クソうざってェ。ブレードは全部避けやがるし、ビームを撃とうにもルイスに発生を潰される。近距離でブレードよけ続けながらビームの発生潰すなんてシゲキ的な芸当をやってのけるクセに、普段はシゲキ的にボケキャラの皮被りやがって。タレント気取りかよクソルイス。

 イベリスも地味にうぜェ。避けるだけならまだしも、絶対に必要のねェ動きで避けやがる。俺の理解の外にある『オシャレ』のゾーンに入ってやがる。『オシャレだから避けれる』っつー理由にもなんねぇクソみてェな理屈だ。こうなったらもう圧倒的力で上からねじ伏せるしかねェが、それを封じられてる。

 

 シゲキ的じゃねぇが、シゲキ的だ。俺の行動を制限できるやつなんざ地球上にほとんど存在しねェからな。

 

《距離を取ってビームだ!!!!》

《距離取ろうとした瞬間、ルイスが銃撃する可能性100%!!!!》

《狙われる個所を計算しろ!!!!》

《計算完了!!!! こいつら無視して逃げんのが最高率だ!!!!》

「シゲキ的じゃねェシステムだな、くだらねェ!!!!」

 

 『逃げ』っつーカスみてェな提案をしたシゲキ的計算機能を切る。クソ邪魔だ。せっかくシゲキ的なやつらが目の前にいんのに水差してんじゃねぇよ!!!!

 

「だろうな。だからジリ貧を選んだ。俺たちの勝利条件は何も俺とイベリスが勝つことじゃない」

「オシャレに時間を稼いで、更にあなたを消耗させるのが私たちの役目よ!!」

「……くっだらねェ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺自身を巻き込んでの範囲攻撃。シゲキ的兵器からビームを乱射。予測しようが軌道を逸らそうが、余波で殺せるだけの威力で蹂躙する。そうすれば、俺のシゲキ的緊急バリアが一つ剥がれる。

 それが目的だと分かって乗ってやった。これ以上時間をかけちまえば、ヴァールハイトが復活する。そのタイムリミット、俺の思考を全部理解して、そう行動するよう動きやがった。自分の命をベットして。シゲキ的だが、シゲキ的じゃねェ。他の何の邪魔も入らねェ、俺たちしかいねェ状況なら、こんなくだらねェ方法じゃなく、別のシゲキ的なバトルができただろうによ。

 

 俺がビームを撃った瞬間、笑ってやがったのも気に食わねぇ。思い通りってか? 演出家気取りが。

 

「さて、次はヴァールハイト、を……?」

 

 ヴァールハイトに照準を向け、ビームを放とうとした。らしくもなく手を止めちまったのは、シゲキ的緊急バリアがまた一つ剥がれたからだ。

 攻撃された箇所は首。獲物はナイフ。反射でブレードを振り回しても手ごたえがねェ。

 

「アザミさんから聞きましたよォ?」

 

 だが、声は聞こえてきた。五感のどれかで認識すりゃあ、他の感覚でもそいつを捉えることができる。そういう風に脳が処理をする。

 青白い炎に包まれた、人を小ばかにしたように笑うシゲキ的ガイコツ。

 

「オカルトの解析、済んでないんですよねェ! オッホ! すみません、不意打ちしちゃいました!」

「安倍聖麗……!!」

 

 安倍聖麗。自ら『project:eden』の門を叩きに来たオカルトの専門家。「実体化? 幽霊を? 霊的エネルギー? オッホ! 協力しませんよ! 解析されたらワタシ、シゲキさんに殺されますから」なんてクソウゼェ煽りをかましてきやがったゴミ。

 ふざけた野郎だが、実力はシゲキ的だ。現代最高峰の陰陽師は自称じゃねェ。俺が解析してェ未知のエネルギーを自在に操る。その精度、出力どれをとっても他の有象無象とは比べ物にならねェ。

 

 簡単に言えば天敵。シゲキ的に気に入らねぇが、本体見つけて殺す以外に有効な手段がねェ。当然警戒するべき相手だった。常に頭にはあった。が、ルイスの思考を理解した気になって、一瞬ヴァールハイトの掃討に頭を持っていかれた隙をやられた。

 

「ここまでがルイスの作戦通りか!!!! 随分シゲキ的なことしてくれるじゃねェか!!!!」

「いいえ? ルイスさんの作戦ではありませんよ」

「ハ? んじゃあ誰だってんだそのシゲキ的な野郎は!!!! 今すぐ目の前に連れてこいぶっ殺してやるよ!!!!」

「オッホ! バイオレンスですねぇ! そうですねぇ、誰の作戦か……まァ、幕開けはワタシの役ではありませんから」

「ワケわかんねぇこと言ってねぇでシゲキ的に教えろ!!!!」

 

 うまく隠してるみてェだが、安倍聖麗らしき生体反応をキャッチした。すぐに殺せる位置にいる。現状だとヴァールハイトよりも優先的に殺すべきだ。シゲキ的な作戦を考えやがったシゲキ的なやつが誰かは気になるが、どうせこいつから聞かなくてもそんなシゲキ的なやつならすぐに会える。だからシゲキ的にぶっ殺、

 

「ア? ンだ、これ」

 

 いきなり、空間の色が変わる。空気中に点々とポリゴンが浮かんで、空がタールに無理やりパッションカラーをぶち込んだみてェなシゲキ的な色に染まった。さっきから俺がビーム撃とうって時に邪魔ばっかりしやがっ、て……。

 

 俺の邪魔をするゴミにムカついて、無視してビームを撃とうとした瞬間、脳が勝手に理解した。この空間が何か。何ができるか。俺の脳に描いていたイメージと一致した。

 

『誰が作戦を考えたか、知りたいか?』

「答え合わせは必要ねェよ」

『そうか。だが、私はお前を完璧に打ち負かしたい気持ちで溢れていてな。勝手に解説をさせてもらおうか』

 

 相変わらず淡々と、抑揚のねェ声で喋りやがる。シゲキ的な同期といるときは感情豊かなクセにムカつくぜ。

 

『癪だが、お前の思考はお前の次に理解している。お前の脳は世界に範囲を広げても一番だと言ってやってもいいが、その思考の方向性は単純だ。お前の頭脳と能力を信頼し、それを前提に作戦を立てれば面白いくらいに思い通りだった』

「趣味ワリィな」

『それは私を引っ張ったお前に言いたい言葉だが……まぁ、それはいい。で、ここからは私の都合だ。お前に敗北を認めさせるには、お前の描いた世界の中で、お前以上の力で勝利する必要がある』

 

 空から、何かが降ってくる。生身の人間なら一瞬でミンチになるはずだが、そいつが生み出したのは肉片じゃなく、クソうるせぇ着地音。

 

 漆黒。今が夜なら、溶け込んで見えなくなるくれェ黒い、シゲキ的な鎧を身にまとったミッドナイト・サイコナイトが、不格好に剣を構えた。

 

『この空間では、()()()()()()()()()()()()()()()()

「我が名はミッドナイト・サイコナイト。深夜の狂騎士だ」

「シゲキ的にシゲキ的だ、テメェら……!!!!」

 

 イメージが無限に溢れ出す。現実の科学じゃ実現しきれなかった俺の科学が形になる。夢と理想が現実になる!!!!

 

「テメェとことん俺の退屈をブチ壊しやがって、シゲキ的に責任取れよアザミ!!!!」

 

 各地から正体不明のエネルギーが溢れ出す。『project:eden』の才能どもが、テメェ自身のイメージをぶつけてくる。

 

「まとめてシゲキ的にしてやる!!!! 俺のシゲキ的速度についてこれんのかよ!!!!」

『追い抜くためにここにきた。心配するな』

 

 あの日壊れかけた退屈が。

 

『お前をシゲキ的にしてやろう』

 

 今度こそ、粉々に砕け散った音がした

 

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