稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第167話 project:excite (6)

「頑張れー!! シゲキー!!」

「見せてやれ、貴様のエンターテイメントを!!」

「テメェら、力ァ合わせるんじゃねェのか!!!」

 

 言いながら、どうせ無駄だってことはわかってる。『エンターテイメントワールド:魔王の降臨』っつーふざけたこの空間は、それぞれに役割がランダムに与えられる。勇者と魔王は確定で、他は完全にランダムだ。役割ってのはRPGでよくあるジョブみてェなモンで、細部まで詳しく解析できてはいねぇが、よりにもよってあのカス二人は、応援でバフを与えるジョブを引きやがった。おかげで前線は俺一人だ。

 が、それがむしろよかった可能性はある。

 

「人間は矮小な存在だ。だからこそ、過ぎた力を持つとすぐに全能感に駆られ、勘違いをする」

 

 ザミリエルっつーボケキャラ、クソ強ェ。解析がほとんど通らねェ。恐らく扱っている力は未知のエネルギー。それも、俺たちが生きてる世界には存在しねぇモンだ。シゲキEXは成長する科学だ。育ち切れば未知の事象に対してもすぐに解析して適応できるが、現状は俺の理解の範疇にあるモンじゃねぇとすぐに解析できねぇ。ましてそれが解析しようのねェものなら猶更。

 

「我輩がなぜ魔王か。それは単純だ。我輩が最も強いからだ」

 

 まさか、シゲキEX生み出してすぐだってのに膝つくことになるなんてな。シゲキ的でたまらねェ!!!!

 

「ねー魔王様。そっちのうるさい二人を先にやっちゃえば、シゲキを殺せてたんじゃない?」

「傲慢たる貴様らしくないな。そんなことをすれば格が落ちるだろう。相手が持つすべての力をものともせず屠る。その程度の力を示せず何が魔王だ」

「へー、大変だね。負けた時の言い訳考えるのって」

「むしろ逆だな。負けた時の言い訳を考えさせないようにしていると解釈しろ」

 

 俺を前にして、べらべら喋る余裕もありやがる。クソムカつくがシゲキ的だ。

 

 ザミリエルの戦闘力はシゲキ的だ。そもそも体の構造が人間とは違ェ。イレイナ・ガーランドよりも数段優れた近接戦闘能力、恐らく『魔力』と呼ばれるエネルギーを用いた魔法。あいつの手にある槍はまだ使われてねぇが、どうせクソみてぇな力がある。単純なスペックで相当な格上だ。ギミックがあるタイプじゃねぇ、純粋な力。『魔力』っつー未知を解析して、俺の常識にする以外勝ち目はねェ。

 

「さて、我輩の力はわかったか? 解析できるものならするがいい」

 

 ンで、これは推測。あいつの使う『魔法』は、恐らく人間が使う『魔法』とは別モンだ。そもそもの格が違ェ。これが、解析に時間がかかる理由。『魔法』をそもそも知らねぇのに、その格上の解析をするなんざ、基礎がねぇのに応用やんのと一緒だ。どうしたって無理がある。安倍聖麗のオカルトは、直前に思いきり攻撃くらってたのと、そもそもオカルトの研究してたからなんとかなったが……。

 シゲキ的だなァ。まだ未知があんのかよこの世には!!!!

 

「チューチュー鳴くのがクセになったかァ? うるせェからやめた方がいいぜ。格が落ちる」

「貴様こそ、口を回すより頭を回せばどうだ? 不便な存在だな、人間は。考えねば敵一人相手にできんとは」

「おもちゃ振り回すだけで蹂躙できんのは気分がいいだろうなァ。バカ丸出しで羨ましいとはまったく思えねェが」

「む、ムキー!! 殺してやる!!」

「落ちたね、格」

「黙っていろ、ルーシィ!!」

「頑張れー!! シゲキー!!」

「貴様のエンターテイメントを見せてやれ!!」

「テメェらも黙ってろ!!」

 

 ザミリエルが槍を振るうと、黒い波動が弧を描いて俺に向かって飛んでくる。速度自体は大したことはねェそれを飛んで避ければ、俺がさっきまでいた地面がボロボロに崩れ去った。アレも魔法の力か。

 ……いや、待て。似たような力ァ見たことあんな。ミッドナイト・サイコナイトのクソダセェ剣。アレも似たような事象を起こしていた。根本は一緒なのか? ミッドナイト・サイコナイトが生み出した想像と魔法を俺が別のカテゴライズにしてただけか?

 

 いや、そもそも俺はなんで馬鹿正直に真正面から解析しようとしてんだ? ある程度の体系とエネルギーの法則さえわかれば、俺ん中で新常識を作って当てはめて、検証回せばいいじゃねェか。常識ぶっ壊す科学の到達点を想像しておいて、俺が追い付いてねェなんざ笑いモンだ。

 

「後学のために教えろ。テメェが使ってんのは魔法か?」

「そうか、この世界には魔法が存在しないのだったな。あぁ、その認識で問題ない。もっとも我輩とルーシィの扱う魔法は、人間が用いる魔法よりも上位に位置する」

「そんなに喋っていいの? あの人、知識がそのまま力になるタイプだと思うよ」

「何度も同じことを言わせるな。解析するのであればすればいい。それを正面から打ち破れば済む話だ」

「そういうこというやつって大体負けるんだよね」

「そんなこと言うなら今すぐあいつを屠ってやる!!」

 

 チッ、バカだからあいつから知識を捻り出せると思ったが、ルーシィが飽きてやがる。早く終わらせてェって意思が丸見えだ。舐めやがって、シゲキ的だな。

 だが、推測は当たってた。あいつらが使う魔法は上位のもの。ンで、その中でも頂点に君臨するレベルのバケモン。シゲキEXの試運転にはちょうどいい。無理やり仮説検証ぶん回してシゲキ的に適応でもしてやるか。

 

「先ほどは加減してやったが、これを避ける術はあるか?」

 

 ザミリエルが槍の先を俺に向ける。そこにドス黒い光が集まって、デケェ光線になって放たれた。

 

「そんじゃあやるか。無理やり仮説検証第一弾!!!!」

 

 右手を前に突き出して、掌でドス黒い光を受け止める。あの槍から出る力は、ミッドナイト・サイコナイトが使ってたクソダセェ剣と同じ効果があった。そんなら、ミッドナイト・サイコナイトを信用して、『あいつの想像した力が、魔王が扱うモンと同等のモンだった』と仮説を立てる。生み出す結果が同じなら、ミッドナイト・サイコナイトの力とザミリエルの力の差異は『理解不能な冒涜的オカルト』か『魔力』かだ。要は、既存の知識を使って、新常識をシゲキ的に理解するって話だ。

 差異を抽出して自分の中で公式を作れ!! 『魔力』を俺ん中の常識にしろ!!

 

「楽しそうだな?」

 

 解析を進める俺の横っ腹がシゲキ的に蹴られた。容赦なしかよシゲキ的だなァ!!!!

 地面に叩きつけられる直前に、蹴り飛ばされた威力を推進力に変えて、衝撃を逃がしながら宙に逃げる。俺を蹴り飛ばしやがったザミリエルの方を見れば、目の前に紫が混じった黒の光が迫っていた。

 

「第二弾!!」

 

 解析の途中で蹴られたからか、右手はさっきの魔法の効果を受けて崩れてる。こいつは後で直せばいい。受け止めて解析することを考えろ!!

 左手で光を受け止める。次やんのは、さっき解析回して俺ん中で勝手に定義した『魔力』を使って、さっきの魔法とは違うコイツを解析できるかどうか。

 

 結果はすぐに出た。

 

「なっ、我輩の魔法が消えただと!?」

「解析完了……ってわけでもねェな!! 意味不明なエネルギーだなァ魔法ってのは!! 解析してバラしたつもりだったが、左手が爛れてやがる!! いいなァシゲキ的でよォ!!!!」

「よし、いいぞシゲキ!! 頑張れー!!」

「貴様のエンターテイメントを見せてやれ!!」

「テメェら、俺がシゲキ的に殺してやってもいいんだぞ!!!!」

 

 つっても、恩恵がなかったわけじゃねェ。あいつらの応援によるバフで、解析が思ったよりも早く回った。恐らく、っつーか確実に、あいつらの応援がなけりゃあ俺は今頃塵になってた。そもそも俺をこの空間に閉じ込めたのはあいつらで、この状況になってんのもあいつらが原因だから感謝はしてやらねェが。

 

「アハハ! なんか思ったよりも早く負けそうじゃん! 大丈夫魔王様? 手助けしようか?」

「いらん! 魔法が打ち消されようと、我輩にはこの肉体がある! 貧弱な人間では越えられん生物の壁というものを思い知らせてやろう!」

「テメェ、生物っつーよりは魔力の塊に近ェな。生物が魔力を持ってるってより魔力が生物の形をしてるって表現が適切だ。理解力のねェ粗末な脳みそで理解できるかはわからねぇが、一応言っておいてやるよ。俺は物質、現象の構成要素がわかればそれをバラすことができる。つまり、テメェに触れればテメェをシゲキ的にバラバラにできるってことだ」

「なにっ!? やめてくれ!!」

「それでやめるバカはシゲキ的にいねェだろ!!」

 

 崩れた体の再生完了。あとはあいつに触れりゃあゲームセットだ。解析できてねぇルーシィの力が不安要素だが、ザミリエルの下についてるってんなら、解析できねぇわけじゃねぇだろ。一応警戒はして……。

 

 ア? 待て、なんで体が動かねぇんだ?

 

「おい、ルーシィ」

「だってさぁ。一応魔王様を守らないとセレナに怒られるし。どうせ今のままじゃ負けてたじゃん」

「負けるか!! ちょうど我輩の必殺魔法を披露しようとしていたところだ!!」

「ハハ」

「愛想笑いするな!!」

 

 ルーシィに何かやられたのか。俺に対して魔法を使われた気配はなかった。魔法じゃねぇのか? 相手に干渉しねぇ魔法って可能性もある。ルーシィが何かしらの力を行使してるってのはわかるが、解析ができねェ!!!!

 ……いや、天使、傲慢?

 

「……舐めてる相手に対しちゃ最強ってとこか?」

「おー、正解。なんだっけ? 解析とかもできないでしょ。僕より下のゴミが、僕の力を理解できるわけないし」

「フハハ!! どうだ『傲慢』を冠する我が家臣の力は!! ルーシィは、見下した相手をその場に縛り付け、自身に対するすべてを無効化する!! ちなみに、なぜ我輩も動けないんだ?」

「自分で説明してたじゃん。理由」

「なっ、ナニィ!? どういうことだ!!」

「そういうところだよ」

 

 ルーシィが玉座に座ってケラケラ笑う。いつの間にか翼はドス黒く染まってやがる。

 天使、傲慢から連想できんのは、七つの大罪。使ってる魔法は『傲慢』っつー概念をベースにしたモンだ。効果はザミリエルが言った通りだろう。見下した相手に対しちゃ無敵。クソチートのクソゲーだ。シゲキ的すぎて笑いが止まらねェ。

 

「じゃあどうしよっかなぁ。すぐに殺しちゃうのも面白くないし……。まぁこのまま放置でもいっか。どうせいてもいなくても一緒だし」

「おいルーシィ!! なぜ我輩が動けないか教えろ!!」

「うそでしょ……まだ理解してなかったの?」

 

 主であるはずのザミリエルですら見下す始末。そんなら猶更手ェつけられねぇな。傲慢の源は、ルーシィの意思。ルーシィが見下してりゃ全部無効化する、見下してなきゃ通用する。魔法使ってねェ時は可愛げあったのに、今はシゲキ的過ぎんな。

 で、どうする。そもそもを封じられたんじゃ話にならねェ。ってことは、想像する必要がある。現状を打開できる術を。俺の想像した科学じゃ魔法は越えられなかった、まずはその事実を受け止めろ。俺自身で俺の想像の先を行けばシゲキ的に済む話だ。

 

「シゲキ!! 一人でなんとかしようとするな!!」

「案ずるなシゲキ!! 俺たちにはまだ仲間がいる!!」

「ア?」

 

 俺と同じく動けねぇ状態のバカどもがなんか言ってやがる。仲間? んなやつどこに……。

 

 瞬間、空気が重くなるのを感じた。底がねぇ沼に重りをつけて沈められてるみてェな感覚。発生源は空中。ちょうど俺たちとザミリエル、ルーシィの間。その空間にこの世の色すべてが交差した渦が現れた。液体でも気体でもねェ、空間のひずみそのものみてェなそれから、そいつが現れた。

 最初に見えたのは指。人間のモンであるはずのそれが妙に不気味に見える。そこから、ゼリーから抜け出すみてェに体のパーツが次々に外へ滑り出てきた。そこに一切の音はねェ。ただ、不気味な質感だけをこっちに与えてきやがる。

 

 キメェ渦から出てきたのは、俺が警戒していた最後の一人、芥川愛人。クソ気分屋の破綻者。

 

「いい夜だね、こんばんは!」

「愛人! 貴様、あいつらの仲間なのか!? 我輩を裏切るつもりか!!」

「えっ、裏切るだなんてとんでもない!」

「あぁ、そうか。安心した」

「そうそう。僕は最初から『面白い』の味方だから」

 

 時間に換算すりゃ瞬きする程度。その一瞬で、芥川愛人の腕がザミリエルの胸を貫いていた。芥川愛人は貫いた腕の先にある紫に輝く光の球体を握りつぶすと、ザミリエルの胸から腕を引き抜いて、その腕を振り抜いたかと思えば、ルーシィの頭が消し飛んだ。

 

 俺が苦戦してたやつらを一瞬で殺しやがった。

 

「魔王と家臣討伐完了! 助けにきたよシゲキさん!」

「何しにきやがった」

「今言ったじゃん。ここにきた理由」

「冗談は苦手みてェだな」

「シゲキさんは冗談が得意なんだね! 僕ほどユーモア溢れる人間はいないでしょ! 二人を除いて」

「待て貴様ら!! 戦いの舞台はエンターテイナーである俺たちが整えよう!! 語!!」

「おう!! 『エンターテイメントワールド:終焉の摩天楼』!!」

 

 声とともに、また空間が切り替わる。

 

ビルが夜を切り裂くように空を突き抜けていた。無数のビルは、世界の頂点を誇示するかのように、俺好みのシゲキ的な光を放ち続けている。

 都市の灯りが揺れる鏡みてェにギラつく地面に反射して、現実と幻の境界を曖昧にする。

無数の光と影が交差する巨大な迷宮、都市の心臓部。そこに俺たちは立っていた。

 

「──待ちくたびれたぞ、シゲキ」

 

 そして、尖塔の頂点。そこに、シゲキ的なやつがバカみてェにカッコつけたポーズで立っていた。

 

「儀式は完了した!! これからは俺の時代だ!!」

「僕の今の興味の対象は君たち二人!! 狂ったように遊んでくれると嬉しいな!!」

「ハッ、バケモンどもが!! いいぜ、シゲキ的にしてやるよ!!」

 




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