稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第15話 事情聴取(朝凪真理)

 PCの画面に映るのは、朝凪さんが作ったというホラーゲーム『奇紀怪解』。それを覗き込むのは俺と帝斗と透華、そして満。

 

「どう思う?」

「いや、やべぇだろこの再現度」

「満の姿久しぶりにみた……」

「《透華。感動してくれるのは嬉しいけど、そんな場合じゃないの》」

 

 このゲームは、俺の事務所、そして満の姿という少なくとも配信上でははっきりと語ったことがない部分が、かなり高いレベルで再現されている。偶然と片付けるには出来過ぎていて、偶然であってほしいと思うくらいに出来過ぎている。

 

「誰かがリークするほど佐藤に交友関係はねぇしなぁ」

「リークしようにも、事務所はともかく満の姿は無理っスよ」

「やっぱり違和感あるよなぁ……俺の大ファンとかか?」

「《あんまりのぼせ上らないでよ》」

「そこまで言われるほど?」

 

 冗談だ。流石の俺でもこの異常事態を大ファンで片づけるつもりはない。

 

 あのゲームには不思議な要素がいくつもあった。オフィス失楽園の再現度、満の再現度、そして俺の言動行動、知識の再現度。ゲームの中で起きた霊障に対して俺が解決策を提示すると、ゲームの中でも同様の解決策を提示。あまりにも一致しすぎて、途中俺があのゲームを監修したんじゃないかと疑われたほどだ。

 

「ストーカーって線は薄いだろ。ストーカーならわざわざバレるようなことをやる意味がねぇし」

「そうっスよね。それに、ただのストーカーじゃ満を再現できないっスもん」

「ということは、俺と同じであることを遠回しに伝えたということか?」

「《事務所に行った時にすれ違って、それから佐藤さんのことが気になって、みたいな?》」

 

 ない話じゃない。メタ的な話をすればVTuberは中身と外が違うし、事務所ですれ違っても気づかない。そもそも、俺が事務所なんていう初対面の人だらけの場所で、前を向いて歩けるわけがない。どのみち気づかない。

 しかし、俺と同じであることを伝えるにしても、やり方が遠回しすぎる。下手に警戒心を与えるより、直球で「私も幽霊が見える」と言ってくれた方がまだ対応しやすい。だとすると、あの手法は必要だったことなのか?

 

「んー、直接聞いてみんのが一番早いんだろうけど……」

「ちょっと怖いっスよね。何が飛び出てくるかわかんないっスし」

「あぁ。それに初対面だ」

「《こんな時にも人見知り発揮するの?》」

「だから人見知りなんだぞ」

 

 それに、警戒した方がいいというのはわかるが、朝凪さんは悪い人じゃない気がしている。勝手に再現されたというのはそれはそうだが、忠実と言えるレベルの再現度は、むしろリスペクトすら感じた。帝斗も言っていたが、わざわざ警戒されるような真似をする意味もないし、やはり何か理由があってゲームという形で伝えたんだと思っている。

 

「……直接、話してみるか?」

「大丈夫か?」

「何があっても死にはしない信頼はあるっスけど、無理しちゃだめっスよ」

「むしろ、これをこのまま放置しておく方が気持ち悪い。そうと決まれば連絡だ!」

 

 dicecodeを立ち上げて、朝凪さんに『はじめまして。ニッコリ探偵団のミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコと申します。本日は朝凪さんが作成なさった奇紀怪解について、直接会話にてお伺いしたいことがあり、ご連絡申し上げました。お忙しい中大変恐縮ではございますが、ご都合のつく日程をご教示いただければと思います』と勢いに任せて送った。

 

「おぉ……佐藤が能動的にDM送った」

「成長っスね」

「《内容はビジネスすぎるけど、すごいよ佐藤さん!》」

「ふっ、いつまでも今までの俺だとは思うなよ?」

「《あ、もう返事きた》」

「えっ、わっ、うぁ……」

「いつまでも佐藤だな、お前は」

 

 すぐに返事がくることを想定していなかった俺は慌て倒し、代わりに帝斗が見てくれる。そして椅子から滑り落ちた俺の肩を叩き、帝斗が画面を指した。

 

「今すぐにでもだってよ」

「なっ、何!? 今すぐ!? どっ、どうしよう!!」

「そんなに動揺するのに、よくさっき威張れたっスね」

「放置しておくのが気持ち悪いんだろ? いんじゃね、今すぐでも」

「……そう、だな。男には、腹を括らねばならん時がある。というわけで、きてくれたところ悪いが、帝斗と透華は聞こえないようにどこかで時間でも潰しておいてくれ」

「え?」

「は?」

 

 帝斗と透華が怪訝な表情で俺を見る。もちろん、二人が会話を聞いておきたいというのはわかっている。だが、朝凪さんからすれば帝斗と透華がいると思っていない。会話の内容を聞かれたくないと思っているかもしれない。だったら、二人には悪いが聞こえないようにしてもらうしかないだろう。

 なんとか納得してもらおうと口を開こうとすれば、二人同時に「そういうことか」と納得して事務所の出口へと向かった。

 

「人がいいのは構わねぇけど、なんかあったら後で教えろよ」

「伝えるべきこと、伝えない方がいいことの取捨選択は先輩に任せるっス」

 

 それだけ言って、二人は事務所を出た。

 

「なぁ満。俺、あの二人が友人でよかった」

「《ほんとにね。あそこまで自分を理解して立ててくれる人、中々いないよ?》」

 

 二人へ感謝しながら、ヘッドフォンとマイクを準備して、朝凪さんに『通話大丈夫ですか?』と送る。少ししてから『いいよ』と返ってきたのを確認し、震える指で通話ボタンをクリックした。

 

『もしもし』

「も、もしもし」

『はじめまして。朝凪真理です。朝凪でも真理でも、マリーでもいいよ』

「こ、これはっ、ご丁寧にどうも。ミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコです。お好きに呼んでいただいて結構ですので、はい」

『めっちゃ緊張してんじゃん。ウケる』

 

 可愛い声だな、と思った。少し低めの声だが、微妙にふにゃっとしていて、しかし聞き取りにくいわけじゃない。クール可愛いみたいな印象だ。

 

 じゃない。同じ事務所に所属するライバーとして相手のことを知るのも大事だが、本題はそこじゃない。

 

「朝凪さん。単刀直入に聞きますが、奇紀怪解の俺に関するものの再現度は、一体なんなんですか?」

『あー、あれ? じつは私、パラレルワールドを観測できて、あれは別世界のニコちーだよ』

「少し待っていてくださいね」

『おけ』

 

 マイクをミュートにし、満に向き直る。頭を抱えていた。俺もだ。

 

「パラレルワールドだと……?」

《思ってたよりもすごいのがでてきた……や、冗談じゃない? 流石に》

「なるほど、適当なことを言って煙に巻こうとしているということか」

 

 流石にな。パラレルワールドを観測できるなんて、そんなこと……。まぁ、俺も幽霊が見えるからない話じゃない、のか? 幽霊と同列に扱っていいものではない気がするが、超常という意味では同じだ。

 まさか、俺以外に”特別”な人間がいるとはな……。

 

 忘れていた厨二心を刺激されたが、満が言うようにまだ冗談という可能性がある。少し深堀してみよう。それでボロが出るかもしれん。

 

「お待たせしました」

『いいよー。あ、別に配信じゃないし、たけちーって呼ぶね』

「少し待っていてくださいね」

『おけ』

 

 マイクをミュートにし、満に向き直る。頭を抱えていた。俺もだ。

 

「たけちーって俺のことだよな?」

《本名知られてるね……マネージャーさんに聞いたとか? でもいくら同じ事務所だからって、そんな簡単に教えないよね》

「まさか現実でもあだ名をもらえるなんて……!」

《嬉しかったの!? 怖がってたとかじゃなくて!?》

 

 佐藤たけしという名前は平凡すぎると思っていたが、たけちーか。いいな。クール可愛い朝凪さんから呼んでもらうにはぴったりなあだ名だ。

 いや、わかっている。嬉しく思っている場合じゃない。問題は、なぜ朝凪さんが俺の名前を知っているかだ。考えられるのは、事務所が守秘義務に反したか、俺のストーカーか、パラレルワールドが本物か……。

 

「お待たせしました」

『ちなみに、別世界のたけちーは将来的に透華さんと結婚するよ』

「少し待っていてくださいね」

『おけ』

 

 マイクをミュートにし、満に向き直る。頭を抱えていた。俺もだ。

 

《もう無理……こればっかりは意味わかんない》

「順風満帆すぎないか? 別世界の俺。依頼がくるし結婚するし」

《嫉妬してる場合じゃないでしょ! あとなんでいっつも朝凪さんすんなり待ってくれるの!?》

「俺が知るか! クソ、どうなってやがる!」

 

 もう俺、この先「お待たせしました」と「少し待っていてくださいね」しか会話できないんじゃないか? それは会話と言えるのか? とんでもない情報をもらうだけもらって、混乱して終わるような気がする。それでは意味がない。

 この際、パラレルワールドがどうとかはどうでもいい。なぜあのゲームを作ったのか、それを聞かなければスッキリしない。

 

「お待たせしました」

『ちなみに、別世界の私はたけちーのことが好きだったみたい』

「いい加減にしろ!! これ以上俺を混乱させてどうするつもりだ!!」

『んー、でもどうすれば信じてもらえるかわかんないんだよね』

「別に、もう疑わん。信じてもらえない空しさはよく知っているからな」

『……ふふ、タメ口なんだ。うれしい』

《佐藤さん! ダメだよ! 変な女に引っかかるときの男になってる!》

『変な女の自覚はあるけど、別に何かにハメようとかは考えてないよ』

《聞こえてるし……》

 

 満がさかさまになってくるくる回り始めた。思考を放棄したらしい。

 

 満の声が聞こえる……なら、少なくとも一般人から外れていることは間違いない。だとすると、パラレルワールドが真実味を帯びてきた。とりあえず信じることにしたから今更疑ったりはしないが……。

 

 カッコよくないか? パラレルワールドを観測できるって。もう観測というところがいい。それに比べてなんだ俺は。幽霊が見えて話せるだけ? もっとこう、霊的なパワーを使ってバトルするとかそういうのないのか?

 

「それで、朝凪さん。あのゲームを作ったのはどういう理由なんだ? パラレルワールドが見えるとして、それを俺に伝えようとしたとしか思えん」

『うん。伝えるために作った。理由はね、パラレルワールドの私って邪神的な存在に囚われてて、毎日力を吸われるだけの道具だったんだけど、たけちーが偶然私が囚われてる神社にきてくれて、命がけで助けてくれて。どの世界でもそんなことしてくれるから、じゃあ私が今いる世界のたけちーはどんな人なんだろうって思ったら、やっぱりたけちーだなーって思って。だからどうにかして近づきたいなぁって思ったんだ。だから私に意識を向けてほしくてあのゲームを作ったの。あ、あの依頼も別世界では本当にあったことなんだよ。依頼人も含めて全部そのまま。これから作るお話は全部別世界で実際にあったことだから、ふふ。いつかゲームの世界でも私を助けてね。それと』

「邪神だと!? 俺はそんなやつに勝利できたのか!?」

《そこじゃないそこじゃない。絶対そこじゃないって》

 

 満が大慌てで俺の前にきてビンタしてくる。いきなり暴力を振るうとはどういうことだ!

 

 それにしても、やるなぁ別世界の俺。一人の女性を救うために邪神に立ち向かい、見事救うとは。ということはやはり俺のこの力は、磨けば邪神を祓うほどの力を手にできるようだな。フフ、ハーッハッハッハッハ! 我が名はミッドナイト・サイコナイト! 深夜の狂騎士!

 

《高笑いしてる場合じゃないでしょ! エグい電波のヤンデレっぽいのに目ぇつけられてるよ!》

『ボロクソじゃん。私、そんなに危なくないけど。ところでたけちー、事務所行ってもいい?』

「ん? いいぞ。ところで朝凪さん。助けた後はどうなったんだ?」

『一緒にいたよ。事務所の一員として』

《いいぞって、軽い! 気づいたら後ろで包丁持ってるタイプの人だよこの人! もっと警戒心持たないと!》

『そんなことしないって。パラレルワールド覗いてたら、うっかりたけちーに激重感情抱いちゃっただけだし』

《そんなことする人の感情だよ! それ!!》

 

 うんうん、満との相性もいいみたいだ。満は礼儀正しく、年上には必ず敬語を使う。それが朝凪さんに対してはタメ口だ。いい意味で、というわけではないかもしれんが、どういう形であれ心を開いている証拠だ。

 

《見損なったよ佐藤さん! 可愛い女の子に好かれたからって、ほいほい家に呼んじゃってさ! モテてこなかった人生の寂しさを、朝凪さんで埋めようっていう浅ましい魂胆が丸見えで気持ち悪い! 最低!》

「落ち着け満。何かに夢中になることは間違いじゃない。それに、別世界とはいえ俺と一緒にいた人なんだ。悪い人なわけがないだろう?」

《……佐藤さんって、小物なのか大物なのかわかんないよね》

『流石たけちー。じゃあ近いうちに事務所に引っ越すから』

「事務所行ってもいい? のレベルじゃないだろう!! 炎上するからやめてくれ!!」

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part5

 

52:このライバーがすごい! ID:ZYNC22XMZ

ボイスよすぎて、全人類が涙した

これよりネタバレを許可する

購入予定のある者は即刻閉じるように

 

53:このライバーがすごい! ID:RNay7wPfu

ニコ、やはり天才だったか

 

54:このライバーがすごい! ID:9TSwN0xx5

恋人シチュというわけではなく、同級生にいる気になるあの子というポジション取り

脱税した

 

55:このライバーがすごい! ID:gtTzKckji

>>54

脱帽しろ

 

56:このライバーがすごい! ID:kZMWDDqNW

優姫ちゃんみたいな子が同級生で優しく話しかけてくれたらなぁ

と思ってたら話しかけてくれるボイスが発売された

 

57:このライバーがすごい! ID:L8HavOh87

ニコは俺たちのことわかってくれてるよな

 

58:このライバーがすごい! ID:P7a0nCZj1

帰り道偶然会ったっていう冒頭

そこでの会話を話のタネに、教室で話しかけてくれる優姫ちゃん

段々砕けた口調になってくれる優姫ちゃん

あまりにもよすぎた

 

59:このライバーがすごい! ID:IvPQUm+Cm

アザミんはもう本当にアザミんだった

 

60:このライバーがすごい! ID:gnHXS7u8x

神出鬼没、興味のあるものがある場所にいるアザミんと頻繁に出会うという冒頭

お前がいたら面白いものが見られるかもとダウジング代わりにしてくるアザミん

幸運にもアザミんの興味を惹くものが見つかり、「礼でもしようか? ん?」とからかってくるアザミん

存分に転がしていただきました

 

61:このライバーがすごい! ID:nT3owzWmj

何がすごいって、行間がすごいんだよな

 

62:このライバーがすごい! ID:IoZapMODT

>>61

優姫ちゃんの席が隣だっていう設定で、ただただペンが走る音を数分聞かされて、時々優姫ちゃんの小さい笑い声が聞こえてくる

これにより、俺と優姫ちゃんにしかわからない何かが脳内で補完される

 

63:このライバーがすごい! ID:hXDCCg++o

>>61

アザミんの場合、数秒無音が続いた後、自分が動揺して椅子がガタガタ鳴って、アザミんが小さく笑う

一体何をしていただいたんだ……?

 

64:このライバーがすごい! ID:nF9GwqkzK

あんま詳細語るのやめなね

 

65:このライバーがすごい! ID:NNp3W06Kv

>>64

ニコがボイス台本公開してるぞ

 

66:このライバーがすごい! ID:s+IQmfRnD

>>65

マ?

 

67:このライバーがすごい! ID:xUnL2ykuj

>>66

納得した上で買ってほしいからって

優姫ちゃんとアザミんには許可貰ってて、運営とも交渉したらしい

って優姫ちゃんとアザミんが言ってた

 

68:このライバーがすごい! ID:z+uDGgnVO

・プロが書いたわけじゃないから、納得した上で買ってほしい

・視聴者に学生さんが多いことは知っているから、中身がわからないものにお金を払うのはハードルが高いと思った

・もちろん毎回台本公開はできないと思うから、そこは理解してほしい

みたいな

 

69:このライバーがすごい! ID:BcwcZC9WS

>>68

ニコ、収益化通ってるのにスパチャ解禁してないよな

 

70:このライバーがすごい! ID:wN/BZV1bD

>>69

優姫ちゃんとアザミんもだぞ

 

71:このライバーがすごい! ID:SiA6NOAu+

それぞれ理由は違うけどな

 

72:このライバーがすごい! ID:iCjJLCWWr

>>71

ニコ  :普段から解禁していると、気安い関係じゃなくなりそうで嫌だ

優姫ちゃん:お金をいただけるレベルだと思っていない

アザミん :スパチャで自己主張してきそうだから

 

73:このライバーがすごい! ID:my0qSswwt

ニコは人の好さ、優姫ちゃんはプライド、アザミんは邪魔するな

みたいな感じか

 

74:このライバーがすごい! ID:5AtoNeWmL

そのくせ、今回のボイスみたいにサービスがいい

 

75:このライバーがすごい! ID:EE5YmXf7S

でも事務所所属だからなぁ

他と足並みそろえないと、内側から文句出そう

 

76:このライバーがすごい! ID:sp9CsCPh8

ニッコリ探偵団は無料で台本公開してたのに、とか言い出すやつ出てきそうだよな

 

77:このライバーがすごい! ID:Sfl9+bo6h

そういうやつらどうすんだろ

 

78:このライバーがすごい! ID:UJ6vQcXG4

>>77

公式が「罰ゲームにより決まったニコ執筆台本なので、特別に公開しました」ってあらかじめアナウンスしてた

 

79:このライバーがすごい! ID:VvACp6I0p

>>78

あー、なるほどな

確かにそれなら、公開しないと罰ゲームの結果わかんないからってなるか

 

80:このライバーがすごい! ID:zHUTYGeut

ところで、ニコのボイス感想は?

 

81:このライバーがすごい! ID:8kb9texeD

俺だけのために配信してるみたいな感覚だった

 

82:このライバーがすごい! ID:+0K4koH4i

楽しかった

 

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