稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第168話 project:excite (7)

 ミッドナイト・サイコナイト。人生経験が著しく欠如している。だからこそその想像には際限がねェ。自由でシゲキ的で、普通に考えたらありえねぇことでも想像できちまう。

 想像が現実になる空間の弱点は、人生経験、理論、理屈、その他諸々で自分の想像を否定しちまえば、想像が現実にならねぇってところだ。とんでもねぇなんでもアリのモンを想像したところで、現実にそんなモンがありえるわけがねェと思ったその時点で想像は現実にならねェ。が、やつにはそれがない。故に、この空間に適している。

 

 芥川愛人。こいつにも自由って言葉が当てはまる。自分の好きに生きて自分の好きに死ぬようなやつだ。他人の事情なんて知ったこっちゃねェ、自分の興味に忠実。どっちかってぇと俺と似たような思考。興味を持ったことなら、その分野で頂点を取れるほどの才能を発揮する。生まれながらに何でもできたからこそシゲキを求める。能力を持った人格破綻者集団『芥川』の象徴ってのが一番こいつを表現するのに適した言葉だ。

 

「まず無粋な確認をするが、三つ巴ということでいいな!?」

「本当に無粋だねニコさん!! 敵の顔を見てわかんないなら、舞台から降りた方がいいよ。役者としての自覚が足りないぜ?」

「敵だ味方だしゃらくせェ。テメェは自分か自分以外かで区別するようなゴミだろうが!!!!」

「やっぱりわかる? 同じ穴の狢だもんね」

 

 芥川愛人が俺に掌を向けると、タールに無理やりパッションカラーを混ぜたような色の渦が現れる。解析には時間がかかりそうだな。魔力ってのと同じ理屈だ。観測したことがねェエネルギーだから解析がすぐにはできねェ。今俺が相手している二人は、この空間において『無』から『有』を創り出すことなんざ造作もねェ。解析したところで、また別の新種のエネルギーを生み出す。シゲキ的過ぎてたまらねェ。

 

「まずはお手並み拝見!! 一番ザコそうなシゲキさんから試してみようかな!!」

 

 キメェ渦から伸びてきたのは、無数の触手。色はバラバラで、最悪な例えすんだとしたら触手の形をしたゲボだ。キメェ形、キメェ色、ンで異臭。構成するすべてで不快感を煽りながら伸びてくる触手に、ザミリエルが行使していた魔法をぶつける。

 形は波。効果は消滅。どこかの世界では魔王に君臨するに相応しい力を持つはずのそれがキメェ触手に触れると、触手は耳にへばりつくような不快な音を響かせて、異臭ごと消滅した。

 

「あっれ、消えちゃった。嫌な気持ちにさせることに集中しすぎたかなぁ」

「フン、自分の力を正しく把握していないなど笑止千万!! 俺の力を見よ!! ハァァァアアアア!!!」

 

 ミッドナイト・サイコナイトが剣を横に薙ぎ払う動作を見せた時点で、らしくもなく勘に従って上空に逃げる。それが正解だと分かったのは、ミッドナイト・サイコナイトの剣から放たれた黒い斬撃が、触れたすべてを一瞬にして無に変えた時だった。破壊して塵にしてっつープロセスもなく、触れた瞬間完全に消し去るバカげた力。これを想像したのが27歳だってんだからシゲキ的でクソ笑える。

 こいつも解析に時間がかかりそうだ。シゲキEXの明確な弱点だな。体系化されたモンじゃなけりゃ、解析にクソほど時間がかかるってのは。

 

「いいね、ニコさん!! 理屈もへったくれもない子どもの考えた力みたいな!! 27歳でそれでしょ? 恥ずかしいね!!」

「やかましい!! 貴様も似たようなものだろう!!」

 

 なるほど、元々思ってたが、この二人が今の俺の天敵か。体系化されたモンなんざ一切使わねぇ、自分の世界にしか存在しねぇモンを当たり前に使ってくる。自由でシゲキ的なバカどもだ!!!!

 まずは認めろ、この場において一番ザコなのは俺だ。想像が現実になる空間で、科学っつー形にこだわって、創造性を狭めてるバカが俺。想像が現実になる空間に適応して、最大限その力を発揮させてるのがあいつら。

 

 が、だからって科学を諦めんのはゴミだ。『無』から『有』を生み出すのがあいつらなら、『有』から『新たな有』を作り出すのが俺で、科学。科学の神髄は、未解明のモンに対する定義、加工と発展にある。

 

「ターン制って決まってるわけじゃねェが、テメェらの攻撃受けてやったんだ。俺の攻撃にも付き合えよ!!!!」

 

 解析して自分のモンにしてきたエネルギー。そいつらまとめて融合させて、純粋な破壊力だけを抽出する。形は無数の線。効果はシゲキ的!!!!

 俺の指から伸びた無数のシゲキ的な光線が、更にその先で枝分かれして視界を埋め尽くすほどの線になる。触れたら一発で消し飛ばすほどのシゲキ的威力がある。ついでに俺が指を動かすだけで線は自在に動く。攻撃に操作性を持たせねぇなんざバカのやることだ。

 

「マズいっ、バリアー!!」

「僕もバリアー!」

 

 が、バカ二人は俺のシゲキ的攻撃を理屈もクソもねェバリアーで防いだ。あいつらの周りに張られた薄い膜にシゲキ的攻撃が触れた瞬間、すべてが弾かれてあいつらの周囲を破壊する。触れたら一発で消し飛ばすほどのシゲキ的威力がある攻撃が何で弾かれんだよ面白れぇ!!!!

 

「オイなんだそのバリアーってのは!! もう一回使え、シゲキ的に解析してやる!!!!」

「知らないの? 子どものころやったでしょ。無敵なんだぜ? バリアーってのは。僕は張る相手がいなかったけど」

「もちろん俺も張る相手はいなかった!!」

「シゲキ的に奇遇だなァ。俺もだ!!!!」

 

 あいつらと俺とでは生み出す結果に違いはあれど、似た者同士なのもかもしれねェ。友だちとかいう非生産的なモンがいなかったってクソみたいな共通点が見つかったところで、何になるわけでもねぇが。

 

 さァ次だ。このままターン制でやってりゃあ俺の解析が回って、あいつらの『無から生み出す有』を体系化できるかもしれねェ。が、ミッドナイト・サイコナイトはともかく、芥川愛人はそれに勘づいている。好き勝手やるバカだが頭は悪くねぇ。つっても行動が読めるわけでもねぇからやり辛ぇ。わかりやすくあいつらが組んでかかってくる方がよっぽどやりやすい。

 

「遠距離攻撃の次は近接だ!! 我が背に眠れるは終焉の翼。今こそ覚醒せよ!! 『黒翼(こくよく)()黙示録(もくしろく)』!!」

 

 バカがバカみてぇに叫んだかと思えば、その背に三対の黒い翼が生える。片翼大体2メートル。ぶっ壊れた歯車みてぇに非対称の歪な形。裂けた布みてェにボロボロに破れて、その破れ目から神経みてぇな赤い筋が脈打っている。翼からは黒い霧が漏れ出して、それに触れた尖塔がボロボロに崩れ落ちて、バカが空中に投げ出された。

 

「アハハ!! 自殺趣味でもあるの? それで死んだらクソダサいぜ!!」

「バカを言うな!! 男なら空を飛ぶ想像など、一度はやったことがあるだろう!!」

 

 そのまま死んだらクソ面白かったが、そうはいかねぇみてェだ。ミッドナイト・サイコナイトは翼を一切動かさず空中で静止し、そのまま高度を上げる。動かせよ翼。

 

「我が剣で屠ってくれる!! まずは貴様だ、芥川愛人!!」

「ご指名ありがとう!! じゃあさようなら!!」

 

 ミッドナイト・サイコナイトが剣を振り上げて高らかに叫んだかと思えば、瞬きする間に爆発した。あとなぜか芥川愛人も爆発した。恐らく芥川愛人が何かしたんだろう。爆発が生み出した黒煙から出てきたバカ二人は、ギャグマンガみてぇなアフロヘア―になっていた。

 一体何が起きてんだ……?

 

「アッハッハッハッハ!! 『バカが爆発する』って想像したら爆発しちゃった!!」

「貴様ァ!! 俺を侮辱しおって、許せん!!」

「僕も僕自身に侮辱されたからお相子でしょ!!」

「オイ、遊びにきたんなら相手が違ェぞ!!!! 俺が保育士にでも見えてんのか!!!??」

 

 空を飛んで、ミッドナイト・サイコナイトに肉薄する。どんなとんでもねぇ力を使おうが、本体を構成する要素は人間と変わりねェ。俺が触れれば一瞬でぐちゃぐちゃにできる。翼から漏れる霧に触れたら俺がぐちゃぐちゃになるだろうが、尖塔が崩れる速度は緩やかだった。軽くぐちゃぐちゃになるぐれェならどうにでもなる。

 で、ミッドナイト・サイコナイトにとっちゃ接近戦は明確な弱点だ。ぶっ飛んだ想像力を持っていようと反射神経がよくなるわけじゃねェ。元々の運動能力が高くねェこいつなら、近づいちまえば終わりだ。

 

 俺の接近に反応できねェミッドナイト・サイコナイトに腕を伸ばし、その腕を掴、んだはずの俺の手には、哺乳瓶が握られていた。

 

「ア……?」

「フッ、どこを見ている? 俺が瞬間移動をできないと思っていたか!!」

「だから翼で移動しろやテメェ!!!! いや、それはいい。ンだこの哺乳瓶は!!!!」

「何も掴めないのは可哀そうだと思ったから僕が気を利かせたんだよ。嬉しいでしょ」

「シゲキ的に舐めやがって、上等だテメェら!!!!」

 

 哺乳瓶を握りつぶして、バカ二人を粉々にしようと振り向いて、気づく。バカ二人の傷が治ってやがる。そもそも自分中心に爆発が起きて原型留めてる時点でおかしいとは思ってた。バリアーみてェなふざけたモンを使う時点で、自分自身の耐久力には自信がねェと言ってるようなモンだ。だから、爆発自体は見た目重視で、威力は全然ねェもんなんだろうと納得してた。

 が、今は綺麗さっぱり傷がねェ。ギャグマンガみてぇなアフロヘアーでもねェし、肌も煤けてねェ。再生能力か? いや、だとしたらミッドナイト・サイコナイトはシゲキ的なバカだから「俺には再生能力がある!!」ってバカみてぇに叫ぶはずだ。つまり、外的要因、もしくは無意識で何らかの想像が働いて無傷になったと考えられる。

 

「ところでニコさん。なんで僕らの怪我が治ってるの?」

「何っ? ……本当だ!! なぜだ!? シゲキ、まさか俺たちに施しを!?」

「黙れ!!!!」

「黙れ!?」

 

 芥川愛人でもねェのか? とぼけただけって可能性もあるが、あいつもあいつで種明かしが好きなタイプだ。バカしかいねェのかここは。なら何が原因で……。

 

『知りたいか?』

「アザミ? 何の用だ」

 

 最初に喋ってからだんまりだったアザミが、いきなり話しかけてくる。俺の心を読んでるみてェな言動は、俺と同レベルの頭脳を持ってるあいつなら可能だろうから今更気にしねェ。

 

『お前が考えた世界で、お前がやられる姿を見ていようと思っていたんだが……んん、なんというか……』

「ンだ。はっきり言えらしくもねェ」

『わかった。私以外にお前がやられるのが気に食わんと思ってな。お前に味方しようと思った』

「アザミ!? 裏切るのか!!」

「いいじゃん! そうなったら僕と組む? ニコさん」

「昨日の敵は今日の友、か……」

 

 バカがバカしてやがるのを聞き流して、アザミの真意を察する。クソリスナーに「かわいい」って言われるような建前で、俺が納得すると思ってんのかこいつ。

 

「もう一回言うぞ。はっきり言え」

『やはりお前は誤魔化せないな。私がお前から離れて獲得したのは、人の感情およびお前が理解しきっていない面白さ。今お前が直面している理不尽の正体が、私にはわかる。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 かわいらしい理由なんざ一つもねェ。こいつは、俺が理解できねェ盤面用意して、それを理解している自分の知識を俺に与えることで、遠回しに俺に勝とうとしてやがるってだけだ。

 

「趣味ワリィんだよテメェ!!!! 足引っ張るんじゃねぇぞ!!!!」

『同じことを何度も言わせるな』

「よし、手を組むぞ!! 芥川愛人!!」

「おっけー。普通に裏切るからよろしく!!」

「え!?」

 

 やっぱ、お前は一番シゲキ的だなァ、アザミ!!!!

 




現在、GAMERS様にて書籍予約受付いただいています。
特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。予約いただけると喜びすぎます。
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僕はいつの間にか予約していました。

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オーバーラップノベルス様

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あと、今日の夕方ごろ書影が公開されるはずです!
イラスト神すぎて腰抜かして震えて、つい先日溶けてなくなりました。
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