稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第170話 project:excite (9)

「ギャグマンガにおいて、戦闘能力のないツッコミ要員に手を出すと負ける。優姫は狙うな」

「俺といねェ間に随分ワケわかんねぇことを理解したみてぇだな」

 

 アザミの言うことだから聞いてやるが、意味がわからねぇ。一応理解はできる。ギャグ補正ってのはそういうことだろうって程度だが……。チッ、科学突き詰めたらこんなバカどもが誕生すんのか? いや、科学でオカルトと同じラインに立ったってことは間違いなく進歩だ。結果がバカみてぇにシゲキ的なのはこの際目を瞑る。

 

「さて、シゲキ。優姫がこの場にきた理由はわかるか?」

「月宮優姫のことは知らねェよ。ただ、意味はわからねぇな。バカみてぇな状況だとはいえ、少しでも巻き込まれりゃあ一瞬でシゲキ的にあの世行きのこの場に乱入するようなバカには見えねェ」

「お前に足りないのはそこだな。言われなくてもわかっていると思うが」

「教師にでもなったつもりか? シゲキ的に似合わねェぞ」

「お前は生徒が似合わないから、義務教育も終えていないのか。合点がいった」

「あんたらいつまで抱き合ってんの。愛人さん、あいつら引きはがして。正直同期のあぁいうところ見てらんないのよ」

「ナニィ!? 僕と抱き合いたいだって!? 仕方ないなぁ」

 

 月宮優姫が芥川愛人を叩いて、下半身が地面に埋まると同時に体に自由が戻ってくる。「私と離れて残念か?」と思ってもねぇことを聞いてくるアザミはあとで殺してやるとして、優先して殺すべきは下半身が埋まってるバカだ。つーかンで月宮優姫に殴られた程度で埋まってんだよ。アレもギャグ補正か? これから起きる理不尽は、全部ギャグ補正って考えた方がいいか。解析したくもねェが、勝つには必要……だとは思ったが、シゲキ的に解析できねェ。まさか、ギャグはそういうモンじゃねぇってことか?

 

「そういうことだ」

「どこまで下らねぇんだ」

「だから面白いんだろう? お前もわかる時がくる。むしろ、ルイスとイベリスといてなぜまだ理解できていないのかが不思議なくらいだな」

 

 理解したくもねェだろ。今もどこかから上半身だけガチガチの意味不明な男が現れて、「私は下半身が埋まった人間を引き抜く筋肉のみを鍛えたマッチョ!!」っつってポージングして、ミッドナイト・サイコナイトが大盛り上がりしてやがる。アレをどう理解しろってんだ。下半身が埋まった人間を引き抜くんなら下半身にも筋肉必要だろうが。

 

「アレは、芥川愛人があそこから抜け出す想像をした結果だな」

「それのどこにマッチョが登場してんだよ」

「それがギャグ補正だ」

「思考停止はシゲキ的にゴミだと思ってるが、ゴミに成り下がってもいいと思ったのはシゲキ的に初めてだ」

 

 芥川愛人はマッチョに引き抜かれて、勢いが付きすぎて空の彼方へ消えていった。引き抜く専門のマッチョのクセして満足に引き抜けてねぇじゃねぇか。

 ……? 芥川愛人の生体反応が消えた?

 

「死んだな」

「死んだだと!!!?? 今のでか!!???」

「あまりデカい声を出すな」

「シゲキ的に無理があんだろ!!!! 俺がぶっ殺してやるはずの奴が、ギャグ補正の一部で死んでんじゃねぇよ!!!!」

「私に言われてもな……」

 

 呆れかえってため息も出ねぇ。シゲキ的ではあるが、シゲキの方向性が意味不明。これを理解した瞬間、俺の脳はバカになってやがる気がする。あとマッチョは自責の念に駆られて地面に埋まった。あいつ誰なんだマジで。

 とはいえ、敵がいなくなったわけじゃねぇ。「お前に悪意がなかったことはわかっている!!」っつってマッチョを慰めてやがるあのバカが最後の敵だ。その隣にいる月宮優姫は俺と同じ感情を抱いているらしく、俺に同情の視線を向けてきてやがる。敵だがシゲキ的に味方な気がする。

 

「クソッ、よくもやったな、シゲキ!!」

「全部そこに埋まってるマッチョのせいだけど、もしかしてあんたと私で見てる景色が違う?」

「気づいてくれたか! 俺の魔眼、ミッドナイト・サイコアイは万物を睥睨する!!」

「威圧感あって嫌なやつってこと? 似合わないわね」

「あ、ありがとう……」

「嫌味のつもりだったんだけど……」

「おいテメェら。喧嘩売りに来たんならちゃんと売れ!!!! ぶっ殺されてぇのか!!!!」

「待てシゲキ。このやり取りに乱入して武力を振り回すと負けるぞ」

「ウゼェ!!!!」

 

 なんでこんなクソみてぇな形で俺の科学の到達点を否定されてんだよ!!!! シゲキ的過ぎんだろうが!!!!

 解析できねぇが理解はした。ミッドナイト・サイコナイトに勝つには、ギャグ補正の範疇でぶっ殺す必要がある。ってことは俺があの位置まで下がんなきゃならねぇ。ってことは俺も何かしらの専門のマッチョを生み出す可能性があるってことか? 冗談過ぎんだろ。アザミが腹ァ抱えて笑いすぎて死ぬぞ。

 

 ただ、どうしても俺がギャグ補正とやらの範疇にいるビジョンが見えねぇ。計算式無しどころか、計算式がそもそも存在しねェモンに対して答えを出せって言われてるようなモンだ。そこを新しく定義すんのが科学の仕事だが、これに関しては明確ではねぇが定義が存在している。考えれば考えるほど意味不明だ。

 

「で、あんたシゲキさんに勝てんの?」

「初めから負けを考えて戦場に立つ男がいるか?」

「厨二病まっしぐらの力を手にしたからかわかんないけど、気が大きくてバカみたいね」

「おい、シゲキ的じゃねぇが、このまま放置してりゃあ勝てんじゃねぇか?」

「人の感情を理解してきているようだな。いいことだ」

 

 ミッドナイト・サイコナイトが目に見えて落ち込んでやがる。月宮優姫は現実主義か? シゲキ的だがシゲキ的じゃねぇな。アレもギャグ補正に対する有効策に見えるが、シゲキ的じゃねぇから却下だ。俺が却下したところで、月宮優姫がミッドナイト・サイコナイトを屠る可能性も十分ある。

 

「っつーか、俺たちもそうだ。ギャグ補正に対する解がねェ。どうやって勝つ?」

「……」

「ンだ?」

「いや、なんでもない」

「多分、シゲキさんに頼られて嬉しいんだと思いますよ。かわいいところあるわね、アザミ」

「ンなわけねェだろ。俺が理解してねぇモンを理解してるアザミに対策聞くのは当然のことだ。アザミがそれを理解してねェわけがねェ」

「お前はシゲキ的だが、面白くないな」

「どういうことだテメェ!!!!」

 

 聞き捨てならねぇことを言ったアザミに詰め寄るが、無視。……不機嫌? まさか、月宮優姫が言ったことが当たってたのか? 俺に頼られて嬉しい? 違ェな、あって優越感だ。それか、月宮優姫があぁ言うのを想定した上で、それを利用して俺をバカにしようとしたってとこか。アザミの同期とはいえ、まだアザミを理解しきってねェみてぇだな。

 アザミは「まぁ、シゲキがそういうことに疎いのは今に始まったことではない。ニコと同じでな」とまた聞き捨てならねぇことを言いながらついでにミッドナイト・サイコナイトを攻撃して、一歩前に出た。

 

「ギャグ補正の対抗策というのは、同じくギャグ補正か、ギャグ補正を上回る世界か、徹底的な現実か……最後はシゲキ的ではないから除外する。そして私が提案するのは二つ目、ギャグ補正を上回る世界だ」

「へぇ。シゲキ的なモン見せてくれるってのか?」

「何をするつもりだ、アザミ!! バカな真似はやめろ!!」

「どっちかって言うとあんたのがやってるわよ。バカな真似」

「早くしろアザミ。このままだとミッドナイト・サイコナイトが徹底的な現実に殺されんだろうが」

「それも面白そうだが……」

 

 俺もそれは否定しねェ。なんなら一番シゲキ的な気もする。ミッドナイト・サイコナイト自体がシゲキ的だからな。よく考えりゃああいつが関わってる時点で徹底的な現実もシゲキ的か。今度それでぶっ潰してやろう。

 

「ギャグ補正を上回る世界。とはいっても、正確には『ギャグ補正を作り上げているミッドナイト・サイコナイトを無効化する世界』だな」

「ギャグ補正自体ってよりは、ミッドナイト・サイコナイト特効が結果的にギャグ補正を潰すってことになるってことか」

「あぁ。そして、傾向によりミッドナイト・サイコナイトの弱点は把握している」

 

 アザミが指を鳴らすと、アザミの手首と俺の胸、心臓のある位置がコードで繋がれた。見れば、ミッドナイト・サイコナイトの手首からも同じようにコードが伸びて、月宮優姫の胸に繋がっている。次いで、頭上に『パートナーに聞く、10の質問!』とバカみてぇなパッションカラーで描かれた文字が浮かび上がる。

 ……そういや、ここはまだエンターテイメントワールドだったか。あいつらのエンターテイメントワールドは解析できたが、この空間は解析できねぇ。アザミが何かしやがったか?

 

「なっ、なんだこれは!? なぜか知らんが、命がかかっていることはわかるぞ!!」

「ルールを説明しよう。これから頭上に10の質問が表示される。例えば『好きな食べ物は?』と表示されたら、心臓にコードが取り付けられた者は、自身のパートナーの好きな食べ物を答える。間違っていれば心臓に深刻なダメージだ」

「心臓に深刻なダメージ!?」

「優姫はかわいそうだから、ちょっとくすぐったい程度だ」

「ざけンなテメェ!!!! 俺を殺すための装置じゃねェか!!!!」

「ちなみに、正解かどうかは手首に取り付けられた『絶対本心把握するくん』および『絶対本心把握するちゃん』によって自動で判定される」

「なんでこれに性別の概念があんのよ!!」

「要は、仲良しな方が勝つ、ということだな」

 

 ……仲良し? なら負けるだろ。俺とアザミは仲良しってガラじゃねぇ。ただ同じ位置にいるってだけで、パーソナルなことは……考えりゃあわかる程度か。なら勝てる、可能性はあるが、月宮優姫は要素を拾い上げて答えを導き出すって点じゃ優秀だ。普段から付き合いのあるミッドナイト・サイコナイトのことなら理解していて当然か?

 まァ、だからって負けるつもりもねェ。自分の理解の範疇にねェから負けましたなんざクソだ。理解の範疇にねェモンを今まで培ってきたモンで突破する。今までやってきたこととシゲキ的に同じだ。

 

「では、早速第一問」

 

 頭上に表示されたのは、『あなたはパートナーのことが好きですか?』という文字。

 

 ……は?

 




現在、書籍予約受付いただいています。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。予約いただけると喜びすぎます。
詳しくはリンクを貼るので、その先のページでご確認ください。
僕はいつの間にか予約していました。

あと、店舗ごとに特典とかもつくらしいです。
続報は私のX、オーバーラップ様の公式Xなどで発信されるかと思うので、もしよければ見に来てください。
特典としては、書下ろしペーパーなどがあります。書下ろしペーパーは、特定キャラのボイスを書きました。購入先によってキャラが変わるはずですので、それもわかれば追ってお伝えします。

■予約ページ
オーバーラップノベルス様

GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド


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