稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第172話 project:frenzy

 あなたはパートナーのことが好きですかってことは、アザミが俺のことを好きかどうかってことか? ンなもん嫌い一択だろ。どう考えても俺を好きなわけがねェ。恋愛でも友愛でもどっちでもだ。この空間がアザミの思い通りになるんだとしたら、俺をおちょくる以外にこの質問の意味はねェ。どう答えたとしても俺が不利になるように仕組んでやがるんだろう。好きだと言やァ自意識過剰だと、嫌いだと言やァ悲劇のヒロインを演じる。クソ下らねぇ茶番だ。

 

「さぁ、答えてもらおう」

「ま、待てアザミ!! こんなことを月宮さんに答えてもらうのは申し訳ない、というか俺と月宮さんはなぜいつもこんなことになるんだ!?」

「私とあんたがアザミの同期だから」

「なるほどな」

 

 ……そういや、ミッドナイト・サイコナイトが回答者じゃねェのか。この場で処理するべきはあいつだろ。それに、あいつなら回答を外しまくるに違いねェ。だってのにあいつが回答者じゃねェってことは、ほぼほぼこの空間はアザミが私欲を満たすためだけのもの。付き合う必要あるか? 解析ぶん回してぶち壊しちまえばいいだろ。

 

「逃げるのか?」

「ア?」

「どうやら私に負けるのが怖いらしいな。初めての敗北の味を前に怖気づいたか」

「殺す」

 

 そこまで敗北を思い出してェなら、全部当てた後で殺してやる。今殺害対象の優先度が変わった。

 

「さて、改めて回答をどうぞ。いやぁ、なんと答えるか見ものだな」

「月宮さん、答えなくてもいい!! くすぐったくなる程度なら問題ないだろう!!」

「うっさいわね!! 答えるわよ!!」

「この負けず嫌いめ!! どうなっても知らんからな!!」

「ふふ」

「……楽しそうだな、テメェ」

「あぁ。楽しい」

 

 チッ、気に入らねェ。なんでどいつもこいつも俺の前でお遊戯会やり出すんだ。『project:eden』はいつから幼稚園に成り下がった? 俺が切り捨てたモンを披露しにきやがって。これもアザミの嫌がらせか? だとしたらむしろ俺のことシゲキ的に好きだろこいつ。俺もアザミのことを言えねぇが、アザミも俺に執着しすぎだ。

 

「それじゃあ、せーので答えろ。せーの」

「好き」

「嫌いっ、!!!?????」

 

 嫌いっつった瞬間、致命的なダメージに襲われる。は? どういこった? こいつはアザミの本心を読み取って正解だったら何も起こらねぇはず……。っつーことは俺のことが好きなのか? ありえねぇだろ。俺を殺すためだけにルールを無視して痛めつけにきやがったか!!!! 俺に協力するフリしたのは演技か!? 俺が隣にいねェ間に随分人間らしくなりやがって!!!!

 

「くすぐったくないわね」

「もっ、もちろん恋愛的な意味ではなく!! 友愛だ、友愛!!」

「わかってるわよ。あんたのそういうとこ、信頼してるから」

「あ、ありがとう……」

「お前ら。死にかけのシゲキを見て何か言うことはないのか?」

「テ、メェが、作り出した、状況だろうが……!!」

 

 アザミは肩を竦めた。クソが、バカみてぇなノリに乗せられた時点で俺の不利は決まってたようなモンだが、ここまで心臓に致命的なダメージがあるとは思わなかった……わけでもねェが、俺の隣にいた頃と比べてアザミは柔らかくなったから、もう少しマシなダメージかと思ってた。こういうシゲキ的なところは変わってなくてシゲキ的に安心したぜ。

 

「ところで、シゲキは私の気持ちをわかってくれていなかったのか。まぁ、お前は人の気持ちを理解できないから仕方がないが」

「ハッ、どうせテメェの思い通りにダメージ与えられんだろ。全部掌の上で踊らせようとしやがってクソ趣味ワリィ」

「解析を切ったのか? 私たちを繋いでいるこれがどういうものか、今のお前ならわかるはずだが」

 

 ……。

 

 嘘じゃねぇ、だと? 解析を間違えたか? いや、間違えるはずがねェ。念のため何度解析しても、このコードがアザミの気持ちを読み取るもんだって結果が出る。あと心臓へのダメージは俺相手じゃなきゃ一撃で死ぬようなモンだ。なんてシゲキ的なモン取りつけてくれてんだテメェ。

 だとしたら、意味がわからねェ。俺のことが好き? 血迷ったどころの騒ぎじゃねぇぞ。そもそも俺とお前はそんなんじゃねぇだろうが。シゲキ的ライバルっつった方がしっくりくる。恋人だとか番だとかンな生殖本能に抗えねぇ下らねぇ関係じゃねぇだろ。

 

「私も女だ、ということだな」

「いや……は?」

「……月宮さん。シゲキは童貞だと思うか?」

「私にそれを聞いてくる神経が信じらんないわね」

 

 アザミは女だが、生物学的な話だろ。女の子らしく素敵な恋愛がしてぇってか? 俺を相手に?

 いや、そもそも『好き』の定義が違ェ。恋愛か友愛か観察対象か、色んな種類の『好き』があって、それのどれかに当てはまってりゃあ『好き』と捉えられる。こいつの戯言に乗せられんな。クソ視聴者を囲うためにクソ演技繰り返して、クソみてぇなことばっか得意になりやがって。

 

「まぁ、いくじなしのシゲキは置いておいて、次の質問だ」

 

 次に頭上に表示されたのは、『あなたはパートナーのどこが好きですか?』という文字。ふざけんな!!!!

 

「テメェ!!!! やっぱ俺をシゲキ的に殺す気だろ!!!!」

「あぁ」

「何あっさり頷いてんだ!!!!」

「そもそも、お前はそれをわかってこの勝負に乗ってきたんだろう。今更ぐちぐち言うな見苦しい」

「チッ!!!!」

「……なんか、アザミといるときのシゲキさん、かわいいわね」

「シゲキがかわいいだと!? 殺されるぞ!!」

 

 別にンなこと言われた程度で殺さねぇよ。思想は自由だ。誰にどう思われようがどうでもいい。

 ンで、『あなたはパートナーのどこが好きですか?』だと? 好き前提の話か? そもそも『どこも好きじゃねェ』ってことはありえる……それはありえねェな。一個前の質問で、どういう種類かはわからねぇがアザミが俺のことが好きだってことはわかってる。なら、これの正解を導き出すには、その好きの種類を理解する必要がある。

 

「私はニコに好きなところ言ってもらったことあるから余裕ね」

「なっ、覚えているのか!?」

「嬉しかったから。そりゃ覚えてるわよ」

「シゲキは私のことをわかってくれているか?」

「黙ってろ」

「優姫はいいな。信頼し合えるパートナーで」

「あんまりシゲキさんをいじめちゃダメよ」

 

 ……なんか、俺が急速に舐められてねェか? 気のせいか? 月宮優姫は元々物怖じしねェやつだった認識だが、にしたってあいつにとって危険物である俺に対して、舐めた口を利くほどバカでもねェ。となるとアザミのせいだな。どうやって責任取らせるか……。

 そのことはいい。アザミが俺の好きなところで思いつくのは、頭脳だ。配信で俺のことを嫌いだと明言していたが、それは『俺と勝負することに対して』の話。だったら勝てねェ原因である俺の頭脳を嫌うのが通常なら自然だが、アザミは事実を事実として認めるやつだ。っつーかそもそもそれ以外に好きだと思うようなところが見つからねェ。容姿に惹かれるタイプでもねェし、俺の性格がクソだってのは自覚してる。

 

「それでは、回答だ。せーの」

「負けず嫌いなところ」

「頭脳っ!!!????」

 

 クソいてェ!!!! 俺が自己修復できなかったらもう死んでんぞ!!!! 俺に膝つかせたことは褒めてやるが、ぜってぇぶっ殺してやる!!!!

 

「くすぐったくない」

「本当に覚えていたのか……」

「あんただって、私が言ったあんたの好きなところ覚えてるでしょ」

「あぁ、なるほど。そういうことか」

「おい。激痛のあまり倒れた死にかけのシゲキを見て言うことはないのか」

「殺して、やる……!!!!」

 

 俺を見下ろしやがって……!! 楽しそうな顔してんじゃねェよ!! マジでシゲキ的に趣味ワリィ。俺の苦手ジャンルで攻め続けて、優越感に浸りながら殺す気だなこいつ。俺を舐めてんじゃねぇぞ。どんだけ苦手っつっても、何度も繰り返されりゃあ傾向はわかる。10問終わった時がテメェの命の終わりだ。テメェで命の時間制限つけるなんざ、クソマゾか? やっぱ趣味ワリィな。

 

「さて、弱っているうちに畳みかけるか」

「殺意隠しきれなくなってんぞ、オイ」

 

 頭上に表示されたのは、『あなたの名前の由来は?』。

 

「厨二病……っ!? ちょ、くすぐったっ……!!」

「おい優姫、いやらしい声を出すな。ニコが性的興奮を覚え獣となり、性欲の限りを尽くそうとしたらどう責任を取る」

「そんときゃ俺が殺してやるよ」

「そうか。助かった」

「なぜスムーズに俺の殺害が決定されたんだ……?」

 

 厨二病たァ短絡的だな。厨二病ってのは周りから言われるモンで、本人が自称するモンじゃねェ。ただ単純に『カッコいいと思ったから』あたりが正答だろうな。シゲキ的ミッドナイト・サイコナイトなら本名で考えてた可能性もある。シゲキ的だからな。

 

「さぁシゲキ。私の名前の由来を」

「アザミの花言葉は独立、厳格、報復と色んなモンがあるが、色によって意味が違ェ。由来とすんなら白のアザミのひとりだち、自立心か」

 

 アザミの言葉を遮るように言えば、アザミが固まった。心臓に痛みはこねェ。正解か、当然だな。クソ簡単な質問投げてきやがって。緩急ってやつか? 演出もうまくなったのかこいつ。シゲキ的に成長しやがって。

 

「お前……なんで」

「ア? 考えりゃすぐわかる……あぁ、こう言うのが正解か? 俺を意識して、かわいいとこあんじゃねェか。なァ?」

「……うるさいな」

 

 アザミは現実主義に見えてロマン派だ。音楽関係のそれを指してるわけじゃねェ。ンで、花を飾る趣味はねェが花言葉を知ってる。自分自身の名前にこだわるタイプでもねェ。だとしたら、自分の状況と照らし合わせて、最適な花言葉を持つ花の名前から取る。デビュー時、アザミの名前が出た瞬間わかった。

 

「……ア?」

 

 俺の心臓を二回もダメにしやがったアザミにシゲキ的に反撃してニヤついていると、違和感に気づく。

 普段はほとんど無視して、意識の隅で把握している配信のコメント。その様子。いつもはシゲキ的に荒れてるだけだが、今は違ェ。

 

なんだ、やっぱりシゲキはアザミんのことが大好きなのか

アザミんを乙女にしやがって!!

【朗報】シゲキ、人間だった

シゲキが人間らしすぎる

偽物か?

いや、この愛情は本物だろ

人の感情を知らない化け物みたいでかわいい

応援してます! シゲキさん!

俺のアザミんが……

シゲキなら仕方ない

 

 今までは、俺を別次元の存在と捉えたコメントしかなかった。今は、言っちまえば普通。普通のコメント。それを見て、理解した。

 

「……そういうことか」

 

 気に入らねェ。アザミは、今この場の勝負に勝つことなんざ考えてなかった。

 そもそも、今俺たちが『project:conflict』をやってんのは、こいつを使って配信業界巻き込みてェから、その宣伝の意味が大きい。主催は『project:eden』。ってなると問題になんのが、『project:eden』の悪評。そいつはシゲキ的ニコ、フレイル・アースレイドの動きで緩和されちゃいるが、一番のネックが俺の存在だった。実際、好き勝手やるのを我慢する意味がねェからな。

 

 アザミは、それを解消しにきやがった。このふざけた空間で、俺に親しみを付与しやがった。アザミが用意した『想像が現実になる空間』で、俺が科学を突き詰めたその上で。

 

「私の勝ちだ。シゲキ」

「ハッ、転がすのがうまくなったみてェだな」

「シゲキ的だっただろう」

「あぁ」

 

 コードが外れる。今心臓にダメージ与えられても抵抗しやしねェのに、自害しろってか? 敗者に容赦がねェのはシゲキ的でいいな。

 

 ──あの日、俺はアザミを自分から遠ざけた。らしくもなく、アザミのためにって言い訳して、アザミの気持ちなんざまったく考えず。それが一番、俺にとって楽だったから。今まで切り捨ててきたモンを同じように切り捨てた。

 そして、俺が遠ざけたアザミが、俺にはねェ知識を持って、()()()()()()()。結果だけ見りゃあシゲキ的に好ましい。が、多分。

 

 なかったことには、しねェ方がいいんだろう。

 

「アザミ、ごめん。俺が悪かった」

「いいよ、許そう。やっとお前を好きになれそうだ」

「それは俺に勝ったからか?」

「あぁ」

「クソ趣味ワリィ。今度は俺がお前を殺してやるよ」

 

 アザミの笑顔を見て、次は殺すと誓ってから。

 

 到達した科学の力を使って、俺は生命活動を停止した。

 




現在、書籍予約受付いただいています。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。予約いただけると喜びすぎます。
詳しくはリンクを貼るので、その先のページでご確認ください。
僕はいつの間にか予約していました。

あと、店舗ごとに特典とかもつくらしいです。
続報は私のX、オーバーラップ様の公式Xなどで発信されるかと思うので、もしよければ見に来てください。
特典としては、書下ろしペーパーなどがあります。書下ろしペーパーは、特定キャラのボイスを書きました。購入先によってキャラが変わるはずですので、それもわかれば追ってお伝えします。

■予約ページ
オーバーラップノベルス様

GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド


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