稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第173話 シゲキ的

「で、全部アザミさんが計画してたことだってことか」

「らしい。過労で倒れたのも、直前までプログラムをいじっていて、なおかつシゲキの相手をしていたからだと言っていた」

「配信見てたっスけど、意味わかんなかったっス……」

 

 シゲキの打倒……と言っていいのか、アザミの勝利と言っていいのか。とにかく『project:conflict』は終わりを迎えた。

 終わってから聞かされたのは、今回の『project:conflict』はアザミがシゲキを打ち負かしたいがために企画されたものでもあった、とのことだった。なおかつ、『project:eden』を凝縮したような存在であるシゲキの人間味を視聴者に伝え、拡散することで、広く受け入れられやすくするという手腕。企画を私物化したことに変わりはないが、元より配信者など好きなことをやってなんぼのものだ。それに、ちゃんと『project:eden』としての目的にも添えているのだから、何の問題もない。視聴者からの反応も上々、他の箱のライバー方からも好印象。企画は成功と言っていい。

 

 ……元々の遊び方を完全には見せられていないのは少し気になるが、それは別に俺たちでなくともできる遊び方だから、ということで納得しておこう。

 

「しかし、アザミとシゲキが、か……」

「アザミさん、シゲキさんのこと嫌い嫌いって言ってたのに、素直じゃなかっただけだったんだね」

「なんか俺、シゲキさんを見て佐藤のことが思い浮かんだんだよな。ほんとは気づけるのに、鈍いフリしてるっつーか」

「それ、私もハズイんでやめてください……」

「透華よりは断然アザミの方がわかりづらいだろう。シゲキは責められん」

「先輩!」

 

 恥ずかしいのか、顔を赤くして怒る透華に「すまん」と言って手を合わせると、納得いっていない表情で「別に、いいっスけど……」と言って拗ねてしまった。かわいい。

 

 ……さて。『project:conflict』も終わり、次に俺が目を向けるべきは何か。そう、透華だ。婚約したというのに配信ばかりで放置してしまい、この前「もうちょっと構ってほしい」という旨を伝えられる始末。男として情けない。バリバリ働いて資金を貯めるべきだとはいえ、透華を放置していい理由にはならない。

 そして、もう一つ。別に意識しているわけではないが、別世界の透華は俺に対してタメ口であり、あ、あなたという呼び方をしていた。どのような経緯でそうなったかはわからないが、婚約したのに崩れた敬語と「先輩」呼びでは距離がある。今のままでも透華は十分可愛いし素敵という言葉では表現しきれないほど素敵な女性だが、もっとこう、先に進みたい、いやっ、先に進みたいというのは決していやらしい意味ではなく、これから夫婦になるのだからより親密な関係になるというのは自然だという話で!!

 

 しかし、どうやって切り出すか。エミに聞くか? いや、エミは俺よりも男前だ。きっと「そういうのはお前自身の問題だろう」と言ってくるに違いない。俺もそう思う。そう思うけどそれはそれとしてアドバイスが欲しいというのが本音だ。クソッ、ここにきて俺の人生経験のなさが露呈するとは……!! 月宮さんとアザミに、タメ口でいいかとお願いするとき以来の緊張感だ!!

 

「そういや透華。いつまで佐藤のこと先輩って呼んでんだ? 関係性的にもうちょっと近い呼び方でもいいんじゃねぇの?」

 

 そんな意気地のない俺に救いの手を差し伸べたのは帝斗だった。帝斗のことだから、俺の心を読んで助け船を……? 違う、そういえばエミが「大体のことは帝斗が終わらせてしまう」と言っていたな。マズい、このままでは俺と透華の関係が帝斗によって定義づけられるかもしれん!

 

「帝斗。ありがたいが、これは俺と透華の問題だ。二人で決めさせてくれ」

「ん? あー……そうだな。ワリィ、お節介だったか」

「それがお前のいいところだ。俺に対しては過保護で行き過ぎる時もあると理解している。あまり気にするな」

「先輩と私の……問題……」

「ところで佐藤さん。あそこでぽやぽやしてるかわいい透華はどうするつもり?」

「その答えを俺が瞬時に出せるのなら、もっと早い段階でプロポーズしていたと思わないか?」

「自分の情けなさを武器に論破してこないでよ。更に情けないから」

 

 透華は恥ずかしがり屋だ。今も俺と目が合った瞬間急いで逸らして、ちらちらと俺を見るかわいい行動をしている。そういう話をしたいという期待はあるが、恥ずかしくて自分から言い出せない、といったところか。

 

 ……うん、そうだな。

 

「透華。二人でどこかに出かけるか」

「えっ!! いいんス……か……」

「ねぇ佐藤さん。透華とのデートは私に任せて」

「いくら透華がかわいいからと言って譲れるか。満は帝斗と留守番だ」

「なんでー!! 佐藤さんから誘ってもらって思わず全力で喜んじゃって、それを恥ずかしがってる透華が可愛すぎて我慢できない!!」

「全部解説しないで……ほんとにハズい……」

 

 帝斗が恥ずかしがっている透華をフォローしようとして、グローブとボールを取り出してから首を傾げた。よかった。これ以上キャッチボールに属性がついたら収集がつかなくなるところだった。

 

 俺が透華との関係を進めようと思ったのは、透華から精一杯のかわいいアプローチを受けたこと以外にも理由がある。言わずもがな、アザミとシゲキを見て、背中を押された。互いに不器用、素直じゃない、しかし想いあっている。その想いにどういう名前がつけられているかはわからないが、少なくとも尊いものだということは理解できた。

 飾らず言うなら、勇気をもらった。ちなみにアザミに「ありがとう。勇気が出た」とDMを送ると、「は?」と返された。もうちょっと俺に優しくしてくれてもいいと思う。

 

「まー、仕方ない。ここは我慢しておいてあげる。透華! 帰ってきたら佐藤さんとのデートのこと聞かせてね!」

「言わない! ハズい!」

「言って! じゃないと成仏する!!」

「それは!! ……ダメ、なことじゃないけどダメ!!」

「佐藤、こっちこい。髪セットしてやるよ」

「あぁ、頼む」

 

 満と透華はやはり仲がいいなと思ったが、俺と帝斗も大概だな。自分でセットできるようにならなければ……。

 

 

 

 

 

「シゲキー? シゲキ!! 昨日はオシャレだったわねぇ?」

「あぁ、随分クールだった。長い付き合いだが、昨日が一番クールだったな」

「うるせェ!!!! おちょくりにきたんなら帰りやがれ!!!!」

「一つ言っておくが、ここは私の家だ。お前らが帰れ」

 

 色々疲労がたまっているからと、今日一日はぐっすり休もうとしていた時に、シゲキが「邪魔するぜェ!!!!」とやかましく部屋に入ってきて、イベリスが「オシャレにお邪魔するわね!!」と言ってI字バランスで無限に回転しながらやかましく部屋に入ってきて、ルイスが「今日もクールだな、アザミ」と言って既に私の部屋にいた。私がギャグ補正を理解できたのは、こいつらのせいだと思う。

 

「カスどもが。もう一度俺に殺されてェのか?」

「いやん! 思ってもないこと言っちゃうのかわいいわ!」

「あまり煽るなイベリス。ところでシゲキ、結婚祝いは何がいい? クールな品を送ることを約束しよう」

「アザミ。清掃業者雇っとけ」

「血肉をまき散らすつもりなら、やはり帰ってくれ」

 

 目の前でぎゃーぎゃー騒ぐ三人を見て頭を抑えつつ、懐かしいな、とも思う。裏方として関わることはあったが、四人で集まることはほとんどなかった。あったとしても今のように、昔のように騒ぐことはなかった。今思えば、私の立場はややこしいな。創設の頃からいるが、この三人とは同期ではない。まぁそれは英断だったと今でも思っている。ニコと満と優姫以外に考えられんからな、私の同期は。

 

「というか、ルイス。結婚などと恐ろしいことを言うな。なぜ私がシゲキと結婚しなければならないんだ」

「クソ下らねェ脳しか持ってねェからンなことしか考えられねぇんだろ」

「そうよルイス。こういうのは当人同士に任せるのがオシャレよ」

「確かに、今のは俺がクールじゃなかったな。ところでアザミ、タバコを吸っても?」

 

 私が答える前にルイスがタバコを咥えて火をつけるが、イベリスに「禁煙よ!」と握りつぶされ、「アツゥイ!」といってイベリスが飛び上がり、その勢いのまま脚を7回組み直しながら部屋から出て行った。何だあの化け物。

 

「さて、俺も出るとするか。シゲキ、慣れておけよ。恐らくこれからのお前はイベリスほどじゃないが、同じ種類のイジリは受けるだろうからな」

「ンなモンで俺がブレるかよ。心配すんな、効果的に使う」

「ふっ、愚問だったな」

 

 ルイスが背中を向けて、手をひらひら振って部屋から出て行く。しばらくして、「イベリス!? ……死んでいる!?」と聞こえてきたのは無視することにした。騒いでいないと気が済まない人種なんだ、あいつらは。

 あと、お前はなぜまだ居座っているんだ。「やっと静かになりやがった」みたいな顔をしているが、お前も帰れ。そもそも不法侵入を許してやっている時点で大分譲歩している方だぞ。私は法を武器にして戦ってやってもいいんだ。なぜか負ける自信しかないが。

 

 これもギャグ補正というやつだな。法などという無粋なものを持ちだした時点で負けが確定しているようなものだ。理不尽で意味が分からん。おもしろい。

 

「ンで、アザミ。シゲキ的に話がある」

「謝罪なら受け取った」

「もう謝るつもりはねェよ。ウゼェだけだろ」

 

 普通なら反省してしばらくは引きずるものだが……シゲキに普通を求めたところで無意味か。シゲキの言う通り気にされすぎると鬱陶しいが、お前が言うのも違うだろう。

 

「それじゃあなんだ? プロポーズでもしにきたのか?」

「テメェも俗に染まってやがんな。まァ、俺はその俗にシゲキ的に負けたようなモンだが」

 

 ちょっとだけ安心した。まさかとは思ってからかいついでにジャブを打ってみたが、どうやら違うらしい。いや、なんかロマンティックサーカスでシゲキが想像したのが私だったから、可能性はあるかと思ったが、やはりシゲキはシゲキだった。インターネット上では私とシゲキのカップリングで大盛り上がりだが、当人にそんなつもりはまったくないらしい。

 ……何か、気に入らない気がするのはなぜだろうか。ニコと満と優姫に聞いてみるか? 恐らく、私は生物学上は女性である私のそういう部分が刺激されているのだと思うが、いかんせんそういう経験がなくてわからない。他人のことならわかるのだが、やはりダメだな。もっとあいつらを見て研究する必要がある。ちょうどニコから『すまん、恥を忍んで頼む。デートとは何をすればいいんだ?』とニッコリ探偵団のチャットルームに送られてきたことだし、羽崎透華に聞いてみるのもいいかもしれない。

 

「ンで、だからこそ俗に染まんのも、テメェが理解していて、俺が理解していねェことを理解すんのに最適だと考えた」

「……?」

「所謂男女の付き合いってやつだ。最初の頃と同じだ、テメェに拒否権はねェ。俺のモンになれ、アザミ」

 

 ……?

 

「……ハッ、その様子じゃ、テメェも理解しきれてねェみたいだな。なら、俺が理解させてやるよ。せいぜいアホ面晒してろ」

 

 ……?

 

 ……。

 

 ?

 

 !!?

 

 気づけばシゲキがいなくなっていて、私はニッコリ探偵団のチャットルームに『大至急。助けてくれ』と送っていた。なっ、なに、何が起きた!!!??

 

 

 

 

 

『project:eden』について語るスレ part691

 

179:このライバーがすごい! ID:RmBnyRyBu

今日は『project:conflict』がないのか……

 

180:このライバーがすごい! ID:UIEagkoLs

脳が理解することをやめた上に面白さがあった

 

181:このライバーがすごい! ID:1mxW2T7jL

シゲキ周りが騒がれがちだけど、シゲキクローンを相手にしたボスに惚れた

 

182:このライバーがすごい! ID:psG+RkWeE

途中で無限に増え始めたシゲキクローンに絶望しなかったのは間違いなくボスがいたから

 

183:このライバーがすごい! ID:p654o7WCF

そもそもヴァールハイトが強いしカッコよすぎる

 

184:このライバーがすごい! ID:99ZBpmEmd

聖麗もカッコよかっただろ!!

 

185:このライバーがすごい! ID:S6xVYIJW9

普段が……

 

186:このライバーがすごい! ID:uBmLD7Ke7

普段がね……

 

187:このライバーがすごい! ID:erdnklCtE

シゲキクローンにやられたのってアルと茉莉くらいか?

 

188:このライバーがすごい! ID:orXDpVBfm

大半は星菜ちゃんのライブで無力化してたからな

 

189:このライバーがすごい! ID:Sva3m9uLU

シゲキなら関係ないって言ってやっちゃいそうなのに

 

190:このライバーがすごい! ID:QeeHgdhMR

シゲキはシゲキ的な才能大好きマンだから

自分が乱入して壊すより、そのままにした方がシゲキ的だったら手は出さない

 

191:このライバーがすごい! ID:PLaK2BR5m

『project:conflict』○亡者

■想

⇒シゲキとの交戦で、光線により○亡

■イオス

⇒シゲキとの交戦で、両断され○亡

■イレ姐

⇒シゲキとの交戦で、至近距離の光線により○亡

■エルロイ

⇒シゲキとの交戦で、不意の光線により○亡

■ルイス

⇒シゲキとの交戦で、至近距離の光線により○亡

■イベリス

⇒シゲキとの交戦で、至近距離の光線により○亡

■魔王様

⇒愛人に心臓を潰され○亡

■ルーシィ

⇒愛人に頭を消し飛ばされ○亡

■アル

⇒シゲキクローンからフレイルを庇い○亡

■茉莉

⇒シゲキクローンから純花さんを庇い○亡

■愛人

⇒マッチョに引き抜かれて○亡

■シゲキ

⇒敗北を認め自○

 

192:このライバーがすごい! ID:fZeYYMShJ

キル数一位:シゲキ

キル数二位:愛人

キル数三位:マッチョ

 

193:このライバーがすごい! ID:BA2bN3DEU

一体どうなってるんだ……?

 

194:このライバーがすごい! ID:qjupwG43S

新人ライバーのマッチョ!?

 

195:このライバーがすごい! ID:tMQrVAP/+

>>192

ボスと聖麗はシゲキクローン複数倒してるから、愛人が四位でマッチョが五位だぞ

 

196:このライバーがすごい! ID:ENGiDZUTl

こう見ると、やっぱりシゲキ一人で十分なくらいの戦力あるんだな……

相手がプロエジェじゃなければ

 

197:このライバーがすごい! ID:yL6No0qR5

今回で才能の塊ばっかが集まってることを再認識した

 

198:このライバーがすごい! ID:8Y/Opj3q5

ラストバトルに満ちゃん以外のニッコリ探偵団いたのすごすぎる

 

199:このライバーがすごい! ID:KCd+qWwGK

満ちゃんも行きたそうにしてたけど、マリーにめちゃくちゃ止められてたな

 

200:このライバーがすごい! ID:ViVg/qhuQ

そりゃ、マリーが止めきれなくて満ちゃんが戦場に出たら、ニコなら怒りそうだし……

 

201:このライバーがすごい! ID:uqAexcZmi

ところで、シゲキとアザミんがなんかいい感じだけど、アザミんのファン的にはどうなん?

 

202:このライバーがすごい! ID:7VEk3J69I

ははは

 

203:このライバーがすごい! ID:eqemJ+UH9

まさかまさか

 

204:このライバーがすごい! ID:CIhKxUcne

ずるいだろ

シゲキ相手なら逆らえるわけがない

 

205:このライバーがすごい! ID:lQwL6D+LD

推しが幸せならそれでいい

プロエジェリスナーはそういう風に調教されてる

 




現在、書籍予約受付いただいています。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。予約いただけると喜びすぎます。
詳しくはリンクを貼るので、その先のページでご確認ください。
僕はいつの間にか予約していました。

あと、店舗ごとに特典とかもつくらしいです。
続報は私のX、オーバーラップ様の公式Xなどで発信されるかと思うので、もしよければ見に来てください。
特典としては、書下ろしペーパーなどがあります。書下ろしペーパーは、特定キャラのボイスを書きました。購入先によってキャラが変わるはずですので、それもわかれば追ってお伝えします。

■予約ページ
オーバーラップノベルス様
⇒口絵(優姫、アザミ、透華、帝斗の立ち絵)、立ち読み(ニコの面接時エピソード)が見れます。

GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド


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