稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第179話 雑談するぞ!

「我が名はミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ」

「満です! みんなこんばんはー!」

 

こんばんは!

こんばんはー

満ちゃんかわいい

ニコさんこんばんは

 

 30万人記念配信。聖麗から「寝ている間、ワタシがずっとキスをしておきましたよ」とおぞましい冗談を言われ、めでたい配信だったのに最悪の思い出を刻まれてしまったそれの二日後。昨日は24時間ぶっ通し(途中で寝てしまったが)だったこともあって流石に休みを取った。

 配信を開始すると、いつもよりも元気な返事が返ってくる。なんとなく違和感があって視聴者数を見てみたら、いつもより多い。な、なぜだ?

 

「なんかいつもより視聴者が多くないか? 気のせいか?」

「ほんとだ。こういう時は大体ニコさんの思い上がりなのに」

「勘違いと言え。なぜわざわざ醜い表現をするんだ」

 

ミハイルの荒々しいところを見せてくれた人を覗きに来ました

おじゃまします!

マズい! まともな視聴者だ!

いつものノリは封印しておくか

 

「封印しなくていい。ひどすぎるノリはやめてほしいが、隠すとそれは俺の配信ではなくなるからな。みんなのコメントがあって俺の配信だ」

 

へ、へへ……

ふふ、なぁ……

いやぁ……

めちゃくちゃいい人

あの、見た目が好きです

 

 とは言いつつも、正直どうすればいいか困ってしまう。ミハイルさんのところからきてくれたのなら、十中八九女性視聴者だろう。俺の視聴者は男性比率が多く、更にノリも独特でどちらかというと男男しいというか、『カッコいいから』とか『声がいいから』とかではなく、『面白いから』見てくれている視聴者がありがたくも多いと思っている。そんな中で、ミハイルさんのような所謂アイドルを推している視聴者の方が、どうすれば喜んでくれるかがわからない。

 ……いや、いつも通りでいいのか? さっき視聴者にいつも通りでいいと言ったんだ。俺がそれを実践しなくてどうする。

 

「ミハイルさんのところからきてくれてありがとうございます。楽しんでいただけるかはわかりませんが、そうなるよう努力しますので、よければ見て行ってください」

「変に面白くみせようとか思わないでね。ニコさんは自然体が一番面白いんだから」

「喜んでいいのか悪いのか……」

 

喜んでいいぞ

お前は面白い

滑稽と言ってもいい

せっかくだし、ミハイルとあの後何かやり取りとかしたのか?

 

「ミハイルさんとはdicecodeでフレンドになった。個人的に仲良くしたいと言ってくれてな。今度グレイヴィーさんとイオスさんと一緒にご飯に行く予定だ」

「グレイヴィーさんとイオスさん、色々巻き込まれてボロボロだったから、ごめんなさいも兼ねてね」

 

 30万人記念配信できてくれたグレイヴィーさんとイオスさんは、ミハイルさんを追うイレイナさんの攻撃に巻き込まれたのかボロボロだった。そこまでするのかと驚いたが、どうやらヴァールハイトでは日常茶飯事らしい。ちなみにミハイルさんに聞いた話だが、グレイヴィーさんを酒で釣って呼び出し、生贄としたそうだ。それに腹を立てた様子がなかったのは流石グレイヴィーさんと言ったところか。あの人は酒を常に飲んでいてだらしないイメージがあるが、器が大きくて気のいい人だ。個人的に手放しで尊敬できる先輩だな。

 

いつの間にそんな仲良くなったんだ

ニコがそんなすぐに飯行くの珍しいな

グレイヴィーさんって渋くてカッコいいおじさん?

グレイヴィーが渋くてカッコいいおじさん!?

 

「間違ってませんよ。グレイヴィーさんは渋くてカッコいい人です」

「ね! 面白くてカッコいい!」

 

 地味に好きなんだよな。グレイヴィーさんが時々「グルーヴィーでグレイヴィーな俺」って言うの。配信での視聴者のノリも俺の配信と似ているところがあるから、もしかしたら目指すべきところなのかもしれない。

 すぐに飯に行くのが珍しいと言われるが、そんなことはないと思う。フレイルさんとアルと初めて会った時も行ったし、それこそグレイヴィーさんと初めて会った時もそうだ。そう思えば数年前の俺では考えられんな。その日初めて会った人と飯に行くなど、数年前の俺からすれば緊張で死ぬレベルの出来事だ。

 

 ただ、ミハイルさんは特に緊張もせず話せたし、数年前の俺であっても問題はないだろう。なんとなく帝斗と似てるような気がするんだよな。いい意味で気安いというか、距離感が心地いいというか、きっとそういうのに長けているのだと思う。

 

「そういえば、ミハイルさんの配信はまだすべて見れていないが、前話した時と印象が違ったな。キラキラしていたというか、ナイトのようだった」

「ダメだったってこと?」

「ナイトから俺を連想するな。そもそも俺はダメではない!!」

 

Arcadiaでのミハイルは甘いぞ

だから前のニコさんの配信で乱暴になったからびっくりした

より虜にされました

正直雑に扱われたいと思いました

 

 そう、甘い。男性アイドルVTuberの事務所だからか、ターゲットを女性に絞っているようで、配信のコメントは黄色い声がほとんど。かといってずっとそうかと言われればそうでもなく、『ホストの友だち』というのがしっくりくる。甘い言葉も囁いてくれるが、基本的には気安い関係。だからこそ身近に感じられてとてもよかった。が、俺もこうすればいいのかと思って真似しようとしたら、「絶対にやめて」と満に言われたのは納得いっていないし、「先輩は今のままが素敵です」と透華に言われたのは嬉しかったし、「面白いからやってくれ」と帝斗に言われたのは色々な意味で納得いっていない。もう頼まれても絶対やらん。

 ただ、見習うべきところは多くあったように思う。流石Arcadiaであり、登録者80万人越えといったところか。真似はしないが、勉強をさせてもらうとは思っている。俺も色々な理由でもっと人気になる必要があるからな。

 

ニコさんはお歌とか歌わないんですか?

それは俺たちも聴きたいぞ

声いいもんな

歌うまいのにもったいない

 

「歌なぁ……。求めてくれるのは嬉しいが、単純に恥ずかしい。酒を飲んでカラオケ配信とかならまだいけそうな気もするな」

「それなら、ミハイルさんたちとご飯行くときがちょうどいいんじゃない?」

「グレイヴィーさんとイオスさんとミハイルさんに許可をいただければいいかもしれんな」

 

なに!?

嬉しすぎる

頼む、いつやるかだけ教えてくれ

いつかは知らないけどもう休みとった

ギャンブラーすぎる

 

 ここまで求めてくれていたのか……。いや、帝斗からも「やる気ねぇだろうけど、歌とか需要あるみたいだぞ」と言われていたし、認識自体はしていたが、それでもやはり実際にそういう声を聞くと実感する。

 VTuberは『歌ってみた』という文化がある。VTuberがオリジナルの曲まで出しているのだから、文化と呼ぶにふさわしい。しかし、『project:eden』で歌ってみたを定期的にあげているのは星菜さんと双海さんくらいだ。マリーと明さんもあげてはいるが、基本的には星菜さんと双海さんと一緒にあげている。あと、節目節目でイベリスが『イベリスオシャレミュージック』というオリジナル楽曲を出しており、シゲキが『シゲキ的音』というオリジナル楽曲、もとい騒音を出しており、ルイスが『クールなBGM』というクールなBGMを出している。

 

 つまり、事務所としては精力的というわけではない。そういうのもあって、いまいちやりにくさもないわけじゃない。『project:eden』で歌ってみたをすることすなわち、『そういうことをしてくれるんだ』という認識を少しでも視聴者に持たれてしまうということだからな。少なくとも、動画として歌ってみたをあげるのは恥ずかしくてかなわん。

 

「とはいっても、安心して使えるカラオケが用意できればの話だが……今イベリスから『もうオシャレに用意したわ』と連絡がきた」

「イベリスさんに用意できないことって多分ないよね」

「ミハイルさん、それにグレイヴィーさんとイオスさんからもOKと連絡がきたな。まだ俺から何も言っていないのに、もしかして配信を見てくれているのか……?」

 

ニコは人気者

クレヨンを冠する五歳児!?

ニコの周りって話早いよな

というよりプロエジェが話が早い

話が早すぎてハナシ

 

 あまりにも早すぎる。イベリスにかかれば提案する前に大体の準備が終わっている。あいつは恐らくオシャレだと思ったものを瞬時にキャッチする特殊能力を持っているんだろう。それを実行できるだけの行動力と財力があるから誰も止められない。助かるが、甘え過ぎも禁物だな。

 連絡をくれた三人に「お願いします」と打ち返し、そういえばと考える。ミハイルさんがいるなら、フレイルさんも呼んでいいんじゃないか? 元々先に知り合っていたのはフレイルさんだし、他事務所との懸け橋的な意味でいえば、呼んでもいい気が……いや、ダメか。恐らくミハイルさんのファンの方がいい顔をしないだろう。やはりアイドルというのは難しい。星菜さんが誰でもかれでも絡めているのは奇跡だな。

 

「そうと決まれば、歌える曲のレパートリーを増やさねば。思えば、カラオケに行くのも久しぶりだな」

「……!! そういえば、私もカラオケできるじゃん!」

「本当だ!!」

 

 そういえば満が実体化してから行っていなかった! まずい、すごい嬉しい! まさか満とカラオケに行ける日がくるとは!

 ……先に帝斗と透華と行くか? 流石にそうするべきだろう。練習も兼ねてそうしよう。もしかしたら満の歌声を聴いた瞬間泣いてしまうかもしれんしな。先に慣れておかなければ。

 

満ちゃんの歌声が聴けるってこと!?

絶対見なきゃ

デュエットとかもしてほしいな

ニッコリ探偵団でもおうたの配信を……どうか……

 

「ニッコリ探偵団でも、か……相談はしてみるが、ないと思うぞ」

「月宮さんとアザミさんはねー。プライベートで行くのはいいけど、配信とか動画とかはなさそうだね」

 

 月宮さんは自分の納得いくものしか見せたくないし、アザミはそもそも興味がなさそうだ。俺からすれば二人の歌声は興味があるし聴きたいとは思っているんだが……。

 

 あっ、もしかして歌ってみたの需要ってこういうことか!?

 




現在、書籍予約受付いただいています。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。予約いただけると喜びすぎます。
詳しくはリンクを貼るので、その先のページでご確認ください。
僕はいつの間にか予約していました。

あと、店舗ごとに特典とかもつくらしいです。
続報は私のX、オーバーラップ様の公式Xなどで発信されるかと思うので、もしよければ見に来てください。

■予約ページ
オーバーラップノベルス様

GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド

■特典情報
シチュエーションボイス書きました。キャラとシチュエーションの概要は以下です。
・アザミ・フレンジー シチュエーションボイス:アザミのダウジング
・朝凪真理 シチュエーションボイス:喫煙所の気になるあの人
・ミッドナイト・サイコナイト シチュエーションボイス:友だちとゲーム
・一ノ瀬星菜 シチュエーションボイス:夏の日、雨、バス停
・月宮優姫 シチュエーションボイス:放課後から始まる交友
・一ノ瀬明 シチュエーションボイス:買い物中ばったり会ったバイト先の先輩

詳細↓
特典情報
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