稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第184話 開催決定

 今日。運営から『配信をつけて公式チャンネルでプレミア公開される動画を視聴者と一緒に見ろ』という通達があり、おとなしく言うことを聞いて配信をつけ、プレミア公開を待っている。通達がきたのは一週間前で、『project:eden』に所属するライバーに同様の通達があったらしい。にも関わらず、全員の予定が空いていて、現在は『project:eden』のライバー全員が配信しているという珍しい事態が発生している。こういう意味不明な都合のよさは、一期生の力が働いている証拠だな。

 

何かのお知らせか?

ライバー全員で見るんだから、相当なことな気がする

二秒くらいの動画で、『ニコ、クビ』って通達されるだけだったらどうする?

腹抱えて笑う

 

「俺が二秒でクビを通告される動画のどこが笑えるんだ!!」

「ごめん。笑えると思う」

「うそだろ」

 

 どうやら、俺に対する意識を改善する必要があるらしい。よく考えればもっと前から改善する必要があったように思えるが、流石にここまでとは思っていなかった。まぁ、満が笑えると言ったのは、『project:eden』ならただのクビ通告ではなく、何かしらの企画か遊びの延長であるという信頼があるからだろう。恐らく視聴者もそうだ。つまり、笑えないのは俺だけということになる。今クビにされるのは死活問題すぎるからな。

 それにしても、一体なんだ? こういうのはライバーには事前に知らされてもいいようなものだが、誰に聞いても詳細を知らない。いや、一期生は知っている様子だったが教えてくれるわけもなく、またしても俺だけ知らされていないのかと思いきやそうでもない。

 

ニコは何となく察しつくか?

楽しみだけどちょっと怖い

VTuber界に革命を起こすとかでも不思議じゃない

宣言してなくても既に起こしてるだろ

 

「察しは……実はこれに関することだろうな、という予想はある程度はあるが、別に全員にミラー配信をさせるようなことでもないんだよな」

「だから私たちもみんなとほとんど一緒!」

 

 笑って言った満に、「満ちゃんと一緒とか人生勝ち組か?」「かわいい」「もう動画の内容とかどうでもいいか」と大盛り上がりだ。満がかわいいのは同意だが、厄介なファンが付き始めている気がする。ユニコーンとやらにならないといいが……ミハイルに対してその片鱗を見せていたな。アレはミハイルが相手だったからだと思いたい。

 

「お、もうそろそろだな」

「……!」

 

 公開前のカウントが始まった瞬間、満が口をむっと結んだ。かわいい。

 

 10、9、8とカウントが減っていき、それがゼロになった瞬間。エメラルドグリーンとシアン系の光を放つ都市が現れた。

 高層ビルが林立する都市、その構造物は近未来的なデザインで、表面には青や緑、金色のネオンが縁取られている。画面中央には、都市の象徴ともいえるような双塔の巨大建造物が天に向かってそびえ立ち、タワーの下層部分からは光の粒子が広がっている。都市がまるごと情報と光で織り成された生き物のように蠢いている印象だ。

 

 そして、画面に十数のモニターが次々に現れる。そこに映し出されているのは、去年の『楽園都市』の映像。

 

ま、まさか

ま、まさか

ま、まさか

ま、まさか

 

 盛り上げ上手の俺の視聴者は、全員察しがついているだろうにその名前を出さない。ノリがよすぎる。

 

 現れたすべてのモニターが光の粒子となり、文字となった。その文字は、『楽園都市、開催決定!!!!』。ここまでクールでオシャレだったのに、誰かが我慢できなくなったらしい。フォントが目に痛いくらい光っていてシゲキ的だ。

 

楽園都市うおおおおおおおおお!!!!!

今年は行きます

ニコと話す!!

私が先よ!!

 

 俺を取り合う嬉しい喧嘩をしている視聴者を敢えて放置して、動画を見続ける。画面が真っ暗になって次に現れたのは、やはりと言うべきか一期生の三人だった。

 

『というわけで、今年も『楽園都市』、オシャレに開催決定よ!!』

『いや、クールに開催決定だ』

『シゲキ的に決まってんだろうが!!!』

 

いきなりどうでもいい喧嘩始まって草

一期生にとっては重要なことなんだろ

でも確かにクールでオシャレでシゲキ的だったから、一概にどれとは言えない

クソ真面目なやつもいます

 

「この喧嘩、三人いると大体するんだよな……」

「仲良しなんだろうね」

 

 ちなみに、まだ喧嘩は続いている。動画ならカットしろよ! わかるか? わからない概念を用いた喧嘩を続けられるストレス。まだ視聴者が離れていないのは、それだけ『楽園都市』への期待が大きいからだ。この後『楽園都市』について語られると信じているからで、お前たちの喧嘩の行方が気になっているわけじゃないからな?

 

『まぁ、今そのことはいいわ。あとで私のオシャレなリスナーも交えて三か月話しましょう』

『シゲキ的にやめてやれ。学生もいんだろうが。夏休みをなんだと思ってんだ』

『シゲキの言うことももっともだ。三か月ではなく一か月にしよう』

『期間の問題じゃねェんだよ!!!! さっさと用件伝えろや忙しいんだ俺ァ!!!!』

 

なんかシゲキ丸くなったな

アザミん……

俺、悔しい

ニコ、シゲキにアザミんを任せていいのか?

 

「アザミを任せていいかどうかで言えば任せていいとは思うが、そもそも口を出していい立場じゃない。当人同士の問題だからな」

「まさかこの三人でツッコミがシゲキさんだなんてね……」

 

 丸くなった、というのはそうだな。前までならツッコミはいなかったが、今はシゲキがツッコミに回っている。というより、ルイスとイベリスが今のシゲキならツッコミ役ができると思ってツッコミを任せているように見える。『project:conflict』の時もツッコミ役だったからな。おかげでシゲキは今までが嘘だったかのように親近感を持たれている。前に配信を覗いた時は視聴者と話していたからな。あのシゲキが、本当に信じられん。

 

『まぁそうね。そろそろみんな我慢できなくなってるだろうし……まずは開催日よ!!』

『去年は12月10日と11日だったな。一体今年はいつなんだ……?』

『ンなに予測できなくねェだろ』

『なんと! 12月の6日と7日よ!』

 

なにっ!? 12月の6日と7日だと!?

予定空けた

元々予定なんてなかった

予定が埋まる人生じゃなかった

 

 視聴者に俺のようなやつがいるな。いや、今の俺はそこそこ予定が埋まるから、前までの俺のようなやつか。

 ここまでは俺も知っている。『楽園都市』が開催されることも、その日程も。この動画も『楽園都市』についてのことだろうと思っていた。だからこそ、なぜ所属ライバー全員でミラー配信をさせたのかがわからない。もちろん『楽園都市』は『project:eden』が年に一回開催するお祭りで、大事だということはわかる。だがここまですることか?

 

 きっとこれだけで終わりじゃない。恐らく、俺たちライバーに対する何かがある。『project:eden』で過ごした年月による直感がそう言っている。

 

『3Dステージその他イベントについては追って発表する……けど! 3Dステージのうち一つを、今からオシャレに発表しちゃうわ!』

『なにっ!? クールな大盤振る舞いだな。見逃すやつはクールじゃない』

『それに関しちゃあ同意だな。特に、ライバーはシゲキ的に耳の穴かっぽじってよく聞いとけ!!!!』

 

ライバー!?

またしてもニコが何も知らされてないのか?

今全員の配信開いてるけど、全員知らないっぽいぞ

化け物じゃん……

 

「ちなみに俺は知らんし、事前に色んな人に聞いてみたが知らなさそうだった」

「ニコさん以外も知らないって珍しいよね」

「それが珍しい状況というのは、本来あってはならんはずだが……」

 

 俺を面白がるというコンテンツが出来上がってしまっているから仕方がないか? そもそも俺はそれ自体に納得したわけではない。笑われるのと笑わせるのとでは天と地ほどの差があり、俺は地だ。ということは、下がることはなく上ることしかないということか? そう考えれば悪くないかもしれん。俺の心が小さかっただけか。

 

 シゲキが叫んだあと、イベリスは天高く腕を突き上げ、宣言する。

 

『3Dステージ、『project:versus』よ!!』

 

 それと同時に、パンクなフォントで『project:versus』という文字が画面に現れた。その文字の右下に、小さく『3 vs 3』と書かれている。

 

「恐らく3 vs 3で行う何かだろうな」

「誰でもわかるでしょ、そんなこと」

 

 ちょっと賢いフリをしたら容赦なく満に刺された。少しくらいカッコつけようとしてもいいだろう! もしかしたら興奮して気づいていないかもしれないし。何? どうせこの後イベリスさんから説明されるから、邪魔しないようにする方が賢い、だと? その通りだ!!

 

『『project:versus』は3対3で行う、多種目のバラエティバトル!! クイズ、チャンバラ、アスレチックレース、ゲーム、その他諸々! 本当になんでもありよ!!』

『更に、どの種目が選ばれるかはランダムだ。クールな対応力が求められる』

『ンで、チームはこっちで決めねェ!! ライバーが好きなやつと組みやがれ!!』

 

三人組ならニッコリ探偵団か?

びっくり調査団は……

聖麗がなぁ

あいつ、普通に裏切りそうだしな

 

 学生の頃なら好きにチームを組めと言われたら焦りに焦るところだったが、今は違う。視聴者も言っている通り、ニッコリ探偵団で挑むか。ちょうど3D新衣装での配信のための打ち合わせで会う機会も多い。『project:versus』に勝つための作戦も立てやすいだろう。

 

『ただし!』

 

 しかし、ニッコリ探偵団で組むつもりになった俺に待ったがかけられた。

 

『組んでいいのは、コラボ回数が少ない相手よ! その回数はライバーの歴によって決定するわ!』

『一年目なら二回以下、二年目なら四回以下。年数×二回以下のコラボ数のライバーとのみチームを組むことが許される。ただし、公式イベントおよび『project:conflict』のような全員参加の配信はカウントしない』

『シゲキ的化学反応を期待してるぜ、シゲキ的ライバーども!!』

 

 ……ま、まずい。まずいぞ!? 俺から声をかけなくてはいけないということか!? コラボ回数が少ない相手に!? 

 

 誘ってもらえるのを待とう。別に話しかけるのが怖いわけではなく、やたらめったら話しかけるのは迷惑だなと思っただけだ。

 




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