稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「さて、お前たちに集まってもらったのは他でもない」
「友だちを紹介してほしいって話? 自分で何とかしなさい」
「何を頼まれるかわかっていて、なおかつ自分で何とかしろと突き放しつつも、招集には応じるということはつまりそういうことか?」
アザミが月宮さんにデコピンされた。
『project:versus』が発表され、三人チームを組む必要が出て、更に組める相手の制限が傍若無人極まりないものだった俺は焦りに焦り、『project:eden』の事務所に集めて月宮さんとアザミに相談することにした。今の俺は初対面の相手でもある程度話すことはできるが、それは場を用意されていた場合のみ。自分から声をかけるとなると話が違う。
あの日は声をかけてくれるのを待とうという結論に出たが、それだと俺が誰にも声をかけていないことがバレた場合、「え、あの人まだコミュ障なの?」と思われてしまうということになる。更には「あの人、誰にも興味がない冷たい人なんだ……」と思われる可能性すらある。だからこそ、俺からチームを組んでくださいとお願いする必要があるということだ。
が、勇気が出ない!! から月宮さんとアザミに友人を紹介してもらおうと思い、集まってもらったというわけだ。早速突き放されたが。
「ニコさんが情けなさ過ぎて恥ずかしいのは置いといて、月宮さんとアザミさんは誰と組もうとか考えてるの?」
「質問に交えて俺を攻撃するな!」
反論ある? と首を傾げる満に、俺は沈黙で返した。
「私は……うーん。私の不得意なジャンルをカバーできる人がいいわね」
「恋愛か?」
「あんたもでしょ」
「そんなわけが……いや、そうだな。私たちの中で一番進んでいるのがニコという状況が、私が恋愛を不得意としていることを証明している」
「いや、そもそも恋愛とはタイミングが重要となるものでもあり、そういう意味で言えば月宮さんとアザミはそれに恵まれなかったというだけの話で、アザミのようにそのタイミングがあればすぐに進展するような素晴らしい女性であることは確かだ。恋愛が不得意というのもそうかもしれないが、そう卑下するものではないだろう」
「話逸れちゃうからぺちゃくちゃ喋んないで」
満に手で口を塞がれた。まだ言いたいことがあったのに……!! 月宮さんは恋愛が苦手だというが、相手がいなかったというだけの話だろう。そもそも恋愛に目を向けること自体がなかったというのもありそうだ。でなければ、月宮さんのように美人でカッコよくて優しい人に彼氏がいないわけがない。そういう意味で言えば、『不得意』というよりも『未経験』という方がしっくりくる。不得意という話をするなら俺が一番不得意だろう。環境自体はあって、数年間進展がまったくなかったのだから。
まぁ、一旦恋愛の話は置いておこう。今は『project:versus』の話だ。恋愛どうこうはともかく、自分の不得意な面をカバーできる人を探すというのは正しいアプローチ。流石月宮さんだ。俺は誰にどのように声をかけようということしか考えていなかった。余裕がなさすぎた。
「だが、月宮さんが苦手なものなどほとんどないだろう?」
「器用貧乏みたいなもんよ。頭だってルイスさんにもシゲキさんにも勝てないし、運動もできるけどヴァールハイトの人たちには勝てないし……あぁ、それならシゲキさんとヴァールハイトの誰かがいいわね。突出した別軸の能力を持ってる人二人がいれば、あとは私がカバーできそうだし」
「シゲキとチームプレイを……? 優姫、悪いことは言わん。やめておいた方がいい」
「あら、嫉妬?」
「嫉妬ではないが? 別に組んでもいい。組んでもいいが、あいつを制御できるとは思わないことだ。あいつは自分さえよければそれでいい傍若無人極まりない社会不適合者であり、あいつを同じチームに抱えるストレスは並大抵のものではないぞ。忠告はしたからな」
どう思う? と目で聞いてくる月宮さんに、本人は忠告しているつもりだが、恐らく嫉妬だろうと目で返した。あまり突いてやるのはよくないだろう。
それにしても、アザミにも嫉妬という感情が……まぁ、ちょくちょくあったか。ただ、恋愛関係の嫉妬の感情は初めて見た。今もまだぶつぶつ言ってるし。アザミ、図星を突かれたり納得いかないことがあると延々と喋り続けるからな。まるで俺みたいだ。まるで俺みたいなのに、アザミはかわいくて俺がみっともないのはなぜだ?
それはいい。俺が不得意なものを考えてみよう。頭はある。運動能力はない。というかそもそも、あの動画ではチャンバラやクイズなどが種目として例にあげられていたが、その他にもあると明言されていた。もしかしたら人間性を測るものもあるかもしれん。それに、それぞれの種目に対してどのような対戦形式を取るかもわかっていない。もしかしたら、チームからランダムに選出され、その人物のみが戦うことになる可能性もある。であれば、例えば聖麗が選出されて種目が人間性を測るものであった場合、その時点で敗北が決定する。ということは、ある程度すべてに対応できる人を選ぶのが無難か……?
「クソッ!! 迷宮入りしそうだ!!」
「この程度で現れる迷宮なら、随分ラフなんだな」
「アザミは誰とか決めてるの?」
「興味で言えば、芥川のうちの誰か。不得意をカバーするという意味でなら、優姫と同じくヴァールハイトだな」
「やっぱりヴァールハイトの人たちは人気ありそうだよねぇ」
「運動能力が関わる種目だったら、ヴァールハイトの勝ちってレベルよね。その分、『project:eden』なら別の加点要素入れてそうではあるけど」
……別の加点要素? 確かに、お祭り大好きな『project:eden』であれば、ただの勝負だけで終わるとも思えない。ただの勝負もそれはそれで好きだとは思うが、今回は『楽園都市』で行う勝負だ。
考えろ。あの三人が『project:versus』を考えたのであれば、あの三人の気持ちになって……ダメだ頭がおかしくなる!! 死ぬかと思った!!
が、ある程度予想はついた。恐らくだが、『どちらが盛り上げたか』というのが加点要素になると睨んでいる。しめしめ、恐らくこれは俺しか気づいていない。今のうちに盛り上げ上手な人に声をかけてチームを組めば、俺の勝利が決定する!
「わかりやすいところで言えば、『どちらが盛り上げたか』、だろうな。会場にいる客、配信を見ている視聴者に判定させるとかがありえそうなところか」
「そうね。だとしても、突出した能力を持ってる人ならそのまま盛り上がりにつながりそうだけど」
「なぁ満。俺はそんなにわかりやすいか?」
「別に考えてること読まれたわけじゃなくて、当然の帰結だと思う」
「クソッ、『project:eden』に所属しているライバーだから、エンターテイメント思考なのは当然だったか……!!」
「エンターテイメントだと!?」
「すまん、帰ってくれリニス」
「失礼した!!」
エンターテイメントという言葉につられて現れたリニスを帰し、頭を抱え……いや、待てリニスだと? そうだ、リニスなら企画で何度か一緒になったことはあるが、コラボ回数制限も問題ない。そしてエンターテイメントに理解があり、なおかつ運動能力もある。頭は……恐らくいいだろう。台本を『軟弱な物体』と言ってぶち破るおかしさはあるが、頭が悪いわけじゃないはずだ。悪くとも俺か、もう一人でカバーすればいい!
「すまん、少し行ってくる!」
「あ、私も行くー!」
「いってらっしゃい。待ってるわ」
「ニコとリニス・ディバルディアか。かみ合えば手が付けられんな」
満を連れて扉を開け、リニスの姿を探す。さっき出て行ったばかりだというのにもう姿が見えない。もしかして「エンターテイメント」という単語を聞いたら瞬間移動する能力でも持っているのか? あり得る。『project:eden』の二期生なら、何かしらの特殊能力を持っていてもおかしくない。
エレベーターは……動いていない。部屋から出て行ってからの時間を考えると、エレベーターを利用しているなら動いているはずだ。止まっている階的にも使用した形跡はない。であれば、このフロアにいる可能性が高い。
「リニス! どこにいる!」
「呼んだか、ミッドナイト・サイコナイト!」
「おぉ、いたか……なぜバイクに乗っている?」
「愚問だな。俺がエンターテイナーだからだ」
「スタッフさんもなんで素通りするんだろう……」
まぁ、『project:eden』なら室内でバイクに乗っていたところで、今更注目することでもないんだろう。結構大事だと思うが、日常的に壁が破壊されたり一期生が大喧嘩していたりするからな。とはいえ、バイクに乗ってどうやってここまできたのかは気になる。
それはこの際どうでもいい。本題に入らなければリニスのペースに乗せられて、いつの間にかエンターテイメント・バトルを仕掛けられる。先手を打たなければ。
「リニス。『project:versus』のことだが」
「わかっている。貴様と俺ほどのエンターテイナーなら、言葉など不要だ。心と心で通じ合っている」
「そ、そうか! それなら」
「宣戦布告など不要! なぜなら、俺と貴様ほどのエンターテイナーであれば、あの熱き舞台で戦うことは必然だからだ! その熱き魂で、全力でぶつかってこい!!」
「まったく通じ合っていないぞ!!」
「また会おう!!」
「おい待てリニス!! 室内をバイクで走るな!! 色々待て!!」
「俺のエンターテイメントは誰にも止められん!!」
暴走したリニスは、そのまま驚異的なテクニックで事故なく事務所内を走り回り、姿を消した。わかったことは、どうやらチームは組めないらしいということ。あいつ、ずっと俺を自分と並ぶエンターテイナーとして見てくれているが、それによる弊害が大きすぎる。
「ダメだったね……。色々と」
「あぁ。『project:eden』から逮捕者が出ていないのが不思議なくらいだ」
だが、エンターテイメントという面でなら物部さんもいる。リニスは自分自身で魅せるエンターテイメントで、物部さんは演出寄りのエンターテイメントという違いはあるが、盛り上げ上手であることに変わりはない。一度物部さんに連絡を取って……。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、連絡が……」
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part38
888:このライバーがすごい! ID:hi7Qag83Y
『project:versus』まとめ
・チームは三人一組
・種目はシークレット(チャンバラとかクイズとか、ざっくりとした情報はあり)
・年数×二回以下のコラボ数同士でのみチームになれる
・『楽園都市』までの間に予選が行われる(配信あり)
・チーム発表は一週間後
889:このライバーがすごい! ID:7dNy4DJF9
一週間以内にチームを決めろってことか!?
890:このライバーがすごい! ID:VQTRI4Z4t
ニコは大丈夫なのか?
891:このライバーがすごい! ID:c2dnBbRYY
ニッコリ探偵団もびっくり調査団も明星姉妹も組めない……
892:このライバーがすごい! ID:brA0TOY4W
グレイヴィーとアルもダメだ
893:このライバーがすごい! ID:o8Iv/Mynt
不戦敗ってこと?
894:このライバーがすごい! ID:azUzlWzfK
ニコならそれでも面白い
895:このライバーがすごい! ID:OEDMShYE8
チームを組めずに不戦敗なのかわいそうすぎる
896:このライバーがすごい! ID:Rxvu+neGA
しかも年に一度のイベントでな
897:このライバーがすごい! ID:BcMuitAKx
ニコなら人気そうだけどなぁ
898:このライバーがすごい! ID:0n7XynvsB
一番人気なの誰だ?
899:このライバーがすごい! ID:/RzMS0X7v
優姫ちゃん人気ありそう
なんでもできるし
900:このライバーがすごい! ID:lxM5hWqcl
癖強いチームの調整役で重宝されそう
901:このライバーがすごい! ID:zZNjW6Fwi
それでいうとセレナもか
902:このライバーがすごい! ID:kL8weGGP0
それならボスじゃね?
903:このライバーがすごい! ID:741rFHHXP
ボス
・頭脳:◎
・身体能力:◎
・統率力:◎
904:このライバーがすごい! ID:/mJTBymyC
あまりにもほしい人材
905:このライバーがすごい! ID:xceqwGbIn
制御できるなら愛人も高スペックだぞ!!
906:このライバーがすごい! ID:Af661Qbk8
前提が無理過ぎる
907:このライバーがすごい! ID:iNSHNnnNa
魔王様なら制御できるはず
908:このライバーがすごい! ID:IWGcZwt06
結局裏切られたけどな
909:このライバーがすごい! ID:46fh3ms8h
『面白い』の味方だからな
910:このライバーがすごい! ID:32IMlXrEV
『面白い』の味方……?
911:このライバーがすごい! ID:RYPfY9Ker
ま、まさか
912:このライバーがすごい! ID:qy2jwSw8b
アザミんが誰と組むかが一番気になる
913:このライバーがすごい! ID:CARkd5G/v
あんまりコラボしないから選びたい放題だしな
914:このライバーがすごい! ID:kQVhpinsO
ボスとは数回コラボしてるから、ボスとはなしか
915:このライバーがすごい! ID:xcFWoPshK
イレ姉とか?
916:このライバーがすごい! ID:iQAhxrxem
アザミの指示で動くイレ姉、嫌すぎる
917:このライバーがすごい! ID:MHYG0J8MX
魔王様あたり取りに行きそう
918:このライバーがすごい! ID:+GvPe7PPF
ニコと似てるしな
919:このライバーがすごい! ID:R8skEafqm
そういえば、アザミんとシゲキってコラボ自体はしてないんですよね……
920:このライバーがすごい! ID:rc7NwO1dg
残り一人がかわいそうだろ
921:このライバーがすごい! ID:y3geRHm5G
実際、シゲキの手綱握れるの一期生かアザミんしかいないんじゃね?
922:このライバーがすごい! ID:pCpptbfPj
アザミんとシゲキとかあまりにもラスボス
923:このライバーがすごい! ID:L2akMf0om
あれ、そういえば『project:versus』って3Dだよな……?
924:このライバーがすごい! ID:154/mhUEv
魔王様とルーシィとセレナって、3Dまだだよな……
925:このライバーがすごい! ID:Trv2ELpXF
あ
926:このライバーがすごい! ID:20s3YHM9V
あ
927:このライバーがすごい! ID:8pYtaUlmP
あ
現在、書籍販売中です。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。
また、店舗ごとに特典SSがついてきます。
■販売ページ
オーバーラップノベルス様
⇒アンケートもあるので、ご協力いただける方はぜひお願いします!
GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド
⇒実物届きました。相変わらず美人かわいい。
■特典情報
シチュエーションボイス書きました。キャラとシチュエーションの概要は以下です。
・アザミ・フレンジー シチュエーションボイス:アザミのダウジング
⇒アザミにダウジングにされます。視聴者に対するアザミのイメージ。
・朝凪真理 シチュエーションボイス:喫煙所の気になるあの人
⇒マリーと喫煙所で会ってドキドキします。純粋にマリーがかわいいことを思い知らせたいです。
・ミッドナイト・サイコナイト シチュエーションボイス:友だちとゲーム
⇒ニコと一緒にゲームをします。楽しいです。
・一ノ瀬星菜 シチュエーションボイス:夏の日、雨、バス停
⇒夏の日、雨、バス停で星菜とおしゃべりします。
・月宮優姫 シチュエーションボイス:放課後から始まる交友
⇒放課後の帰り道、ばったり会ってから始まる優姫との交友です。担当さんは恋をしたらしいです。
・一ノ瀬明 シチュエーションボイス:買い物中ばったり会ったバイト先の先輩
⇒明と短いデートをします。コーハイと呼んでくれます。
詳細↓
特典情報
■公式アカウントできました! フォローお願いします!
https://x.com/occultV_ovl_
■実在するミッドナイト・サイコナイトです
https://x.com/Shinya_kyokishi
■特設サイト
https://over-lap.co.jp/narou/824013026/
■書籍紹介
https://blog.over-lap.co.jp/site_okarutov1/