稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
『project:eden』の事務所、その会議室。DMで連絡を受けて数日後。
なぜ集まったか。それはもちろん、『project:versus』の件だ。あの日受けたDMは、まさかのチームへのお誘い。更に、既に三人集まっている。とはいっても完全に決定したわけではなく、今日集まって話してみて、最終決定しようということだ。
今日集まったのは誰か。それは、シェリー・マクスウェルさん、そして愛人だ。なぜかこの二人から同じタイミングでDMがきて、びっくりしすぎて数分間固まったことを覚えている。
「さて、集まったか」
「ですね! いやぁ、びっくりしたでしょ、ニコさん。まさか僕とシェリーさんからなんて!」
「本当にびっくりした。どういう経緯でそうなったんだ?」
というかシェリーさんの貫禄すごいな。ただ脚を組んで座っているだけなのに、ひれ伏しそうになる。なんなら愛人はひれ伏している。その気になれば世界の頂点に立てるほどの才能があるだろうに、こういう親しみやすさ……というのだろうか。すごいのにすごくないと思わせる愛嬌があるのが好感が持てる。
シェリーさんはひれ伏している愛人を一瞥して、「私もびっくりしたよ。まさか愛人と組むことになるとは」とため息を吐いた。シェリーさんと愛人と言えば、『project:tag』で踏んでいた方と踏まれていた方の関係で、もっと言えばタグを取られた方と取った方だ。もちろん踏まれていたのは愛人で、取った方は意外にも愛人だ。
「経緯で言えば、私から声をかけた。ここ数年で、私に勝ったのは愛人だけだからな」
「そう! シェリーさんに勝ったんだよ僕! だからお願いされちゃってさ。まぁ、勝とうと思うなら勝てない相手を味方にするのは正しいことだよね。ボスらしい冷静な判断だ!」
「では冷静じゃないところを見せてやろうか? ニコだけをチームにして、君は見捨ててやってもいいんだぞ」
「ごめんなさい。僕誰も組んでくれないので許してください」
調子よく煽っていた愛人がまたひれ伏した。多分プライドとかはないのだと思う。ん? どうした満。佐藤さんと一緒だね? 貴様!!!!
「それで、なんで俺なんです?」
「同じ考えだな。敵に回したくないからだ」
「えっ!? ニコさんを!?」
「驚きすぎだろう!! ……でも実際、敵に回したくないと言われてもピンとこないな」
わざとらしく回転しながら壁に激突するという浮遊できる幽霊ならではのびっくりを表現した満に文句を言いつつ、確かにその驚きももっともだと頷いた。俺はできることよりもできないことの方が多い。できることもオカルト方面ばかりで、少しは回る頭もシェリーさんと比べれば大したことはない。なのに敵に回したくないというのはどういうことだ?
ま、まさか、俺には隠された力が眠っていて、シェリーさんはそれを見抜くことができる力を持っている……!? それなら納得だ。そろそろ俺の力も覚醒していい頃だと思っていたからな。俺としては、『project:conflict』で聖麗が見せたような力を使いたい。正直アレはカッコよすぎる。
「まぁ、ニコさんは自覚ないだろうね。なんていうんだろう、主人公感って言うのかな?」
「主人公感? 俺が?」
「異議あり! 無職で童貞で甲斐性なしの主人公なんていないと思います!」
「満、多様性って知ってるか?」
「知ってるけど、多様性ってダメなところを肯定するための都合のいい言葉じゃないんだよ」
満が振るった切れ味鋭いナイフに切りつけられ、思わず膝をつく。隣を見ればまだ愛人がひれ伏していた。お前、その姿勢疑問に思わないのか?
主人公感。愛人が言った通り自覚はないし、言われてもやはりピンとこない。ある程度創作には触れてきたつもりだが、俺のような主人公など一人もいなかった。そもそも俺はカッコ悪いし、誰かの力を借りなければ生きていけない自信がある。そんな情けない主人公いるか? 悔しいが満の言う通りだ。だからめちゃくちゃ効いて膝をついたわけだしな。
「愛人の言う主人公感というのは、常に中心にいると言い換えることもできる」
シェリーさんは膝をついた俺に目線を合わせるため、わざわざしゃがんでくれた。愛人はひれ伏すどころか床にべたりと張り付くようにうつ伏せになっている。シェリーさんの高度に比例しているのか?
「常に中心にいるということは、それなりに理由がある。ニコはよく『誰かの助けがないと生きていられない』と言うが、それは『常に誰かに助けてもらえていた』と同義だ。ニコには、それだけの魅力がある。それを視聴者も、そして私たちライバーも感じていないわけがない」
「俺の自己肯定感をこれでもかと上げて何を企んでいるんですか!!」
「チームを組んでほしいと企んでいるんだ」
「それはもちろん、力になれるのであれば」
「そうか、ありがとう」
優しく微笑んだシェリーさんは、「満もよろしくね」と言ってくれた。満は自分に優しくしてくれる人は無条件で好きになる。今回も礼に漏れず、「はーい!」と嬉しそうに飛び回って返事をした。かわいい。
自分に優しくしてくれる人は好きになるとは言っても、満は人を見る目が誰よりもある。ここまで喜びを表現しているということは、シェリーさんはすばらしい人格者なのだろう。一組織のトップをやっているくらいだしな。それはそうか。
「それで、愛人はいつまでひれ伏しているんだ。さっさと起きろ、ゴミ」
「ワン!」
ただ、愛人には辛口らしい。愛人が嬉しそうだからこれはこれでいいのか……?
「さっきの話の続きだが、ニコはその特性上いつの間にか勝利を呼び込んでいる。能力自体はそこまで期待していないから、変に気負う必要はないよ」
「ん? 褒められている気がしたが、もしかして罵倒されたのか?」
「ニコさんはそのままでいいよーって言ってくれたんだよ」
「そうか! ありがとうございます」
「ハハハ。バカだこいつ」
俺をバカにした愛人を睨めば、きゅるんと目を潤ませてきた。なぜこいつはこうも神経を逆なでしてくるんだ……? なにか聖麗と同じ気配を感じる。倫理観をかなぐり捨てて、自分の『面白い』のみを信じているやつの気配だ。そうえいば、エミは『芥川は能力のある人格破綻者の集団』だと言っていたし、これがそういうことなのかもしれない。
であれば、その人格破綻者の集団である芥川に並ぶ聖麗は何者なんだ……?
「あとは、個人的な理由だな」
「えっ、シェリーさんニコさんのこと好きなの? ダメだよ、不倫なんて」
「私の許可なくその薄汚い口を開くな」
「きゅ、キュン……」
「ニコさん。チーム組むの考えた方がいいと思う」
「愛人だけならまだしも、シェリーさんに申し訳ない。それはそれとしておぞましすぎるな」
「まったく、こんな美人なシェリーさんに対しておぞましいなんて、美醜感覚狂ってるんじゃない?」
「個人的な理由とはなんですか?」
意味の分からないことを言う愛人を無視すると、愛人は「無視したー!! うわあああああんん!!!!」と号泣し始めた。面倒だな貴様!!!!
「ミハイルのことだよ。仲良くしてくれているみたいだから、お礼を言いたくてね」
「あぁ、ミハイルの。どちらかと言えば歩み寄ってくれたのはミハイルの方ですから、気にしなくていいですよ」
「それでも、一応あいつは私の部下だからな」
いいなぁ……俺もシェリーさんみたいなボスがほしい。いや、違う。俺は一国一城の主であり、ボスを欲しがるのではなく、シェリーさんのようなボスを目指すべきだ。危なかった。あまりの貫禄に部下になるところだった。
しかし、シェリーさんにとってミハイルはまだ部下であるらしい。ミハイルは「普通にボスにいつか殺すって言っちゃったから、俺もしかしたらヴァールハイトじゃねぇかも」と言っていたが、どうやら器が大きいようだ。どういう経緯で殺すと言ったかはわからないが、どういう経緯であるにせよ、ボスに対して言っていい言葉じゃない。というか誰に対しても言ってはいけない言葉だ。『project:eden』にいるとなぜかよく聞くような気もするが。
「さてと。それじゃあ直近のバトルに向けて作戦会議、と行きたいところだけど、まだ何もわかってないもんね」
「あぁ。私と愛人がいればある程度は対処できるだろうが、どうしても不安は残るな」
「なぁ満。シェリーさんは俺を褒めてくれていたよな?」
「さっき言ってたじゃん。能力には期待してないって」
だからって本当に期待してないとは思わないだろ……。あんなに優しく笑ってくれていたのに。これもボスたる所以か。認めるところは認めて、認めないところは認めない。物事に対する判断基準がしっかりしていると捉えればいいか。猶更傷つく。俺だってやろうと思えばできるんだぞ!! 例えば……ダメだ。シェリーさんと愛人さんが優秀過ぎて、俺の出る幕がない。俺が活躍できる場面と言えば、オカルト関連くらいだろう。
「まぁわからないことを考えても仕方ない! それよりチーム名決めようよ」
「そういえばチーム名も合わせて提出するんだったな。私は特にこだわりはないから、好きに決めていいよ」
「ごくり……」
満が「私の出番か……」みたいな顔をして気合いを入れている。『ニッコリ探偵団』と『びっくり調査団』の名付け親だからな。
愛人も満が気合いを入れたのがわかったのか、満を一瞥してにっこり微笑んだ。
「満ちゃんには決めさせない! 僕が決める! カッコいいのにする!!」
「えー!! 私が決めたい私が決めたい!!」
「僕はこういうチームを組んで何かをするってこと自体初めてなんだ!! この機会を逃すともう一生ないかもしれないんだ!! そんな僕を哀れじゃないって思うならどうぞ決めていいよ!! その代わり僕は満ちゃんを一生薄情者だと言い続けるから!!」
「ニコさんより哀れな人、初めて見たかも……」
「おい、それは俺を常日頃から哀れだと思っていないとおかしな言葉だぞ」
満はえへへ、と笑った。笑って誤魔化せると思うなよ!?
「よし、それじゃあチーム名は僕が決めて出しておくから、今日は解散ってことで!」
「わかった。ふざけたチーム名だったら頭を跳ね飛ばしてやろう。念のため胴体に別れの挨拶を考えておくんだな」
「満ちゃん、チーム名を考える権利を譲ろう」
「私なら既に死んでるから大丈夫だけど、やだ」
「僕が死んでもいいって言うのか!! 間接的な人殺しだ!!」
「ならまともなチーム名を考えたらどうだ?」
「くっ……せっかく『アナムズムズ・アペペポポ』っていうチーム名にしようと思ったのに……!!」
本当にシェリーさんが同じチームでよかった。
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part39
47:このライバーがすごい! ID:Kj6TEjUQL
チーム発表、く、くる
48:このライバーがすごい! ID:X9r/jF9HU
全裸待機
49:このライバーがすごい! ID:tdH/AB9L8
>>48
きゃあ、えっち!!
50:このライバーがすごい! ID:f3jnnlyvz
>>48
なぁ、全裸で待たれる発表の気持ち考えたことあるか?
51:このライバーがすごい! ID:vuq+cBM02
予選は毎回勝利予想キャンペーンがあるらしいな
52:このライバーがすごい! ID:RTB3NeqoX
今回組んだチームのアクスタとか色々作られるグッズをプレゼントみたいなやつ
53:このライバーがすごい! ID:ukfIoeSOT
二分の一当てて、そっから抽選当たるだけだろ? ヨユーヨユー
54:このライバーがすごい! ID:UY24lEHgK
発表きたぞ!!
55:このライバーがすごい! ID:5BsO8ILjg
誰と組むんだ!?
56:このライバーがすごい! ID:Fv/r1KUia
優姫ちゃんきたああああああ
57:このライバーがすごい! ID:N5YE2aVwM
このチーム、強そうすぎる
58:このライバーがすごい! ID:wai8oPm3Y
シゲキ!?
59:このライバーがすごい! ID:PLcyUv7Bq
イレ姉!?
60:このライバーがすごい! ID:7eFe95s0+
プロエジェでも上位の暴力性を持つ二人を、優姫ちゃんがどれだけ制御できるかにかかってる
61:このライバーがすごい! ID:nHvk1Se36
■チーム名
・シゲキ的蹂躙
■メンバー
・優姫ちゃん
・シゲキ
・イレ姉
62:このライバーがすごい! ID:VnjZiMS8M
絶対チーム名シゲキが決めただろ
63:このライバーがすごい! ID:8s4urnhir
優姫ちゃんの心労がエグそう
64:このライバーがすごい! ID:DARiISUV8
でも、イレ姉は話せばわかるし、性格的にも優姫ちゃんと合いそう
65:このライバーがすごい! ID:jsoKRzMZk
どっちも男前だしな
66:このライバーがすごい! ID:Hsp4gugJE
アザミんきたああああああああ
67:このライバーがすごい! ID:Yf3JLUQTm
星菜ちゃん!?
68:このライバーがすごい! ID:oXILhZuiC
意外過ぎる
69:このライバーがすごい! ID:WawJMBJKm
星菜ちゃんとルーシィ!?
70:このライバーがすごい! ID:pLXmdRV5N
見た目可愛すぎる
71:このライバーがすごい! ID:AoULIUZbS
どっちも意外だな
72:このライバーがすごい! ID:us4f0BB6S
ルーシィは沼にはまってるファン多いからなぁ
73:このライバーがすごい! ID:vxV485KQv
応援がすごそう
74:このライバーがすごい! ID:c7EUJq5yX
■チーム名
・Twinkle☆friends!
■メンバー
・アザミん
・星菜ちゃん
・ルーシィ
75:このライバーがすごい! ID:crze7Eqml
新しいアイドルグループがデビュー!?
76:このライバーがすごい! ID:HsTD+RY6d
アザミんは『project:versus』をかわいいバトルだと勘違いしてるのか……?
77:このライバーがすごい! ID:Yb6ZdSt8h
ニコはまだか!!
78:このライバーがすごい! ID:k9Kq1Arro
次は多分ニコ
79:このライバーがすごい! ID:Vxs8JSvPy
ほんとにニコじゃねぇか!!!
80:このライバーがすごい! ID:WZUbGLZDe
ニコうおおおおおおおお!!!!
81:このライバーがすごい! ID:o5QA3P/tJ
強そう
82:このライバーがすごい! ID:z+1szY9mV
強い
83:このライバーがすごい! ID:j5/tCM9t1
強そうだけど、予想ができん
84:このライバーがすごい! ID:JqqgLBIsj
■チーム名
・バースレイヤー
■メンバー
・ニコ
・愛人
・ボス
85:このライバーがすごい! ID:S8CuZcrAc
チーム名はなんだ?
86:このライバーがすごい! ID:NSqGvQsDK
恐らく愛人かニコが決めた
87:このライバーがすごい! ID:Z22TzTQoT
どういう経緯でこの三人になったんだ……?
88:このライバーがすごい! ID:JCrVkG44u
元々ボスだけで強いのに、愛人もか……
89:このライバーがすごい! ID:VYaWDeoDO
ニコは窮地で輝いて、ボスは常時強くて、愛人はムラがあるけど強い
90:このライバーがすごい! ID:qtD3ArO/n
ニコの弱点である隙を消してきたか……
91:このライバーがすごい! ID:HOzr8YHlC
種目によるけど、ニッコリ探偵団だとニコと優姫ちゃんがどすこいどすこい?
92:このライバーがすごい! ID:1TaIT2yYY
>>91
お相撲さんかよ
93:このライバーがすごい! ID:mjOU1aZGe
>>91
気軽にごわすするな
現在、書籍販売中です!!
書籍をご購入いただいた方は、ぜひXで感想投稿お願いします。僕が喜んでいいねして莉ポストして返信します!! ハッシュタグは「#オカルトV」です。
GAMERS様の特典は優姫のアクリルスタンドがついてきます。
また、店舗ごとに特典SSがついてきます。
■販売ページ
オーバーラップノベルス様
⇒アンケートもあるので、ご協力いただける方はぜひお願いします!
GAMERS様
特典:優姫のアクリルスタンド
⇒実物届きました。相変わらず美人かわいい。
■特典情報
シチュエーションボイス書きました。キャラとシチュエーションの概要は以下です。
・アザミ・フレンジー シチュエーションボイス:アザミのダウジング
⇒アザミにダウジングにされます。視聴者に対するアザミのイメージ。
・朝凪真理 シチュエーションボイス:喫煙所の気になるあの人
⇒マリーと喫煙所で会ってドキドキします。純粋にマリーがかわいいことを思い知らせたいです。
・ミッドナイト・サイコナイト シチュエーションボイス:友だちとゲーム
⇒ニコと一緒にゲームをします。楽しいです。
・一ノ瀬星菜 シチュエーションボイス:夏の日、雨、バス停
⇒夏の日、雨、バス停で星菜とおしゃべりします。
・月宮優姫 シチュエーションボイス:放課後から始まる交友
⇒放課後の帰り道、ばったり会ってから始まる優姫との交友です。担当さんは恋をしたらしいです。
・一ノ瀬明 シチュエーションボイス:買い物中ばったり会ったバイト先の先輩
⇒明と短いデートをします。コーハイと呼んでくれます。
詳細↓
特典情報
■公式アカウントできました! フォローお願いします!
https://x.com/occultV_ovl_
■特設サイト
https://over-lap.co.jp/narou/824013026/
■書籍紹介
https://blog.over-lap.co.jp/site_okarutov1/