稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第192話 神乃村 (2)

「ひっ!」

「大丈夫だ星菜さん。ただ幽霊が物音を立てているだけだ」

「安心して!」

 

普通は大丈夫じゃないんだよなぁ……

幽霊の満ちゃんが言うなら安心か

幽霊が物理的に干渉してる……?

聖麗の力か?

 

 鳥居をくぐったところで待っていた星菜さんと合流し、正面に見える村まで歩いている途中。周りを木々に囲まれ、照明で調整しているのか周りもあまり見えない中、鈴の音や木の枝が折れる音が断続的に聞こえてくる。俺は幽霊が見えるから幽霊がやっていることだと認識できるが、そうでない人の不安を煽るには十分すぎるくらいだ。星菜さんも満の手を握って、かわいそうなくらい怯えている。ここに入る前のアレは演技だったかと思ったが、ただ単に嬉しくなってくれただけだったのだろう。

 少し歩けば、村の全貌が見えてきた。ぱっと見では寂れている村、といった印象。日本の山の中を探せば、このような見た目の村の一つや二つは見つかるだろう。民家がぽつぽつと並び、神社や小高い丘がある。幽霊の気配はあるが、人の気配はない。

 

「ニコさん。何か書いてます。よんで」

「あぁ、わかった」

「……」

 

 怖がってる星菜ちゃんかわいいなぁ。と声に出さず考えていそうな満を横目に、村の入り口にある看板に目を通す。多分、おっさんくさいと言ってしまったから気にしているのだろう。相手が満だとはいえ、やはり女の子に対しておっさんくさいというのはダメだったか……?

 

「祀りの掟が書かれてあるな」

「お祭りですか?」

「楽しい方ではなく、儀式の方だな。祀り上げるとかそっちの方の祀りだ」

「えぇ……」

 

一瞬楽しいことかもって期待してたな

かわいい

ニコがいたら祭りみたいなもんだろ

星菜ちゃんがかわいそうだから祭りにしよう

 

「読むぞ。『1.夕日を背にするな 2.影を数えるな 3.声を返すな』の三つが書かれてあるだけだな」

「……? どういうことですか?」

「夕日を背にするな、というのは時間制限のことだろうな。村を見れば時計が設置されてある。現在が15時だから、恐らく16時か17時までに儀式を完遂しろ、ということだろう。影を数えるなというのは、俺たち以外の何かが現れる可能性があり、それに気づかないようにしろ、ということか? 現れる何かによるが、一旦はそういう類のものだと考えていい。声を返すな、というのは俺たちの会話の中で返事をするな、という意味ではなく、俺たち以外の誰かから語り掛けられた時に返事をするな、という意味だろうな。影を数えるな、という条件と合わせて『何かに対して気づいていない体を装え』と言われているように感じる」

「頼りになるけどこわいです」

「ふふん」

 

オカルトガチ勢

紛れもない本物

満ちゃんが誇らしそうでかわいい

条件見ただけでこんなすらすら考えられるか……?

 

 よくある条件だな。俺だからなんとなくそういうことだろうというのがすぐわかったが、恐らくこれは村で探索している間に『あの条件はそういうことか』とわかるようになっているのだろう。この条件が分かりにくければ、何かに対しての策が練りにくく不満が溜まりやすい。条件がわかりやすいというのはいいところだな。

 あと、『何か』と濁して言ったが、概要で伝えられていた『見てはいけない神』のことだろう。『影』も『声』も、実体を直接目にしてはいない状態ではあるが、それに気づいてしまえば実体を目にすることになってしまう、といった感じか。ということは、俺以外で幽霊の実体化が可能な者がいるということか……!? マズい、俺のアイデンティティが失われる!!

 

「星菜ちゃん、大丈夫? 歩ける?」

「うん……」

 

 いや、俺のアイデンティティを気にしている場合じゃない。俺が気にするべきは、余裕がなさそうな星菜さんだ。

 

「俺が前を歩く。とりあえず村に入ろう」

「いやです、って言ったら?」

「はい、行こうねー」

「やだー!!」

 

オカルトガチ勢二人に挟まれる星菜ちゃんかわいそうだろ

かわいそうだけど、この二人めちゃくちゃ頼もしいな

相手がリアルに幽霊でもなんとかなりそう

リアルに幽霊ではあるだろ

 

 入口を通って村に入る。田んぼもあぜ道もリアルに造られてあって、相当気合いが入っているようだ。が、ルート表示は一切ない。好きに探索して、儀式を成功させろということだろう。自由度の高い探索ゲームでは、いきなり最終イベントが発生して詰む、なんてこともある。発生するとすればわかりやすく神社だろう。であれば、神社以外を探索していくべきか。

 

「そこの民家に入ろう」

「ニコさんだけで行ってきてくれませんか……?」

「あぁ、もちろんだ」

「星菜ちゃんがかわいいからって甘やかさない!」

「満ちゃん、一緒に待っててくれる?」

「仕方ないなぁ」

 

やられてて草

まぁこれは仕方ないなぁ

あぁ、これは仕方ないなぁ

仕方なさ過ぎるなぁ……

 

 仕方がないと思っていたが、地味についてきているディレクターさんが『だめです』と書かれたカンペを星菜さんに突きつけ、星菜さんが首を横に振り、数分それを繰り返した後「ディレクターさんきらいです!」と言ってぷんぷんしながら民家に入っていった。ディレクターさんは膝をついていたが、戦士の顔をしていた。撮れ高のために自分の気持ちを犠牲にするとは、やはり男か……。

 

 一人にするのはマズいからと、急いで星菜さんの後を追って民家に入る。その瞬間、明らかに気温が下がった。クーラーなどの人工的な冷気ではなく、霊障によるそれ。本気でやりにきているなと感心しつつ、体調を崩してしまう人がいたりしないか? と不安になる。星菜さんも明らかに空気が変わったことに驚いたのか、満に抱き着いている。おい、なんだその笑顔。別に羨ましくないぞ。俺が羨ましがったら問題だろうが。

 

「室内は畳、ちゃぶ台、その上に食器、仏壇に押し入れ……五時四分、まぁ恐らく十七時四分で止まっている時計か」

「なんか畳濡れてる……」

「怖いねぇ。ニコさん、拭いといて」

「姑か」

 

あまりにも平常心過ぎる

誰もいないのにちゃぶ台に食器……?

食事中にいなくなったとか?

だとするといなくなるようなことが起きるのは十七時付近ってことか?

 

「鋭い視聴者がいるな。食器にはまだ煮物、湯飲みにはお茶が入っている。食事中にいなくなった、というのが妥当なところか」

「き、きっと外でお祭りがあって、我慢できずに飛び出しちゃったんですよ!」

「それならなんでお祭りの音も何もないの?」

「うえーん! 満ちゃんが正論でいじめてくるー!」

「あぶなっ! 星菜さん、俺に抱き着こうとするのはやめろ!」

「え……?」

「ぐっ……! そんな寂しそうな顔をしても折れんぞ!」

「……わかりました。やっぱりだめですよね。お兄ちゃんみたいに思ってるから、ちょっと寂しいですけど」

「仕方ないなぁ」

 

 ディレクターさんが俺の目の前に『ダメです』と書かれたカンペを突きつけた。俺はしっかりと頷いて視聴者に「もちろん今のは冗談だ。いや、冗談だというのは星菜さんのような純真無垢な少女を騙そうとしたとかそういうわけではなく、怖い雰囲気を一旦取り払うためのジョークであり、だからといってそんな冗談を言っていいのかという意見もあることは重々承知であり」と弁明していると、「うるさい」「いいから探索しろ」「クソ童貞」「おい! 俺は信じているぞ!」と袋叩きに……一人アツいやつがいたな。

 

「じゃあニコさん、探索進めてください」

「あぁ。何があるかわからんから、俺の背中に隠れていてくれ」

「ねーねー満ちゃん。ニコさんうちにほしい」

「だめ! 星菜ちゃんがうちにきて」

「お姉ちゃんと一緒に行こうかな……」

「星菜さんと明さんの両親に申し訳なさ過ぎるだろ」

 

 言いながら、女性の髪の毛がはみ出ていた押し入れを開ける。案の定横たわった和装の女性がいたが、もちろんそれをわかっていた満が星菜さんの目を塞ぐことでノーダメージだ。すみませんディレクターさん。怖いものがあると分かっていて怖がらせるのは本意じゃないんです。あとはまぁ、できるだけネタバレ防止したいのもある。

 こういう探索ゲームでは、死体やそれに近しいものの側に情報が落ちていたりする。今回も例に漏れず、女性の側にお札が一枚落ちていた。

 

「満ちゃん? なんで目塞いだの?」

「んー? 聞きたい?」

「んー? 聞きたくない」

「お札が一枚落ちていた。これを媒介に何かをしようとしていたのか、複数貼って結界を作るのが本来の用途かはわからんが、持って行っておこう」

「ちなみに押し入れの奥に書かれてる文字はスルー?」

「『見るな』と書いてあるだけだからな」

「『見るな』って書いてあるんですか!? あっ、でも満ちゃんのおかげで見てないからセーフだ!」

 

書いてあるだけ、じゃねぇだろうが!

まぁ星菜ちゃんがセーフならいいか

多分注意書きみたいなもんだろうし

『見るな』って文字を見るなってわけじゃないってことか

 

「そうだな。文字自体をというより、これから現れるであろう何かを見るな、ということだろう」

「そういうこと言わないでください……」

「星菜ちゃんがしなしなになっちゃった……。ほーら、ニコさんだよー」

「きゃっきゃっ」

「喜んでくれるのなら何よりだが、思うところがないわけじゃないんだぞ?」

 

 思うところがないわけじゃないが、かわいいからよし。

 次に、微笑みながら仏壇を……微笑みながらはよくないな。表情を引き締めて仏壇を見る。仏壇には写真立てがあり、顔が煤けている家族写真が入っていた。手を合わせてから写真を取り出して裏を見れば、昭和四十九年に撮られたものであることがわかる。また仏壇の扉が開いていて、中には骨壺と位牌があり、位牌には俺たちの名前が刻まれていた。

 

「何かありました……?」

「昭和四十九年に撮影された家族写真、骨壺と俺たちの名前が刻まれた位牌だな」

「なんで言うんですか!」

「すまん、一応共有しておいた方がいい情報かと思って……」

「う、こちらこそすみません。怖がり過ぎちゃって……」

「いや、怖がるのも無理はない。あと、()()()()()()()()()()()()()()()()

「え……?」

「ねぇ」

 

 背後から、俺たち以外の声が聞こえてくる。若い女性の声。手のみのジェスチャーで目を閉じるよう伝え、気配が消えるのを待つ。

 

 数分して、背後にあった気配が消えた。星菜さんの肩を指で叩き、もう大丈夫だと合図を送る。

 

「え……?」

「よし、次へ向かうか」

「だねー」

「え……?」

 

星菜ちゃん、放心

何があったんだ……?

別の人の声が聞こえたのはわかる

何か出たのか……?

 

 何か出たが、来る前に気配でわかった。なんかオカルトに関して自信ついてきたな。

 




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