稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第225話 BAR:midnight

「楽園都市。富裕層のみが住む、高い壁に囲まれた、遊びたいときに遊び、寝たい時に寝て、食べたいときに食べる。人間の欲を気軽に満たすことのできるまさに楽園のような都市。ここはその楽園都市の一部である無法地帯、通称失楽園。当たり前に犯罪が起きて、当たり前に昨日会った人が帰らぬ人になる、そんな場所。そして、その失楽園の憩いの場、『BAR: midnight』のマスターが、このミッドナイト・サイコナイト、深夜の狂騎士だ」

 

どこかで聞いたことがある導入

一人!?

バーのマスターってお前、正気か?

参加してるのはプロエジェのライバーだけじゃないんだぞ

 

 バーのマスターとして店を構え、店内にて配信を開始した途端めちゃくちゃな言われようだ。ライブ感を楽しんでもらおうと思って視聴者には一切相談していなかったから、この反応も無理はないだろう。

 10月1日。他箱、そして個人勢を巻き込んだ『project:conflict』が開かれた。参加人数は詳しく聞いていないが150、もしかしたら200に届くほどだと言われており、それを聞いた瞬間、バーのマスターをしようと言ってしまったことを後悔しかけた。

 

 が、しかし。男に二言はなく、吐いた唾は飲めない。俺は、懸け橋としての責務を全うする必要がある!

 

満ちゃんは別室?

ニコだけか……

なんで飲食店やろうと思ったんだ?

前回警察だったから、おとなしいやつやりたくなったか

 

「ふっ、俺がなぜ飲食店をやろうと思ったかは、見ていればわかる。あと満は別室だ。満も参加者の一人だからな」

 

 俺は、ゲーム内で事前に作成してもらったチラシを開く。そこには、『BAR:midnight』。男女それぞれ同性の店員が対応いたします。というクールでオシャレな文字とともに、店の番地と俺の電話番号が記載されている。更に、簡易的なメニュー表も載せてある。この中に嘘はない。対応は同性がして、その後は異性とマッチングするというだけだ。

 

あー、多方面への配慮的なことか

ニコらしい

ニコだけでやんの?

満ちゃんがいなくて大丈夫なのか?

 

「多方面への配慮……察しがいいな。まぁ、そういうことだ。満も後で合流する。恐らく、外で他の人たちと交流しているのだろう」

 

 現在時刻は18時7分。18時からサーバが開かれ、俺はすぐにログインしてすぐにこのバーへ来たから、誰一人として遭遇していないが、ログインする初期地点は広いロビーのようなところだ。ログインした瞬間に誰かと出会い、挨拶をして、そのまま交流する、というのが普通だろう。元々、交流が目的だからな。普段関わるようなことがない相手と関わり、相手の視聴者に自分を知ってもらって、自分の視聴者にする、という狙いもある。突発コラボがずっと行われるようなものだ。

 満は人当たりもよく、愛らしく、更にコミュニケーションをとるのがうまい。それを見越して、先ほどのチラシを出会った人に配るようお願いしている。満だけではなく、ヴァールハイト以外のうちの従業員全員にも。

 

価格載せてて大丈夫なのか?

他に飲食店やる人たちがいたら、この店より安く設定するんじゃね?

ニコの店が潰れるなら面白いからいいだろ

満ちゃんも合流するっつってんだろ!

 

「価格を載せているのは、初心者の方もいるからな。飲食店としてのある程度のベースラインを提示しておけば、価格設定もしやすく、どれくらいの金が必要になるかという指標にもなる。価格競争についても、店を始める際のチュートリアルで最低額が教えられる。シゲキが、『ンな下らねぇことでごちゃごちゃやかましいザコどもが増えるとシゲキ的にダリィだろ』と言っていたからな。ルール整備は問題ないと思っていていい」

 

 シゲキは本当に変わった。変わった、と思いたい。元々『project:conflict』はシゲキが根幹に関わっているから、何か盛大にシゲキ的なことをしようとしているとしか思えないが、流石にないよな? また『project:excite』のようなことになったら、他の事務所に顔向けできん。

 

「始まってしばらくは客がこんだろうから、今のうちに飲食店の説明をお前たちにしておこう。わかっていた方が、これからのやり取りをすんなり見られるだろうからな」

「何このプリティなお店!! プリティすぎる~!」

 

なんだ!?

ヌ゜だぞ

一期生みたいなもんだからマズくない

プロエジェに入っていないのがおかしい人材

 

 視聴者に向けて飲食店の説明をしようとした時、ドアを開いて甘ったるい声が響いてきた。

 このゲームで動かすキャラは、『project:eden』の技術によってかなり似せて作られている。その甘ったるい声とともに、その姿が視界に映った。

 左右非対称のツインテールで、右は淡いピンク、左は紫がかった水色。しかも毛量がやたら多く、リボン、ヘアピン、星、ハート、十字架など無数のアクセサリーが絡みついている。瞳は左右で色が違い、片方が青、もう片方がピンク。幼い印象があり、常に笑顔を浮かべている。

服装は巨大なオーバーサイズパーカーに、フリルだらけのインナー。ベルト、チェーン、小物、ぬいぐるみキーホルダーが大量にぶら下がっている。

 

 ヌ゜。イベリスが警戒しておけと言っていたうちの一人。

 

「壁の紫色の間接照明、プリティにぼんやりしててちょープリティ! ダークでブラウンに統一されてて激プリティ!! ねね、女の子用の入り口が閉まってたからプリティにこっちきちゃったけど、よかったの?」

「すみません。開店したばかりで従業員もおらず……というか『close』と店先に出ていませんでしたか?」

「出てた! ちょープリティな文字で、激プリティな外観だったから、プリティー! って思ってきちゃった!」

 

一期生よりはまだわかる

なんだ、こう、電波バシバシ感じるけどかわいいぞ……?

プリティにこっちきちゃったはわからん

日曜の朝にいそう

 

 ヌ゜さんは店内を走り回り、「このプリティなんていうの?」とレコード盤の前で飛び跳ねたり、「本いっぱい置いてある! 何書いてるかわかんない!」と言ってけらけら笑ったり、「ここバーなの? プリティすぎて申し訳ないって思わない?」と至近距離で聞いてきたり、子どものような好奇心を見せつける。

 

「少し落ち着いてください。俺は『BAR:midnight』のマスター、ミッドナイト・サイコナイトです」

「知ってる! ニコちゃんだよね? 私はヌ゜!」

「え、俺のことを知っていただけているのですか!?」

「うん! だってちょープリティだもん! ていうかすごいね! 私の名前一発で発音できるなんて! やっぱりプリティ!」

 

 そりゃあ一杯練習したからな。人の名前を呼べないなど失礼にもほどがある。元々、満の声をボイチェンで届けていたこともあり、自分の口の動きとは異なる動きをするのに抵抗がなかったのもあるな。

 しかし、俺のことを知ってくれているとは……。俺の視聴者も「見る目あるな」「これはプリティ」「プリティすぎる」ともう虜になってしまった。俺のことを知ってくれているからといってチョロすぎる。

 

「あ! さっき、プリティに開店してばっかりって言ってたよね!?」

「プリティに開店はしていませんが、開店したばかりではあります」

「ていうことは、プリティに私がお客さん第一号ってこと!? やったー!!」

 

かわいい

かわいい

かわいい

かわいい

 

 ばんざいのエモートをして大喜びするヌ゜さんに、視聴者がやられた。俺の視聴者は無邪気な人に弱すぎる。

 ヌ゜さんは、実際に関わってみてもそれほど警戒するような人ではない、と思えてしまう。自分の会話のペースを崩さず、自分の言いたいことや聞きたいことを押し通すが、子どもを相手していると思えば苦ではない。イベリスが警戒していたのも、恐らく自分自身がヌ゜さんと同じ種類であるという自覚がなかったからだろう。

 

「ねね、ニコちゃん! お客様第一号に、プリティな飲み物ください!」

「すみません、準備がまだできておらず……というか、チラシを見てきてくれたのではないのですか? チラシには開店時間は初日は20時からと記載していましたが」

「ん-? プリティに見てない! なんか、ここが一番プリティ! って思って、ログインして一直線にきちゃった!」

 

概念型だ!

オシャレだから人がいる位置を把握できるイベリスと一緒

クールだから未来予知みたいな推理ができるルイスと一緒

シゲキ的だからシゲキ的なシゲキと一緒

 

 なる、ほど……。自分の感情に正直な人なんだろうな。『close』とあるのにも関わらず突入し、飲み物を注文する。普通なら、店に入ってくることはしない。しかもここにきた理由が『プリティだと思ったから』か。

 俺にはわかる。こういう人は、一番プリティと思ったところに留まり続ける。つまり、このバーが一番プリティであり続ける限り、ヌ゜さんはプリティにここに居座るということだ。別に困るということはないが、ヌ゜さんが来店したお客様に対して突撃し、困らせて、バーの評判が下がる可能性がある。失礼な可能性だが、経営する以上リスクは無視できない。元々やろうとしていること自体がリスクの塊のようなものだからな。

 

 それを回避するには、他のプリティを生み出し、そちらに興味を向ける必要がある。でもプリティってどうやって生み出すんだ!? 俺はプリティなどまったくわからんぞ!

 

「どうしたの? ニコちゃん」

「あぁ、いえ、すみません。考え事をしていました」

「考え事してるニコちゃんもプリティだったからプリティに許しちゃう!」

 

 ……この人、もしかして俺のことをプリティだと思っているのか? ちゃんづけだし。いや、元々人に対してはちゃんづけをする人だし、プリティの基準がわからないから、俺がプリティだと決まったわけではない。俺は背が高くて足が長くてカッコいいからな。プリティとは程遠いだろう。

 ではなぜここに……? 満が街にいるから、満に引っ張られそうなものだが……。

 

「ニコさーん!!」

 

 その疑問は、店内に響いた新たな人物の声で解決した。

 

「笑顔輝く一等星! みんなを照らす見習いアイドルVTuberの一ノ瀬 星菜! 早くお店にきたくて、早めにきちゃいました!」

「星菜ちゃんだー!!!」

 

 俺の方を向いていたヌ゜さんがぐりん! と星菜さんの方を向いて、星菜さんに飛びついた。

 ヌ゜さんがここに来た理由。それは、ここにプリティである星菜さんがくるからだ!!

 

「はじめまして、ヌ゜だよ! 星菜ちゃんプリティすぎる! ちょープリティ! だいすき!」

「わわ、はじめまして! ヌ゜さん! ヌ゜さんもプリティですね! 星お揃いでうれしい!」

「えー! ヌ゜の発音できてる! 激プリティ!」

「えへへ。実はヌ゜さんかわいいなーって思ってて、配信見てるんです! 声もお顔もお洋服も全部可愛くて大好きです!」

「ぷ、プリティすぎる……!!」

 

プロエジェが誇るプリティ

星菜ちゃんの方が背高いんだな

それがいい

その方がいい

 

 ヌ゜さんがここにくるのも当然だろう。プリティを察知できるなら、星菜さんを察知しないわけがない。俺は、星菜さん以上に純粋で真っ白な人を知らない。どんなに荒れている配信でも、星菜さんが出てくれば一瞬で浄化するような力の持ち主だ。

 ……ということは、星菜さん以上のプリティはこの街に現れないということで、つまり。

 

「私、このお店で働くんです! 盛り上げ役!」

「えー! プリティ! 盛り上げ役が何かわかんないけど、私もプリティにやりたい!」

「わ、嬉しい! ニコさん! ヌ゜さんがやってくれるって! いいですよね!」

「……あぁ、もちろんだ」

 

 やったー! と喜ぶ二人。俺は頭を抱えた。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part45

 

732:このライバーがすごい! ID:zJ/RgC7bm

BAR:midnight

●役割

■マスター

ニコ

■受付

ニコ、ミハイル、ユースちゃん、フレイル

■盛り上げ役

満ちゃん、星菜ちゃん、アル、茉莉、ヌ゜

■口封じ

ヴァールハイト

 

●店の実態

男性店員女性店員が分かれて、いらない炎上を回避させる優しいお店かと思いきや、

男女をマッチングさせて相席させるとんでもない店

悪評を振りまいた場合、ヴァールハイトが口封じに動く

 

733:このライバーがすごい! ID:fbLEupBng

口封じが存在する飲食店があってたまるか

 

734:このライバーがすごい! ID:7OvMLOrrB

ニコらしいといえばニコらしいし、ニコらしくないといえばニコらしくない

 

735:このライバーがすごい! ID:j7X51ILoW

ヌ゜とかいう爆弾

 

736:このライバーがすごい! ID:xYMzswHgl

悪意なく本気でマッチングさせそう

 

737:このライバーがすごい! ID:4bu0oLZt8

一対一でマッチングさせるってわけでもないし、まぁ……

 

738:このライバーがすごい! ID:qeY2wsuxk

他箱交流にはいい店なんじゃね?

 

739:このライバーがすごい! ID:LSOYTwhqU

ついに燃えそう

 

740:このライバーがすごい! ID:ZaborSGW2

ミハイルとユースちゃんがいるのがデカい

事務所は許可してるって捉えられる

 

741:このライバーがすごい! ID:usWApEJpm

従業員多いし、ヴァールハイトへの報酬もいりそうだけど、そんなに売り上げでるのか?

 

742:このライバーがすごい! ID:0xduMKyek

満足できたらチップもらうみたいなシステムだから、盛り上げ役の布陣的にいけるだろ

 

743:このライバーがすごい! ID:QaYLYt/ho

ヌ゜が未知数すぎる

 

744:このライバーがすごい! ID:Lt47oGrqS

空間塗り替えるからなぁ……

 

745:このライバーがすごい! ID:e9C3nd0JB

ま、まずい! 俺、優姫ちゃんとアザミんがこの店にきて、よくわかんねぇ男とマッチングしたらって思うと、角がにょきにょきしちまう!!

 

746:このライバーがすごい! ID:Id/oVz2TM

バーで優姫ちゃんとか惚れない方が無理だろ

 

747:このライバーがすごい! ID:PnisOHPYc

優姫ちゃんは今回困ってる人のサポート役に回ってるし、多分行かないんじゃないか?

 

748:このライバーがすごい! ID:h+MbEKg/o

アザミんがどうにかしてニコを大勢の女性とマッチングさせようとしてるぞ!!

 

749:このライバーがすごい! ID:l9rNbIC+D

同期を燃やすことに余念がない女

 

750:このライバーがすごい! ID:fgTLF1n6w

マリー「どうにかして私がニコちーとマッチングしたい」

 

751:このライバーがすごい! ID:rfTRUtd1A

ニコが何をしたって言うんだ!

 

752:このライバーがすごい! ID:ZBjWMUbaB

実際、業界全体で男女コラボに対する意識変えるにはよさそう

 

753:このライバーがすごい! ID:aZF0td4uL

荒療治っぽい気もするけどなぁ

 

754:このライバーがすごい! ID:iIimSOIvY

マッチングされた当人より、店側にヘイト向きやすい構造だから、きっかけにはいい

 

755:このライバーがすごい! ID:sEd20ndBB

ていうか従業員モチーフのメニュー普通にかわいくないか?

 

756:このライバーがすごい! ID:7gobEMAUu

あぁ、あのカップもソーサーもティースプーンも何もかも真っ黒なやつのことか

 

757:このライバーがすごい! ID:SaU26PnWy

ミッドナイト・サイココーヒー

 

758:このライバーがすごい! ID:boq+xhERW

正気とは思えないメニュー

 

759:このライバーがすごい! ID:agUVcn9/j

食べ物飲み物のイラストにデフォルメキャラついてるのがいい

 

760:このライバーがすごい! ID:MyOUPejXH

ニコ:ミッドナイト・サイココーヒー

⇒全部真っ黒、嘘みたいなセンス、ダサすぎる

満ちゃん:わんぱくおにぎり!

⇒まんまるで大きいおにぎり

フレイル:トレジャーパフェ

⇒チョコ、ナッツ、溶かしたキャラメル、バニラアイス、フルーツなどが入っているパフェ

 てっぺんには旗の形をしたビスケットが刺さっている

ミハイル:ミハイルのサービスショット

⇒テキーラサンライズのショット

 ミハイルの裸とかではない

ユースちゃん:ユースのふんわり♡オムライス

⇒実際にユースちゃんが作ったものをベースにイラスト化したかわいいオムライス

 丸っこくてふわふわしてる

星菜ちゃん:放課後バスケット☆

⇒バスケットにポップコーン、チュロス、ドーナツ、チョコが入っている

アル:ポップエナジーフロート

⇒ぱちぱち弾けるエナジードリンクベースのフロート

茉莉:和風プリン

⇒生クリームとあんこが乗った抹茶プリン

 純花さんによく作っていたらしい

ヌ゜:未定

 

761:このライバーがすごい! ID:pnEa5BxWS

イベントで出してくれ

 

762:このライバーがすごい! ID:fFaxFfMZq

ミッドナイト・サイココーヒーはいらない

 

763:このライバーがすごい! ID:uMMrBCU7u

トレジャーパフェかわいすぎだろ

 

764:このライバーがすごい! ID:tJ+Hy6iSm

よく見るとスプーンがスコップの形になってる

 

765:このライバーがすごい! ID:QVYjJGtWm

ミッドナイト・サイココーヒーはスプーンの持ち手が十字架だぞ!

 

766:このライバーがすごい! ID:vk23rm8Ib

最悪

 

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