稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第231話 エンターテイメントカップ (2)

「みんな!! すまんがしばらくコメント欄は見れん!! 俺はリニスとのエンターテイメントバトルに集中する!!」

 

わかった

いやん! わかったわん!

いいよ

おい! 気をつけろ! 俺たちの中に化け物がいるぞ!

 

 正面には巨大なゲート。あそこがスタートラインだということは説明されなくてもわかる。もうどちらに賭けるのかを大体の人は決めている。決まっていないのは、未だに俺とリニスに賭けたり賭けなかったりしているシゲキのようなやつくらいだ。

 

「準備はいいか、ニコ!! どちらかが死んでも文句なしだ!!」

「わかっている!! 男が拳を構えたなら、その先の勝敗に文句などつけるべきではない!!」

「それでこそ、俺が認めたエンターテイナーだ!! 行くぞ、エンターテイメントカップ……」

 

 俺とリニスは同時にスタートラインを越えた。

 

「スタートだ!! ぐわああああああああ!!!!」

「り、リニスー!!!!」

 

 り、リニスが何者かによって撃たれて、ものすごい速度で縦に回転しながら吹っ飛んで行った!! 何が起きたんだ!?

 

ミハイルがやってくれたぞ!!

さ、流石だ

でも同じようなことができる人が相手にもいるんだよな……

ミハイルはヴァールハイトのNo.2だから、ボスが相手にいなきゃ大丈夫だ!

相手にいるんだよ、そのボスが!

 

「ぐ、ぐわああああああああああああ!!!!」

 

 な、なんだ!? 突然バランスを崩したかと思ったら、俺も同じように空中で縦回転しているだと!? 恐らく同じように撃たれたのか!! クソ、誰が何をやっているかがわからんから何が起きたのかもまったくわからん!!

 いや、落ち着け。俺自身を撃たれたわけではない。冷静に空中制御で立て直せばいいんだ!!

 

 そう思っていた俺のミッドナイト・サイコバイクがまた何かに襲われ、縦回転が乱回転に変わった。画面がものすごいことになっている!!

 

「助けてくれええええええ!!!!」

 

ボスにやられた!!

安心しろ、ミハイルがボスを倒しに行ってくれてる

ゴムゴムの花火!?

螺旋丸!?

 

 このままでは、三周する前に死んでしまう!! それだけはあってはならん!! 乱回転しながら見えたが、リニスも乱回転している。このまま二人乱回転してどちらも死んだとなっては興ざめだ!!

 すべての方向キーを数回ずつ入力し、制御の感覚を掴む。乱回転を収めることはできないが、着地時点でタイヤを地面との接地面にすることは、可能だ!!

 

 ガン、という地面に叩きつけられる音。それとともにミッドナイト・サイコバイクの前輪が地面につき、逆ウィリーの状態で回転しながらコースを突き進む!!

 

「よし!! なんとかなった!!」

 

なってなさそうに見えるぞ

空中よりはマシだ!!

油断するなよ!! まだくるぞ!!

おい!! マリーがものすごい勢いで●害して回ってるぞ!!

 

 操作に少し慣れてきて、コメント欄を見る。どうやらマリーが俺を妨害しようとしている人たちを殺害して回っているらしい。あいつ、今日でやめるつもりか?

 

 ミッドナイト・サイコバイクは通常の体勢に戻り、時を同じくしてリニスが並走してくる。どうやら、リニスもなんとかなったようだ。お互い見合い、流石だ、という意味を込めて口角を上げる。

 

「笑止!! あの程度の障害など、俺たちからすれば児戯に等しい!! 見ていろ、俺たちの白熱したエンターテイメントを、ぐあああああああああ!!!!」

「り、リニスー!!」

 

 リニスがピンポイントで爆発して空中に吹き飛ばされた!! 誰がそんなことを……!!

 答えは、探す前に背後から聞こえてきた音で分かった。『project:eden』の世界観に似つかわしくない、巨大な金色の鳳凰の背にある豪華絢爛な椅子に座り、俺たちを見下ろしているイベリス、その羽にヤンキー座りしているシゲキ、そして、その鳳凰を大型のバイクでけん引しているルイス。

 『project:eden』の一期生がそこにいた。いつもなら絶望するところだが、リニスを攻撃してくれたということはまさか!!

 

「シゲキ的に殺しにきてやったぜ、テメェら!!!!! どっちかにつくかと考えたが、二人まとめて相手にした方がシゲキ的だ!!!!!」

 

 違った!! やはりシゲキはシゲキだった!! いやしかし、ルイスとイベリスが同じ思想だとは限らない!! 二人は俺の味方かもしれん!!

 

「あなたたちが全体を巻き込むオシャレをするということ。私への挑戦状と受け取ったわ!!」

「なぜ『project:eden』は喧嘩を売っていないのに喧嘩を買ってくるんだ!!」

「まさか、ニコがクールにバイクで勝負を挑んでくるとはな」

「付き合ってられん!!」

 

まぁリニスも妨害するならまだマシだろ

あんなのを背に三周するのか?

マズいぞ、プロエジェのパワーが強すぎて他事務所が妨害しにこない!

ヴァールハイトの内紛が勃発したぞ!!

いつも通りだろ

 

「シゲキ的に死ね!!!!!」

 

 背後から何かが射出される音を聞いて、一瞬背後を確認してハンドルを切る。リニスは着地に成功し、飛ばされた分俺より先にいる。怪我の功名というやつだ。ならば、俺が妨害を受けてはならん。それはそのまま敗北を意味する!!

 

「くっ、マズい!!」

 

 ミサイルが着弾し、なんとか避けられたが爆風によってバランスが崩れる。俺のスーパードライブテクニックがなければ、今頃転倒していただろう。

 

「今がチャンスね!! オシャレに覚悟なさい!! とう!!」

「何をするつもりだ!!」

 

 俺が操作に手間取っている瞬間を好機ととらえたのか、イベリスが椅子から立ち上がって跳びあがる。そしてそのまま鳳凰に置いて行かれてものすごい速さで地面に激突し、遠くの方へ転がっていった。

 

「い、イベリスー!!!」

 

まったく意味が分からん!!

イベリスが4んだぞ!!

あとあいつ賭けにも参加してないぞ!!

ルイスも参加してないぞ!! なんなんだあいつら!!

 

 まさに天災と呼ぶにふさわしい。何があればこんなやつらがVTuber事務所の一期生になるんだ。絶対に職業を間違えている!! いや、取れ高とかそれこそエンターテイメント的には適性なのか!?

 

「イベリスをやるとは、流石だな。クールなやつだ」

「イベリスが勝手に跳びあがって落ちていったんだろう!! 俺は知らん!!」

「体重一人分軽くなってシゲキ的にラッキーだな!!!! おいルイス、シゲキ的に近づけ!!!!」

「どうやらそう簡単にはいかないみたいだ。クールに掴まっておけ」

 

 何が、と聞く前に、空から何かが降ってきていることに気が付く。直後、そこら中で爆発が起きた。しかし俺の近くでも爆発が起きたものの、俺を狙っているものではないように思える。

 

「ニコちゃーん!! プリティに助けにきたよー!!」

「ヌ゜さん!!」

 

 空を見上げれば、ジェットパックを背負ったヌ゜さんがしこたま爆発物を投げ込んできていた。ジェットパックの煙でちょくちょくハートを描くのが実にやかましい。やかましいが、助かる!!

 

「チッ、シゲキ的に邪魔しやがって!!!! あいつから殺すか!!!!」

「待て、シゲキ。相手はレイディだ。例え敵であろうと、レイディを危険な目に遭わせることはクールにできん」

「うるせぇ!!!! ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!!!!」

「クールに譲れん。いいか、レイディは朝にコーヒーを飲むときのように、そっと、優しく、繊細に扱うべきだ」

「あとレイディって言うんじゃねぇよシゲキ的にうぜぇ!!!! レディでいいだろうが!!!!」

「さらばだ、ニコ!!」

「待てコラテメェ!!!!!」

 

 ルイスがハンドルを切り、ガードレールを突き破って空中へ飛び出した。少しして、下の方で爆音。所持していた爆発物がすべて爆発したのだろう。あのシゲキが、ルイスとイベリスと一緒にいるとここまで弱体化されるとは……嬉しい誤算だが、哀れだ。

 

「助かった、ヌ゜さん!! そのままリニスを妨害して……ヌ゜さん!? どこに行った!?」

 

ジェットパックのエネルギーが無くなって墜落したぞ!!

でもルイスが下敷きになって落下4は免れたぞ!!

やはりクールな男

シゲキは普通に生きてるらしい

 

「生きてるのか、よかった。シゲキはよくないが……今はリニスに追い付かねば話にならん!!」

 

 と言っている間に、最初のスタートラインを通り過ぎた。なんだかんだやっている間に二周目となったらしい。他の出来事を消し飛ばすくらい強烈なやつらだったが、まさかレースのことすら頭から飛んで行っていたとは、恐ろしい。

 

「ニコ!! これがラストだ!! この一周ですべてが決まる!!」

「何っ!? もう二周なんじゃないのか!!?」

「何を言っている!! 俺たちは既に二周しているぞ!!」

「なんだと!?」

 

空中にいたり回転したりしてたから、正確にどれだけ進んだかわかってなかったのか

ちなみにリニスもクソ妨害受けてたぞ

ヴァールハイトが内紛している間に決着つけろ!!

狙撃されたらシャレにならん

 

 俺とリニスの距離はそれほど離れてはいないが、このままただ走り続けているだけでは敗北することは間違いない。となれば、妨害を期待するしかないか……? 

 違う。レースならば、最後は己の手によって道を切り開くべきだ!! 今まで助けてもらった分を、俺の雄姿で返す!!

 

「リニス!! 最後は男と男の勝負だ!!」

「そうこなくてはな!! だが、俺たちの間に生まれたこの差を、どうやって覆す!!」

「こうするんだ!!」

 

 レースゲームであれば誰でも経験があるショートカット。ガードレールにウィリー状態で入っていけば、向こうのコース上にショートカットできる!!

 失敗すればそのまま空中に投げ出されて終わりだ。だが、それくらいしなければリニスとの差は埋まらない。そして、成功させてこそエンターテイナーだ!!

 

「行くぞ!! ミッドナイト・サイコバイク!!」

「なっ、ウィリーだと!?」

 

 ウィリーしながらガードレールを踏むと、空中へ飛翔する。あとは空中制御して着地するだけだ!!!!

 

 そんな俺のミッドナイト・サイコバイクに、銃弾が直撃した。

 

ぼ、ボスだ!!

ミハイルがやられた!!

なんとかしろ、ニコ!!!!

 

「う、うおおおおおおおおお!!!!!」

 

 またしても乱回転しながら空中制御!! 少し着地が難しくなっただけだ!! それに、俺は一度この状態からの着地を成功させている!! 何も問題はない!!

 

「着地、成功だ!!」

 

うおおおおおおおおおおおお

すごいよ、お前

お前は天才だ!!!

勝つぞ!!!

 

 勝利を確信しながら走り出す。リニスはもう後ろだ。俺の勝利が決定した!!

 

 そして、俺はまた撃たれて、空中で乱回転し始め、何度も乱回転させられて普通に負けた。お、おのれ!!!!!!

 

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