稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「く、クソオオオオオオオ!!!!」
「惜しかったな、ニコ!! そしてこれより、エンターテイメント・バトルロイヤルが開始される!! この時点で、現在死んでいる者は復活し、ゲームへ参加することが可能となる!! 更に、空中の電光掲示板を見ろ!!」
コース上で停止し、リニスに示されるがままに掲示板を見る。そこには参加者の配当金がそれぞれ表示されていた。あれが誰が味方で誰を狙うかの指標になるということ……なっ、何!?
「ま、マリーが20億だと!!???」
全財産お前に賭けてたからな
その上で妨害の妨害しまくってたからな
すべてが重すぎる
おい! マリーを守りきれば勝ちだぞ!!
「どうやら、貴様には熱心なファンがいるようだな」
「あぁ……そうと決まれば!!」
「ふっ、そうだ!! レースを終えた俺たちも、やること、やれることはある!! ここからが真の勝負だ!!」
「俺は負けたが、俺たちは負けん!! 多額の借金を背負う覚悟をしておけ!!」
俺はミッドナイト・サイコバイクを発進させ、地上へと走らせる。コメントでもあった通り、マリーを守り抜けば実質勝ちだ。元の掛け金がいくらかわからないが、マリーの配当金がダントツもダントツ。他の俺に賭けてくれている人たちの配当金が相手に渡ったとしても問題ない!! それは逆説、マリーが殺されてしまえば負けてしまうということだ。マリーを殺した相手を殺せばいいが、だからといってそれを許容する理由にはならん!!
俺はゲーム内のスマホを取り出し、マリーへ連絡する。コール音が鳴る前に出た。怖い!!
「マリー!! 今どこにいる!」
『ミッドナイト・ストリート。区画で言うとM4』
「わかった! すぐそちらへ向かう!!」
『おけー』
「すまないが、電話は繋いだままにするぞ!! マリーに何があったかは把握しておきたい!!」
『えっ……』
「そういう意味ではない!!」
『どういう意味でも嬉しいよ』
ニコと話すときのマリーが一番かわいい
そ、それって、恋ってことですか
不倫確定! ビッグボーナス! よーく狙って?(受胎)
不倫確定! ビッグボーナス! よーく狙って?(受胎)
クソッ!! また連投コメントがきてしまった! なんかいつもより数が多いし! これはあれか、俺の視聴者だけではなく、コメントから情報を得られないように敵チームの視聴者が連投しにきているのか?
だとすれば、残念だったな! 俺の配信時間は他の追随を許さん! コメントを目で追う能力には長けている! むしろ、定型文を連投されているならそれを情報から遮断すればいいだけのこと! 甘かったな、インターネットを利用している歴が違うんだ、歴が!!
『今のところ大丈夫。レース終わる直前に思いきり周りと距離取ったから』
「わかっていると思うが、空も注意してくれ。先ほどヌ゜さんがジェットパックを背負っていた。空を飛ぶ手段などいくらでもある」
『ほんとだ。なんか蚊柱みたいに飛んできててウケる』
「何っ!? 逃げろ、マリー!!」
『おけー』
あの掲示板は全員が見れる位置にある。配当金を見れば当然マリーを狙ってくると思っていたが、思ったよりも早い!! しかも、蚊柱ということは数人いるということか……? 既に連携して動いていると見てよさそうか。だとすると、俺たちも連携を取って動く必要がある。しかし、俺は店主として働き、色々な人と関わったが、連絡先は交換していない。いらぬ杞憂を避けるためだったが、まさかこんな形で仇になるとは……!
『あ』
「どうした!!」
『気が利くじゃん。ニコちー。なんか、天導さんがバイクで拾ってくれた』
「天導さんが!? ありがたい!! 移動先を教えてくれ! 俺は地上の護衛をする!」
『おっけー。でも空はどうする? ヴァールハイトの人たちもまだドンパチやってるじゃんね』
「それには俺に賭けてくれた人たちと連携が必要だが……ん?」
アルからメッセージがきている。なんだ? 『店の内線入ってください……?』 そ、そうか! 少なくとも『BAR:midnight』のメンバーとは連携を取ることができる! 店を出ているからと切っていたが、どうしてこんな簡単なことを思いつかなかったんだ!
トランシーバーを取り出し、店のチャンネルである『666』を入力。パスワードを入力して店の内線に入ると、そこには。
「なっ、人がいっぱいいる!?」
『お、やっと入ってきたんすか!!』
「アル! 助かった! 俺に賭けてくれていた人たちがいるように見えるが、どうやったんだ!?」
大勢の人たちがいた。画面左上に内線に入っている人たちの名前がずらっと表示されている。この短時間で一体どうやって……? 誰かがこれだけの人たちの連絡先を持っていたのか?
『プリティに連絡先交換してたから、プリティに集めちゃった! どう? プリティすぎる?』
そうか、ヌ゜さんなら妙な遠慮も何もなく、ガンガン距離を詰めていける!! あの人は一期生と同じく妙な信念のある人だが、実際は愛嬌があって可愛らしい人だ。性を感じないマスコット的存在! ヌ゜さんがうちにきてくれてよかった!
「……!! あぁ、プリティだ!!」
『ニコさん、キツい』
「あっ、満!! ここから先は危ない!! おとなしくしておくんだ!!」
『べー!!』
「きっ貴様!!」
満め……!! 当然のように俺の味方をしてくれるのは嬉しいが、殺し合いが始まるならおとなしくしておいてほしい。例えゲームと言えど、満が殺されたら俺がどうなるかわからん。きっと怒りのあまりミッドナイト・サイコナイトからスーパーミッドナイト・サイコナイトとなることだろう。多分金髪とかになる。
いや、俺の怒りによる変身についてはどうでもいい!!
「みんな、聞いてくれ! 今マリーが敵チームに空から追われている! そいつらを撃退、もしくは倒す必要がある!」
『空に人は必要だと思って、ギャングの人たちにジェットパック背負ってもらってます!』
「なんて仕事ができる人なんだ茉莉さん!! マリー、現在地は!!」
『L2から南下中ー』
「L2から南下しているそうだ! そちらへ向かってくれ!」
『了解。みなさん、俺についてきてください!』
『あっ、そうだニコちゃん! 会ったことないからまりりんの連絡先知らなくて。今プリティにお電話中なんでしょ? ここに入るようプリティに伝えて!』
「なにっ! わかりました、すぐに!」
モンロー!?
会ったことないのに!?
気をつけろ! パスワードとか言っちゃうと向こうの視聴者にバレるぞ!
向こうチームにもプロエジェがいるのが厄介だな、なんでもありだ
くっ、そうか。こういうPvP系では鳩行為と呼ばれる、相手配信の情報を他配信で伝えるといった行為は禁止されているが、シゲキが「何がいけねぇんだよ。シゲキ的に言ってみろ!!」「行動を制限しすぎちゃうのはオシャレじゃないわ!!」「何を拾い、何を選択するかはクールに個人の自由だからな」という一期生の思想によって特に禁止されていない! それでも他箱の人は遠慮するだろうか、『project:eden』には基本的に遠慮という概念が存在しない!!
どうやって伝える? 口頭でもダメだ、メッセージでも配信で画面上に乗ってしまう。……賭けるしかないか。
「マリー!! 今俺はトランシーバーで内線に入っている! チャンネル番号は666だ! だが、万が一の鳩を避けるために、パスワードは口頭で伝えられん! パスワードは、俺が適当に決めた四桁の番号だ!! マリーならできると信じている!!」
『できた』
マリーの声が二重に聞こえる。左上を見ると、マリーの名前が表示されていた。流石だ!!
「よし、電話を切るぞ!」
『うん』
とんでもないことをやってのけたというのに当たり前みたいな声色。流石すぎて怖い。コメント欄も「?」「?」「?」「?」と考えることをやめている。が、今はそんなことを気にしている場合ではない!!
「俺はこれからマリーのところに向かい、地上から援護する!! 今は空からしか敵がきていないが、恐らく地上からも追手がくるだろう!! 何人かきてくれるとありがたい!!」
『ニコちー!! 鳳凰きた!! やばい!! あなたが一番オシャレだからって言ってわけわかんないのがきてる!!』
「なにぃ!!??? イベリスだけか!?」
『周りに地獄みたいな顔してサンバ衣装着せられてる人たちがいる!!』
「なんてむごいことを……!! しかしマズい。イベリスがちゃんとしたらかなりの戦力だ。どうすれば……」
あの時はなぜか跳躍してなぜか転がっていったからなんとかなったものの、あいつはその時その時で一番オシャレだと思うことを100%の力で必ず遂行できる。この世の理から外れた存在だ。正直一番恐ろしい。
あいつに対抗できる存在は一期生くらいだ。単純な戦闘力だけでは拮抗できない! あと多分できれば誰も関わりたくないと思われている!!
『フレイルちゃん』
『ん? なんだ?』
しかし、勇者がいた。その勇者の名は、白峰百合さん。
『この戦いが終わったら、デートして。そうしたら、私は誰にも負けない』
『え、で、でーと』
『してくれなきゃ誰にも勝てない』
『い、いや、そーいうのは私はあんまり』
『じゃあ一緒にあそぼ?』
『ん? それならいいぜ!』
『おほほー!!』
「クソッ、色々言いたいことはあるが、イベリスは任せましたよ!! 他に来てくれる人たちは、周りのサンバ衣装の人たちの対処をお願いします!!」
勇者と言うには少々どころかかなり欲にまみれているし、フレイルさんのことが心配だが、今はイベリスへの対抗手段が必要だ! そもそも白峰さんがイベリスに対抗できるかという問題はあるが、こういう変態性を持った人の強さを俺は知っている!! そう納得するしかない! とても淑女とは思えない興奮した鳴き声をあげたのは気のせいだ!!
おいニコ、マリーの次はフレイルを守れよ
従業員を餌にする店主はあなたですか?
お前には説明の義務がある!!
逃げられると思うなよ!!
こんなときに炎上し始めている!! 頼むから後にしてくれ!!