稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第2話 同期コラボ

 クソッ、掴みは大失敗だ!!! 俺の想定なら小粋なジョークで和ませて、そのまま自己紹介する流れだったのに!!

 

 いや、ここは流れを掴むために、俺から自己紹介だ!!

 

「我が名はミッドナイト・サイコナイト!! 深夜の狂騎士だ!!」

『月宮優姫よ』

『アザミ・フレンジー』

「え!? こういうのって挨拶みたいなのあるもんじゃないんですか!?」

『別になくてもいいでしょ』

『必要性を感じない』

 

まぁ優姫ちゃんとアザミんはキャラ的に挨拶決まってる方が違和感ある

チュニコンは三日くらい考えて挨拶決めてそう

さっきの挨拶が三日考えた末のものか……?

 

 好き勝手言いやがって!! 俺は普段からそう名乗っていたから、三日も考えていない!!

 

 いやしかし、よかった。実際に顔を合わせてじゃなくて、dicecodeで通話しながらならなんとか平静を保てる。掴みは大失敗したが。

 

『って言うか何? あんたアザミんって呼ばれてんの? 可愛らしいわね』

『らしいな。私が私だとわかれば、呼ばれ方はどうでもいい』

『呼ばれ方と言えば、チュニコンっていいの?』

「いい訳ないでしょう! 俺はただ女子中学生の幽霊が見えると言っているだけなのに!!」

『なるほどな』

『なるほどね』

「何を理解したんですか?」

《佐藤さん、マジで言ってる?》

 

 隣にいる満が呆れ顔だ。なぜだ? 俺は事実しか言っていないぞ。それなのにチュニコン……厨二病でロリコンなどと不名誉なあだ名をつけられるなんて、世の中はおかしい。ただ単に女子中学生の幽霊が見えるって言っているだけだぞ?

 

 ……あぁ、なるほどな。

 

『ま、そんなことはどうでもいいわ。呼び方と言えば、アザミはアザミって呼ぶけど、あんたはなんて呼んだらいい? ミッドナイト・サイコナイトって長いのよね』

『ナイトが二つあるからトゥナイトとでも呼ぶか?』

「時間帯変わってるじゃないですか」

 

チュニコン

チュニコン

チュニコンって何ですか?

厨二病でロリコン、略してチュニコンって意味

あぁ

あぁ

 

 続々と俺がチュニコンということに納得いただいているな……。さっき俺も自分で納得してしまったから強く否定はできないが、昨日帝斗から教わったのは、視聴者から雑な扱いを受けたら反応しておけというものだ。要は、飽きられないようにしろということ、らしい。チュニコンというあだ名をもらったのであれば、それが本当の代名詞になるよう立ち回れというありがたいアドバイスをもらった俺は、早速行動に移した。

 

「阿呆め!! 月宮さんとアザミさんがチュニコンと俺を呼ばないのは、俺がチュニコンでないことの何よりの証明! さぁお二人とも、俺に相応しい呼び名を頂戴しようじゃないですか!! ちなみにトゥナイトは嫌です!!」

『別に、厨二病でロリコンだとは思ってるわよ』

『同じく』

《さ、佐藤さん!! 私はそう思ってないからね!! 私は佐藤さんの相棒だし、やらしい目で見られたことなんて一回もないし!!》

「大丈夫だ……気にするな……」

 

チュニコン、敵まみれ

いや、幽霊少女っていう味方がいるらしい

だからチュニコンだっつってんだよ!!

 

もうおしまいだ……同期の女性に厨二病でロリコンだと思われること以上に終わってることがあるのか? ないだろう。俺は今、男として、VTuberとして終わったんだ。あとはもうチュニコンだとバカにされ続けて、なんだかんだで金を稼いで当初の目標は達成するんだ。やったー!!

 

『何落ち込んでんのよ。別に、誰になんて呼ばれてようと、なんて思われてようと気にしなきゃいいじゃない。あんたはミッドナイト・サイコナイトなんでしょ? 誰かに言われてブレるような自分なら、最初っからないのと同じよ』

『推測するに、月宮優姫がチュニコンと呼ばないのは、所謂蔑称のようなもので気に入らないからだろうな。……訂正する。推測と言ったが、ミッドナイト・サイコナイトの初配信が終わった後、チュニコンという呼び名をやめさせたいとDMがきた』

『あんたその晒し癖やめなさいよ!!』

『視聴者はこういうのが好きだという統計がでている。しかしやりすぎはよくないらしいな』

《佐藤さん!! いい人だ!! めちゃくちゃいい人だよ!!》

「あぁ!! びっくりするくらいいい人だ!! 俺、月宮さんが同期でよかった!!」

 

優姫ちゃんがいい女過ぎる

優姫ちゃん、結婚してくれ

誰だ? チュニコンなんていうあだ名つけたやつ

ちょっとー! ミッドナイト・サイコナイトくんが泣いてるじゃん!

そりゃ親からそんな名前つけられたら泣くだろ

 

 月宮さんがいい人すぎて、ヘッドホンが外れないように満と一緒に小躍りする。世界はまだ俺を見放していなかった!! こんなにいい人がいるなんて信じられるか? 俺は信じる。なぜなら俺にとってものすごく都合がいいからだ。

 俺は正直な人間。自分に都合の悪いものは極力信じないが、都合のいいものはとことん信じる。

 

『かといって、別に視聴者の思想も制限するつもりはないから……そうね、蔑称に聞こえないように、ニコ、っていうのはどう?』

『私はなんでもいい。が、二文字なら呼びやすくていいな』

「そ、それは、俺のことを今後も呼んでいただけると言うことですか!?」

『お、キモいな』

《佐藤さん、ティッシュはそこだよ》

「うん……」

 

キモいは草

ニコ、ニコね

ニコって可愛いな

イメージとは合わんけど、優姫ちゃんとアザミんが呼ぶのが可愛い

 

 好感触な新しい呼び名を横目に、キモいと言われて溢れ出た涙を拭く。女性からのキモいがこんなにきついなんて……。こんなに心にきたのは、透華から「先輩、そろそろきついっスよ」と言われた時以来だ。あの時は満が一日中励ましてくれたことを覚えている。まったく、いい相棒だぜ。

 

『それじゃあ、これからニコって呼ぶわね。よろしく、ニコ』

『よろしくな、ニコ』

「え、えへへ、よろしくお願いします……」

『なにニヤついてんのよ』

 

 いや、そういえば今まであだ名をつけてもらったことなんてないなと思って……。蔑称はもらったことあったが。なんか、仲良しって感じで嬉しいな。満なんて泣いてるぞ。俺があだ名もらっただけで。どんだけ苦労かけてるんだ。反省しろよ、俺。

 

『それじゃあ、呼び名も決まったことだし。ユニット名でも決める?』

『私たちの共通点はなんだ?』

「月宮さんは探偵でしょう? で、アザミさんは科学者」

『ニコも探偵よね』

 

探偵だったのかお前!?

他のキャラクターが強烈すぎて、職業が吹っ飛んでた

探偵二人と科学者一人か

普通に探偵事務所のメンバーって言われても違和感ない

 

 探偵事務所のメンバーか。ふむ、そう言われれば違和感がない。科学者っていうところが、科学の発展を表しているようで俺の心を擽る。それに、オカルトと相いれない科学と手を取り合うなんて、めちゃくちゃいいじゃないか!!

 

『探偵事務所のメンバーって言われても違和感ない……確かにね。それなら、○○探偵事務所みたいな感じにする?』

『私はこのあたりのセンスがさっぱりだな』

「それなら、オフィス」

《オフィス失楽園とか言わないでね?》

「なんでもないです」

 

何言おうとしたんだ?

幽霊少女に注意されたんだろ

ロールプレイうまいな

いつか幽霊少女が本当か、検証してほしい

 

『幽霊少女が本当か……あ、そうじゃない。ニコって憑りつかれてるのよね?』

「ん? あぁ、はい。今も隣にいますよ」

『それなら、その子も私たちの一員だから、その子に名前つけてもらうのはどう?』

《佐藤さん。私、月宮さんに惚れた》

「わかる」

 

 相手が相手なら、俺の隣に幽霊がいるというのを嘘だと断定して、バカにする意味を持って言われていると感じるが、月宮さんからはそういうバカにするという意図を感じない。本当に、満を俺たちの一員だと思って言ってくれている。満の存在を信じてくれたのは、帝斗と透華と月宮さんだけだ。

 

『あ、ごめんなさい。アザミもそれでいい?』

『あぁ。なんなら、ニコが配信しているからと喋るのを遠慮していたりするのか? だとすれば、遠慮なく喋ってくれ。幽霊という存在は興味がある。ところで名前は何というんだ? 睡眠や食事は必要なのか? 何年ほど一緒にいる? 数年一緒にいるとして、見た目に変化はあるのか?』

「名前は満で、食事は必要ないですが、俺と感覚を共有することはできます。疲れると言う感覚はあるらしく、睡眠は必要です。一緒にいるのは6年ほどですが、見た目に変化はありません」

《佐藤さん! 名前! 身バレ!》

「身バレだと? お前に興味を示してくれる相手に、誠意で応えない理由などないだろう!!」

《確かにそうだ!!》

 

 アザミさんは「科学的に幽霊の存在はありえない」くらい言われるかなと思いきや、むしろ興味津々だった。俺、もうこの二人のこと大好きだ。満も俺の隣で、《月宮さん、アザミさん、よろしくお願いします!》と元気よく挨拶している。

 

「さて、満。俺たちの一員として、探偵事務所の一員としての最初の仕事だ。俺たちに相応しい素晴らしい名前をつけてくれ!!」

『お願いね、満ちゃん』

『幽霊に名前をつけてもらえるのは、人類史上初じゃないか?』

《責任重大だね……!!》

 

いいかお前ら、幽霊少女は、いる

幽霊少女じゃねぇだろ満ちゃんだろハゲ

誰だ? 幽霊見えるってのが妄言だって言ってたやつ

 

 二人が満を認めてくれたことで、コメント欄も満を認め始めている。

 

 思えば、満には窮屈な思いをさせていた。俺が有名になって、それこそテレビに出るほど有名になっていれば、もしかしたら満も別の形で世間に認めてもらうことができたかもしれない。でも、俺にはその力も地位も名誉もなかった。

 でも、今こうして、満の存在は電子の海を越えて認められている。それだけで、VTuberになってよかったと思えた。

 

「さぁ、聞かせてくれ満。俺たちの名を!!」

《よし、決めた!! ユニット名は──》

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part1

 

19:このライバーがすごい! ID:TLScTtJGf

ニコ「あの、ニッコリ探偵団、らしいです」

優姫ちゃん「いいじゃない。可愛くて」

アザミん「ニッコリか、自信はないが……」

 

直後、アザミんのニッコリが炸裂

 

20:このライバーがすごい! ID:P96E52qgj

>>19

満ちゃん、まさかこのために……?

 

21:このライバーがすごい! ID:7MzgulVD7

中学生のセンスじゃないけど、キャッチーでいいと思いました

 

22:このライバーがすごい! ID:rFnEFyX2v

キツめの性格の優姫ちゃん、ダウナーなアザミん、厨二病でロリコンのニコ、幽霊の満ちゃん

この四人合わせてニッコリ探偵団って可愛くて推せる

 

23:このライバーがすごい! ID:3e137rLnb

満ちゃんの姿が見たい!!

 

24:このライバーがすごい! ID:Q7PEd/5mk

ニコより満ちゃんのが人気出るんじゃないか?

 

25:このライバーがすごい! ID:Swb/pWsIw

いつの時代も、偶像は追いかけたくなるものだしな

 

26:このライバーがすごい! ID:UAKmJxyAD

途中から満ちゃんのセリフ中継機になってたしな、ニコ

 

27:このライバーがすごい! ID:8w/pV8r2q

語尾に「~って満が言ってます」ってなってたな

 

28:このライバーがすごい! ID:k27VfG0Oo

なんか、満ちゃんってマジで本当なのかもな

 

29:このライバーがすごい! ID:KVtiNqAIJ

>>28

本当だっつってんだろ

 

30:このライバーがすごい! ID:0VldBh/h1

>>28

頭おかしいんか? テメェ

 

31:このライバーがすごい! ID:+NIhWCwkP

>>29

>>30

優しい言葉使おうね

 

32:このライバーがすごい! ID:KVtiNqAIJ

>>31

でもおいどんが!!

 

33:このライバーがすごい! ID:0VldBh/h1

>>31

でも某が!!

 

34:このライバーがすごい! ID:Te1t0kuSIO

>>32

>>33

じゃあ悪いのお前らじゃねぇか

 

35:このライバーがすごい! ID:6UDYb6jpj

これからはしばらくソロ配信?

 

36:このライバーがすごい! ID:kHJIC30Re

だろうな

先輩とコラボとかは、大体一か月経った後だし

 

37:このライバーがすごい! ID:AxC6H9Fkg

俺、今日で優姫ちゃんに惚れちまったよ……

 

38:このライバーがすごい! ID:rdn5HtcHB

アザミんの天然で見せる可愛さにキュンです

 

39:このライバーがすごい! ID:HdOvupOLC

ニコのガチ恋勢はいんのかな

 

40:このライバーがすごい! ID:zQ0WDxJXl

ダメな年下が好きなお姉さんとかには好かれそう

 

41:このライバーがすごい! ID:4y3Yr5GdC

でもあいつ、26歳なんだよな……

 

42:このライバーがすごい! ID:dvnPgqap8

まぁ、顔はいいし……

 

43:このライバーがすごい! ID:F5z1at9f6

空しい話をするのはやめよう

 

 

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