稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「我が名はミッドナイト・サイコナイト! またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ」
「満です! こんにちはー!」
色々きな臭いことがあって、翌日。奇紀怪解は予定通り進めると決めた俺は、配信を開始した。配信している時は、いつも俺と満の二人だけだったが、昨日の約束で帝斗と透華も事務所にいる。なんか、授業参観みたいで恥ずかしい。
ボイチェンの性能が向上したか?
まさかニコ、自分の声帯で?
そして、満は実体化している。昨日の検証結果、パラレルワールドの俺ができていたことは大体できることがわかった。満の実体化、ある一定の霊感のある者との念話、近くにいる霊の位置の把握、霊を俺の体に憑依させる、これらは昨日検証してみたらできてしまった。
満を俺に憑依させた時は、溢れ出る力に酔いしれそうになり、すぐに憑依を解除した結果、めちゃくちゃな筋肉痛みたいな痛みに襲われた。今はまったく痛まないから一時的なものらしいが、パラレルワールドの俺の知識が正しければ、『魂の器』が足りていないらしい。要は、俺自身に二人分の魂を受け入れる準備ができていなかったということだ。
まぁ、憑依できたからといって、何かしたいことがあるかと言われればないからいいのだが、憑依はカッコいいからなんとか身に着けたい。
「察しがいいやつもいるな。そう、俺はついに、満の実体化に成功した!!」
「実体化されました!!」
流石に信じない
あまり俺たちを舐めるなよ?
なんでもかんでも信じると思うな
高らかに満の実体化を報告したが、コメント欄は不信なムード。まぁ確かに、満の存在を受け入れてくれていた時点で信じすぎだとは思ったが、流石に実体化を信じるのはハードルが高いか。俺にオカルトの才能がまったくないとしたら、幽霊の実体化に成功したと言われても信じられる自信がない。せいぜいロマンを感じてテンションが上がるくらいだ。
そんなコメント欄を見て、満がしゅんと項垂れる。そしてぽつりと「そうだよね……信じらんないよね……。ちゃんとみんなとお話しできると思ったのにな」と呟いた瞬間。
意味が分からん
実体化が嘘? あんまりふざけるなよ
満ちゃんを悲しませたやつがこの中にいるのか?
掌が完全に裏返った。ノリがいいというかなんというか……。本心では信じていないやつもいるだろうが、信じた方が面白いから掌を返したのだろう。俺の視聴者らしく、楽しみ方というやつをわかっているようだ。
「というわけで、今日も奇紀怪解だ!」
「怖い表現とかも出ちゃうと思うから、苦手な人は気を付けてね!」
ギャグかと思ったらホラーで殴ってくるからな
一期生が出たらギャグだと思ってたけど、前回で否定されたし
俺も、ゲームの演出とは別に、パラレルワールドの記憶というホラーが襲ってくるから二重で怖い。俺にオカルト耐性がなかったら、今頃部屋の隅でブルブル震えるだけのゴミになっていたことだろう。
だが、覚悟はできている。邪神でもなんでも襲ってこい!!
慣れない。
いつもの事務所。いつもの閑古鳥。隣には満。ここまではいつも通りだが、俺の視線の先に、ソファに座って何やらPCを高速で操作しているアザミがいる。いつも通りではない光景だ。
アザミ・フレンジー。突然俺の命を狙ってきた、科学者の女性。その経緯としては、不浄の存在、人類の理解の外にいる生物に脳をいじくられ、対抗しようとするも敗北し、死への恐怖と科学者としての挫折、そして不浄の存在との遭遇から精神が狂ってしまって、その不浄の存在を寄せ付けるであろう俺の殺害に踏み込んだらしい。
アザミんが可哀そうすぎる
救ってやれ、ニコ
救っただろ
今は落ち着いていて、なんでも「ミッドナイト・サイコナイトがシゲキ的だからだろうな」らしい。どういうことだ? あの三人組、クールとかオシャレとかシゲキ的とかよく言うけど、本当に意味が分からない。恐らく、不浄の存在によって来した精神異常を、なんとかできる力が俺にあるということだと思うが……。
「なんだ、そんなに見て」
「ん、あぁ悪い。何をしているのかと思ってな」
アザミはシゲキに並ぶと言ってもいい科学者だ。シゲキはどちらかと言えば冒涜的寄りだからブレーキがないというだけで、頭脳自体はほぼ同じだと思う。科学者としてシゲキの方が優れているように見えるのは、シゲキには躊躇がないからだ。倫理観というものを完全に捨てきることができるから、あいつの科学には停滞がない。
……あいつ、精神異常がありながら、それで安定している化け物なんじゃないか?
「ふむ……時に所長。好きな衣装はあるか?」
「所長、所長か……」
「今まで一人だったから、所長って呼ばれるの嬉しいんだ」
「嬉しがってくれるのはいいが、質問には答えてほしいな」
仕方がないだろう! 俺はずっと所長だったが、そう呼んでくれるやつはいなかったんだから! 人員募集しようにも金がないし……。
そういや事務所っていいつつずっとニコ一人なのか
ニコと満ちゃんの二人な
ニコと満ちゃんは一心同体だから一人な
というか、なんだ? 好きな衣装? どういう意味で聞いているんだ? もしかして、俺は今、所長としての器を試されているのか?
考えろ、今アザミが好きな衣装を聞いてきた意味。今の俺の服装があまりにもダサくて、それを遠回しに指摘してきたのか? いや、俺の服装はクールでカッコいいからそれは違う。イベリスも「あら、オシャレね!」と褒めてくれた。イベリスは頭がおかしいが、オシャレの感覚だけは信じていい。
だとしたら、なん……。
「ハロウィンか!!!!」
「そうだが、そんなに声を張り上げるほど好きなのか?」
「渋谷ハロウィン見て、『こんなに人がいるのに、なぜ依頼がこないんだ?』って悲しがってたのに」
「俺の哀愁をバラす必要あるか?」
ハロウィンか、縁ないわ
大体のやつが縁ないだろ
そう、ハロウィンだ。10月31日、子どもたちが魔女やお化けの仮装をして、お菓子をもらうお祭り。日本ではなぜか仮装をして街を練り歩く百鬼夜行のようなイベントになってしまっている。国ごとに文化の違いがあって当然だからそれはいいが、俺からすればハロウィンを楽しむだけのイベントだと勘違いしていることが気に入らない。
ハロウィンの仮装は、悪霊から身を守るためにするものだ。古くでは死後の世界との扉が開くと言われていて、実際にハロウィンは普段よりも霊が増える。だから、オカルト専門である俺に依頼がきてもよくないか? ハロウィンが原因で霊障が起きたとかそういうの。いや、ないのが一番だ。ないのが一番とはいえ、まったくないと俺が死んでしまう。金がなくて。
「ん? それで、なぜ好きな衣装を聞いてきたんだ?」
「どうせ、お前はハロウィンのような浮かれたイベントは経験したことがないだろう。それなら、私が仮装でもしようかと思ってな」
「何……?」
「何……? じゃないよ。何想像したの?」
「いや……」
「ん?」
「なにも……」
べっ、別に、エッチな仮装をしてもらおうとかそういうことを考えたわけではない。そりゃあ俺も男だ。一瞬でもよぎらなかったと言えば嘘になる。アザミは美人だし、向こうからの提案だし。ただ、だからといってアザミを性的な目で見たくはない。アザミは同じ事務所の仲間であり、頼りになる頭脳だ。それに、アザミは科学者としての姿が一番似合っている。
アザミんの仮装を見せろ!!
本当にどうしようもない男だな、ニコ
あんまりふざけるなよ?
「遠慮しておく」
「そうか。私には魅力がないか」
「いっ、いやっ、そういうことを言っているんじゃない! 俺がそういう目で見たくないというだけだ! それに、アザミには科学者としての姿が一番似合っている」
「なるほど、この姿に興奮するということか」
「違う!!」
「そ、そうなんだ……」
「満、引くな! 違うと言っているだろう!!」
ちなみに俺はその姿に興奮します
ワイも
某も
おいどんも
キモすぎるな、コメント欄
冗談だ、と言ってアザミが笑い、またパソコンに向かい始めた。まったく、もしかして俺の性欲を引き出し、満にドン引きさせ、俺と満の仲を引き裂こうとしているのか? 甘いな、俺たちはその程度で断ち切られるほど薄い絆ではない。
……とはいえ、よかった。今ので笑えるなら、本当に精神的に安定しているんだろう。俺の何がどう影響して安定しているのかはわからないが、笑えているならそれでいい。
ところで、あの窓に張り付いている唐傘小蔵とか入道とかろくろ首とかの妖怪オンパレードはなんだ?
「あ、ちなみにだが、なんか近くに人以外の生体反応があるぞ」
「あぁ、あの窓の外にいるどう見ても妖怪の集団か? もっと早く言ってくれ!!!!」
「逃げろー!!」
アザミの手を引いて、アザミの時と同じように事務所を出て、バイクに乗る。そして聞こえる妖怪たちの大爆笑。どうなってるんだこの街は!! というか俺の周りは!! いきなり妖怪大戦争か!? 人類代表、俺!? ふざけるなよ!!
「案外広い背中だな」
「うるさい!! お前が細くて小さいだけだろう!! ちゃんと飯を食え!!」
「問題ない。必要な栄養は摂取している」
「そういうことじゃない! いいか、食事というものは必要な栄養を摂取するだけではなく、楽しむものであって」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
そうだった! クソ、なんで俺が妖怪に追われなければならないんだ! 不浄の存在を引き寄せるとアザミは言っていたが、これもその一部か!? 一部なんだろうな!
だとしても、なんでいきなり? 今まではハロウィンだとしても、何かに襲われるようなことはなかったのに。もしかして、最近の事件のせいで俺が不浄の存在界隈で有名になっているのか?
「アザミ! あいつらを蹴散らす兵器はないのか!」
「生憎作成途中だな」
「あ! あれは!? バイクにいつの間にか搭載されてたミサイル!」
「シゲキの発明品が近くにあるのが我慢ならなかったから、取り除いた」
「ありがたいけど、この場においてはありがたくないな!!」
このままでは、俺が妖怪を引き連れている百鬼夜行の親玉かと思われてしまう! 俺の身元を辿ればオカルト専門探偵事務所の所長だし、なんか百鬼夜行やりそうと思われても仕方がない!
そう思われないようにするためには、背後の妖怪どもから逃げ切るか、撃退するか。でも妖怪ってなんか邪神とか悪霊とかと違って可愛いイメージがあるし、もしかしたら遊びたいだけかもしれないから、暴力を働くのは少し躊躇して、
「ん? 目の前、なんかいないか?」
「人だな。安心しろ、このまま進んでも轢かない」
「轢かないって言ったって見られたらマズくない!? や、でも普通の人に見えるのかな?」
「見えなかったら俺はただただ法定速度を無視して爆走する違反者になるじゃないか!!」
「法律なんて今更だろう」
確かに。
いや、でもどちらにせよ妖怪がいることに変わりはない。見える見えないは置いておいて、あの人をそのまま放置してしまったら何があるかわからない。拾っていくしかない、か。
「そこの人!! 俺の後ろから大量の妖怪がきている! 一緒に逃げるぞ!」
「ご心配なさらず」
その男は、狩衣を着ていた。長い髪を後ろで一つにまとめ、胡散臭さの象徴である糸目ににやついた表情。掌を俺、いや、正しくは妖怪に向け、なにやらぶつぶつ呟いている。
やっぱり出てきた
ゲームの世界観とマッチしてるしな
その直後、強烈なオカルト的な力が溢れ出し、それは青い色の砲撃という形となって、妖怪どもを薙ぎ払った。思わず減速して振り向いてみれば、妖怪どもが跡形もなく消えている。
「おぉ、研究が捗りそうだな」
「嬉しそうだな、アザミ。確実に厄介ごとだぞ」
「まぁ、今更でしょ。厄介ごとなんて」
「ふぅ、これでよし! すみませんそこの方。少しお話聞いてもいいですか?」
第五怪 ハロウィン・パラダイス
男の名は安倍聖麗。現代最強の陰陽師。
今年のハロウィンは妖怪で溢れかえってしまうそうで、聖麗は一人で妖怪を探しながら祓っていた。
しかし、不浄の存在を寄せ付けるミッドナイト・サイコナイトは、妖怪も引き寄せる。
「協力してくれませんか? 餌として!」
言い方はともかく、妖怪はどうにかするべきだと思ったミッドナイト・サイコナイトは、渋々承諾する。
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ニッコリ探偵団 視聴者支部 part9
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【朗報】満ちゃん、実体化
180:このライバーがすごい! ID:MPktw4R3q
ニコならいつかやるとは思ってた
181:このライバーがすごい! ID:/M4EDclvK
満ちゃんが実体化したっていうことは、満ちゃんに色んな人が会いたがるから
オフコラボってこと!?
182:このライバーがすごい! ID:ATsjDXrgP
ニッコリ探偵団で集まってくれ、頼む
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明星姉妹とも会ってほしいな
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聖麗とは会ってほしくないな
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>>184
元々見える側だったしいいだろ
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あとはシゲキからも逃げてほしいな
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もう事務所に行こうとしてるんじゃないか?
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既に研究の計画立ててそう
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ニコ、死んでも守れ
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ニコ、死ぬな
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ニコは何があっても死なない信頼がある
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ギャグマンガのキャラって死ぬけど死なないし、そういうことだろ
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ていうかこれ、将来的に満ちゃん3D化ある?
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ニコより先に3D化してくれ
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ニコと一緒にだろ
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リアルに浮いてんのかな……
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3D化したときのお楽しみだな