稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる 作:酉柄レイム
「ソロ配信って、何をすればいいんだ……?」
《さぁ……?》
オフィス失楽園。気合いを入れて購入した配信機材の前で首を傾げているのは、当然ミッドナイト・サイコナイトこと俺と、俺に憑りついている満。
首を傾げている理由は、ソロ配信で何をすればいいのか、皆目見当がつかないからだ。
デビュー配信は「なんか自己紹介とかしとけばいいか」ってふんわり始めてふんわり終わったし、同期コラボも流れに身を任せていたらなんか終わってた。
しかし、ソロ配信は違う。デビュー配信のようにやることが決まっているわけでもなく、同期コラボのように仕切ってくれる人もいない。初めから自分で何をするか考えなければならない。
そして俺は、ソロ配信一回目を始める前に万策尽きていた。
《うーん、他の人のソロ配信見てみるとかは?》
「それだ!! 流石だな満!!」
《えへへ》
可愛らしくも誇らしげに胸を張る満の提案に乗り、WeTubeから先輩方のアーカイブを覗かせていただく。
《雑談、ゲーム……大体この二つだね》
「歌もあるな。俺の美声を世界に届けてしまったら、たちまち歌手デビューしてしまう。控えておこう」
《戯言配信とか向いてるんじゃない?》
「それはさっきの俺の発言が戯言だって言いたいのか?」
確認のために満を見てみれば、当たり前のように頷かれた。クソっ、お前も知ってるだろ? 「先輩って、顔と声と歌だけはいいっスよね」って透華も褒めてくれたんだぞ? 帝斗だって「佐藤って顔と声と歌だけはいいよな」って褒めてくれたし。あれ? 俺なんか貶されてないか?
《でも、雑談は向いてると思うよ? 佐藤さんって口がよく回るし、言い方は悪いけど舐められやすいじゃん》
「舐められやすいののどこがいいんだ?」
《舐められやすいってことは、それだけ身近に感じやすいってことじゃん! それなら、みんなとお話できる雑談配信はうってつけだと思わない?》
「流石満!!」
《えへへ》
なんて誇らしいんだ。俺の相棒がここまで天才だったとは。帝斗と透華なんて、さっき「ソロ配信何をしたらいいかわからない!!」って縋り付……相談したら、二人から『何やっても面白くなるって信じてる』ってだけきたし。ふふふ。
《っていうか、こういうのってマネージャーさんと相談するものなんじゃないの?》
「人見知り」
《なんて情けない単語……》
「ほっとけ!!」
企業所属だからか、ありがたいことにマネージャーさんがついてくれている。かといって、所属したばかりの俺に何か仕事があるわけもなく、マネージャーさんを暇にさせてしまっている。だからこそ、VTuberとしてやっていけるようになるために、配信の相談とか色々マネージャーさんにするものだとは思うが、緊張して無理だ。俺に社会性が備わっていたら、今頃ちゃんと働いてそこそこいい暮らしをしている。
「しかし、ただ雑談をするってだけじゃあ目的がなくてだらだらしてしまいそうだな」
《確かに。それじゃあどうする……?》
「よし。帝斗と透華に聞いてみよう」
《もうちょっと自分で考える努力しようよ》
「自分で考えた結果、俺は依頼のないオカルト事務所の所長をやってるんだぞ? 考えない方がいいだろう」
《ものすごい説得力……》
哀れみの目を向けてくる満は見なかったことにして、dicecodeを確認する。普段のアカウントから帝斗がオンラインになっているのを見て、すぐに通話をかけた。数回のコール音の後、「うぃ」という帝斗の声が聞こえてくる。
「帝斗。雑談配信をしようと思うんだが、何か目的がほしいと思ってな。何かいい案はないか?」
『毎回悩むくらいなら、何をしてほしいかって視聴者に聞くとか、視聴者と一緒に企画考えるとかがいいんじゃね?』
「それだ!! ありがとう!!」
一瞬ですばらしいアイデアをくれた帝斗にお礼を言って、すぐに通話を切る。あいつは在宅ワークだったはずだが、平日にあまり邪魔をするのも悪いからな。
《要件だけ言ってさよならって、西園寺さんは道具なの?》
「帝斗が道具なわけないだろう? おかしなことを言うなぁ」
《道具じゃないってことはわかってるんだよ》
それならなんで聞いたんだ? 満がおかしい。どうやら俺と一緒にいすぎてしまったようだ。帝斗も透華も俺と一緒にいたら頭がおかしくなってダメ人間になるって言ってたし。さっきから俺の脳内の登場人物、帝斗と透華と満しかいないな。交友関係が狭すぎて涙がちょちょぎれた。
しかし!! 色んな人(ただし、『色んな』の範囲は激狭とする)に助けを求めているだけじゃない。俺も俺で勉強はしている!
「満、知っているか? マカロンという匿名メッセージをもらえるサービスがあるんだ」
《前に私が教えたやつだね》
違った。勉強したつもりになってただけだった。普通に満の知識だった。
マカロン。匿名メッセージをもらえるサービスであり、ネガティブな内容はAIが弾いてくれるというすばらしいサービス。先輩方がこのサービスを利用し、雑談のネタにしているのをよく見かける。
「一つ、思いついたことがあってな」
《佐藤さんにしては珍しい》
「俺にだって思いつくことくらいあるだろうが!」
人を自分では何もできない無能みたいに言いやがって! 相棒だからって言っていいことと悪いことがある! ちなみに今のはギリセーフだ。よかったな、俺の相棒で。他人だったらブチギレて喧嘩が勃発し、ボコボコに負けて俺が手下になるところだった。危なかった。
「何か目的がないとダラダラしてしまうのは、ゲームでも一緒だ。ただ単にゲームやってクリアするだけなら誰にでもできる。せっかく配信という形をとるのであれば、何かもう一つ要素を乗せた方が面白いと思わないか?」
《なるほど。つまりチャレンジ企画みたいな感じで、例えば何時間以内にクリアするとかそういうのを視聴者に送ってもらって、なおかつそれを達成できなかったときの罰ゲームも募集するってことだね?》
「相棒すぎだろ」
まさに俺が言おうとしていたことをそのまま言われてしまった。満と一緒にいて早数年、満が相棒として完成されすぎてしまっている。思考を読むことはできないはずなのに……。
「とまぁ、そういうわけだ。今日は説明と募集だけしてしまって、明日『第一回、ミッドナイト・サイコチャレンジ』開催だ!」
《佐藤さんって、ネーミングセンスないよね》
「ほっとけ!!」
『我が名はニッコリ探偵団所属、ミッドナイト・サイコナイト! 深夜の狂騎士。またの名をニコだ』
ニッコリ探偵団とニコっていうのを大事にしてる感じがして微笑ましい
満ちゃんを出せ!
出せ! 満ちゃんを
同期コラボから一日置いての佐藤の配信。チャレンジ企画的なものを罰ゲームと一緒に募集していたから、早速それを消化しようっていうことだろう。よかった。あいつ、何か目的とかがないと普通にサボるからな。
『今日お前たちにきてもらったのは他でもない。今ここに、『第一回、ミッドナイト・サイコチャレンジ』の開催を宣言する!!』
罰ゲームを視聴者に任せるとろくなことにならないのに……
むしろひどい目に遭うのが似合う気がするからいいんじゃないか?
『随分盛り上がっているみたいだな』
そんなに盛り上がってないだろ。
『Σでの募集時にも説明を載せたが、内容は簡単だ。チャレンジ企画、そしてそれを達成できなかった時の罰ゲームを募集し、それを実行するだけのもの! しかし、すまんな。せっかく罰ゲームを考えてもらったのに、俺が天才過ぎるがあまり無駄になってしまう』
フラグ
フラグ
カエル
それはフロッグ
佐藤は、楽しいことを考えるのが得意だ。なにせ、友だちがめちゃくちゃ少なくて、楽しいことを考えていないとやっていられなかったからな。チャレンジ企画は全員がわかりやすい目標で、なおかつ『達成できなかったら』っていうラインを引いておくことで、間延びすることを避けている。なんなら、罰ゲーム配信もできるから、『配信で何をすればいいのかわからない』をクリアするにはうってつけの企画だ。
『まぁまずはマカロンありがとう。結構な数をもらって素直に嬉しい。罰ゲームが圧倒的に多かったのが気になるところだが』
多分、『罰ゲームを5回受ける』みたいな罰ゲームあるぞ
まぁ、そういうのは事前に目を通して抜いてるだろ
『事前に目を通して抜いている? ふっ、甘いな。せっかくくれたマカロンだ。礼儀を持って食さねば無礼というもの。俺はどんなものであっても、真正面から受け止めることを約束しよう! では行くぞ!』
声を張り、画面に二つのマカロンが表示される。
エデンズリングの最初の中ボスを1時間以内に倒す
エデンズリングをクリアするまで終わらない配信
『おあつらえ向きのチャレンジと罰ゲームだ! というかなんだと? 1時間以内にぃ? 中ボスぅ? 俺を舐めているのか! 俺はミッドナイト・サイコナイト、深夜の狂騎士だぞ! 1時間と言わず、10分でクリアしてくれる!』
フラグ
フラグ
フラグ
数時間後、佐藤はエデンズリングをクリアするまで終わらない配信を開始した。
ニッコリ探偵団 視聴者支部 part1
237:このライバーがすごい! ID:vcDw0BCMg
今日のニッコリ探偵団
優姫ちゃん
推理ゲーで無類の推理力を発揮
どや顔が可愛い
アザミん
満ちゃんの声をどうにかして音声化できないか、視聴者と徹底談義
ニコ
チャレンジ失敗
エデンズリングをクリアするまで終わらない配信を開始
238:このライバーがすごい! ID:PxsLjAr6U
色々様子がおかしい
239:このライバーがすごい! ID:iBV7PmmIt
>>237
チャレンジ失敗って?
240:このライバーがすごい! ID:0onkfcHjH
>>239
チャレンジする内容と達成できなかったときの罰ゲームを募集した
今回はエデンズリングの最初の中ボスを1時間以内に倒すってやつだった
241:このライバーがすごい! ID:WogpvRBs7
ゲーム開始時
「めちゃくちゃ景色綺麗だぞ! 最近のゲームすごいな!」
中ボス(ウッドガード発見)
「お! あいつか! 見ていろお前ら、今すぐあいつを我が剣の錆にしてやる!」
初戦後
「錆にされた」
30分後
「気づいたぞ! 距離を取っての大ぶりの攻撃、これだけに集中し反撃すれば、必ず勝てる!」
31分後
「でも、全部見切って勝った方がカッコいいな……」
55分後
「もう少しで倒せたのに!!!!!」
1時間後
「WeTubeって配信時間の制限あったか?」
242:このライバーがすごい! ID:z/PQv5tan
1時間経ってすぐに時間制限の確認は潔すぎる
243:このライバーがすごい! ID:SFyrjr2U/
でも普通にセンスあったよな
244:このライバーがすごい! ID:MZtl/ROfV
本人曰く、「一人でやるゲーム」は得意らしい
245:このライバーがすごい! ID:WI4nXiXS3
あ……
246:このライバーがすごい! ID:896VqX1/e
あ……
247:このライバーがすごい! ID:T9TsOEhmv
おい! 優姫ちゃんとアザミんがエデンズリング始めたぞ!
248:このライバーがすごい! ID:q0Ko22Ose
ボイチャ集合したぞ!
249:このライバーがすごい! ID:asESfpgjq
優姫ちゃん「あんたのミスは私のミスだし」
アザミん「ん? さっきちょうど一緒にやりたかったって言ってなかったか?」
ニコ「月宮さん……!」
優姫ちゃん「うっさいわね、ザコ!!」
250:このライバーがすごい! ID:VPhYRTk03
かわいい
251:このライバーがすごい! ID:a0uF/DW9Q
かわいい
252:このライバーがすごい! ID:YjgKjwizR
アザミんの晒し癖助かる
253:このライバーがすごい! ID:dFQvJ43Sl
お前ら、こんなとこ張り付いてないで配信に集中しろ!
254:このライバーがすごい! ID:TaiczjB3P
優姫ちゃんとアザミんがウッドガードと戦ってる間はここにいようかなって
255:このライバーがすごい! ID:xOMVOM5NH
あ
256:このライバーがすごい! ID:8z/fPlxgp
あ
257:このライバーがすごい! ID:c4+hiPKtz
あ
258:このライバーがすごい! ID:azOXGbC4H
アザミん「慣れた。倒したぞ」
優姫ちゃん「えっ、はやっ!」
ニコ「なんで!? 俺もさっき倒したばっかりですよ!?」
アザミん「相手の動きを覚えれば、あとは避けるだけだろう」
259:このライバーがすごい! ID:nsHT/UCcJ
>>258
漫画の天才キャラみたいなこと言ってる……
260:このライバーがすごい! ID:CfFo+NQfw
ちなみにアザミん、VTuberやるからってとりあえずゲーム買ってただけで、ほとんどやったことなかったらしい
261:このライバーがすごい! ID:rjiwX+Ihv
天才じゃん
262:このライバーがすごい! ID:TlC0soYjr
天才だぞ
263:このライバーがすごい! ID:QEuyvxbeD
優姫ちゃん「この距離ならその攻撃で、この距離なら……うん、掴んだ」
ニコ「待ってください。お願いですから倒さないで」
優姫ちゃん「倒したわ! 合流できるのってまだ先なの?」
ニコ「」
アザミん「ふふ」
264:このライバーがすごい! ID:AGMVxEsCJ
アザミん、ソロ配信だとほとんど笑わないけど、ニコと優姫ちゃんといるとよく笑うよな
265:このライバーがすごい! ID:NLeVAtZxk
かわいい
266:このライバーがすごい! ID:R2d+IYPi4
かわいい
267:このライバーがすごい! ID:R2d+IYPi4
ニコはかわいそう