稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

59 / 227
第57話 日常

「さて、お前たちに集まってもらったのは他でもない」

「星菜ちゃんと遊園地に行くからどうしようみたいなことだろ?」

「いつも通りでいいっスよ。はいおしまい」

 

 神妙な面持ちで切り出した俺に対し、帝斗と透華が冷たく返す。俺たちの友情はここまでか……。

 

 星菜さんと明さんのお披露目配信が終わり、翌日。あの日のことは夢だったと思いたかったがどうやら現実らしく、『遊園地いつ行きます?』と星菜さんからDMが届いていて、明さんからは『もちろん私も行くよ。ごめんね』と届いていた。悪いと思うならあの時に止めておいてほしい。

 

 幸いだったのは、流石に遊園地は炎上するだろう……という俺の心配が無用だったことだろう。炎上マカロン、所謂焦げマカロンが届くかと思いきや、そんなものはほとんどなく……とはいってもやはりいくつかはあったが、目立った数ではない。なぜかと首を傾げる俺に答えたのアザミと優姫さんだった。

 

ミッドナイト・サイコナイト

どうしよう

アザミ・フレンジー

お前はキャラすぎるから大丈夫だと言っているだろう

月宮 優姫

あんた自身が星菜ちゃんに対してどうこう思ってるなら別だけど、そうじゃないんでしょ?

堂々としてなさいよ

 

 アザミからは論理がわからない励ましを、月宮さんからは男前な励ましをもらった。この後、『ニコがなぜ炎上しにくいのか』というタイトルでまとめられた論文がアザミから送り付けられてきて、読み終わったのが今日の朝。途中から飽きたのか知らないが、『そもそもプロエジェの誰かを不当に燃やせば、報復が怖い』と結論づけられていた。

 確かに、調査力のあるルイスと財力のあるイベリス、そして頭脳のシゲキが揃っていれば、大抵の人間は黙らされそうだ。よかった、俺が『project:eden』に所属していて。

 

 なんだかんだあって、星菜さんと遊園地に行くこと自体は一応前向きに考えている。しかし、問題なのは致命的に話が合わなさそうということだ。

 俺が星菜さんと同い年で、星菜さんと同じクラスだったとしよう。そうなったとすれば、俺は星菜さんと挨拶を交わすだけの存在だ。しかもその時の俺は、「おはよう!」と元気に挨拶してもらったのにも関わらず、「あっ、はっ、よっ」と突然挨拶されたことに挙動不審になり、音を漏らすだけのゴミになっている。漏らした音が音だから『歌舞伎モノマネ』と裏で呼ばれるまでがセットだ。

 

 つまり、それほど人間としてのランクがかけ離れているということだ。一緒に配信するとなれば視聴者がいるからなんとか話すことはできるが、配信でもなんでもなく遊びに行くとなれば話は別。あまりにも話が合わなさ過ぎて、帰った後の配信で星菜さんが一切その話題に触れず、視聴者が全員察してあまりにも俺が哀れに思い、慰めにきてくれる未来が見える。

 

 だというのに、帝斗と透華は一言で俺を切り捨てた。あんまりだ……!!

 

「もういい! 満、お前だけが頼りだ! 俺が星菜さんから『うわ、大人のくせに情けない』と思われないためにはどうすればいい!?」

「もう思われてるでしょ」

「星菜さんだけは思ってないはずだ!」

「言い切れないところが悲しいよな」

「まぁ情けないっスからね」

 

 俺は情けない。俺だって自分を客観視できないわけじゃないんだ。どこからどう見たって情けない。

 ただ、星菜さんは底抜けにいい子だ。俺がどれだけ情けない姿を晒そうと、『情けない』ではなく『ニコさんらしい』と捉えてくれる。それは『情けない』と思っていることと同じだが、それは意味として同じというだけで、捉え方としては別。『情けない』はマイナスだが、『ニコさんらしい』はプラス感情だ。

 

「明さんもきてくれるらしいが……年下の女性だぞ? 年上である俺が頼れる存在であるべきだろう?」

「んー、デートとかならそうかもしんないけど、星菜ちゃんと明さんは、佐藤さんにそんなの求めてないと思うよ?」

「佐藤と仲良くなりたいって思って誘ってくれたんだろ? だったらいつも通りの佐藤でいいだろ。変に気ぃ張らずによ」

「そうっスよ。変に気を張ってたら、逆に意識しすぎててキモいっス」

「んん、確かにな……。いや、しかし」

「もー、ごちゃごちゃうるさいなぁ。心配しなくても、佐藤さんはカッコいい時はカッコいいし、頼りになる時はちゃんと頼りになるから。大丈夫だよ」

 

 涙。

 

 これだけ言ってくれるなら、俺は大丈夫なんだろう。そうだな、星菜さんは俺と仲良くなりたいと思って誘ってくれたんだ。三人の言う通り、気を張らないのが一番だ。それに、変な意識を持ってしまっていては、星菜さんに失礼だ。

 注意しておくのは、星菜さんが俺と遊んだことを配信で話した時、炎上してしまいかねないような行動をしないことだ。俺、今までなんとかなってきてるけど、大体周りの人が優しいからなんとかなってるだけだからな。

 

「よし、なら満。せっかく星菜さんと遊びに行くんだ。服でも買いに行くか?」

「いいの? やった! 今まではお金なかったのに、今はあるもんね!」

「最後の言葉いるか?」

 

 ごめーん! とニコニコしながら謝る満が可愛かったから許した。

 

 

 

 

 

 大型商業施設『デイフール』。ブティックやゲームセンター、レストランなどが一体となった9階建ての施設。

 透華と帝斗を誘ったが、帝斗が「悪い、この後仕事なんだ」と言って、寂しく思いながらも満と透華と一緒にデイフールへやってきた。

 

 今日は日曜日であり、客も多い。そういえば日曜日なのに仕事なのか……。大変だなぁ帝斗は。あれほど有能な男なら大忙しになるのも無理はないが、自分の時間を大切にしてほしい。俺が帝斗の時間を奪っていそうな気もしなくもないが、それは置いておこう。

 

「というか満、歩くの上手になったな」

「赤ちゃんみたいに言わないでよ! いっつも浮いてるから仕方ないじゃん」

「興奮していきなり飛び上がるとかはやめてね」

「透華まで……これは、私が立派なレディっていうところを見せないといけないみたいだね」

「立派なレディ(笑)」

 

 足を踏まれた。痛い! クソ、ちょっとからかっただけじゃないか!

 やれやれ、そういうところが子どもだというんだ。立派なレディであれば余裕で俺の煽りをかわしているはずだからな。レディというのは透華や月宮さんのような人のことを言うんだ。ちなみにアザミは自由気ままな小動物(ただし殺傷能力アリ)みたいな感じがして、レディではあるが少し違うような気もしている。

 

「先輩。ちょっと大人げないっスよ」

「ちょっとどころじゃないし。いちいち煽ってくる佐藤さんの方がよっぽど子どもじゃん」

「何!? 俺のどこが子どもなんだ! 言ってみろ!」

「そうやってすぐムキになるところ」

 

 俺、敗北。せめて負けたことをなかったことにしようとして、「さて、どの店がいい?」と促せば、満は「えーっとね、あそこ!」と元気いっぱいに駆け出していった。

 

「ほら、子どもじゃないか」

「どっちも子どもっぽくてかわいいっスよ」

「透華。俺はれっきとした成人男性であり、子どもっぽさからはかけ離れている。立派な大人なんだ。見ろ、この身長」

「大人をアピールする初手が身長の時点で、もう子どもっぽいんスけど」

 

 俺、敗北。もう敗北を隠すことは不可能だ。俺は心の中で涙しながら、満を追って店に突入した。なぜ俺の周りは正論を叩きつけてくるやつらばかりなんだ! 正論で叩き潰されるような言動行動をするのが悪い? それはそうだな。顧みよう。

 

 満は元気いっぱいで動きやすく、明るめな服装を好んでいる。『実は女の子らしい服装が好き』とか漫画アニメでよくあるそういうことも一切なく、見た目よりも動きやすさ重視だ。最悪一年中ジャージでいいとまで言い出しそうだな。

 

「満、スカート穿かない?」

「穿かない! 飛んだ時パンツ見えちゃうし」

「レギンスかスパッツを穿けばいいんじゃないか? 満の印象にも合う」

「んん……ひらひらしてるの落ち着かないし、どっか引っかけちゃいそうで動きにくいんだよねー」

「そっか。かわいいのに、残念」

「うっ……は、穿いてあげなくもないけど」

「ほんと?」

 

 満は透華に弱い。満の責任ではないのに、数年間親友と離れ離れになってしまったという負い目と、シンプルに満は透華が女の子として完璧であり、一番可愛いと思っているというのもある。

透華が持っているのはデニム生地の、なんかひらひらしたスカートを見て、あれなんて言うんだ? フレア? もう知らん!!!!! とにかく、満の印象とは合う。

 

「これだけだとなんだし、トップスも見に行こっか」

「スパッツ!」

「脚出してみない?」

「スパッツ!」

「ふふ、ごめんね。そっち先にしよっか」

 

 ……この、なんだろうな。女の子がきゃっきゃし始めた瞬間の男の疎外感。当たり前みたいに「佐藤さん、行こ!」と満が言ってくれなければ、しれっと空気のように消えていくところだった。満はなんていい子なんだ……!

 

「ていうか、佐藤さんつまんなくない? 男の人ってこういうの嫌がるイメージなんだけど」

「ん? 満が更に可愛くなるのに、つまらないことなどないだろう。どちらかと言えば楽しいな」

「んー? 佐藤さん困るなぁ。いくら私が美少女だからって、年齢ってやつがあるし」

「おい透華。今日食べたものの中に毒が混じっている可能性がある。満がおかしなことを言い始めた」

「事態は深刻っスね……」

「ちょっとした冗談にここまでひどいこと言われることある?」

 

 少し機嫌が悪くなった満を見て、透華と二人で笑っていると、満が俺に向かって「そんなんだから童貞で甲斐性なしなんだよ」と言って、俺に背を向けて走っていった。貴様!!!!!!

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part14

 

227:このライバーがすごい! ID:5nu5xULU6

そういえば、そろそろproject:SPの結果発表じゃないか?

 

228:このライバーがすごい! ID:4954BwrwN

視聴回数だけ見ると、3D効果かエデスクが一番多いな

 

229:このライバーがすごい! ID:bHbX24TND

>>228

よく考えたら新人二人がメインなのに一番回ってるってすごくね?

 

230:このライバーがすごい! ID:ter9VyuX8

>>229

むしろ、それで注目されて、ニコが面白くて星菜ちゃんと満ちゃんが可愛くて、

更に3D効果で視聴回数回ってると思う

 

231:このライバーがすごい! ID:qo+FSV1li

1回目ゲスト:姉御、マリー(授業内容「ニコと星菜」)

2回目ゲスト:リニス(授業内容「エンターテイメント」)

3回目ゲスト:イベリス(授業内容「オシャレ」)

4回目   :授業総括、試験

なお、星菜ちゃんはエンターテイメントとオシャレの概念が理解できず、試験はダメダメ

 

232:このライバーがすごい! ID:+dZ9PTN2x

>>231

むしろ、ニコと満ちゃんはなんでそこそこできてたんだ?

 

233:このライバーがすごい! ID:/EWe6zZ12

>>232

ニコはまだわかる

満ちゃんはニコに憑いてるから、ある程度似てくるんじゃね?

 

234:このライバーがすごい! ID:vsu3ZZ5/F

>>232

むしろ全員いけるかと思ってた

星菜ちゃんは全然常識人だった

 

235:このライバーがすごい! ID:C6e+0B2HG

>>234

ニコと満ちゃんも常識人だけど、理からは外れてるしなぁ……

 

236:このライバーがすごい! ID:UrcLSVhAt

3Dで番組化されると予想

 

237:このライバーがすごい! ID:N4N+E0Qnb

>>236

満ちゃんが幽霊だってことを考えると、学校で授業っていうだけで泣ける

 

238:このライバーがすごい! ID:RiN9V/pD6

>>237

お前が泣く前にニコが泣くぞ

 

239:このライバーがすごい! ID:+WbGorGzf

なんか、年下の子と絡んでるニコって、お兄さん感あっていいんですよね……

 

240:このライバーがすごい! ID:CEv/4dYBf

>>239

まさかとは思うが、ニコにガチ恋してるわけじゃないよな?

 

241:このライバーがすごい! ID:53iY/KssW

そんなやついるわけないだろ

 

242:このライバーがすごい! ID:vrv57K7+q

マジでふざけんなよ

 

243:このライバーがすごい! ID:ngqyJ/VJH

ニコにガチ恋勢がいてほしくない勢ってどんな勢力だよ

 

244:このライバーがすごい! ID:QhouKbJ4u

ニコはギャグキャラであるべきだ

 

245:このライバーがすごい! ID:OSFL3SuQz

それはそれとして、結婚したらマジで幸せになってほしい

 

246:このライバーがすごい! ID:njPQSsrXo

俺たちが認知しない範囲で結婚してほしい

 

247:このライバーがすごい! ID:1qacVtL5x

ふざけんな、祝わせろ!!

 

248:このライバーがすごい! ID:6fjPf9kDm

もしかして、ニコの視聴者って厄介か?

 

249:このライバーがすごい! ID:rYppqAtLB

>>248

VTuberの視聴者なんて、分別持ってるか持ってないかってだけで、大体厄介だろ

 

250:このライバーがすごい! ID:LVmRvXfyM

ニコが結婚したとして、将来子どもが生まれるだろ

それで、その子は満ちゃんをお姉ちゃんって慕うんだ

でも満ちゃんは幽霊だから成長せずに、その子が追い抜いていくんだ

それでもニコは、よぼよぼになって最期の瞬間、満ちゃんに

「頼むぞ、お姉ちゃん」

っていうんだ

 

251:このライバーがすごい! ID:+50uhI2mn

>>250

うわ、なんだコイツ!!

 

252:このライバーがすごい! ID:zWLD34fXA

>>250

こっちにくるな、化け物!!

 

253:このライバーがすごい! ID:7tw9MeCYX

>>250

ニコは周りももれなく幸せじゃないと許さねぇぞ!!

 

254:このライバーがすごい! ID:atEd0go9t

>>250

妄想するのは自由だけど、一人で楽しめよ

誰かに共有したいなら、そういう友だち作れ

 

255:このライバーがすごい! ID: LVmRvXfyM

ごめん、幽霊があまりにも性癖なんだ

許してほしい

 

256:このライバーがすごい! ID:trpDpqyS2

>>255

いいよ

 

257:このライバーがすごい! ID:6CY6rNqWB

>>255

節度は守ってな

 

258:このライバーがすごい! ID:J0ZqZYY2i

やさしい

 

259:このライバーがすごい! ID:/c7q1Czbq

正直ちょっといいなって思った

 

260:このライバーがすごい! ID:8BYHPC6rf

また演技の企画やってくんねぇかなぁ

 

261:このライバーがすごい! ID:rM9g0Tdbo

ニコは大体需要に応えてくれるから、マカロン送ってみよう

 

262:このライバーがすごい! ID:rnCoXpup6

ニッコリ探偵団で何かしらのパロやってくれ!!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。