稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第5話 公式番組(2)

「さぁ始まったわ!! イベリスがお送りするオシャレな番組、えでんずたいむ! みんなは当然、オシャレして待ってたわよね?」

 

ハイ!

ハイ!

ハイ!

ハイ!

 

「ふふ、いい子たちね……」

 

 調教されてるように見えるんだが、触れない方がいいんだろうか。

 

 流れに身を任せていたら始まってしまった『えでんずたいむ!』。「何かやらかしちゃっても私がなんとかしてあげるから、思う存分オシャレしてね?」と言ってもらったが、オシャレってどういう意味だ? 好き勝手していいってことか? オシャレって結局、自分の感性で決まるもんだもんな。

 

「さて、いつもなら動画でオシャレをお届けしているところだけど、なんと! デビューして一か月経ったオシャレたちがきてくれているわ! どうぞ、自己紹介!」

「月宮優姫です。職業は探偵です」

「アザミ・フレンジー」

「我が名はミッドナイト・サイコナイト、またの名をニコ!」

「あらやだ、股間に名前をつけてるの!?」

「違いますよ! 別名って意味です!」

「私もなのよ。奇遇ね」

「勝手に変な仲間にしないでください!」

「あとそれ言われると、私たちが今後『ニコ』って呼ぶと変な感じになるんでやめてください」

 

股間にはちょうど二個あるものが……

下ネタからスタートかよ

イベリス様だから仕方ない

不用意にふざける隙を与えるから悪い

 

 せっかくつけてくれた素晴らしいあだ名が、股間の名前にされるところだった。「冗談よ」と仕切り直したイベリスさんは、視聴者に見えないのに長い脚を五回くらい組み直す。会って一時間も経ってないけど、やかましいなこの人。これで登録者50万人こえてるってなんの冗談だ?

 

「ごほん、そして俺の隣にいるのが満だ! 女子中学生の幽霊で、わけあって数年間俺と一緒にいる!」

《満です! よろしくお願いします!》

「あら、何かオシャレな気配がすると思ったら、噂の満ちゃんだったのね」

「イベリス。その気配について詳しく教えてくれるか?」

「ちょっとアザミ、敬語遣いなさいよ」

「気にしなくていいわよ! オシャレの前では敬語なんて必要ないわ!」

 

 オシャレの前ってどういうことだ? 私の前ではってことか? ……なんかそんな気がしてきた。俺、もしかしたらオシャレ適正あるのかもしれない。でもなぜか、適正ありって大体嬉しいことのはずなのに、全然嬉しくない。

 

「あなたたち四人でニッコリ探偵団って言うんでしょ? 満ちゃんが考えてくれたらしいじゃない。オシャレすぎるわ!」

 

オシャレすぎる!?

イベリス様は、人に対してオシャレとはよく言うけど、オシャレすぎるとは言わないのに!

満ちゃん、なんてオシャレな子なんだ……

満様って呼ぶべきじゃないか?

 

 満がオシャレすぎるがあまり崇められている。なんか今日のコメント欄怖いぞ。多分イベリスさんの視聴者だ、俺にはわかる。だって月宮さんの視聴者は一般的で、アザミさんの視聴者は論理的なロマン思考で、俺の視聴者は俺がひどい目に遭うのが大好きなチクショウどもだし。

 

「さて、自己紹介が終わったことだし、次は私から勝手に紹介させてもらうわ!」

 

 言って、配信画面が切り替わる。そこに映し出されていたのは、虫食いになっている俺たちのプロフィール表みたいなものだった。『名前』『年齢』『紹介文』『配信内容』等の項目がある。

 

「でも、ただ紹介するだけじゃオシャレじゃないわ! こんな風に、あなたたちのプロフィール表を虫食いにしてるから、自分以外の虫食い部分を答えるのよ! 一か月で築き上げた絆、試させてもらうわ!」

「何!? それはつまり、正解数が一番少なかった者はオシャレじゃないということですか!?」

「ニコちゃん、あなたわかってるわね! そう、一番絆の薄い子はオシャレじゃないわ!」

《佐藤さん?》

「ニコ?」

 

 満と月宮さんが不思議そうに俺を見ている。俺がオシャレに染まったとでも思っているんだろう。だがそれは違う。こうしてイベリスさんのペースに乗ってオシャレを強調することで、『罰ゲーム』をなくすことが目的だ。イベリスさんの口から『罰ゲームがある』とは言われなかったが、盛り上げのために当然用意されているだろう。しかし、俺が『正解数が一番少なかった者はオシャレじゃない』ということにより、『オシャレじゃない=とんでもない屈辱』だと思っているとイベリスさんに印象づける。

 

 これによって、「それじゃあ罰ゲームはいらないわね」と言ってもらうという作戦だ!

 

「そして、オシャレじゃない上に罰ゲームも受けてもらうわ!」

 

 俺の作戦は崩壊した。

 

罰ゲームといえば

ニコの出番だな

罰ゲームと聞いちゃあニコが黙ってないぞ

見せてやれ、ニコ

 

 いらないところで俺の視聴者が出てきた。確かに一か月で罰ゲームを7回受けたのは俺くらいのものだろうが、別に好きで受けているわけじゃない。罰ゲームの申し子ってわけでもない。最近、ミッドナイト・サイコチャレンジの罰ゲームに『死ぬ』みたいな過激なものが混ぜられてないかびくびくしてるくらいだ。

 

「罰ゲームの内容は?」

「あなたたちが次に出すボイスの台本を書いてもらうわ」

「なるほどな」

「ほう」

「そこの厨二病と天然科学者。悪くないなみたいな反応やめなさい」

 

 いや、だってな? ボイス台本って妄想の化身みたいなものだぞ? 別に月宮さんとアザミさんを変な目で見てはいないが、声はいいと思っている。そして、俺ばかりがひどい目に遭っているから、なんとかして恥ずかしい目に遭ってほしいとも思っている。俺は案外小さい人間なんだ。

 

《案外じゃないよ》

 

 心を読むのはやめてくれ。

 

「ちなみに、次のボイスのテーマは『ちょっとドキドキしちゃうお友だち』よ!」

「ナニィ!? トモダチ!?」

「ニコから最も遠い存在のことか」

「私たちがいるでしょ? 最も遠いってことないんじゃない?」

「月宮さん、好きだ」

《私も好き》

「はいはい、ありがとね」

 

 さらっと友情を肯定してくれた月宮さんに感動しすぎて思わず告白してしまった。しかしあしらわれた!

 もっと動揺してくれてもいいのに……別に月宮さんが恋愛的な意味で本当に好きだから拗ねてるわけじゃなくて、まるで眼中にないと言われているようで少し傷つく。俺はこう見えて繊細なんだ。

 

なんだろう、男性Vが女性Vに好きっていうと燃えるんだけど、ニコなら燃えない気がする

二人とも流れとノリがうまいからじゃ?

 

 そして、繊細な俺はコメント欄を見て、「そういえば好きとか言っちゃだめなんだっけ」と思い出す。帝斗と透華から、「なんかガチ恋とかいうのがいるらしくて、そいつらを刺激すると炎上する」って聞いていたのにこの体たらく。でもコメント欄の雰囲気を見るに、さっきのは大丈夫だったらしい。

 

「ニコちゃんがそういうので燃えにくそうなのは、バラエティ要素が強いからじゃない? 私もよく人にオシャレって言ってるけど燃えないし」

「そりゃ燃えないでしょう。意味がわかりませんし」

「ふふ。オシャレの意味がわからないようじゃ、優姫ちゃんはまだまだ未熟オシャレね」

「なんかよくわかんないけど、未熟って言われんのはムカつく!」

「未熟そのものみたいな反応してるな」

「ははは。かわいくていいじゃないですか」

《月宮さんって、普段クールなのに時々子どもっぽくて可愛いよね!》

「うっさいわねあんたら! 鼻ぶち抜くわよ!」

「「こわ」」

《よかった、私幽霊で……》

 

 ほんとにぶち抜くことはしないだろう。しないよね?

 

「ふふ、ほんとに仲がいいわねぇ。これなら、プロフィール表も完璧に書けるんじゃない? 手元にあるディスプレイに書いて、3分後発表よ!」

「3分!?」

「相手のことを理解していれば無理な時間じゃないだろう」

「あららー? ってことはアザミ、私たちのこと理解してくれてるってこと? 可愛いわね」

「……ありがとう」

 

アザミんうおおおおおおおお

うおおおおおおおおおお

かわいい

天使か?

 

「このように、私のようなキャラがこういう反応をすると盛り上がる」

「台無し」

「でもアザミさんって普通に俺たちのこと好きですよね。配信見た感じ」

「はーい。それ以上は虫食いの答えになっちゃうわ! ちなみにもう3分数え始めてるわよ!」

「やばい!!」

「私はもう書き終えている」

「私も」

「なんで教えてくれなかったんですか!!」

《むしろ、なんで隣で二人が書いてたのに気づかなかったの?》

 

 俺が人の目を見て会話できると思うか!? ずっと真正面見て喋ってたんだよ!! 月宮さんとアザミさんとイベリスさんは優しいからそれに触れなかったんだよ!!

 しかし、マズい。今どれくらい経ったんだ? 全問正解できる自信しかないが、どれくらい時間が残されているかわからないこの状況では、少しの思考時間がもったいない。

 大丈夫だ、一か月。たった一か月の記憶を呼び起こすだけ。俺は普段人より使える時間が多いから、月宮さんとアザミさんの配信は観ていた。だから大丈夫だ!

 

幽霊が本当なら、カンニングとかもし放題じゃね?

ほんとじゃん

これ、回答まったく一緒だったら怪しいってこと?

 

 俺が二人のプロフィール表と格闘している中、聞き捨てならないコメントが目に映る。カンニング、だと?

 

「カンニングだと? 俺は普段全然仕事がないし外に出ないし友だちも全然いない! 社会的信用がゼロの俺にできることは、せめて正しくあろうとすることだけだ!! それに、俺の相棒である満を、そのような道具扱いできるはずもない! 幽霊だ幽霊だと口にするが、俺にとって満は”幽霊”ではなく”満”だ! 扱いを間違えるなよ!!」

「はい、そこで終了! 3分経ったわ!」

「うそだろ!?」

 

 俺が失礼なコメントにブチギレている間に!? こういうときってもうちょっと容赦というか、そういうのがあるんじゃないのか!? せめてさっきの発言の時間分くらいは猶予くれてもいいんじゃないのか!?

 

《佐藤さん、大丈夫だよ。こんなに私のこと考えてくれてる佐藤さんなら、月宮さんとアザミさんのこともちゃんとわかってる。一番絆が薄いなんてことありえない!》

「……そうだな、満。男なら堂々としておくべきだ。俺はミッドナイト・サイコナイト! 深夜の狂騎士だ!」

 

 

 

 

 

「さぁ帝斗、透華。ボイス台本を一緒に考えようじゃないか」

「清々しいくらいいつも通りだな、お前は」

「いつも通りなんで、別にいいっスけどね」

《佐藤さんってほんとうにおもしろいよね》

 

 うるせぇよ。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part3

 

350:このライバーがすごい! ID:iulW5qOhw

優姫ちゃんとアザミん、全部正解だったな

 

351:このライバーがすごい! ID:VKSqu8Iul

優姫ちゃん「二人の配信面白いから」

アザミん「二人のことは好ましく思っているからな」

ニコ「あの、俺が後半空白になっているのが際立つのでやめてくれませんか?」

 

352:このライバーがすごい! ID:K0/naopPi

 

353:このライバーがすごい! ID:TQ+C93foh

 

354:このライバーがすごい! ID:2DkajKdXT

でも、ニコも書いてるところは全部正解してたよな

 

355:このライバーがすごい! ID:TPsg3ogtI

ニッコリ探偵団、絆深すぎる

 

356:このライバーがすごい! ID:JpycupU1i

紹介文とかはともかく、配信内容とか配信タイトルとかまで当ててるのすげぇよ

 

357:このライバーがすごい! ID:Kf/Ux9/4R

まぁ、ニコのは大体『第○回 ミッドナイト・サイコチャレンジ』だし

 

358:このライバーがすごい! ID:dB4w7Jlq/

流れは一緒なのに、なんでこうも見ちゃうんだろうな

 

359:このライバーがすごい! ID:q8JAOmWoy

滑稽だから

 

360:このライバーがすごい! ID:B+J+8tdep

罰ゲーム受けてるところを見たいから

 

361:このライバーがすごい! ID:Cjh/G5WdV

罰ゲームと言えば、ニコがボイス台本書くことになったけど

 

362:このライバーがすごい! ID:S0BvJt6lK

優姫ちゃん、そこはかとなく不安そうにしてたな

 

363:このライバーがすごい! ID:N/YTtgGhf

そこはかとなくどころか、一緒に書く? まで言ってたし

 

364:このライバーがすごい! ID:yuCFcYEVo

優姫ちゃん「あの、えっと、一緒に書く?」

ニコ「心配ご無用! 俺には頼りになる友人がいますので!」

アザミん「この近くに病院はあったか?」

ニコ「いえ、妄言ではなく」

 

365:このライバーがすごい! ID:0DnOpYl54

 

366:このライバーがすごい! ID:HL11n2x6F

 

367:このライバーがすごい! ID:zv1u+vgZx

ちょくちょく出るよな、友人

 

368:このライバーがすごい! ID:jQRsD+ZIb

ニコの話での登場回数結構多い

 

369:このライバーがすごい! ID:bsG4A6/Yf

一人はイケメンでほとんどぼーっとしてたら金が入ってくるような生活してる男

もう一人は可愛くて家事全般のスキルがかなり高い女の子

 

370:このライバーがすごい! ID:Bg9s9t5N/

>>369

この二人がデビューした方がいいのでは?

 

371:このライバーがすごい! ID:2xMJNASdh

>>370

ニコの話によれば、二人が生活を助けてくれてるからなんとか生きてこられたらしい

 

372:このライバーがすごい! ID:k7MVLGkZX

>>370

つまりその二人がデビューするとニコが○ぬ

 

373:このライバーがすごい! ID:GVxpleYYe

ペットかよ

 

374:このライバーがすごい! ID:PtEQ8U1Zh

似たようなもんだろ

 

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