稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第73話 VSイレイナ・ガーランド

「帝斗、その後イレイナさんとはどうだ?」

「何回か飯行ってジム行ってって感じだな。佐藤のアドバイスが効いたのか、あの日以来食おうとしてこねぇよ」

「佐藤さんが役に立つ時あるんだねぇ」

「あぁ。我ながら誇らしい」

「先輩、今の怒るとこっスよ」

 

 何? 役に立つと褒めてもらえて、何を怒ることがある。

 

 イレイナさんの襲撃から一週間ほどが経過した。その間は『楽園都市』にて『project:talk』……来場いただいた方々とライバーが直接話すイベントへニッコリ探偵団が参加するという発表があったり、お世話になっている方々へ旅行のお土産を渡したりしていた。

 そんな中、帝斗もイレイナさんとの仲を深めているらしい。帝斗のことだ、俺の同僚だから無下にできないなどと考えているだろうが、それ以上にイレイナさんが普通にいい人だったというのもあるだろう。いくら俺の同僚だとはいえ、仲良くなりたくない人に時間を使うほど帝斗は暇ではない。あと俺に時間使いすぎ。

 

「どれ、話してみろ。恋愛の伝道師であるこの俺がアドバイスをしてやる」

「お前ほど恋愛の伝道師が似合わねぇやつはいないだろ」

「まったくっスね」

「佐藤さん。己惚れと思い上がりはいい加減にしてっていつも言ってるよね?」

「ちょっとした冗談だろうが! なぜ徹底的に蜂の巣にする!」

 

 もういい! せっかく俺が『project:talk』で何を話したらいいのかわからないという悩みを持ちつつ、そろそろ頼ることなく完全に自分で考えて解決しようと意気込んでいたのに! まったく、俺が自信を無くしたらどうするつもりなんだ。無くす自信もあるかどうか微妙なところだが。

 

 なんだかんだで『楽園都市』まで残り二か月。初めてのオフラインイベントであり、3Dお披露目の舞台であるためかなり緊張している。こんなに緊張したのは……マズい、社会にあまり出ていないから思い浮かばない。ということは人生で一番緊張しているということになる。

 一週間生活を来場者と同時視聴し、俺たちがコメントしていくというものではあるが、この場面でこういうことを言おう、みたいなことは決めている。ぶっつけ本番でどうにかできるほどの実力は俺にはない。ただ、不安なのがそういう決め事があると、俺を動揺させるためにアザミがそれを破ってこないかということだ。かなりやりそうでそれも緊張の原因ではある。

 

「でも西園寺さん。イレイナさんはいつもみたいにフラれる心配ないんじゃないですか?」

「そりゃそうだろうけどなぁ。普通に男としては断る理由ねぇんだよなぁ……」

「お前は断る理由を探しているのか? 帝斗らしくもない」

「そういうわけじゃねぇよ。あの出会い方してそういうわけじゃねぇことに自分でびっくりしてるけど」

「西園寺さんも大概お人よしだよねぇ」

「まぁ、お人よしっつーかイレイナさんいい人だしなぁ」

 

 いいや、お前はお人よしだ。だから俺みたいなやつの面倒を見てくれているんだ。帝斗が度々俺のことをいいやつだ面白いだ言ってくれるから俺もそこそこいいやつで面白いのだろうと思えているが、俺が原因で彼女と何度も別れているのに、それでも俺と一緒にいてくれるなんていいやつ以外の何者でもない。

 

 だからこそ、帝斗がイレイナさんといい関係になりたいのであれば、俺はその後押しをしたい。帝斗には返しきれない恩があるからな。

 幸い、帝斗はイレイナさんを迷惑と思っていないようだ。俺に嘘をついているのなら話は別だが、帝斗が俺に嘘をつくわけがない。そうと決まれば、イレイナさんをコラボに……いや、そのような理由でコラボするのは視聴者に申し訳ないか。ここは、個人的に会って帝斗のあれこれを教え、距離を縮めてもらおう。個人的に会う!!!!!???

 

 危ない、俺としたことが女性と個人的に会うなど、犯罪者と疑われても仕方がない行為だ。気をつけろ。あとあの時は旅行帰りで疲れていて頭が回っていないことと、帰ってきていきなりあれだったから喋れていただけで、今の状態でイレイナさんと会ったら緊張する自信がある。いやしかし、帝斗のためを思えば俺の緊張程度どうということはないのではないか? 俺が帝斗に受けた恩は、俺の緊張で無下にしていい程度のものなのか?

 

「よし、帝斗! 俺に任せろ!」

「何が? そういやイレイナさんからコラボのお誘いあったぞ」

 

 自分で何とかしてやろうと決意したのに、早速出鼻をくじかれた。帝斗、お前マネージャーすぎるんだよ。

 

「俺の親友と仲良くなりたいっていう打算もあるだろうけど、普通にお前もいい男だから気になったんだとよ」

「ふっ、二股だと!? 許せん! 俺ならまだしも帝斗をそのように扱うなど、俺がぎゃふんと言ってやる!」

「ぎゃふんってやられてんじゃん。ガツンでしょ」

「ぎゃふんは言わされそうっスけどね」

「間違えただけだろう! 母音は合っているからいいじゃないか! 伝わってるし! 俺が言うのもなんだが、コミュニケーションとは人対人であり、その他が介さないものであって、究極言い間違えがあったとしてもその人に伝わっていれば問題がない。公的な文書というわけでも発言というわけでもあるまいし、いちいち言い間違いごときでごちゃごちゃ言うのはどうかと思うんだが!?」

「そんなに怒ることじゃないと思う……でもごめん」

「いや、俺も言い過ぎた」

「本当に言い過ぎたな」

 

 しかし、イレイナさんとコラボか。一体何をするんだ? イレイナさんが襲撃してきたときにアーカイブを見てみたが、格ゲーやFPSなど、ランクを伴うゲームや飲酒雑談が中心だった。この中だと雑談になるだろうか。

 ……正直、イレイナさんと何を話せばいいか想像もつかない。今から格ゲーの練習でもするか? ただ、満の前でそのような人を殴るゲームをするのも教育的によくないか。となるとやはり雑談……ど、どうしよう。緊張してきた。緊張してばかりじゃないか? 俺。

 

「帝斗。イレイナさんは何をやろうと言ってくれているんだ?」

「ゲーム。『コトダマファイト』って知ってるか?」

「知っているが、一応教えてくれ」

「はいよ。知らねぇんだな」

「西園寺さん。言ってあげないのが優しさっスよ」

「透華。26歳に対してその対応は逆に優しくないよ」

 

 年齢を引き合いに出すのはやめろ。俺が惨めだろうが。惨めすぎて「どうも、惨めです」と自分を卑下に卑下した自己紹介をするようになったらどう責任を取ってくれるんだ。

 

「『コトダマファイト』は、マイクに乗せた通りの行動をキャラクターが取ってくれるゲーム。つっても移動とかはコントローラーとかキーボードとかで操作して、攻撃とかガードとかを声でする、みたいな感じだな」

「ほう。対戦ゲームか?」

「基本はスクロールアクションで、2D対戦もある。声でやる格ゲーみたいなもんだな」

 

 面白そうだ。気になってきた。自分でも調べてみよう。

 

 なになに……なにっ!? 必殺技っぽいことを叫べば、AIが言葉の勢いとニュアンスなどから判断し、それに近い必殺技を放つだと!? キャラクリもできる!? なんてすばらしいゲームなんだ! 今すぐ必殺技を考えよう!

 

「面白そうだ……! ぶっつけ本番というのもなんだ。帝斗、練習に付き合ってくれ」

「お、いいぜ。一緒にゲームすんのは久しぶりだな」

「ふっ、だからといって容赦はせんぞ!」

「えー! 私もやりたい! 透華もやろ!」

「んー、声かぁ。自信ないな」

「確かに、透華は人を傷つけるような真似は似合わんな。癒しの必殺技が出そうだ」

「私も癒しが出ちゃうかもなぁ」

「ははは」

「バカにしてんじゃん! ぶっ潰す!」

 

 そんなこと言うようなやつが癒しなわけがあるか。

 

 ちなみに、帝斗と満には普通に負けて、透華は俺が攻撃できずに負けた。だって!!! 慣れないゲームでわたわたしていて、恥ずかしそうに声を出す透華を殴るなんてできるか!? 俺にはできなかった! ただ、それだけのことだ。

 

「何カッコつけてんの。負けたくせに」

「負けたことは関係ないだろう! もう一回だ!」

 

 その後、順調に負け越した。もしかして俺はゲームがへたくそなのか……?

 

 

 

 

 

「ってわけで、コラボだ! そして私はイレイナ・ガーランド。ニコんとこの視聴者ははじめましてだよな? よろしく」

「我が名はミッドナイト・サイコナイト! またの名をニコ! 深夜の狂騎士だ。イレイナさんの視聴者の方々はお初にお目にかかります」

「急に丁寧……私は満です! ニコさんに憑りついてる幽霊です! よろしくお願いしまーす!」

 

イレ姉、新しい舎弟ですか?

そういえば最近ニコと会ったって言ってましたね

どういう関係だコラ!!

イレ姉に変な真似したらただじゃおかねぇぞ!!

ニコがそんなことできるわけないだろ!!

そんなことができるような人間に見えるのか?

俺たちがいるぞ、ニコ

 

 コラボ当日。配信開始とともに俺とイレイナさんの視聴者が戦いを始めた。

 イレイナさんの視聴者は特殊、という言い方をすると失礼になってしまうが、本当に舎弟のような感じだ。そして、「ただじゃおかねぇぞ!!」といったようなことをコメントするが、本気で言っているわけではなくあくまで舎弟のロールプレイ。更にコラボの際は相手の視聴者層を考えてコメントしており、例えば相手が星菜さんやアルだったらそんなことは言わないだろうし、聖麗相手だったら言う。要は、キラキラしたライバーが相手の場合は弁えたコメントをするということだ。

 

 その点、俺の視聴者は何も問題がない。初っ端で戦いに行く血の気の多さ、まさにインターネットという感じで大変すばらしい。事前にソロ配信でコラボをすると伝えた時に、イレイナさんの視聴者のノリも伝えておいたしな。

 

「ふん、新しい舎弟か、だと? 妄想を語るのは親がいない時、部屋に閉じこもってからにするんだな! 今日はどうやら俺に黙ってデカい顔をしているらしいイレイナさんとゲームで勝負し、恥をかかせにやってきた!」

「お、いいねぇ。嫌いじゃないよそういうの! それじゃあ負けたら相手のことは様づけで呼んで、相手と話すときは赤ちゃん言葉とかどうだい?」

「そんな甘い言葉で俺を負けさせようとしている魂胆は見え見えだ!」

「ニコさん、ご褒美だと思ってるみたいだけど、違うよ」

 

イレ姉に負けた上、様づけで呼ばせていただき、更には赤ちゃん言葉!?

イレ姉が卑劣な手を使うなんて珍しい……!

誰でも負けたくなるぞ

ニコ、これで正々堂々勝負しようとするとは、侮れん奴だ

いつもならニコがキモがられる流れなのに

なんか称賛されてるぞ

調教済みが過ぎる

 

 待てよ、俺が勝った場合はイレイナさんが俺のことを「ニコ様」と呼び、更に赤ちゃん言葉で話すということになるのか? それはそれでどうなんだ? 俺は帝斗との仲を取り持とうとしているのに、そんな相手から様付けプラス赤ちゃん言葉って人として終わっていないか?

 ……いや、もしかしたら赤ちゃん言葉で話すイレイナさんは可愛いかもしれない。今までそういうことをやっていたことは見たことがない。『やっていない』からこそ需要がある。問題は俺にとてつもない父性が芽生え、イレイナさんが本当に自分の子どもだと思ってしまわないかということだ。

 

「クソバカ」

 

 満に思考を読まれ、たった四文字でバカにされた。どうやら俺の思考は正しくないらしい。

 

「四の五の言わず、早速勝負しようじゃないですか! 泣いて謝っても許しませんよ。俺はミッドナイト・サイコナイト、深夜の狂騎士! その名にふさわしい戦いを見せてあげましょう!」

「へぇ、そりゃあいい。期待してるよ、深夜の狂騎士」

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part17

 

247:このライバーがすごい! ID:Ra6hkh0pA

ニコ「行くぞ! (長ったらしい意味不明な詠唱)」

イレ姉「GAAAAAAAAAAAA!!!!!!(万物を破壊する咆哮)」

ニコのキャラ、破壊

 

248:このライバーがすごい! ID:o+RDXFqeC

 

249:このライバーがすごい! ID:Cfq5maoF9

俺の鼓膜が辞表を提出してきた

 

250:このライバーがすごい! ID:Ss5OzvmN9

俺の鼓膜は海外旅行に行ったらしい

 

251:このライバーがすごい! ID:ZKUX+9jBy

喉強いやつの一人勝ちじゃん

 

252:このライバーがすごい! ID:0uCJ7UUyP

>>251

ちゃんと対抗できる声とか音とかあるぞ

 

253:このライバーがすごい! ID:hJeUN1SDJ

あれにどうやって対抗しろっていうんだ……

 

254:このライバーがすごい! ID:es//WmAC7

ニコ「……何が起きた」

イレ姉「はっ、弱いなぁ。期待しすぎだったかねぇ」

ニコ「ナニィ!? もう一回だ!」

数秒後、再放送

 

255:このライバーがすごい! ID:GldZ/U6lr

ニコ「それ、なしにしてもらえますか」

清々しい

 

256:このライバーがすごい! ID:tty2L+n5P

イレ姉も受け入れてくれるの優しいな

 

257:このライバーがすごい! ID:5QPjCBjbx

イレ姉は案外優しいぞ

 

258:このライバーがすごい! ID:wTwuqHQf9

純花さんと並んでいいお母さんになると思ってる

 

259:このライバーがすごい! ID:JC/pBnodc

本当に可愛い子に旅をさせそうだな……

 

260:このライバーがすごい! ID:PY0teg5i2

ニコ「行くぞ! (長ったらしい意味不明でカッコ悪い詠唱)」

イレ姉「パンチ!!」

ニコ、一撃

 

261:このライバーがすごい! ID:3jfJc1RPU

あまりにもやられ役が似合いすぎる

 

262:このライバーがすごい! ID:52t54mv0W

ヴァールハイトが武闘派集団っていうのは本当だったんだ……

 

263:このライバーがすごい! ID:bd3l6ImwZ

頼むニコ、勝ってくれ

正直ニコの赤ちゃん言葉はキツイ

 

264:このライバーがすごい! ID:mPsDtWrVo

あと満ちゃんが可哀そう

 

265:このライバーがすごい! ID:wsve8GMQd

熱い展開きた

満ちゃん「ニコさんと私は一心同体! 私が勝ったらニコさんが勝ったも同然!」

ニコ「待て満! お前が危険な目に遭う必要はない!」

満ちゃん「ニコさんと私は! 一心同体!」

ニコ「いや、しかし」

イレ姉「いやもしかしもあるかい。女が男のためにってぇ心意気、邪魔しちゃそれこそ男が廃るってもんじゃないか?」

ニコ「……くっ、だが俺は、それでも」

満ちゃん「うっさい! どいて! お願いします、イレイナさん!」

 

266:このライバーがすごい! ID:QJukDo6Vh

数秒後、満ちゃん爆散

 

267:このライバーがすごい! ID:+cFRIAk6D

満ちゃん「いい勝負する流れだったじゃん……」

 

268:このライバーがすごい! ID:O2Z7HE4UO

まさしく一心同体だな

 

269:このライバーがすごい! ID:vIRSEgrfB

これって、満ちゃんもイレ姉に赤ちゃん言葉使うってこと?

 

270:このライバーがすごい! ID:QOe3d2HVO

イレ姉「最近産まれた息子と娘。よろしくね」

ニコ「ばぶー。僕ニコでちゅ。よろちくおねがいちまちゅ」

満ちゃん「ニコさん、視聴者さんに対しては赤ちゃん言葉じゃなくていいんだよ……」

 

271:このライバーがすごい! ID:2OxDIVMXf

満ちゃん吐きそうな声になってて草

 

272:このライバーがすごい! ID:Z3LfSeS4k

コメント欄、阿鼻叫喚

 

273:このライバーがすごい! ID:tjkoOqNeO

二度と喋るなとか言われてて草

 

274:このライバーがすごい! ID:DAsVgW4aT

流石だ、ニコ

 

275:このライバーがすごい! ID:iAtuOjVnu

チャンネル登録者急激に減りそう

 

276:このライバーがすごい! ID:6EjDHIfU/

なんでニコは躊躇なく赤ちゃん言葉を使えるんだ

 

277:このライバーがすごい! ID:vK9M00Chh

エンターテイメント極振りだからなぁ

 

278:このライバーがすごい! ID:05VLPPcCQ

エンターテイメントを犠牲にすべてを失った男

 

279:このライバーがすごい! ID:+QsOagcij

リニス好みじゃん

 

280:このライバーがすごい! ID:wc+xtwdDJ

リニスとコラボしないのかな

合いそうだけど

 

281:このライバーがすごい! ID:zxBdE/pfm

リニスが「エンターテイメントすぎて世界が壊れてしまう」

とか言っててコラボしないって

 

282:このライバーがすごい! ID:55+qQASmX

ニコは認められてるってことか

 

283:このライバーがすごい! ID:9DL5kEkBz

多分認められない方がよさそう

 

284:このライバーがすごい! ID:2FNHUZXBz

おい、もしかしてこのまま赤ちゃん言葉で雑談するのか?

 

285:このライバーがすごい! ID:WFPCaF96r

赤ちゃん言葉で必殺技叫び始めた……

 

286:このライバーがすごい! ID:xrjIgz82G

ここが地獄か

 

287:このライバーがすごい! ID:YoJLIQhT8

俺、いいことしてきたつもりだったんだけどな……

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