稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第77話 Pendulum Beat

 ひったくり犯を捕らえてから一週間が経った。その間は徘徊老人を捜索したり、迷い猫を捜索したり、事件らしい事件は担当していない。

 そして今日、何か依頼がきていないかと確認しようとすると、所長室に呼び出された。ま、まさかクビか? ひったくり犯を追った時に何もできず、満だけが大活躍したから、俺だけクビにしてコンビを解消し、優秀な人と満を組ませるためということか?

 

「次の職業はどうするか……」

「え? やめちゃうんですか?」

「あぁ、今からクビになる。すまなかったな、頼りない先輩で」

「なんですかそのマイナス思考。大丈夫ですよ! 私、先輩と相性いいって思ってるんで、もしもクビだって言われても私がダダこねますから!」

 

満ちゃん、光すぎる

ニコは社会に関してはほぼ後ろ向きだな

マジでクビだったら流石におもろい

クビって言われたら口八丁で乗り切ろう

 

 満……なんていい人なんだ。ペンデュラムスキルが口八丁で、運動もできずコミュニケーション能力も低い俺と相性がいいと言ってくれるなんて。いや、むしろ相性がいいと言わないと可哀そうと思われているとか? それはそうか、俺のような人間と組みたい者など、世界のどこを探してもいるわけがない。

 であれば、満が心から俺と組んでいてよかったと思ってくれるよう精進するべきだ。コンビを組んでいるのはおんぶにだっこになるためではなく、支え合うためだからな。

 

 クビ宣告を受ける前の深呼吸を済ませ、震える手でノックすると、中から「クールだな」と返ってきた。入っていいということだろう。

 

「失礼します」

「失礼します!」

 

 中に入ると、所長がコーヒーを注ごうとして所長机に零しているところだった。しかしクールな所長は俺たちから視線を外さず、「よくきたな。まぁ座ってくれ」とソファへ座るよう促してくれた。恐らくツッコまない方がいいんだろう。

 

「それで所長。なぜ俺たちが呼び出されたんですか?」

「クールなお前らしくないな、ニコ。本題を焦りすぎだ。まずは俺の淹れたコーヒーをゆっくり飲んで、気持ちを落ち着けてからにしよう」

「すみません所長。私、コーヒーが飲めなくて」

「わかっている。満にはココアを淹れよう。少し待っていてくれ」

 

 所長は俺の前にコーヒーの入ったカップをクールに置いて、粉のココアを取り出し、満の前に置いたカップに粉を入れてお湯を注ぐ。

 

「さて、早速本題だが」

「早速本題じゃないですか」

 

落ち着く時間なくて草

これ、ボケじゃなくて素でやってるんだぜ?

人間が面白いってことだろ

じゃあニコと一緒か

 

 気持ちを落ち着ける前に本題を切り出される。口元に持っていこうとしていたカップを置いて、気持ち背筋を伸ばして所長の言葉を待った。俺がクビになるかもしれないと泣き言を言っていたからか、満が心配そうに俺を見てくれている。大丈夫だ、コーヒーを飲んで落ち着く時間はなかったが、コーヒーの香りをかいで落ち着く時間はあった。精神状態はさっきよりも安定している。

 

「一週間前、お前たちがクールに捕まえたひったくり犯がいただろう」

「満が捕まえてくれたひったくり犯ですか。覚えています」

「ホルダーでもないのにペンデュラムスキル使った人たちですよね?」

 

 俺たちの言葉に頷いて、所長はテーブルに置いてあるパソコンを操作してから、俺たちに見せてきた。

 そこに表示されていたのは、捕まえた二人の情報。遠野明人と菊池達也。ともに男性でフリーター。バイト先はパチンコ店。それらの情報に混ざって、気になる点があった。

 

「ペンデュラムスキルの発現がなかった……?」

「義務教育段階でペンデュラムスキルの有無は検査されるから、虚偽の情報だったってこと?」

「いいや、彼らが通っていた教育機関にクールに連絡を取ったが、国の立ちあいのもと正式に行われていた」

 

 クールかどうかは知らないが。

 

「となると、後天的に発現した……いや、そうなるとペンデュラムの出所はどうなんです? 警察が管理しているもの以外は手に入れられないはずでしょう」

 

 今出た情報をまとめれば、ひったくり犯は後天的にペンデュラムスキルが発現し、なんらかの手段で手に入れたペンデュラムを違法使用した、ということになる。

 

「不明点は二つ、後天的にペンデュラムスキルが発現するということはまずないということ。義務教育段階で検査をする意味は、その年齢以降で発現した例がないからだ。例がないからといって完全にない、というのはナンセンスではあるが、可能性としてはかなり低いですね。もう一つは、ペンデュラムをどのようにして手に入れたかということ。ペンデュラムは警察が保管しており、ホルダーとして認められた者にのみ手配される。まだ発見されていないペンデュラムを偶然発見して使用した、というのもありえるが、後天的にペンデュラムスキルが発生したというのなら、それと関連性があるとしか思えない。だとすると、偶然では片づけられない」

 

お前、ちゃんと推理できたんだな

推理というか現状のまとめというか

一瞬でこれが出せるくらいにはちゃんと頭使えるんだな

びっくりした

いつものニコを返せ!

 

 一気に喋って乾いてしまった喉を、所長が淹れてくれたコーヒーで潤す。アツッ!! むせた!

 所長を見習って何事もなかったかのように振舞おうとしたが、満に背中をさすられながら「大丈夫ですか?」と心配してもらった。どうやら俺はクールではないようだ。そもそもクールってなんだ。大体のことがクールの一言で片づけられるのずる過ぎる。

 

「つまり、所長は事件性があると考えているということですね」

「あぁ。かなりクールじゃない」

「クールの価値基準はわかんないですけど……」

 

 言って、満はココアをちび、と飲んだ。どうやら、俺より満の方がクールに詳しくないらしい。別に誇らしくもない。

 

「そして、遠野と菊池の二人は、いつの間にかペンデュラムを所持していたと言っていた。俺のペンデュラムスキルで確認したが、嘘はついていない」

「所長のペンデュラムスキルは嘘を見抜けるんでしたっけ」

「クールにな」

 

だからクールってなんなんだ!

クールに意味を求めるなよ

オシャレにもな

シゲキにもな

 

 綺麗に記憶が抜け落ちているということか……。だとすると、何かしらの外的要因でペンデュラムスキルを手にした、と考える方が自然か。そうなると今後も同じような犯行が行われる可能性がある。誰がどのようにしてペンデュラムスキルを与えたかは不明でその動機も不明だが、それができるという事実がある以上また起きると構えておかなければならない。

 

「それで、俺たちは何をすれば?」

「周辺の調査にあたってくれ。本人たちと、公的機関から確認できる情報は大体洗ったからな」

「承知しました。行くぞ、満!」

「はいっ! いってきます!」

「あぁ、いってらっしゃい。クールにな」

 

 所長に頭を下げて、所長室を出る。少し歩いたところで小走りで満が隣に並び、嬉しそうに笑って俺を見てきた。

 

「クビじゃなくてよかったですね。ニコ先輩!」

「いやしかし、この事件の働きによってはまだない話じゃ」

「じゃあ大丈夫ですよ! ニコ先輩と私なら!」

 

 言葉を遮られ、励まされる。ここまで言われてうだうだと後ろ向きなことを言うのはよくないな。満に報いるには、満の言う通り”大丈夫”にするしかない。

 

「そう、だな。まずは二人のバイト先であったパチンコ店に向かおう」

「はい!」

 

俺にも満ちゃんがいてくれたらなぁ

俺にはニコがいてほしかった

 

 

 

 

 

 パチンコ店で店員さんや客に聞き込みして出てきた情報は、二人はよく出勤していたが、最近は見かけなくなったということ。ペンデュラムを持っていたところは見たことがないこと。風邪をひいて病院に行くと言って休んでいて、後日風邪が治ったかと聞くとしどろもどろになっていたということ。

 ……特に目ぼしい情報はないか。しどろもどろになっていたというのも、仮病で休んだことがバレそうになったからということだろうしな。

 

「うー、耳いたい」

「これでは鼓膜に負担を与えに来ただけだな」

「え? なんて言いました?」

 

 筐体からガンガンと鳴り響くBGM、ガチャガチャと騒がしい金属音で俺の声が聞こえなかったのか、満が俺に密着と言っていいほど体を寄せた。動揺しすぎた俺は「パピィ!?」とクールな悲鳴を上げ、思わず飛びのいてしまう。

 その拍子に、誰かとぶつかってしまった。情けない。年下の女性にドギマギさせられた直後、誰かに迷惑をかけるなんて。俺は鼓膜に負担をかけ、情けない姿を晒すためにパチンコ店に来たんだ。

 

「すっ、すみません!」

「いーえ。って、ニコさんと満じゃん」

「あ! お姉ちゃん!」

 

 慌てて頭を下げると、聞き覚えのある声。恐る恐る顔を上げると、満のお姉さんである明さんがいた。ラフな私服を着ているが、明さんは警察。警視庁刑事部捜査第一課所属だ。ペンデュラムスキルは『幸運』。名前そのまま、自分にとって幸運なことが起きるらしい。

 ……ところで、明さんの手にカードがあるように見えるんだが、これってパチンコを遊ぶためのICカードだよな? 今日は非番ということか?

 

「お姉ちゃん、今日非番じゃないよね」

「アー……ほら、あんたたちが捕まえたひったくり犯いるでしょ? ホルダーじゃないのにペンデュラム持ってたやつら。警察が探偵の調査を待って情報集まってから動く、みたいなこと言ってたから、無視して調査しにきたんだ」

「それ、熱心な人だと思わせておいて遊びたいからでしょ」

「違うっての。証拠にホラ」

 

 明さんは病院で処方される薬を入れる紙袋を取り出し、隠すようにICカードをポケットに入れた。……まぁ、一旦目を瞑ろう。

 

 袋を見ると、『花籠総合病院』と書かれている。

 

「これがスタッフルームのロッカーにあったってさ。それも二つね」

「ひったくり犯二人の名前じゃん!」

「そ。店長の話じゃ風邪ひいたってのは嘘に見えたみたいだったけど、わざわざ病院に行くくらいだからほんとかもね」

「……それか、病院側に何かがあるか」

「そういうこと」

 

 明さんは笑って、袋を俺に押し付けた。そしてポケットからICカードを取り出し、俺たちに背を向ける。

 

「じゃ、あとは頑張って。満、今夜焼肉にしてあげる」

「働け!」

 

パチンカス姉御

カッコいいんだかカッコ悪いんだか

今思ったけど、星菜ちゃんが嫉妬しないか?

私のお姉ちゃんが! って?

むしろ満ちゃんと姉妹になれて喜ぶだろ

 

「とりあえず、花籠総合病院に向かうか」

「はーい」

 

 明さんの背中を睨む満を宥め、俺たちはパチンコ店を後にした。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part18

 

375:このライバーがすごい! ID:UN4rL+6+/

休憩開始!!

 

376:このライバーがすごい! ID:cy17FW1oy

満ちゃん「シナリオ中は入りきってるからいいけど、よく考えたらニコさんに意識されるのはちょっと……」

ニコ「シナリオ中は入り切っているからいいが、よく考えたら満に意識するのはちょっと……」

マリー「めっちゃカップリング見たい感じの二人になってるもんね」

ニコ・満ちゃん「やめて」

 

377:このライバーがすごい! ID:MjRARGzI6

 

378:このライバーがすごい! ID:OjDMzIl63

マリーが言うってことは相当だな

 

379:このライバーがすごい! ID:h/9lj9aj2

ニコのことなのに、マリーがカップリング見たい……?

 

380:このライバーがすごい! ID:WsFsYt94o

あくまで客観的にだろ

 

381:このライバーがすごい! ID:LUOZFhXQU

満ちゃん「というか、お姉ちゃんできちゃった! 嬉しい!」

ニコ「パチンコを嗜む私服警官、か。ぜひシチュエーションボイスを出してほしいな」

満ちゃん「キッッモ」

マリー「その時は台本書くよ」

 

382:このライバーがすごい! ID:9jDHTxue4

>>381

こいつ、ミュートにしてるとはいえ本人がいる前でこれを……!?

 

383:このライバーがすごい! ID:9+waUCLqr

ニコがうっかり思ってることを漏らしちゃうのはよくあること

 

384:このライバーがすごい! ID:n7aD+L1C4

シチュエーションボイスがほしいのは同意する

 

385:このライバーがすごい! ID:MXcQ9lSUK

姉御のペンデュラムスキルが幸運ってことは、勝ちまくれるのか……?

 

386:このライバーがすごい! ID:5xC5opYCP

ペンデュラムスキルはペンデュラムを持っている人が二人いないと使えないから無理じゃね

 

387:このライバーがすごい! ID:B4UjuOf+0

この、強制的にペアを組ませて化学反応を産ませる設定好き

 

388:このライバーがすごい! ID:VOY5hSBVc

アザミんとシゲキにもプレイヤーで参加してもらうか

 

389:このライバーがすごい! ID:YONpB/wfp

>>388

地獄みたいな空気になりそう

 

390:このライバーがすごい! ID:UuN666u6F

なんかこう、VTuberのキャラそのままでTRPGするとパロディみたいでいいな

 

391:このライバーがすごい! ID:cSUc45tk5

実質良質なパロディボイス(立ち絵付き)を聞いてるってことか?

 

392:このライバーがすごい! ID:ZfBGoF+hd

満ちゃん成長パロ……

 

393:このライバーがすごい! ID:gUr98EYlK

泣ける

 

394:このライバーがすごい! ID:gItDX5539

泣いた

 

395:このライバーがすごい! ID:TiNlzvsK4

本人は全然気にしてなさそうだけど、こんな未来もあったのかと思うと……

 

396:このライバーがすごい! ID:x/tCSFOwK

でもこの前配信で、

満ちゃん「なんか普通に死んでるって感覚ないんだよね。ニコさんより生命力あると思う」

って言ってたぞ

 

397:このライバーがすごい! ID:0gTRtTiRp

・ニコの力で実体化できる

・そのおかげで色んな人と喋れる

・そのおかげで物理的な接触ができる

もう生きてるようなもんだな

 

398:このライバーがすごい! ID:Ev8jGu2id

成長しないけどな……

 

399:このライバーがすごい! ID:N/ws1oA0x

暗い話はやめようぜ

それより、ニコってちゃんと考えられるんだなって思った

 

400:このライバーがすごい! ID:/SfyGTnHu

>>399

元々キモい妄想を吐き出す速度もすごかったし、頭の回転は速いんだろ

 

401:このライバーがすごい! ID:81CCVojrx

やっと探偵らしい一面が出てきた

 

402:このライバーがすごい! ID:XRXhwRixe

そういえばこいつ、探偵だったな……

 

403:このライバーがすごい! ID:zcbLgSFbl

ただのおもしろオカルトお兄さんかと思ってた

 

404:このライバーがすごい! ID:hkykpD6ON

>>403

正解

 

405:このライバーがすごい! ID:nNMNLzGoZ

>>403

その認識で合ってる

 

406:このライバーがすごい! ID:338S+GHu+

ニコの考えてるところを見てキュンしちゃう

 

407:このライバーがすごい! ID:0TMAv2VHz

>>406

そんなわけないだろ

 

408:このライバーがすごい! ID:PjxMG9Q2D

>>406

嘘をつくな

 

409:このライバーがすごい! ID:18FwFljWA

能力は問題なさそうな気もするから、リアルで依頼がないのはコミュニケーション能力のせいだということがほぼ確定した

 

410:このライバーがすごい! ID:CGm31aEJq

このままこなくていいよ

VTuberを本業にしてくれ

 

411:このライバーがすごい! ID:oBBUwYst3

本業みたいなもんだろ

だってリアルは依頼こないんだぜ?

 

412:このライバーがすごい! ID:AbG8IxaUw

悲しい話はやめよう

 

413:このライバーがすごい! ID:G10qo2GVC

休憩開けるぞ!

 

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