稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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長くなりました。ごめんなさい。


第80話 Pendulum Beat (4)

 そこは、何かの実験室のように見えた。専門的知識がなければわからないような機器類、白を基調とした無機質な机の上には、様々な実験器具が置かれている。部屋の奥には扉が一つと、カーテンで遮られ、隠された何か。その手前には見たことない機械、パソコンのキーボードのようなものが見える。

 俺が知らないだけなのか、常軌を逸した科学か。どちらかはわからないが、一つわかることは確実に黒衛さんが黒だということだ。

 

「ニコ先輩、これ」

「……錠剤。薬に詳しいわけではないが、通常病院で処方するようなものがここに置かれてあるとは考えにくいか」

 

 満が指した先は、テーブル。その上に、ケース一つ一つ几帳面に保管されてある錠剤があった。可能か不可能かは置いておいて、想像してしまうのはこの錠剤を呑んだらペンデュラムスキルが発現する、ということだろうか。

 黒衛さんが黒で、ペンデュラムスキルの可能性について研究していた。そして黒衛さんが担当した遠野と菊池にペンデュラムスキルが発現した。となれば、痛み止めを処方したと言っていたが、処方されたのはこの錠剤である可能性をどうしても疑ってしまう。因果関係を考えれば、信じられない話ではあるが、俺の想像も正しいと思えてしまう。

 

「機械は触らない方がいいですよね」

「だろうな。あとはあのカーテンと、ドアか」

「ですね」

 

 一般とは程遠い部屋に入ったからか、少し緊迫した様子の満に気を配りながら、カーテンの方へ向かう。

 それと同時、俺たちの背後。つまり、俺たちが入ってきたドアが開いた。反射的に振り向いて不格好な戦闘体勢、そして満は俺を庇うように前に出る。

 

「あ、いた」

「お姉ちゃん! きてくれたんだ!」

「そりゃあんなのが送られてきたらねぇ」

 

姉御!

よし、ニコがいると戦闘面が不安だったからな

満ちゃんだけに任せるのは心配だった

一瞬アルがきたのかと思って焦った

 

 警戒した俺たちの緊張が少し解ける。あの部屋の写真を見て飛んできてくれたんだろう。うっすらと汗ばんでおり、呼吸も少し乱れている。

 

「こっからは警察が引き継ぐよ。手柄を取るようで悪いけどね」

「いえ、同行させてください。ここから先、何があるかわかりませんから、人数が多い方がいいでしょう」

「何があるかわからないからだよ。探偵は警察の下部組織だってのに、そっちが積極的に動いて、大成果あげられたってなったらバツが悪いっていう上からのお達しでね」

「えー、自分勝手!」

「ごめん。いやさ、私も上の言うことに逆らうわけにはいかないんだ。色々目を瞑ってもらってるから」

 

パチンコ

パチンコ

パチンコ

パチンコ

 

 それは、まぁあれか。あれだろうな。それに目を瞑ってもいいくらい明さんが優秀だということの表れでもあると思うが……。

 しかし、バツが悪いとしても、同行するのが正しいと思う。正直、俺は自分自身の功績には興味がない。だから、警察の手柄にしたいというのであれば口裏を合わせるし、第一は全員が無事に済んで、事件を解決することだ。馬鹿正直に警察だけで動いて手柄にするのではなく、協力した上でそういうことにした方がいい。

 

 そう伝えれば、明さんは手をひらひらと振って、

 

「私がこんなに早くついちゃったってだけで、すぐに応援くるから。大丈夫、ありがとね」

 

まぁそれもそうか?

いやぁ……

ニコ、押せ!

俺はニコを推してる

 

 ……。

 

「明さん」

「なに?」

「少し聞きたいことが──」

 

 ガシャン! と。俺の言葉を遮るように、部屋の手前と奥を分けるように、ガラスの壁が下りてきた。ちょうど直撃する位置にいた俺は満に飛びつかれ、間一髪で回避に成功する。

俺たちがいるのは部屋の手前。満に礼を言ってから立ち上がり、ガラスに触れた。思い切って蹴ってみるが、びくともしない。特殊な素材で作られたものだろう。そもそも、あの勢いで降ってきたのにも関わらず、ガラスには傷一つついていない。あのカーテンに隠された何か、そして扉の向こうへ行くことはできなくなってしまった。

 

 というか、これが下りてきたということはこれを下ろすことができる誰かがいるということだ。

 

「満」

「警戒してます」

 

 運動能力で言えば満の方が断然高い。五感、反射神経、肉弾戦すべてにおいてだ。その満が警戒してくれているのなら、俺は警戒よりも思考にリソースを回した方がいい。

 そう判断し、思考を回そうとすると、ガラスの向こう。部屋の奥にある扉が開く。そこから現れたのは、黒衛さんだった。

 

アル!?

出て行ったはずじゃ……

マジで悪役か……

もうこの先一生やることないだろうな

 

「黒衛さん……!? 出て行ったはずじゃ」

「おや、説明していませんでしたっけ。僕のペンデュラムスキル」

「……人間の構造は、難しい部類に入らないんですか?」

「結局、解釈次第なんですよ。他の人を複製するならかなりの時間がいるでしょうけど、自分自身のことならそこまでですね。とはいっても、他の人の複製もできないというわけではありません。こんな風に」

「待って!!」

 

 黒衛さんがカーテンに手をかけた瞬間、明さんが悲鳴をあげる。それを意に介さず、黒衛さんはカーテンを開いた。

 

 そこにあったのは、酸素カプセルのような見た目のそれ。その中は何かの液体で満たされている。そして、その中に人間がいた。

満。俺の見間違いでなければ、いや、見間違えるはずがない。長くない時間とはいえ隣でずっと見てきた彼女の姿を、俺が見間違えるはずがない。中にいる人間は確実に満で、全身にチューブが取り付けられており、口と鼻は酸素マスクのようなもので覆われている。

 

「わ、たし……?」

「『Project:Pendulum Beat』。ホルダーを増やし、正義を増やす。それが僕の計画です」

「待って、黒衛さん! 言わないで!」

 

 満は驚愕に目を見開き、体が痙攣を起こしている。明さんが満の体を抱いて、黒衛さんを睨みつけ……。

 明さんの発言からすると、やはりそうか。

 

言わないでって

姉御、嘘だろ……

なんでどう考えても悪役に向いてない二人を

マリー、悪魔か?

 

「明さん、満を安全な場所へ」

「っ、うん、わかった」

「それはつまらない。赤羽さんにも聞いておいてもらわないと」

 

 銃声が二つ。直後、倒れる明さん。撃たれたと理解してすぐにどこが撃たれたかを確認する。撃たれたのは両足。考えるよりも先に傷口を圧迫する。こんなこともあろうかと、清潔な布は常に携帯している。

 

 俺は、銃を構えている、()()()()()()()()()を無視して、満の名を呼んだ。

 

「満! 動けるか!」

「……」

「満!」

 

 反応はある。名前を呼べばわずかに指先が動いている。しかし返事がない。過度なショックでそうなってしまっているんだろう。クソっ、俺がいながらなんてザマだ!

 

アルに挟まれてる……

え、姉御?

おい、なんで満ちゃんをこんな目に……

 

「赤羽さんの力は『虹の道を作り出す』ものではなく、『無限にある可能性への道を作り出す』もの。概念に影響を与えるそれを持つ赤羽さんの遺伝子があれば、『ホルダーになっていた可能性』への道を作り出すことが可能なのではないかと仮説を立てた。ですから、事故に見せかけて襲い、赤羽さんを手に入れたんです。遺伝子の元は手元にあった方がいいですから」

 

 止血を続ける俺の耳に、歌うような黒衛の言葉が入ってくる。これを満に聞かせるべきではない。ただ、明さんを放っておくわけにもいかない。頭を回すことしか能がない俺なのに、どうすればいいかわからない。焦っているのか? ただ単に、力がないだけなのか。

 

「そこにある薬は、僕のところに受診にきてくださった方々に渡したものと同じものです。あなたの遺伝子から作り出した、可能性を揺れ動かす鼓動、『Pendulum Beat』。赤羽さんのおかげで計画が遂行できます。ただ、ホルダーになればみなさん正しく力を振るってくれると思っていたのですが、まさかひったくりなんて言う低俗な犯罪を起こしてしまうなんて……誤算でした。ただ、もう多くの方は服用しています。直にサンプルが多く得られることでしょう」

「わ、たしの、せいで」

「違う、満!!」

「あぁそういえば気になりますよね。僕が他人である赤羽さんをどうやって『複製』したのか。通常なら途方もない時間がかかるはずでしたが、いやぁ、『幸運』でしたよ」

 

 明さんの体が強張る。掠れた声で満の名前を呼んだ。その声は届かない。満が自責の念に駆られるような言葉は届くのに、俺たちが名前を呼ぶ声には一切反応しない。

 

「ペンデュラムも、『幸運』にも『複製』できましたし。あぁ、明さんを責めないであげてください。涙ぐましい姉妹の愛情ですよ。僕が起こした事故で植物状態になってしまった満さんを僕が複製し、何も知らないまま元の日常を過ごさせる代わりに、協力を約束してくださっただけなんですから」

 

 満の目が、明さんに向いた。

 

「……ごめん、ごめんね、満……私は、満に、元気でいて、ほしくて」

「……なに、それ。だって、この私は、私じゃなくて、偽物で、本当の私は、あっちなんでしょ?」

「そうですよ。本当のあなたは、薬の元です。明るい未来を照らすための」

「──もう、やだ」

 

 満がその場に崩れ落ちる。それを見て、黒衛は笑った。

 

「こうしてバレたからには、もう意味もありませんしね……。『幸運』ももう必要ありませんし」

「貴様……!! 許さんぞ、満と明さんを愚弄しおって……!! 人の心への理解はないのか!!」

「愚弄? していませんよ。彼女らがいなければ、僕の計画は完遂できなかったんですから」

 

 この手合いは、道徳や倫理を説いたところで響かない。そもそも動機からしてめちゃくちゃだ。ホルダーになれば正義が増える? そんなわけがない。ペンデュラムスキルという特別を持っていなかった者がそれを突然手にすれば、言いたくはないが悪しき方向へと利用する者の方が多いだろう。国内での内紛も起こり得る。

 こんな、こんなやつの計画のために満は、明さんは……!!

 

「まぁ、あなたもこれから死ぬので、理解してもらおうとは思いませんよ。残念です、これから変わる未来を見ることができないなんて」

「クソッ……!」

 

 背後にいる黒衛が俺に銃口を向けるのが気配で伝わった。チートペンデュラムスキルめ、どうする!? どうすればこの場面を切り抜けられる!?

 

「それでは」

 

 思考の暇を与えず、俺の命を刈り取る合図が黒衛の口から放たれた。

 

 そして、俺に銃口を向けていた黒衛は吹き飛んでガラスに直撃し、泥のように溶けていく。

 

「……は?」

「ニコ、クールだ。クールになれば、己が何を成すべきか見えてくる」

 

 革靴が床を叩く音が聞こえる。硝煙ではない、昨今の日本では公害とも言われる煙の臭いを携えて、クールな声が聞こえた。

 

ルイス!!!

本当にクールな男だ、お前は!!

流石一期生で唯一まともに近いと言われている男

近いだけなのかよ

 

「所長……!!」

「状況はなんとなく把握した。遅れてすまないという謝罪は、全員無事で帰ってからクールにさせてくれ」

 

 所長はタバコを咥えて、肩を回す。準備運動をしながらガラスに近づいて、強度を確かめるように拳の裏でガラスを叩いた。

 

「……ヒーローのようなタイミングできたのは驚きましたが、無駄ですよ。そのガラスは」

「クールに興味がない」

 

 所長の言葉と、強烈な破壊音で黒衛の言葉が遮られる。所長が放ったのは、単純な蹴りだった。綺麗な動作で左上に切るように振りぬかれた右足が、ガラスを容易く破壊する。

 

「見せてもらったよ、お前の論文。おかげで気づいた。俺のペンデュラムスキルが、俺をクールたらしめるものだとな」

 

こいつは何を言ってるんだ?

ルイスがクールってだけだろ

元々は心を読むとかだっけ

どういう風に変わったんだ……?

 

 理解が追い付かない。あのガラスを人の力で? 心に関係するペンデュラムスキルだとすると、それが可能になるとは思えない。となると、分類ごと変わったのか? わからない。

 わかることは、また所長は色んなことをすっ飛ばして、最短距離で最適解を拾ってきたということだけだ。

 

「ニコ」

「……はい」

「こっちは任せろ。だから、お前はお前のやるべきことをクールにやれ」

 

 割れたガラスの向こう側に足を踏み入れながら、こちらを見ずに。

 

「満の相棒は、お前だ」

 

 所長の言葉を聞いた瞬間、明さんに謝罪して満に駆け寄る。崩れ落ちていた満を支えるように抱き上げて、満のうつろな目と目を合わせた。

 

「満、聞こえているか、満!!」

 

 いつもならドギマギして俺から離れてしまうような距離で満の名を呼ぶが、反応がまったくない。さっきは指先が動く程度の反応はあったのに、まったく。

 クソ、聞こえているのかいないのか、いやもう関係がない!! 言いたいことを言えばいいんだ、満なら、勝手に受け止めてくれる!!

 

 大きく息を吸い込んで、言葉を紡ごうとした時。俺の足を掴む手があった。

 

「明さん……?」

「手伝、わせてよ。脚が動かなくても、ペンデュラム振る、元気くらいはあるんだ」

 

 明さんが自身が持つペンデュラムを握って俺に見せた。元気があると言いながら、顔色はかなり悪い。見れば、体を引きずった跡がある。

 

「頼むよ、ニコさん。口、達者なんでしょ……?」

「……ふ、任せてください。俺には、口と頭くらいしか取り柄がないんです」

 

 俺は自身のペンデュラムを握り、明さんとタイミングを合わせて振った。一度、二度と左右に揺れ、その揺れは次第に大きくなる。

 

 ──ペンデュラムスキルは、最低二人いないと使用することができない。更に、その強度は二人の相性、目的、様々な要素に影響される。

 俺と明さんがペンデュラムを使用した時の強度はどうかなど、愚問だ。俺は満の相棒で、明さんは満の姉。そんな二人で使用するペンデュラムスキルがくだらない強度など、天地がひっくり返ろうとあり得ない。

 

 ペンデュラムが共鳴する。振り子の鼓動が重なって、光の波紋となり周囲に伝播した。次いで、俺の内側から得体の知れない力が湧き上がり、脳内に文字が躍り出す。

 

 ペンデュラムスキル『口八丁』。口がうまくなる、ただそれだけのスキルだ。しかし、それが明さんの『幸運』と合わされば。

 満を助け出したいがために紡ぐ俺の言葉は、最適解を導き出せる。

 

「満、聞け!! いや、聞かなくてもいい、俺を見ろ!! お前が本物か偽物か、俺にはそんなことどうだっていい!! お前は満だ!! 赤羽満だ!! お前以外にお前はいない!! お前は、俺と過ごしてきた毎日が偽物だとでも言うのか? そもそもお前は何を持って自身を偽物だと断じた!! 俺の隣で、ダメでポンコツで、頭と口を回すことしか能がない、無能だと烙印を押されても仕方がない俺を、俺を受け入れ、俺を励ましていたあの笑顔も偽物だとでも言うのか!! 明さんと過ごしていた毎日を、お互いを思い合って笑い合っていたあの笑顔も、偽物だと言うのか!! お前が偽物だと言うのなら、俺は許さん!! 俺が信じた赤羽満を否定することなど、例えお前自身であろうと!! 絶対に許さん!!」

 

 満の震えが、緩やかになっていく。

 

「……お前が利用され、薬が蔓延って、多くの被害が出ることになるかもしれん!! 厳しいことを言うぞ。この件が明るみになれば、お前を責める輩は必ずいる。お前は被害者だが、加害者だと弾劾する輩はいる。だがそれがどうした。お前の隣には、俺がいる!! 俺がお前を見ている!! どれだけお前が苦しんでいようと、俺には満を支える体と心がある!! この程度の逆境など、俺とお前なら容易く跳ね返せる!! お前は俺の相棒だ。このミッドナイト・サイコナイト、深夜の狂騎士の、世界でたった一人の相棒なんだ!!」

 

 満の手を掴む。満は、力なく俺の手の感触を確かめた後、ぎゅっと握り返した。

 

「……ニコ、先輩」

「なんだ」

「ありがとうございます」

 

 満の言葉に笑って手を引くと、満が立ち上がった。

 

「私、背負います。利用されたからって、私の責任じゃないなんて私には思えない」

「そうか」

「……だから、その」

「一緒に背負ってやる。言っただろう。お前は、俺にとって世界でたった一人の相棒なんだ」

「っ、はい!!」

 

 いつものように笑顔を咲かせた満は、すぐに表情を引き締めて明さんの近くに立ち、しゃがみこんだ。それに合わせ、明さんも力を振り絞って顔を上げる。

 

「満……」

「お姉ちゃん。……言いたいことは山ほどあるけど!」

 

 満が明さんの手を取り、自分の胸に当てた。

 

「ありがとう! ……他の言いたいことは、あとでいっぱい言うから、おとなしくしてて!」

「……はは、こりゃ怖そうだね」

「覚悟しといて!!」

 

 いつも通りの姉妹のやり取りに、思わず微笑んでしまう。いや、笑っている場合ではない。こうしている今も、所長が黒衛と戦っているはずだ。

 満が立ち上がって、俺の方を向いた。そして、すぐにきょとんとした表情に変わる。

 

「どうした?」

「ニコ先輩、うしろ……」

「なにっ、まさかっ!」

 

 所長がやられたとでも言うのか!? 弾かれたように振り向けば、そこには。

 

 完全に伸びている黒衛を座布団にして、タバコを吸っている所長がいた。

 

「もう終わってる!?」

「ついさっきな。それより、やはりお前はクールだ」

 

 口の端を僅かに上げて笑い、紫煙を吐き出す。ついている外傷は、ガラスを蹴破った時にできた切り傷のみだった。まったく苦戦しなかったのだろう。満に夢中になっていたから戦闘音が聞こえていなかったのかと思ったが、戦闘音が出るまでもなく終わったからだったのか。

 

「何にせよ、犯人は取り押さえた。あとは……」

「あっ」

「満!!」

 

 クソ、そうか、さっき俺は見ていたはずなのに! 『複製』によって生まれた黒衛が溶けていったのを! なぜその可能性に至らなかったんだ!

 満の体が、泥のように溶け始めていた。衝撃を受けたわけではないからか、ゆっくりと。真夏の炎天下に放置したアイスのように。

 

 しかし、満は笑っていた。そして、ペンデュラムを握りしめ、俺に向かって掲げる。

 

「ニコ先輩。ペンデュラム!」

「えっ、あ、なにっ?」

「私のペンデュラムスキルは、『無限にある可能性への道を作り出す』もの! だったら、寝ちゃってるあっちの私が起きる可能性への道も、きっと作れる!」

「……!!」

「ふふ。頭脳も私が先を行っちゃいましたね!」

「……ふっ。一度の勝利で図に乗るなよ? これから何度でも勝利してから言うんだな」

「これから、何度でも?」

「あぁ。これから、何度でもだ」

 

 俺がペンデュラムを掲げると、俺と満のペンデュラムがゆっくりと左右に揺れ出した。それはすぐに大きな鼓動となり、虹色の光の波紋が周囲に広がっていく。

 

 満の体が、どんどん溶けていく。それなのに、俺たちは笑っていた。あくまで可能性だというのに、必ずくる未来だと信じているから。

 

「先輩。先輩の相棒は、先輩の隣は私のものですよ? 絶対空けておいてくださいね!」

「……あっ、それは、所長に聞いてみなければ」

「もう! そうでしょうけど、頷いておけばいいんですよ、こういう時は!」

「あっ、そうか! すまん!」

「いいですよ、別に! ……ニコ先輩」

「なんだ?」

 

 もうすぐ満が溶け切ってしまう。正直、表情がどうなっているかなど視認できない。

 

 それでも、俺には満の表情がわかった。

 

「また明日!」

「あぁ、また明日」

 

 満は笑顔を咲かせて、やがて泥のように溶けて消えていった。

 

「……お姉ちゃんには一言もなし?」

「どうせすぐに会えるんですから、拗ねないでくださいよ」

「そう、だね。あとすっごい痛い。救急車呼んで」

「もう呼んである。この俺が、クールにな」

 

 そう言って所長は、俺の肩を叩いた。

 

「さぁ、もうひと踏ん張りだ。クールに行こう」

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part18

 

643:このライバーがすごい! ID:qGsWSOD96

マリー「というわけで、『Pendulum Beat』終了です。お疲れ様でしたー」

ニコ「(無言で周りの物をなぎ倒しながらどこかへ行く音)」

満ちゃん「わっ、ニコさん!? もう、なに? ……ふふ、ちゃんといるよ」

 

644:このライバーがすごい! ID:OmQx9rU8b

 

645:このライバーがすごい! ID:r6sSalaTF

 

646:このライバーがすごい! ID:/rOTx9RoA

ニコ、お前ってやつは……

 

647:このライバーがすごい! ID:KF2smU7Uw

入り込みすぎた代償

 

648:このライバーがすごい! ID:NzBjcANl4

満ちゃん「月宮さんとアザミさんからもDMきてる」

 

649:このライバーがすごい! ID:yw9oavCRl

アザミんめちゃくちゃ動揺してそう

 

650:このライバーがすごい! ID:HiroR2qrb

次会った時抱きしめて離れなさそう

 

651:このライバーがすごい! ID:uY2rZK7Ok

>>650

今のニコがそうだぞ

 

652:このライバーがすごい! ID:FMvikBR1e

満ちゃん「もー、ニコさん抱き着かないで! 動きにくい!」

マリー「動きにくくなかったらいいんだ?」

満ちゃん「う、動きにくくなくてもダメだけど」

ニコ「えぇ!? ダメなの!?」

満ちゃん「うそうそ! いいよ、もう。仕方ないなぁ」

 

653:このライバーがすごい! ID:+zWUQZTCv

なんだろう、このダメ彼氏と包容力彼女みたいな

 

654:このライバーがすごい! ID:ANpWntWrP

ニコは情けなくてなんぼだからな

 

655:このライバーがすごい! ID:d3m0p3X1Y

でもニコは即興であんなセリフが出るから、情けなくてもいいんだ

 

656:このライバーがすごい! ID:Ws4fxGiW2

普通に天才だろあいつ

 

657:このライバーがすごい! ID:NBig9ym2e

色々代償にして、主人公としての才能をもらった

 

658:このライバーがすごい! ID:CuuK60Ii7

あれ見せられたら、友だちがずっと離れない理由もわかるわ

 

659:このライバーがすごい! ID:wMJ8/Jwqa

あー、俺もニコの友だちだったらなぁ

やっとわかったかって腕組みできたのになぁ

 

660:このライバーがすごい! ID:/xPZFcBZf

つか、途中からコメントするの忘れてたわ

 

661:このライバーがすごい! ID:8wW+UA+HI

普通にショックだった

 

662:このライバーがすごい! ID:5rRpGXhSn

マリーにお気持ち届かないかな……

 

663:このライバーがすごい! ID:5v7Hn/YTm

マリーのメンタルは鬼だから大丈夫だろ

 

664:このライバーがすごい! ID:u6kigiqbT

>>663

そういう考えが人を壊すんだぞ

 

665:このライバーがすごい! ID:8RdTsTuUh

満ちゃん「ニコさんが引っ付き虫になっちゃった」

マリー「嬉しそうな声してるけど」

満ちゃん「真理さんは羨ましそうな声してますけど」

マリー「上等じゃん」

満ちゃん「ごめんなさい……」

 

666:このライバーがすごい! ID:tMyFJ/GHu

 

667:このライバーがすごい! ID:eXQqlmTTs

 

668:このライバーがすごい! ID:7NmRcQmkV

それくらい言っていい権利ある

 

669:このライバーがすごい! ID:geYS2b/VF

でも、あんだけ入り込んでたらニコがこうなるのも無理ないよな

 

670:このライバーがすごい! ID:huzzz91yj

普段の溺愛ぶりからして違和感まったくない

 

671:このライバーがすごい! ID:ahtit76Fq

見てる分には面白かったけど、やる方はカロリー高そうだな

 

672:このライバーがすごい! ID:dlVgYd2Tw

見る方もカロリーえぐかったぞ

 

673:このライバーがすごい! ID:A33NYsGth

マリー「協力してくれた皆さんにもきてもらいましょう」

アル「俺、マジで最低じゃね?」

姉御「なんか、満ちゃんにもニコさんにもそうだけど、星菜にも謝んなきゃいけない気がしてる」

ルイス「ふっ、クールだな」

 

674:このライバーがすごい! ID:r6kkXRxqp

一人だけシナリオでも現実でもまったく変わらない人がいますね……

 

675:このライバーがすごい! ID:6zLlSfxP2

一期生がめちゃくちゃだっていうのも変わらなかったしな

 

676:このライバーがすごい! ID:GIHPXGTdC

しかし、ニコがTRPG適性高いのは正解だったな

 

677:このライバーがすごい! ID:4rM02lT+s

結局、終盤のあの場面であぁいうセリフが出るかどうかだしな

 

678:このライバーがすごい! ID:rNsBc6Ml2

素であれを言えるのは才能でしかない

 

679:このライバーがすごい! ID:spQnfgqoz

後日談見せてくれ

 

680:このライバーがすごい! ID:7lZWAO3e3

後日談をボイスで出してくれ

 

681:このライバーがすごい! ID:V3U+KQUug

ニコ「ふぅ、落ち着いた」

満ちゃん「落ち着いたなら離して……」

ニコ「もうちょっと」

 

682:このライバーがすごい! ID:YhzWyWBp4

ニコ、幼児退行してて草

 

683:このライバーがすごい! ID:PYvJ2SwyM

少女を抱きしめて離さない26歳男性……

 

684:このライバーがすごい! ID:j+wT09s/v

兄妹みたいなもんだしな

 

685:このライバーがすごい! ID:cqbOeVj27

わざわざ変な言い方してやるなよ

 

686:このライバーがすごい! ID:qYW4KlaTV

ニコ「色々感情は揺さぶられたが、一言でまとめるなら楽しかった、だな」

満ちゃん「うん! 楽しかった!」

マリー「そう言ってもらえるとありがたいよ。テストプレイみたいなもんだから、シナリオもうちょっと修正して、みんなにも配布するね」

 

687:このライバーがすごい! ID:7lCfWL4e/

無料配布!?

 

688:このライバーがすごい! ID:2sXS0u5pr

これで宣伝になったんだから、お金取ればいいのに

 

689:このライバーがすごい! ID:vLFR8X21x

誰か一緒にやってくれる人いないかな

 

690:このライバーがすごい! ID:L/U9u0XdO

まず俺たちは友だちを探すところからか……

 

691:このライバーがすごい! ID:zDFyFr0ny

姉御「これを機に、私のことお姉ちゃんって呼んでくれない?」

満ちゃん「え、いいんですか!」

コメント欄星菜ちゃん「いいけどだめ!」

 

692:このライバーがすごい! ID:yt72dx4WT

かわいい

 

693:このライバーがすごい! ID:15Sc3Wiy7

姉妹になれたみたいで嬉しいけど、姉御の妹ポジを渡したくないってことか

 

694:このライバーがすごい! ID:KVKfEU4v/

プロエジェは大人がアレなのに、子どもは純粋でいいよな

 

695:このライバーがすごい! ID:nX1dVQ9M/

子どもがそもそも二人しかいないけど

 

696:このライバーがすごい! ID:akb8kMpaa

むしろなんでこの環境にいてまだ純粋なんだ

 

697:このライバーがすごい! ID:lblVNv2u1

ニコも大概純粋だけどな

 

698:このライバーがすごい! ID:pNxPEpASU

ニコ「月宮さんとアザミがうちにくるらしい」

満ちゃん「めっちゃ心配してくれてる……」

ニコ「あとアザミがマリーを許さないと言っている」

マリー「ヤバ」

ニコ「月宮さんが必死に止めてくれているらしい」

 

699:このライバーがすごい! ID:QO1BK2EV3

 

700:このライバーがすごい! ID:zKolwCse5

アザミんがブチギレたらヤバそう

 

701:このライバーがすごい! ID:vaDvPQj4r

満ちゃん、大事にされてるなぁ

 

702:このライバーがすごい! ID:yWDDwd3bh

そりゃあんな子は大事にするだろ

 

703:このライバーがすごい! ID:6vyNXdsu4

記念配信は終わって、ニッコリ探偵団でまた配信してくれるらしいぞ!

 

704:このライバーがすごい! ID:2dA4wg8e7

供給多くて助かる

 

705:このライバーがすごい! ID:dkEvx8ouc

今のうちに飯だ!

 

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