稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第88話 新人のお知らせ

「しっ、新人!!???」

「今更か?」

「結構前から告知されてたっスよ」

 

 『楽園都市』翌日。流石に全員配信を休んでおり、だからこそ配信をしようと思った矢先、帝斗から「知ってると思うけど、次の金曜に新人の初配信あるぞ」と言われ、びっくり仰天。

 し、新人? なぜこの時期に? 俺のお披露目がもうあと一週間近いというのに。『楽園都市』が終わったタイミングで波状攻撃を仕掛けようということか? だが、新人がデビューしてすぐに3Dお披露目があるというのはどうだろう。新人の大事な時期に俺の配信に人が吸われるというのは申し訳ない気もする。

 

 というか。

 

「VTuberになって8か月、ようやく俺も先輩になるのか……!」

「私も知らなかった! 佐藤さんずっと楽園都市と3Dお披露目で頭いっぱいだったから」

「楽園都市が終わったから、脳の容量が空いたってことか」

「そんなシャーペン方式で記憶してんスか?」

 

 余裕の話だ。余裕の。

 

 新人と聞いたらこうしてはおれん。早速公式ホームページを立ち上げて、新人のページへと向かう。先輩は先輩らしい振る舞いをしなければ。はじめ星菜さんに誘ってもらったように、俺も新人を誘って人気の手助けをした方がいいか? そもそも俺のような人間に手助けされるのは屈辱ではないのか?

 いや、恐れるな。コミュニケーションを恐れていては成長しない。このミッドナイト・サイコナイト、新たなステージへのぼるためには、頼れる先輩になる必要がある!

 

 そのためには新人がどんな人かを知る必要があるだろう。紹介ページを見て、俺の脳に新人について叩きこまなければ。

 

 紹介ページに飛べば、三人の立ち絵が並ぶ。

中央に立っているのは、上半身裸で、体色が薄い紫。髪は肩まで届く銀。頭には一対の禍々しく赤黒い角が生えており、自信満々に吊り上がった目は、月のような光を携えている。

 その側で恭しく頭を下げているのは、近未来的な通信機を右耳に付けている女性。服装は緑がかった青を基調としたパンツスタイルのスーツ。髪は薄い緑で、目は柔らかい印象を与えるが、幾何学的な文様が浮かび上がっている。

 そして、まるで画面の向こうにいる俺たちを見下すように笑っている少年。何の変哲もないTシャツと短パンを身に着けており、どちらも色は白。髪は前髪を分けたウルフカットで、髪の色も白い。瞳は青で、口元には嘲笑が浮かんでいる。目につくのは、その背に生えた一対の天使を思わせる大きな白い翼。

 

「ファンタジー……?」

「な。珍しいだろ」

「『project:eden』って、ファンタジー路線のライバーいなかったっスよね」

「別の意味でファンタジーな人はいるけど……」

 

 多分それでいうと俺もそのファンタジーのうちに入っている。

 

 ファンタジー。幻想的、あるいは空想的。現実世界ではありえないそれらを指して使われることが多い。魔法なんかがわかりやすいだろう。

 『project:eden』は現実からはそう外れていない……俺やマリーなどのように超常的力を持つ者はいるが、見た目でわかりやすくファンタジーを伝える者はいなかった。だから、『project:eden』として新しい試みというわけだろう。猶更先輩である俺がサポートしてやらねば……!

 

 新人の情報を見るために、立ち絵をクリックする。『project:eden』の紹介ページはまず同期の立ち絵が並び、立ち絵をクリックすると個人の紹介ページへと飛ぶことができる。まずは、中央にいる上半身裸の男からだ。

 

「ねずみ!?」

「ねずみだ! かわいい!」

 

 紹介ページに飛んだらあの上半身裸の男はおらず、代わりに真っ黒で目が赤いねずみがいた。ど、どういうことだ!? まさか、あの上半身裸の男はインターネットに潜む幽霊で、俺と満だけが視認できる存在だったということか!?

 お、落ち着け。まだそうと決まったわけではない。紹介文を見ればその秘密が書かれているはずだ。

 

「ただの紹介ページなのに随分盛り上がってるな」

「かわいくていいじゃないですか」

「何っ!? 元魔王で魔力をほぼ失い、全魔力を消費すれば元に戻れるが、すぐにねずみになってしまうだと!?」

「そんな説明しながら驚くの、漫画か佐藤さんくらいだよ」

 

 名前はザミリエル。魔王ザミリエルか……。カッコいいな。しかし、魔王というからには先輩面をして世話を焼こうとしても、受け入れない可能性がある。魔王は決して他人にはへりくだらない。いくらねずみの姿であろうと、魔王は魔王だ。となると、ある程度敬うべきか……? いや、俺は人間だから別にいいか。俺が魔族であったならば敬う必要があっただろうが……待て、俺が魔族という可能性はないか?

 

「ない」

 

 ずっと一緒にいる満がないというのだからないのだろう。いいじゃないか別に。かっこよくないか? 魔族。俺は幽霊が見えるし触れるし話せるし、更に実体化までできるんだからその片鱗くらいあってもよくないか。

 今度ザミリエルさんに見てもらうか。魔王である彼ならば、俺の隠された魔族としての血を見抜いてくれるかもしれない。

 

「野暮なこと言うけど、実際は魔王じゃねぇぞ」

「心を読んで夢を否定するのはやめてくれないか?」

 

 このリアリストめ。だからお前は安定した生活を送るんだ! それの何が悪い!?

 

 気が動転した。次は女性を見るとしよう。じょ、女性を見るといってもいやらしい意味ではなく、もちろん紹介ページを見るだけだ。

 

「セレナさんか。普通の女性か? いや、違うっ! 魔族だと!? 魔王のお世話係……魔王にお世話係? 魔王の子にお世話係ならわかるが」

「ねずみだからじゃない?」

「多分苦労人っスよね」

「ザミリエルさんからは佐藤と同じにおいを感じたから、多分そうだな」

「何っ!? 同じにおいということは、やはり俺も魔族か!?」

「違うよ」

「もっと愛のある否定をしてくれ」

 

 否定だけだと悲しくなるだろう。俺も半分冗談で言っているんだ。そこのところを理解して愛を持って接してほしい。

 

 セレナさんはどうやらお世話係らしく、更に魔王軍の指揮もとっているらしい。魔王がとらないのか? でも、確かに魔王は直接の指揮は下さず、後方でどっしり構えているイメージがある。絶大な強さを誇る魔族の象徴として君臨し、細々としたことは部下に任せているのだろう。

 

「佐藤さんと同じ?」

「満。それは俺があまりにも仕事がなく、身の回りのお世話を帝斗と透華に任せていると言いたいのか?」

 

 かわいい笑顔で満が頷いた。貴様……! 事実だから反論できないのをいいことに……!

 

 最後は天使の少年だ。お姉さま方から人気が出そうな見た目をしている。少し気になるのは、こちらを見下すような表情をしていたことか。

 名前はルーシィ。魔王の次に強く、魔王含めて大体の生物を見下しているらしい。ねずみになったことでただでさえ感じにくい魔王の威厳が更に失われた。しかも魔王の次に強いとは言うが、ザミリエルさんは今ねずみだから、自動的に一番強くなるんじゃないか?

 ただ、こうして同期としてデビューするということは、見下しているとは言いつつもやはり忠誠心は持っているのだろう。でなければさっさと魔王を下し、その席に座ろうとしているに違いない。

 

「佐藤さん、めちゃくちゃ見下されそう……」

「ふっ、構わん。俺の強さは俺自身が理解していればいい話だからな」

「マズいな、ファンタジーに触れて佐藤の厨二心がうずいてる」

「先輩のお母さんからもらった黒歴史ノートでも見せます?」

「俺は佐藤たけし。26歳男性だ」

 

 透華め、軽々しくリーサルウェポンを出そうとしてきおって! 厨二の何が悪い! 自分がカッコいいと思うことをカッコいいと言っているだけだろう! それを社会に出てからもやるのは少し社会性に欠けるとは思うが、だとしても否定されていいとはならない! この世界はもっと多様性で溢れるべきだ!

 まったく、『project:eden』を見習え。多様性の塊だぞ。『project:eden』を和訳すれば『多様性』と変換されるに違いない。多様性がありすぎて、ただファンタジーなだけでは先輩方に埋もれてしまう可能性すらある。

 

「しかし、初配信が楽しみだな。初めてできる後輩だから嬉しい」

「”先輩”が、私だけが使う呼称じゃなくなるっスね」

「ザミリエルさんとルーシィさんは先輩って言わなさそうじゃね?」

「いや、見下すキャラというのはあえて”先輩”ということで煽る特徴もある。全然敬っていないのに”先輩”とつけてバカにするんだ」

「佐藤さん、かわいそう……」

「かわいそうに思うのは煽られてからにしてくれ」

 

 俺も不服ながら見下されて煽られる未来しか見えないが。

 

 セレナさんとルーシィさんはなんとなくキャラ的なものは伝わってくるが、ザミリエルさんはあまりわからない。紹介文には魔王であったことと魔力を失ったこと、元の姿に戻るには全魔力を使用することしか書かれていなかった。魔王の姿の立ち絵を見る限り、自信満々ではありそうだが……。

 

「ん? そういえば帝斗。さっき俺とザミリエルさんが同じにおいがすると言っていたな。話したことがあるのか?」

「いや? なんか雰囲気でわかるだろ」

「そうっスね。ザミリエルさんは先輩と近い感じがします」

「そうだねー。どことなくポンコツな感じするし」

 

 ……俺がわかりやすいのか、三人が俺のことをわかりすぎているのか。どちらかはわからないが、後者だと思っておこう。その方が嬉しい。

 

 俺がザミリエルさんと似ているかどうかは、初配信を見ればわかるだろう。もしかして俺に憧れて『project:eden』に入ったとか言ってくれるかもしれん。そうなれば、魔王に一目置かれた男ということになる。

 

 フフフ、ミッドナイト・サイコナイトはここから始まる!

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part20

 

59:このライバーがすごい! ID:cMQpAa6Fd

ニッコリ探偵団が先輩になる日も近い

 

60:このライバーがすごい! ID:na70za5mA

ニコが先輩か……

 

61:このライバーがすごい! ID:FCWEjxEKy

優姫ちゃんが先輩っていうのは容易に想像できる

 

62:このライバーがすごい! ID:VclOGE9V3

アザミんも想像できる

 

63:このライバーがすごい! ID:fvj1rV/yV

ニコは……

 

64:このライバーがすごい! ID:GZpvg7rRG

末っ子感強いんだよあいつ

 

65:このライバーがすごい! ID:egrU8vbhb

張り切って先輩面しようとしてる姿が目に浮かぶ

 

66:このライバーがすごい! ID:jv0lczri1

ルーシィあたりに思いきり見下されておもちゃにされそう

 

67:このライバーがすごい! ID:hnT2iFSMb

生意気天使ショタってまたなんともまぁ

 

68:このライバーがすごい! ID:16q5fp8lp

ザミリエルとニコ、何か親和性を感じる

 

69:このライバーがすごい! ID:nJRuxu0qn

ニコがファンタジー要素に刺激されて、新しい能力に目覚めたりしないかな

 

70:このライバーがすごい! ID:R2F5ccpsk

シゲキ!?

 

71:このライバーがすごい! ID:4oFqw5WPs

シゲキはまずい

 

72:このライバーがすごい! ID:n2b9ZtpW3

備えろ、シゲキ的にされるぞ!

 

73:このライバーがすごい! ID:hRQ/gDn9V

流石にこんなところまで見てないだろ

 

74:このライバーがすごい! ID:sS1gq22D/

>>73

見てないとしてもシゲキ的な要素を出したら見に来る

 

75:このライバーがすごい! ID:x/I5s5ag0

プロエジェで魔王が世界の広さを知る物語

 

76:このライバーがすごい! ID:FfRtHJeXO

ニッコリ探偵団がどうやって後輩に絡むか楽しみ

 

77:このライバーがすごい! ID:w/DggXLHA

ニコ⇒いつも通りおもちゃ

満ちゃん⇒空回りするニコのサポート

優姫ちゃん⇒理想のいい先輩

アザミん⇒興味があれば見る

 

78:このライバーがすごい! ID:RaQ0t0Dmp

>>77

満ちゃんは仕方ないとして、まともなのが優姫ちゃんしかいない

 

79:このライバーがすごい! ID:gbaz0d2Mc

ルーシィが能力ないタイプの傲慢だったら、アザミんめっちゃ嫌いそうだな

 

80:このライバーがすごい! ID:1gjwgZ39+

立ち位置的に優姫ちゃんとセレナが合いそう

 

81:このライバーがすごい! ID:9uBMRbgyk

苦労人と(暫定)苦労人だしな

 

82:このライバーがすごい! ID:UcWNIbab3

アザミんが面白がってニコとセレナを近づけるに一票

 

83:このライバーがすごい! ID:jtRrozb1a

ニコが燃えない属性手に入れたから、どうやって燃えさせるか討論してたしな

 

84:このライバーがすごい! ID:DBrdD4kqE

正直女性関係どうこうではもう燃えないだろ

 

85:このライバーがすごい! ID:H5lXewUuZ

シャレにならない問題発言とかは絶対しないだろうしなぁ

 

86:このライバーがすごい! ID:7qmDCJwi/

女性ライバーと一緒にいさせて童貞を楽しむコンテンツと化してる

 

87:このライバーがすごい! ID:RrlbZSoJO

童貞を楽しむってなんだ……?

 

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