稼ぎの少ないオカルト事務所所長、VTuberになる   作:酉柄レイム

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第93話 3Dお披露目配信 (3)

「満ちゃーん!」

「星菜ちゃん!」

 

 満と星菜さんが仲良く手を繋いできゃっきゃしている。涙。本当に全然慣れない。なぜこうも尊いんだ。いや、理由はわかっている。満は既に命を失った存在であり、直接話せるのは俺くらいだったのに、同年代の友だちと仲良くしている姿を見ることは不可能だったからだ。なんで理由もわかっているのに毎回泣いてしまうんだ、俺は。

 

ニコ、画面から外れろ

女の子同士の仲良しにちょこんと居座る独身成人男性

ニコ、泣いてないか?

すすり泣く声が聞こえる……

 

 視聴者の言う通り、俺は邪魔だろう。俺も第三者であった場合、というか第三者でなくとも、後で満と星菜さんが仲良くしている様子を見返したい。そこに俺がいるのはかなり邪魔だ。可愛らしく仲良くしている女の子二人と、隅ですすり泣いている男だぞ? 絶対に邪魔だろう。

 というわけで画面から出ようと歩こうとすると、二つの手に腕をがっちり掴まれた。見れば、呆れ顔の満と不満そうな星菜さん。

 

「どこ行くの? どうせ変なこと考えてたんだろうけど、ここにいていいよ!」

「私、ニコさんにも会いに来たのに、いなくなっちゃったら寂しいです」

「しっ、しかし、視聴者が俺に出ていけと言っている! 俺もその通りだと思ったからそうしようとしたんだ!」

 

あー! ニコが言いつけた!

違うんだ、満ちゃん、星菜ちゃん

これはいつものノリというかなんというか

信じてくれ、俺たちはニコが好きなんだ

 

 俺が言いつけた瞬間、視聴者たちが一斉に言い訳を始める。なんか親近感がわくな……。俺もいつも似たようなことをしている気がする。もしかして俺の性質が視聴者にうつってしまったのか? 近いうちに新種のウイルスとして俺が研究されるかもしれない。そうなったらシゲキが大喜びしそうだから、今のうちにシェルターでも買っておこう。

 ダメだ、シェルターが容易く破壊される未来しか見えない。なぜあいつはこの現代日本で破壊力を容易に想像させるんだ。

 

 満と星菜さんに止められて幾分か落ち着き、「すまない」と謝罪してからソファに座る。と、俺を挟んで満と星菜さんが座った。

 

「なっ、なぜ隣に座る!!」

「動揺するのはいいけど、危ないから飛び上がって対面のソファにうつるのはやめて」

「えー。せっかくだし、隣に並びたいなーって思ったんですけど、だめですか……?」

「仕方がないな」

「年下に弱い……」

 

星菜ちゃんにだめですか? って言われて断れる男はいない

見損なったぞ、ニコ

マリーとあんなことやった手前、断れないだろ

どっちかっていうとあんなことやられた手前だと思う

 

 それもあるが、クリスマスイブという大切な日にわざわざ俺のお披露目に足を運んでくれたのに、あれはダメだこれもダメだと言いたくないというのもある。マリーはある程度分別……がついていないように見えるが、ついている。だからこそ拒否をしたとしても勝手に飲み込んで処理してくれるが、星菜さんはそうではない。俺がいらない対応をとってしまったせいで機嫌を損ね、今日という日に嫌な思い出を作ってもらいたくない。

 まぁ、年下に弱いというのもその通りだと思う。俺は人より甘やかされて生きてきた自信がある。現在進行形でそうだ。それならば、俺が今までいろんな人から与えられてきた分、俺に甘えてくれる人に返していかなければならない。それが大人としての責務であると思っている。

 

 星菜さんの隣に座ると、さっきまでの寂しそうな顔が嘘のように笑顔を咲かせた。老若男女から好かれそうな子だな、本当に。

 

「えへへ。やっぱりニコさんやさしい!」

「優しいか……それは、星菜さんが物事をいい風に捉える善性を持っているからだと思う。俺自身はそれほど優しくはない」

「そんなことないです! 私、ニコさんみたいなお兄ちゃんほしかったもん」

「星菜さんのような妹がいたら、もっと楽しかっただろうな」

「もしかしたら仕事もあったかもね」

「俺に仕事がないことを思い出させる必要あったか?」

 

絶対一人っ子だもんな

下の弟か妹がいたら、結構まともな人生歩んでそう

人のために動けるやつだからな

規範となるために、みたいな

 

 一理ある。星菜さんのような妹がいるのに、依頼のないオカルト事務所の所長などやっていられない。もしかしたらやっていたかもしれないが、しっかりとした戦略を組んで挑んでいたことだろう。今の人生のように、カッコよくて自分にその力があるからと脳死で立ち上げることはしなかった。それをすると、俺が兄だと知られた時の妹の立場が弱くなるからな。

 身内であろうと違う人間といえば違う人間。だがそう捉えられないのがまた人間というものだ。身内が変なことをやっているやつがいれば、「変なことをやっているやつの身内」というフィルターがかかってしまう。……そう考えれば、オカルト事務所の所長をやりながらVTuberをしている息子って両親にとってはどうなのだろうか。

 

 考えないようにしよう。

 

「満ちゃんが羨ましい……毎日ニコさんのおかしなところが見られるんだもん」

「毎日楽しくて面白いけど、結構疲れるよ?」

「俺を珍獣か何かだと思っていないか?」

 

お前は珍獣だ、ニコ

ニコだから燃えないって時点でもう違う生き物だろ

毎回同じようなことに同じような反応してるのに面白いしな

ガラパゴス諸島出身か?

 

 違う生き物とは失礼な。人よりは少し違うとは思っているが、俺はれっきとした人間だ。それに、『project:eden』の中ではまともな方だと自負している。……まぁ、俺よりもまともな人はいるが。第一、振れ幅がすごすぎるとは思わないか? まともな人はまともすぎるし、まともじゃない人はまともじゃ無さすぎる。ルイスとイベリスとシゲキと数時間一緒にいたら頭がおかしくなる自信があるぞ。

 きっと、運営もバランスを取るために時々まともな人を採用しているのだろう。そうでなければ、『project:eden』が触れてはならない集団となってしまう。現に、まともじゃない組にはあまり案件配信の話がこないしな。

 ……俺にもきていないのでは!!?

 

「失敗されちゃ困るからでしょ」

 

 答えは出た。

 

「それでですねー。今日呼んでもらえただけですっごく嬉しいんですけど、今日はニコさんのお披露目で、ニコさんが主役の日ですので! 私が今からニコさんを喜ばせてあげます!」

「おぉ! いいのか? 本来であれば俺がおもてなししなければならないのに」

「いっつもニコさんの配信を見て、勝手に元気をもらってるのでそのお返しです!」

「満、どうしたら星菜さんのようないい子が育つんだと思う?」

「私もいい子だと思うけど……」

 

満ちゃん、嫉妬

満ちゃんも星菜ちゃんもニコもいい子だ

全員育ち方が気になる

特にニコ

 

 ちょっと面白くなさそうに口の先を尖らせた満を必死に宥めていると、星菜さんがゆっくり立ち上がり、俺を見る。満面の笑みを俺に向けると、深く息を吸って、叫んだ。

 

「お誕生日、おめでとうございます!!」

 

 それを合図に、オシャレな音楽が鳴り響く。これから何が訪れるかをすべて察した俺の視界に映ったのは、背もたれが異常に高く、そこから鳳凰の羽のごとき金色の装飾が施された、豪華絢爛な椅子に座ったイベリスと、そのイベリスが座っている椅子を鎖でつなぎ、大型のバイクで牽引しているルイスと、鳳凰の上でヤンキー座りし、その手に得体の知れないリモコンを手にしているシゲキ。登場だけであまりにもやかましすぎる。

 

なんだこれ!?

プロエジェの卓越した3D技術を無駄な形で行使している図

一番ややこしいやつらがきた!

誕生日おめでとう、ニコ!

これが誕生日を祝ってる姿か?

 

「ハッピーバースデー!!!!! シゲキ的なお祝いをくらえ!!」

 

 シゲキがリモコンを操作すると、鳳凰の羽の先が開く。ミサイルかと身構えたその瞬間、爆音とともにすべての羽からクラッカーが鳴らされた。色とりどりのテープがまき散らされ、視覚と聴覚がぐちゃぐちゃになる。

 そのテープの嵐から現れたのは、豪華絢爛な椅子から飛び上がったイベリスだった。イベリスは対面のソファに着地し、「ショータイムよ!」と高らかに宣言。それとともに、色とりどりの照明がテーブルに当てられる。

 

「いっ、一体何が……」

「ニコ、このクールなコーヒーの香りでも嗅いでクールになれ」

「あ、あぁ、ありがとう」

 

 混乱する俺に、ルイスからコーヒーが手渡される。クールすぎる。なぜこんな事態に陥っていてクールを勧められるんだ?

 

 言われた通り落ち着こうとコーヒーを口に入れた瞬間、テーブルの真上の天井が勢いよく開き、そこからゆっくりと巨大なケーキが下りてきた。神が降臨するときくらい神々しく、ウエディングケーキのように背が高いケーキが。どうなっているんだこのスタジオは!! なぜ天井が開く!?

 

「ケーキはオシャレが一番! さっき完成させた出来立てほやほやのオシャレバースデーケーキよ! オシャレにいただきなさい!」

「ニコ! このシゲキ的フォークを使え!!」

「あぶなっ!」

 

 シゲキからフォークが全力投球され、串刺しになる未来が見えた瞬間、ルイスがクールにフォークをキャッチしてくれる。そのフォークはよく見れば持ち手が中央にしかなく、両端が無数に枝分かれしていて、その先すべてがフォークの先端の形をしている。食べにくいどころの騒ぎじゃない。あとルイスはどうやってキャッチしたんだ?

 

「というわけで、誕生日おめでとうございます!」

「あ、ありがとう! 正直脳が追い付いていない! 何がどうなっている!?」

「ふっ、ただニコのバースデーをクールに彩りたかった、それだけの話だ」

「いいえ、オシャレに彩っているのよ!」

「バカが、シゲキ的だろうが!!!!!!」

「いいや、カオスだ!!」

「「「なにっ、カオス!!!??」」」

 

 昨日見つけた三人をおとなしくさせる手段を披露すると、狙った通りおとなしくなった。クソッ、嬉しいが素直に喜んでいいのかわからない! 祝ってもらったことは確かだが……いや、形がどうであろうと祝ってもらったことは事実。礼は言うべきだろう。

 

「みんな、ありがとう! これだけ多くの人に祝ってもらえた誕生日は初めてだ!」

「よし、満足したからクールに帰るか」

「そうね! あとはオシャレに楽しんで!」

「もうシゲキ的なことはねぇしな」

「ふざけるなよ貴様ら!! 一緒にケーキを食え!!」

 

ニコ、お前一期生なのか?

一期生がおとなしくなった……?

確かにカオス

なぜ星菜ちゃんはこの状況なのに笑顔でいられるんだ

 

 ケーキをシゲキ的フォークで食べると、今まで食べたケーキの中で一番おいしかった。イベリス曰く、オシャレにものを言わせたらしい。オシャレすごい。

 

 

 

 

 

ニッコリ探偵団 視聴者支部 part20

 

520:このライバーがすごい! ID:p4Zn450XF

あーもうむちゃくちゃだ!

 

521:このライバーがすごい! ID:YaWvQ6duq

優姫ちゃんとアザミんとマリーも合流したぞ!

 

522:このライバーがすごい! ID:n474X64T+

ニコ「一緒に出てこなかったのはなぜだ?」

優姫ちゃん「収拾つかないでしょ」

アザミん「理由は聞くな」

マリー「あの三人と一緒だと絶対霞むから」

 

523:このライバーがすごい! ID:WBhecz4Iy

アザミんはシゲキと一緒に出たくなかったからだろうな……

 

524:このライバーがすごい! ID:dHKGsO4hP

シゲキ「よォ、アザミ・フレンジー!! 相変わらずシゲキ的じゃねぇ面しやがって!! この前の勝負の時はシゲキ的にシゲキ的だったのによォ!!!!」

アザミん「うるさい。私に話しかけるな。シゲキがうつる」

優姫ちゃん「今日はニコが主役ですから、おとなしくしててくださいね」

ルイス「ふっ、流石優姫。クールだな」

イベリス「いいえ!! オシャレよ!! こんなにオシャレすぎる子見たことないわ!!」

ニコ「マリー、星菜さんを頼む。教育に悪すぎる」

マリー「あっ……」

満ちゃん「真理さん。頼られただけで女の顔しないで」

星菜ちゃん「ふふ! 楽しいですね、ニコさん!」

 

525:このライバーがすごい! ID:JTSLIyVL2

ぐちゃぐちゃで草

 

526:このライバーがすごい! ID:IKkuIS5EG

優姫ちゃんはクールでオシャレ……?

 

527:このライバーがすごい! ID:9LI4KG7lV

しっくりくるな……

 

528:このライバーがすごい! ID:a3DmEnnNH

一期生に目をつけられたらマズいのに、ニッコリ探偵団は全員目をつけられてる

 

529:このライバーがすごい! ID:/6BhPLia1

何気にちゃんと同じ画面にアザミんとシゲキが映ったの初めてか

 

530:このライバーがすごい! ID:2KcEF3mWJ

シゲキはめっちゃアザミに喧嘩売りたそうにしてるな

 

531:このライバーがすごい! ID:c+fMnMAkT

見た目だけだと、好きな子にいじわるする小学生男子に見える

 

532:このライバーがすごい! ID:WKSsxKdrk

>>531

いじわるっていうレベルじゃねぇだろ

 

533:このライバーがすごい! ID:/VNpuYaiJ

>>531

なんでもかんでも恋愛に結び付けるな

アザミんとシゲキなんて一番あり得ないだろ

 

534:このライバーがすごい! ID:DisCQysao

どっちも興味なさそうだしな

 

535:このライバーがすごい! ID:NazLqucW7

シゲキなら愛の営みを「時間をシゲキ的に無駄にするシゲキ的に愚かな行為」って思ってそうだし

 

536:このライバーがすごい! ID:DK3OmuOvn

一番の人格破綻者

 

537:このライバーがすごい! ID:S6tnl2eVl

シゲキ「アァ、ところでよ、シゲキ的ニコ。オメェにやるバイクだが、納品は来年になりそうだ。首をシゲキ的に長くして待ってろ」

ニコ「おぉ、そうか! ありがとう!」

マリー「私を後ろに乗せてくれるっていう話?」

星菜ちゃん「私も乗せてほしい!」

ルイス「ニコ、クールにツーリングなんてどうだ? かなりクールだと思うんだが」

イベリス「いやん! 私も乗りたいわ!」

アザミん「優姫はいいのか?」

優姫ちゃん「命を狙われてて、どうしても逃げなきゃいけないって時だけお願いするわ」

満ちゃん「多分、先にニコさんだけが命を狙われてると思う」

 

538:このライバーがすごい! ID:kChoj/w85

誰かがしゃべり出すと全員喋り出すな……

 

539:このライバーがすごい! ID:uzAwXUZAK

全員コミュ力が高いのかもしれない

 

540:このライバーがすごい! ID:6JiDiFop+

ニコは喋れるコミュ障だっていうことが判明してるからな

 

541:このライバーがすごい! ID:BhHHSsda7

一期生がいると、ニコは全然マシに見えるんだよな……

 

542:このライバーがすごい! ID:/4/hxCW/1

>>540

常識が一部欠落した常識人だぞ

 

543:このライバーがすごい! ID:LjnG15opg

常識人とは……?

 

544:このライバーがすごい! ID:Sy5uLSBMX

星菜ちゃんもこんなカオスな場なのに終始ニコニコしてるから、常識人じゃないのかもしれない

 

545:このライバーがすごい! ID:WwIK37r2c

あの子は底抜けにいい子っていうだけだから

 

546:このライバーがすごい! ID:flxnBTMo2

姉御、現着

 

547:このライバーがすごい! ID:7Fomtkxl3

星菜ちゃん「あれ、お姉ちゃん! どうしたの?」

姉御「こんなイカレた場所に妹がいるなら、心配にもなるでしょ」

 

548:このライバーがすごい! ID:045/EalQ3

 

549:このライバーがすごい! ID:9T/ZF0Qvj

その通りで草

 

550:このライバーがすごい! ID:SCDMPfbUR

三人同時に首を傾げる一期生

ルイス「イカレた……? そいつはクールじゃないな」

イベリス「比較的オシャレに速やかに対処する必要があるわね」

シゲキ「シゲキ的ではあるがな……」

ニコ「お前たちだお前たち。なぜ不思議そうな顔ができる!」

 

551:このライバーがすごい! ID:OzL2D7CTp

一期生の三人、絶対仲いいよな

 

552:このライバーがすごい! ID:vgwy3lqJ2

ニコを加えて営業回ろう

 

553:このライバーがすごい! ID:uIC0O2J7X

>>552

各地が破壊されて日本が終わるからやめてくれ

 

554:このライバーがすごい! ID:8ZlYaDj7C

でも、ニコも楽しそうでよかった

 

555:このライバーがすごい! ID:NnMr5YvIf

これで楽しめる素養があるんだから、ニコも十分プロエジェだよな

 

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