TS司祭とカス聖騎士 〜〜〜カスよ、龍に届いているか   作:マンコションベ

14 / 14
放屁絶壁

 さてさてクソ領主をぶっ殺す為力が欲しくて来ました……なんて言えるはずないしどうしようか

 

 

 とりあえずここから歩いて一日程度での村……エミル村で産まれた事。そこで善良なパパとまあまあ善良なママとできの良いお兄ちゃんと二重の意味でいい性格をしていておれの事を慕ってくれてた妹と一緒に過ごした事を伝えた。

 

 楽しかった日々の事も。かけがえのない日々がもう失われた事は隠したが。

 

「いいなーお姉ちゃんを慕う妹、うちのバカズクなんて人間国宝たるユカリさんの事を汚物だの妖怪屁こきまな板だの言ってまともな扱いして来ないんだもん! あのボケてめえも同レベルのまな板の分際で年上様にガタガタ言いやがって!」

 

 口の中のものを飛ばしながらユカリが言う。うげ、顔についた。

 

「まあそのシズクさんも多分いい子だと思うぜ。まあおれの妹には敵わないけどな! 妹はおれ目当ての男−妹経由でおれに近づこうとしたんだろうな−にしょっちゅう告白されては用済みになって振られるのを繰り返していたけど一切おれをうらまなかったし本当に良い奴だったんだ」

「良いな良いなーうちのバカズクと交換して欲しいよー」

「ああ、そう言えばちょっとだけユカリに似ていたかもな、あいつは」

 

 おれに近づく踏み台として利用されまくったあいつは立派に擦れてなかなか手強い性格になってしまった。

 

 それこそ眼の前の厄介ユカリに匹敵するほどに。

 

 それでもおれの事を悪く言ったり恨んだりは一切してこなかったのは本当に感謝している。

 

「へー、お前良いとこに産まれて幸せだな」

「ああ! 幸せ()()()

「お前と結構話してきたが生い立ちすら知らなかったわ、考えてみりゃお前人懐っこい癖に全然自分の事話さないだろ」

 

 いや、おれ基本人見知りだし……ユカリともあんまり話さないし……あれ? そういや何でフレッドにはこんなスラスラ話せるんだ? 

 

 男相手には表面上はどんなに愛想よくしても常に一線を引いていたし家族以外と話す時はいつも内心緊張していた。

 

 前世でも一人を除いて現実ではずっとろくに喋れなかったんだ。

 

 そして可愛らしい顔面という最強の武器を得ても根本的に対人関係の能力が壊滅的という欠点は変わらなかった。

 

 俺が気負わず素の自分を出して話せた人間はあいつ、家族、そしてフレッドだけだ。

 

 何故おれは眼の前の、それもあまり柄の良くない見た目をした男を一目見たその日から信頼しているんだ? 

 

 いくら寂しさを感じていたとは言え他の男には発動する警戒心がなんでこいつ相手には機能しなかったんだ? 謎だ。

 

 謎といえばフレッドの生い立ちもだ。

 

「フレッド、お前も自分の事は全然話さないだろ。ほれほれはけはけ」

 

 無くなったグラスにありったけの酒を注ぐと奴はちびちび飲みつつボソボソ言い始めた。

 

「ん~~話してやっても良いけどシンプルに胸糞悪い話と不幸自慢が始まるだけだぞ」

「良いから教えろよ、この流れでお前だけ何も言わないのはずるいもん」

「話せー!」

 

 何故か顔が曇っている。もしかして聞かないほうが良かったか? 

 

「あー、俺様はクソオスとクソメスの合体事故でクソみたいにひり出されたクソみたいな産まれだよ。今思えばどっちもクソみたいな親だったけど一応今では俺に飯と家をくれた事だけは感謝してる」

 

 初手で地雷踏んじまったよ。すまん、もう良いと言ってもフレッドは首を横に振り話を続けた。

 

「それでも俺には生まれつき戦う才能があった。それを振るうのも躊躇わなかった。最初は少しは善の心もあったのだとは思うが年を取るにつれどんどんカスになっていって」

 

 脂汗を垂らして続ける

 

「そ……それで13にな……なった俺は立派に……クズになって無辜の人間と、よ、よりにもよって一番幸福にならなきゃいけない奴を、お、おお俺の手で……オエッ」

 

 フレッドが吐き出した。

 

「落ち着け! 落ち着いて!」

 

 背中をひたすらさすっている中見えた銀髪青年の顔は苦痛と悔恨に歪んでいた。

 ■■■

 フレッドが便所から帰ってきた。その時には掃除も終わりゲラゲラ笑いながらフレッドが帰ってきた。

 

「わりぃ、飲みすぎた」

「大丈夫か! そんなに辛いなら今日はもうお開きにしようぜ、話したくない事を話させちゃったのも悪かったよ」

 

「あーすまんすまんさっきの嘘嘘。ちょっとからかって見たくなったんだ。

 本当はどっかのおえらいさんとそこで働いていたメイドから産まれたんだよ俺、んでもって妾腹のガキなんていらないとか言っておえらいさんに捨てられて、その後に俺を出汁に成り上がる気満々だったメイドに期待外れだとか言ってポイ捨てされたんだ。

 んでスラムで廃材拾いとか靴磨きとかやってる内に変なおっさんに拾われて聖騎士になって今に至ると言うわけだ、あー後ついでに明日からのミーティングもやるぞ、今ここで」

 

 いきなり話変えたな。まあこんだけ露骨に話を変えられればコミュ障の俺でも生まれの話へ突っ込まれたくないのは分かる。まあ良いか、言いたくないことは言わないで良いんだ。

 

 言いたくないことを聞いてしまったことは後できちんと謝ろう。

 

「俺の見立てではお前らも明日起きれば十三等級中の四等級、いわゆるレベル4になれるとは思う。そうなったら見習いは卒業、立派な冒険者だ。そして立派な冒険者になったということは二層でもやっていけるということだ。明日からは二層に潜る。ところで一層と二層の最大の違いは分かるか?」

 

「そりゃあ魔物の強さだろ」

「迷宮の構造の複雑さでしょ」

 

「惜しいな、大きな違いだが最大の違いでは無い。答えは致死性だ」

 

 

「エフィミア、ユカリ。仮にだが俺様とヨーイドンで本気で殺し合うとして勝てる可能性はどれくらいあると思う?」

「は? 無理だろおれがお前に勝てる要素なんてあるか?」

「ま、そう思うよな、んで? お前はどう思うよユカリちゃん」

「私は100回やって5回位でしょ、エフィちゃんは1回くらい」

「おお……すげえな。ユカリ、正解。それじゃエフィ、なんでか分かるか?」

 

 首を捻ってうんうんうなりながら考える。動けーおれの灰色脳細胞! 

 

「ええと……あ! ユカリは首はね、おれは睡眠魔術でワンチャン持って行けるからか?」

「よしよし偉いぞ賢いぞ、かなり運が絡むとはいえ一応現実的な範囲で格上を殺せるんだよ、お前ら」

 

 またもや頭をワシワシと撫でられる。

 撫でる手から体温が伝わってくる。温かい。

 しかも褒められた事で口角が緩んじまってダメだ、えへへ。

 

 あ、貴様チョロ……とか小声で言いやがったな、覚えてろ。

 

「そんでエフィ初めて俺とあった時の事覚えているか?」

 

 絶望の中、銀髪の聖騎士が放った稲妻は今でもおれの脳裏に張り付いている。

 まるであれはヒーローだった。

 前世でおれをいじめ……それから何度もおれのピンチを助けてくれたあいつの様に。

 なんだろう……こんな事言うとホモみたいだが……かっこよかった。おれが完璧に女だったら確実に惚れると断言できる程に

 

「すまん、辛い事思い出さし……」

「ああいや、そういうのじゃないから大丈夫だ。めっちゃ歯が鋭い兎共にやられかけてたよな、なんなんだあいつら」

「あいつの名前はボーパルバニー、通称“首刈り兎”

 能力は攻防共に貧相、動きもあまり機敏でない、それでも奴は二層最強の敵だと言われている。

 ユカリと同じ力、領域と首刎ねを持つからだ。

 格上相手であろうと一発良いのが決まれば問答無用で即死させる力だよ。

 あいつら偶に3層4層にも餌求めて降りていくらしいんだがそこの層の魔物もあいつ等には手を出さない。

 戦闘力では圧倒しているにも関わらず、その戦闘能力差を決して低くない確率でひっくり返してくるあいつらは脅威なんだ、深層の化け物にとってもな。

 そして俺やトレボー王といった人類の上澄み相手にもそれは有効だ。もちろんお前らにも」

 

 ユカリがゴクリと唾を飲む

 

「そしてボーパルバニーやお前らの様に、格上に大してもワンチャンもっていける連中がゴロゴロいるのが二層だ。こっから先は命の危険が付き纏う」

 

「エフィお前はもう帰れ、助手として働いてくれたんだから賃金もやる。大切な家族がいるなら帰って学者でもやりながら俺様並みに良い男捕まえてガキこさえて……で二度と戻ってくるな。こっから先は危険過ぎる」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

侍は迷宮を歩く(作者:DRたぬき)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

*完結しました*▼西洋の大陸に存在する街、大都サルヴィ。▼この都市には迷宮が存在し、またそこはいまだかつて踏破されたことが無い。▼冒険者は迷宮を目指し深部へと踏み込み、まだ見ぬ宝と名誉を求める。▼冒険者の一人、三船宗一郎もまた仲間を伴って迷宮を探索していたが。▼彼は今、仲間を失っていた。▼仲間なくして迷宮探索は成らず。かくして彼は「迷宮で死んだ冒険者の死体回…


総合評価:1350/評価:8.04/完結:210話/更新日時:2026年03月17日(火) 00:16 小説情報

ちょっとだけ愉快な仮面の冒険者(作者:乾燥海藻類)(原作:wizardry variants daphne)

タイトル通りです。▼一周年おめでとうございます。


総合評価:410/評価:8.17/完結:10話/更新日時:2025年10月24日(金) 19:50 小説情報

迷宮クズたわけ(作者:ちんこ良い肉)(原作:Wizardry)

クズ盗賊は迷宮の悪意に飲まれくたばった▼しかし気がついたら死ぬ直前に時が巻き戻っていた▼ウィザードリィの簡悔迷宮を死に戻りゴリ押しで突破する冒険譚▼本編30話▼現在もちまちま更新しています▼感想お気に入り登録をいただくたびに本当に感謝しています。▼2/6書いていたものを間違えて投稿してしまいました。申し訳ありません▼金剛龍帝がどういうやつか分かる奴https…


総合評価:3190/評価:8.85/完結:39話/更新日時:2026年01月02日(金) 20:59 小説情報

このすば*Elona(作者:hasebe)(原作:この素晴らしい世界に祝福を!)

あなたはノースティリスの冒険者だ


総合評価:108602/評価:9.62/連載:151話/更新日時:2025年08月21日(木) 21:41 小説情報

理想の聖女? 残念、偽聖女でした!(旧題:偽聖女クソオブザイヤー)(作者:壁首領大公(元・わからないマン))(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

【コミック版第3巻 5月28日発売】▼クソのように性根の腐った男が、ゲームのクソみたいな悪役である偽聖女にTS憑依転生してしまった。▼憑依先がクソで憑依した魂もクソ。▼クソとクソが合体事故を起こして偽聖女クソオブザイヤー!▼※頂いた支援絵を一話後書き以外にそれぞれ、場面にあった位置にも飾りました。▼※カクヨム様とのマルチ投稿です。


総合評価:84013/評価:9.17/完結:116話/更新日時:2024年12月27日(金) 20:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>