ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
初ダンジョンにて圧倒的なインパクトを残したツナ。3人は地上に戻る。
地上に戻ると魔石を換金してもらう為にギルドにやって来ていた。
「「7、7万ヴァリス……」」
ギルドにて換金を終えた3人。換金が終わって近くの喫茶店にやって来ていた。
そしてギルドから渡された今回の報酬の金貨の入った袋を開封しその金額を数える。金額の合計を知ってベルとリリは衝撃を受けていた。
ヴァリスとはこの世界で使われる通貨のことである。具体的な価値で言えば、一度の食事は50ヴァリスもあれば十分お腹を満たせる。ちなみにヘスティアのバイトの時給は30ヴァリスである。
「えっと……もしかして少ない……?」
「ち、違うよ!! まさかこんなにも稼げてるなんて思わなくて!!」
思っていたよりも反応が悪かった為、ツナはあまり稼げていないのかと思った。しかしベルが慌てて否定する。
(いくら上層の
リリは思い出す。たった1人で上層のあらゆる
ダンジョン全体で見れば上層の
「えっと……分け前は半分でいいんだよね?」
「え……いや……でもこれは綱吉様の……」
リリは報酬を半分もらうことにリリは引け目を感じていた。理由は言うまでもなく、今回ツナが1人が無双しまったせいで、自分がほとんど何もしていなかったからである。
「何で? 仲間でしょ俺たち?」
「え……!?」
なぜリリが報酬を受け取ることを躊躇うのかわからずツナは疑問符を浮かべていた。逆にリリはツナの発言に対して驚きを隠せないでいた。
(この人……ベル様と同じお人好し……)
リリはツナが相当のお人好しであるということを理解する。
「あの……綱吉様……リリが悪い人間だったらこのまま利用されてますよ……」
「それはないよ。だってリリからは悪い感じがしないし」
「それさっきも言ってましたけど、一体なんなんですか? 悪い感じって?」
「う~ん? 上手く言えないんだけど……悪い人だと物凄い嫌な感じがするんだよねー。こうゾクッってするような……リリからはその感じがないから大丈夫っていうか……」
「意味がわかりません……」
あまりに抽象的な説明にリリはツナのことをジト目で見ながら答えた。
「わかりましたよ……綱吉様の言う通り分け前を半分貰わせてもらいます。それでいいですかベル様?」
「う、うん……」
リリと別れた後、ツナとベルは
「あ、あのツナ!!」
「どうしたの? ベル?」
教会に帰る道中。ベルは勇気を振り絞りツナに話しかけた。
「お願いがあるんだ!!」
「お願い?」
「僕に……僕に修行をつけて欲しいんだ!!」
「ええ!? 修行!?」
まさか修行をつけてくれと頼まれると思ってもみなかった為、ツナは驚きを隠せないでいた。
「む、無理だよ!! 俺、教わることはあっても誰かに修行をつけたことなんてないし!!」
「そこをなんとか!! 普通に戦ってくれるだけでもいいんだ!!」
「ええ……」
両手を合わせながら頭を下げるベルに対して、ツナは困惑してしまっていた。
「わ、わかったよ……」
「本当に!? ありがとう!!」
色々と世話になっている身である上にベルの気持ちも分からない訳でもないので、自分にできるだけのことをベルにしてあげうと考え、ツナはベルの頼みを聞くことにした。
「でも……どこでやろう……?」
ツナまだオラリオに来て間もない為、土地勘がない。故にどこで修行をするのか迷ってしまっていた。
「それなら……」
良い修行場があると言うベルに着いて行くツナ。
「ここは……壁の上……?」
やって来たのは壁の上。正確に言えばオラリオを囲っている市壁の上である。壁の上に自分たち以外に誰もおらずオラリオの町を一望できる程の場所である。市壁はあまり道幅が狭くないものの、修行するには充分の広さはある。
オラリオは円形の形で構成されており、それを取り囲むように市壁が設置されており、都市外の
「うん。ここなら誰も来ないから」
「そっか……」
誰も来ないということを理解したツナは27と書かれた手袋を装備する。
「ならさっそく始めるぞ」
そして
(す、凄い迫力……)
ダンジョンにいた時はツナの圧倒的な強さに唖然とすることしかできなかったベルであったが、今は違った。ただそこに立っているだけなのに迫力に気圧されそうになってしまっていた。
だが今回は修行とはいえ戦うべき相手。ベルもナイフを両手に構える。
左手には
一方で右手には【
「ナイフか……悪いが俺は剣術のことはわからない。だからどうすれば強くなれるかアドバイスはできない。強くなりたいなら戦いの中で自分で強くなる方法を見つけろ」
「う、うん……」
「遠慮はしなくていい。どこからでもかかってこい。死ぬ気でな」
「よろしくお願いします!!」
ツナがそう言うとベルは真正面から一直線に向かって行く。
「はぁあああああ!!」
ベルはツナの間合いに突入すると逆手に持った
「っ!?」
しかしベルは目を見開いた状態で衝撃を受けていた。なぜならツナはベルの右薙を右手の人差し指だけで防いでいたのだから。
(指1本で……!? しかも動かない……!?)
ベルは左手に力を込めるも刃は微塵も動くことはなかった。
ツナは死ぬ気をコントロールし人差し指に力を集約することでベルの斬撃を防いだのである。
「隙だらけだ」
ツナは左手の指を全て立てて、手刀を作ると手刀をベルの首筋に突き付けた。
「実戦ならお前は死んでいた。戦闘は常に予想外の連続だ。自分の攻撃が通じないとわかった時点で即座に離れて次の手を考えろ。力で負けている相手に力で解決しようとしても意味はない」
「っ!?」
ツナの言い分にベルは何も言い返すことができず、ベルは
「次だ」
「う、うん……!!」
ベルは少しだけ落ち込みながら元いた場所へと戻って行く。
(真正面からやっても勝てない……だったら!!)
再び真正面からツナに向かって行くベル。そして今度はツナの目の前まで一気に移動すると、スライディングする。
(まずは足を狙う!!)
スライディングの勢いを利用して、ベルはツナの足を狙う。しかしツナはジャンプで躱す。
(かかった!!)
ベルは躱されることをわかっていたのか動揺はしていなかった。
(本命はここから!!)
ジャンプで躱したことでツナは空中。そして何より背後を取ることに成功した。攻撃を仕掛けるには絶好のチャンスだと確信したベルはスライディングの体勢から起き上がりツナより高くジャンプする。そしてナイフを持った両腕を頭上に移動させると、おもいっきりツナに向かって振り下ろす。これは剣術における9つの斬撃の1つ。
「っ!?」
だがツナは右腕を頭部に移動させて、右腕でベルの斬撃を防いだ。ツナは右腕を薙ぎ払うと同時にベルも薙ぎ払った。薙ぎ払われたベルは空中に放り出されるも無事に着地する。
(上手くいったと思ったのに余裕で防がれた……!?)
完全に虚をついた上で死角から攻撃を仕掛けてもなおツナには通じなかった。その事実に驚きを隠せないでいた。
「悪くない手だが想定内だ。さっきの一撃で真正面からの斬撃は無理だとわかったはず。だったら次は死角をついてくるはず。だから敢えてお前の攻撃をジャンプで躱した。敢えて隙を作ってな」
(読まれてた!? あの時点で全て!?)
死角から斬撃を喰らわせる前から、すでにツナに誘導させられていたことにベルは驚きを隠せないでいた。
「それと何かしらスキルや魔法を持っているんだろ? 好きに使え」
「え……でも……」
「言ったはずだ。遠慮はしなくていいと。強くなりたいんだろ?」
「わ、わかった……」
ツナに言われて再び両手に持ったナイフを逆手に持ち戦闘体勢に入る。そして今度はツナの周囲を円を描くように走る。
(まずは隙を……)
まずベルは隙を作る為に呼吸をズラすことを画策する。
(今だ!!)
ベルが死角に入り、ツナが自分の方を向いた瞬間にベルは右手をツナの方へ向ける。
「ファイアボルト!!」
ベルの右手の掌から稲妻のような形をした爆炎が放たれる。
ファイアボルトはベルが唯一、持っている魔法である。通常、魔法を発動するには詠唱が必要なのだが、ベルファイアボルトは詠唱を必要とせず魔法名を唱えるだけで放てる速攻魔法なのである。ただ詠唱がないため詠唱がある攻撃魔法に比べて威力は低い。それでも充分な戦力になる。
それでもツナは動揺することなく首を左方向に傾けることで、ベルのファイアボルトを避ける。
(今度こそ!!)
ベルはファイアボルトでツナの視界を塞ぐ為に放ったのである。ファイアボルトが目眩ましになっている間にツナの背後に回る。
「ファイアボルト!!」
ベルは再度、ツナに向かってファイアボルトを放った。
(慎重……だが……)
今度を右方向に首を傾げた状態でツナはファイアボルトを避ける。
ツナの背後を取っただけで迂闊に攻めず慎重に行動を起こすベル。ツナはベルがただ慎重なだけではないということを超直感で見抜いていた。
ファイアボルトを避けた後、ベルの
(成る程な……さっきまでの遠距離攻撃は隙を作って接近戦を仕掛けると思わせ、ナイフを投げてくることを予想させない為のものか……)
ツナはベルの作戦を理解すると、
(これはまだ想定内!!)
「はぁあああああ!!」
ベルは真正面にジャンプすると、そのまま真空飛び膝蹴りを放った。しかしツナは左手の掌でベルの蹴りを受け止める。
(両手は塞いだ!! 今だ!!)
右手はナイフ、左手は蹴りによって使えない。ベルは右手に握られたヘスティア・ナイフをツナに向かっておもいっきり振り下ろした。
「良い手だ……だが」
「え……!?」
ツナはベルの唐竹が決まる前に飛び膝蹴りを受け止めていた左手を前方に突き出した。ベルはバランスを崩し、そのまま地面に仰向けの状態で倒れた。
「空中に飛び出せば踏ん張りが効かなくなる。判断を誤ったな」
(ここまでやっても……!?)
仰向けの状態からゆっくりと上半身を起こすベル。そして剣術、魔法、体術。自分の持てる全てを駆使してもダメージを与えるどころか、ツナをその場から1歩も動かせないという事実にベルは衝撃を受けていた。
「悲観するな……と言っても難しいだろうが別に悪くない手だったぞ。だがお前の場合は別の問題がある」
「問題?」
「お前は何かに怯えている」
「っ!?」
ツナの言葉を聞いた途端、ベルは心当たりがあるのか動揺を隠せずにいた。
「怖いと思うことは別に悪いことじゃない。むしろ戦いにおいて怖いと思わないことは無謀だ。だがお前は怯え過ぎている。その怯えがお前の潜在能力に蓋をしてしまっている」
「……」
「いくら肉体的に強くなっても恐怖に捕らわれてしまってばかりでは何も意味はない。恐怖を克服できない限りお前は本当の意味で強くなることはできない」
「……」
ツナの言葉が間違っていないのか、ベルは反論することができず俯いてしまっていた。
「ベル。お前の誇りは何だ?」
「誇り……?」
誇りという単語を聞いてベルは視線をツナの方へと向ける。
「誇りとは譲れないもののことだ。たとえどんなことがあろうともな」
「譲れないもの……」
「そうだ。自分の誇りが何なのかわかれば恐怖に打ち勝つことができるはずだ」
「……」
ベルは再び俯き、自分の譲れないもの。誇りについて考える。しかし自分にとっての誇りは何なのかわからなかった。
「今すぐ答えを出す必要はない。ただその答えを見つけない限り、お前は恐怖に打ち勝つことはできない」
ツナは思い出す。自身の親友と呼べる古里炎真が率いるシモンファミリーとの戦いにて誇りをかけて戦うことになった際に自分の誇りが何なのかわからず苦悩し、答えを出すまで時間がかかったことを。
「ツナの誇りは何なの……?」
「仲間だ」
「仲間……?」
「ああ。俺にとって仲間がどんなことがあっても譲れない。だから俺は恐怖に屈せず戦うことができる」
「だから強いんだツナは……」
「俺は強くなんてない。俺には護りきれず死なせてしまった人たちがいるからな」
「え……!?」
ツナの言葉を聞いた途端、ベルは信じられないような顔でツナのことを見ていた。
「仲間を護る為に必死に修行して強くなった。それでも護ることができなかった。目の前にいたのにも関わらずな」
ツナは目を閉じて思い出す。白蘭によって乱された秩序を元に戻す為に犠牲となったユニと
「そして仲間を失う原因を作った男を俺は殺した」
「え……!?」
「俺は許せなかった。多くの罪なき人間を犠牲にして俺の仲間の命を奪ったそいつが。俺は怒りと憎しみの感情に支配されて殺した。仲間を護る為に戦うと言いながら俺のやったことはただの人殺し。俺はそいつと変わらなかった」
「っ……!?」
ツナは思い出す。白蘭との最終決戦において白蘭を肉片の1つも残すことなく消滅させたことを。
あまりに過酷過ぎるツナの過去を知ってベルは衝撃のあまり開いた口が塞がらない状態になっていた。
「俺としたことが話し過ぎたな。とにかく修行の続きだ」
「う、うん……」