ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
気まずい雰囲気の中、ツナとリューは稽古を再開した。
(……動きが良くなったな)
リューは高い敏捷のステイタスをフル活用し、多方向からツナを攻め続ける。
ツナはその怒涛の斬撃を躱しながら、リューの木刀を振るうスピードとキレがより良くなっていることをその身を以って体感していた。ツナがリューの蟠りを解いたお陰でさらに飛躍したのだ。
(この短時間で、もう私の剣を見切り始めた……)
(アイズと修行した経験が活きたな……見切れるようになってきた)
リューは全力で木刀を振るうも、ツナの隙を作るどころか攻撃すら当たらなくなっていく。
彼女と同じ片手剣でかつ、技とスピードを主体とする
「ツンツン頭の奴、リューの攻撃を物ともしてないのニャ……」
「夢でも見てるのかニャ……!?」
「本当にLv.1な訳……!?」
ツナがリューと朝稽古する話をシルから聞き、興味本位で様子を見に来たアーニャ、クロエ、ルノアの三人。 リューがやり過ぎて自分達と同じような目に遭っているのだと思い来てみたのだが、実際には逆にツナがリューを翻弄している光景が広がっており、衝撃を隠せなかった。
「ナッツ」
ツナは右手でリューの木刀を後退し、躱すと同時にナッツを呼び出した。そして額の炎と瞳の色、ナッツの
「GURURURU……GAOOOOOO!!」
「っ!?」
ナッツが前方に向かって咆哮を放つ。リューは即座に地を蹴って上空に移動し、広範囲に放たれた炎を躱した。しかし―――
「これは……セオロの密林!?」
リューは大きく動揺する。なぜなら先程まで内庭だった空間が草木の生い茂る森林地帯へと変化しているのだから。
「う、内庭が森になったニャ!!」
「一体何がどうなってるのニャ!?」
「というかあの猫、どこから出てきたのよ!?」
急に内庭が森林地帯へと変化したことで二人も動揺し、ルノアは唐突にナッツが出てきたことに驚く。
「試したことはなかったが……上手くいったな」
「まさか、これも幻覚なのですか……!?」
「ああ。ナッツの力で広範囲に炎を放って周囲の環境を変えたんだ」
かつてツナは【ミルフィーオーレファミリー】との戦いで幻覚を扱う剣士の幻騎士と戦い、その時に幻騎士は
【
「せっかくの機会だ、俺も色々と試させもらうぞ」
本意ではないとはいえオラリオに滞在することが決まった以上、これからもベルたちと共にダンジョン攻略に勤しむことになるだろう。ダンジョンでは何が起こるかわからないということは遠征の時、嫌という程味わった。故にベルたちを護る為にはあらゆる可能性を模索する必要があると考えたのである。
「ありがたいです、幻覚とはいえこのような環境で稽古ができるのは。それに過去、幻覚を使える相手に痛い目に遭わされたことがあるので……これはいい稽古になりそうです」
幻覚でセオロの密林を再現したことに驚いていたリューだったが、すぐに冷静さを取り戻し正眼の構えを取り、再び戦闘体勢に入った。
「これでリューが幻覚に対抗できるようになったら、クロエは終わりね」
「クロエ。ミャーはおミャーのことは忘れないのニャ」
「勝手にミャーを殺すんじゃないニャー!!」
リューの言葉を聞き、ルノアとアーニャは哀れみのような表情を浮かべた。散々な扱いにクロエはツッコミを入れるも、同時に動揺もしていた。
リューの言っていた幻覚で痛い目に遭ったというのはクロエのことだ。クロエはその昔、【黒猫】の異名を持つ裏社会において恐れられた暗殺者であった。その頃にリューの暗殺依頼を受けクロエはリューを幻覚で騙し、ポイズン・ウェルミスの毒が染み込んだナイフで斬った事があるのだ。
今はもう暗殺稼業から足を洗いリューと敵対することは無くなったが、万が一にでもリューと戦うことになったら、もうどうしようもないとクロエは頭を抱えていた。
そして幻覚世界の中でツナとリューは戦い続ける。幻覚といえど身を隠すことのできる環境をお互いに利用して。
「はぁ……はぁ……」
「……今日はこのくらいにしておくか」
「ええ……」
リューはありとあらゆる戦法で挑むも、ツナに一撃を喰らわせることすらできなかった。彼女が肩で息をしているのを見て、このままでは仕事の業務に差し支えると判断したツナは修行の中断を提案する。ツナの意図を察したリューは素直にその提案を了承した。
(あれだけやって、息も乱れていないとは……)
(あー良かった……アイズの時みたいにならなくて……)
自分とは対称的に全く疲れた様子を見せないツナを見て、改めてリューはツナの凄さを実感する。
一方でツナは
「稽古お疲れ様です」
すると労いの言葉をかけながら両手にコップを持ったシルがやって来た。
「お水、どうぞ」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
シルから水の入ったコップを受け取り、リューとツナは一気に水を飲み干した。
「あれ? その猫はツナさんの猫ですか?」
「うん。ナッツって言って、俺の相棒なんだ」
「へー。可愛い猫さんですね」
「ガゥ♪」
「えっ……」
シルはツナの肩に乗っているナッツに右手を伸ばし、頭を優しく撫でた。シルに撫でられたナッツは幸せそうな表情を浮かべ、それにツナが驚く。
「どうかしましたか、ツナさん?」
「いや……ナッツって俺以外にあんまり懐かないから……」
ナッツの性格はツナの深層心理が反映される。そのため戦っている時は勇ましいが、戦い以外では弱々しくツナ以外の人間に心を許すことが少ないのだ。ツナの知る限りナッツが自分以外に懐いた人間は【シモン・ファミリー】のボスである古里炎真だけだった。
「それで、稽古はどうだった?」
「はい。ツナのお陰でとても有意義な稽古になりました」
「あれ? 今ツナって……」
「い、いや!! これは他の人たちが呼んでいたから私も呼んでみようと思っただけで!! 決して深い意味は!!」
「わかってるよリュー。あだ名で呼ぶことで、ツナさんと距離を縮めたいと思ったんだよね」
「わ、私はそのような邪なことを考えていた訳ではありません!!」
「えっ? 何であだ名で呼ぶのが邪なの?」
いつものようにリューはシルに振り回され、ツナは彼女の心情を全く理解できず、混乱していた。そしてそれを見ていたアーニャたちはニヤニヤしていた。
「そうだツナさん、ミア母さんが朝御飯を作ってくれたんです。良かったら食べていきませんか?」
「えっ、でも……」
「ミア母さんが言うには1人分多く作り過ぎちゃったみたいですよ。だから私たちに気を遣わなくて大丈夫です」
(それって……)
シルの言葉を聞き、ミアが自分の為に作ってくれのだとツナは察した。
「……じゃあ、食べていこうかな」
せっかくのミアの厚意を無下にできない為、ツナはご馳走になることを決めた。
「リュー、凄い汗かいてるからシャワー浴びた方がいいよ」
「そうですね」
ツナと違いリューは全力を出していた為、凄まじい量の汗をかいていた。今の状態のままでは食事をするには適さない為、シルはシャワーを浴びることを勧めた。
稽古を終えたリューはシャワーを浴びる為風呂場に移動、ツナはリューが帰って来るまで店の中で待つことにした。
「リュー、着替えはこっちに置いておくね」
「ありがとうございます」
扉越しにシャワーを浴びているリューに向かってシルがそう言うと、リューはお礼を言う。
そしてシャワーを浴び終えるとリューはバスタオルを巻いて、風呂場から出て来る。
「こ、これは……!?」
季節の変わり目で体調があんまり良くないですが、更新したい気持ちはあります。更新が遅めになるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
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