ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
稽古が終わりリューがシャワーを浴びている間、ツナは店内で待たせてもらうことになった。机にはすでにミアの料理が用意されていたが、彼女がシャワーを浴び終えるまで待っていた。
「ほらほら、オミャーの好きな猫じゃらしだニャー」
「ガゥ……」
ツナの膝の上にいるナッツにクロエが猫じゃらしを振るも、ナッツは興味を持つどころか怯えて体を震わせるだけだった。
豊穣の女主人は酒場である為、本来なら動物が店内に入るのは禁じられているが、ミアから特別に許可をもらい、ナッツを店内に入れてもらえることになったのだ。
「フニャ~、我慢できないのニャ~」
「おミャーが魅了されてどうするのニャ!!」
「アホ猫……」
ナッツに興味を持たせる為に用意した猫じゃらしだったが、ナッツではなくアーニャが手を伸ばして釣られてしまった為クロエはツッコみ、ルノアは頭を抱えて呆れる。
(そういえば、どういう訳かはわからないけど……ナッツ、シルには懐いてるんだよなー)
なぜナッツがシルに懐いたのか考えるも、これといった理由が全く浮かばない。
(というか、
昨日シルは自分が幻覚を使っていたのにも関わらず、明らかに自分に助けを求めていたことをツナは思い出す。
「ねぇ、シルって何者なの?」
以前リューにも聞いたことだが、他の視点から見た彼女の事を知る為、ツナはシルのことについて三人に尋ねた。
「シルは魔女だニャ」
「ま、魔女!?」
「そうだニャ。ポーカーで負けて皿洗いを何度肩代わりしたことか……」
「はぁ……」
アーニャの口から魔女という言葉が出て、まさかこの世界には魔女がいるのかと思い驚きの声を上げるツナ。しかしシルが魔女と呼ぶ理由があまりにもしょうもなく、拍子抜けしてしまった。
「でも、これがあながち嘘じゃないんだよね」
「え?」
「どういう訳か知らないけど、シルには私たちの心が読めるみたいでさ。まるで
「そうニャ。ミャーのポーカーフェイスもイカサマもシルには全然通じなかったニャ」
(そこまでする!?)
まさか皿洗いをシルに押し付ける為だけにイカサマまですると思わず、ツナはクロエの大人げなさに驚きを隠せなかった。
(神様か……でもなー……)
ルノアはシルを神様みたいだと言っていたが、シルからはヘスティアやミアハのような雰囲気は感じず、シルは神でないとは思った。だが普通の
「お、お待たせしました……!!」
「え、ええっ!?」
考え事をしてる中、シャワーを浴び終えたリューが戻って来たが、それを見たツナは驚きの声を上げる。なぜならその視界にはメイド服に身を纏ったリューの姿が映っていたのだから。
リューのメイド服姿に驚いたのはツナだけではなくアーニャたちもであり、開いた口が塞がらない状況になっている。 そんな中、リューの横にいたシルだけはニコニコと笑っていた。
時は少し遡る。稽古が終わり、シャワーを浴び終えてリューは脱衣所へ出る。
「こ、これは……!?」
そしてシルの用意した着替えを着ようとするリュー。しかしリューの視界に映ったのはメイド服であった。
(い、一体何がどうなっている!?)
一体なぜ脱衣所にメイド服が用意されているのか全くわからず、リューは動揺を隠せない。
「リュー、私の用意した着替えは気に入ってくれた?」
「シ、シル!? これは一体どういうことですか!?」
扉の向こうからシルの声が聞こえ、リューは即座にメイド服を用意したことに対し抗議した。
「どうもこうもないよ? 私はただリューにメイド服を着てもらって、ツナさんにリューのことを意識して欲しいと思っただけだよ」
「余計なお世話です!! 第一、こんな破廉恥な真似ができる訳がない!!」
「でもこのくらいしないと、ツナさんとの距離を縮められないよ。国に帰る話は延期にはなったけど、それでもいつかは帰っちゃうんだよ?」
「だ、だからと言ってこんな方法でなくても……!!」
「それにツナさんはリューの為に朝早くから稽古に付き合ってくれたんだよ。そのお礼はした方がいいんじゃないかな?」
「そ、それは……!!」
「大丈夫。私がサポートしてあげるから」
そして結局リューはシルに強引にメイド服を着せられる事になったのだった。
「ど、どうしたのリュー……!? そんな格好して……!?」
「リューが自分の稽古に付き合ってくれたツナさんにお礼がしたいらしくて。それでツナさんのメイドになりたいって志願してきたんです」
「嘘を言わないで下さい!!」
まるで自分がツナのメイドになることを心の底から望んだかのような言い方をするシルに、リューは即座に否定する。
「誤解しないで下さい、ツナ!! これはシルに無理やり着させられたんです!!」
「う、うん……だよね……」
顔を真っ赤にしながら言い訳をするリュー。まさかあのリューが自らこのような格好をするとは思わなかった為、ツナはどこか安心していた。
「ダメだよリュー、ちゃんとご主人様って呼ばないと」
「ごっ、ご主人様……!!」
「もう大丈夫だから!! リューの気持ちはわかったから!!」
恥辱に耐え、顔を真っ赤にしながらもご主人様と呼ぶリューを見ていられなくなり、慌ててお礼の必要はないと伝える。
「じゃあまずはご主人様に食べさせてあげるところからね」
「た、食べさせる!?」
「い、いいよ!! 自分で食べられるから!!」
シルはツナの言葉を無視し、そのまま進めていく。シルのその発言を聞きリューとツナは恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にする。
「じゃあクロエ、アーニャ。ツナさんを押さえてて」
「わかったニャ!!」
「任せろニャ!!」
「えっ、ちょっ!?」
なんとしてでも計画を成就しようと考えたシルはアーニャとクロエに命令する。シルの意図を察した2人はノリノリでツナを羽交締めにし、その動きを抑える。
「良かったですねツナさん、リューに食べさせてもらえて」
「シルが命令してやらせてるだけだよね!?」
「グダグダ言ってないで口を開けるニャ!!」
「ほらあーんするニャ!!」
(もう拷問にしか見えないんだけど……)
何事もなかったかのように強引に事を進めようとするシルにツナはツッコミを入れる。そしてアーニャとクロエは口を開けるようツナに命令する。
一方でルノアにはこれが敵から情報を吐かせる為、自白剤を無理やり飲ませようとしている光景にしか見えなかった。
「今だよ、リュー」
「し、しかし……!!」
「いいの? 借りを返さなくて」
「くっ……!!」
シルの言葉を聞いたリューは強引に事を進めたくはなかったが、稽古に付き合ってくれた礼を返さない恩知らずのエルフにもなりたくないと葛藤し考えた末、覚悟を決めた。
「く、口を開けなさいツナ!!」
「ええ!? 本当にやる気!?」
「いいから早くしなさい!!」
「わ、わかった!!」
顔を真っ赤にしながらも鬼の形相を浮かべるリューに気圧され、ツナは口を開けた。
するとリューは皿に乗っていたサンドイッチを手に取り、ツナの口に持って行く。そしてツナはそのサンドイッチを食べ、飲み込んだ。
「お、お味はどうですかツナさん?」
(あ、味がしない……!!)
本来ならのミアお手製の絶品料理も、リューに食べさせてもらったドキドキ感からサンドイッチの味が全く感じなかった。
「じゃあリュー。今度はそのコップに入っている水を口に含んで、そのままツナさんに口移しで飲ませて上げて」
「「なっ!?」」
「流石シルだニャ!!」
「ナイスアイデアだニャ!!」
しれっとキスをさせようと誘導するシル。シルの発言に2人は顔を真っ赤にし、動揺する。
アーニャとクロエはさらに面白いことになると確信し、シルのアイデアに便乗する。
「既成事実さえ作っちゃえば、後はリューの望みが叶うよ」
「そんな破廉恥極まりない真似、できる訳がありません!!」
シルがニコニコしながらリューにしか聞こえない程度の小声で囁く。しかしいくらお礼とはいえ、いきなりツナにキスすることなどできる訳もなく、顔を真っ赤にしながら動揺することしかできなかった。
「さぁ覚悟するニャ、ツンツン頭!!」
「さっさとその唇をリューに捧げるニャ!!」
「だ、誰か助けてー!!」
アーニャとクロエがツナを封じる力を更に強くし、ツナが逃げられないようにする。ツナは抵抗するも、超死ぬ気モードでないツナでは2人を振りほどくことは叶わない。
(もう収集つかないわね、これ……)
あまりにもカオス過ぎる光景にルノアはどうすることもできず、ただただ見守ることしかできなかった。