ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)105 負債(マイナス)

 

 

 

 

 

 リボーンの地獄の訓練がら一晩経った次の日。

 

「多っ!?」

 

 ツナ達は【竈の館】の玄関にいた。そしてツナの視界には50人を超える人が集まっていた。

 彼らの目的は新生【ヘスティア・ファミリア】の入団の為の面接。戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わってからギルドやヘスティアのバイト先で入団希望者の告知を行ったのだ。

 

「本当にこんなに集まるなんて……」

 

 以前リリが予想した通りに入団希望者が大勢集まった為、ツナは驚きを隠せない。

 

「つ、ついに零細【ファミリア】脱出……!! やりましたね!!」

 

「ああ!! 【ファミリア】を発足してから苦節3ヵ月……短いようで長かった!!」

 

(これで、恩は返せたかな……)

 

 これまでずっと人員が集まらない貧乏【ファミリア】であった事からベルとヘスティアは嬉しさのあまり涙を浮かべていた。

 確実に【ファミリア】が安定するとは限らないが、それでも余程のことがない限りは大丈夫だろうとツナは確信する。これで自分を拾ってくれたベルとヘスティアに恩を返せたと感じたツナは、2人を見て微笑む。

 

「綱吉様?」

 

「どうかしたのか?」

 

「あっ、いや……貧乏【ファミリア】から脱却できて良かったなって……」

 

 喜ぶベルとヘスティアに対し、それを黙って見ているツナを見てリリとヴェルフは違和感を覚える。ツナは貧乏【ファミリア】から脱却する為命懸けで59階層まで遠征に行ったことは悟られないよう慌てて誤魔化した。

 

「それでどうすんだ? こいつら全員、入団させるのか?」

 

「僕が1人1人に質問して見極める。時間はかかるが、【ファミリア】に害を及ぼす者がいないかどうか確認するには子供たちの嘘を見抜ける()が適任さ」

 

「もっとてっとり早い方法があるぞ」

 

「え?」

 

「俺が入団希望者と戦って見極めてやる」

 

「お前ただ暴れたいだけだろ!!」

 

「頼むから止めてくれ!! せっかく集まった入団希望者がいなくなる!!」

 

 愛銃を構え不敵な笑みを浮かべるリボーン。どう見ても【ヘスティア・ファミリア】ではなく私情を優先しているのは明らかであり、ツナはツッコミを入れる。

 そしてもしリボーンが戦えば入団希望者達がベルのようにトラウマになる者が続出することは確実。ヘスティアは全力で止めた。

 

「安心しろ、俺が戦うのは男だけだ。男なら死んだ方がマシだと思うくらいの苦痛を与えても問題ねぇが、女相手にそんな真似はできねぇからな。これなら問題ないだろ」

 

「男とか女以前の問題だ!! 野蛮な方法で物事を進めようとするんじゃない!!」

 

「ちっ。しょうがねぇな」

 

 ヘスティアに強く止められた事でリボーンは舌打ちをしながらも、渋々銃を懐にしまった。

 

(あっ)

 

 ツナは入団希望者の中にダフネとカサンドラの姿を視界に捉える。ツナは玄関の階段を降り、2人の元へ向かう。

 

「2人も来たんだね」

 

「ど、どうも……」

 

「まぁね」

 

 2人は他の冒険者と同じく、現在オラリオで一番勢いのある【ファミリア】であることや、アポロンと違い主神であるヘスティアが真っ当な神である事から、入団希望者の面接にやって来たのだ。

 

「あっ、そういえば言い忘れてたことがあったんだ」

 

「何よ?」

 

「実は国に帰る話が延期になったんだ」

 

「えっ……!?」

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わって以降は2人には会うことがなかった為、ツナはオラリオを去る話が延期になったことを彼女達に伝えた。

 

「じゃ、じゃあ……綱吉さんは【ヘスティア・ファミリア】に残るってことですか……?」

 

「うん。まあいつかは国に帰るんだけどね」

 

「そうですか……良かったね、ダフネちゃん」

 

「な、何がよ!!」

 

 【ヘスティア・ファミリア】に入団しても想い人(ツナ)とは一緒になれないと思っていたが、それが延びた為カサンドラは祝福するも、ダフネは顔を赤らめながらムキになる。

 

「そ、そういうあんただって同じでしょ!!」

 

「っ!?」

 

「?」

 

 ダフネが言い返すとカサンドラは反論することすらできず顔を赤らめ、モジモジし始める。ツナはダフネの言っていることが全くわからず、首を傾げた。

 実はカサンドラはベルの方に好意を抱いている。この入団希望者の面接が行われる前、カサンドラはお気に入りの枕がここにあることを突き止めダフネと共にやって来ていた。その際にベルが対応したが、ベルはカサンドラの予知を即座に信じた為、予知を信じられた事のないカサンドラはベルに惚れたのである。

 ちなみに戦争遊戯(ウォーゲーム)の際ツナもまたカサンドラが予知能力を持っていることを知っているが、味方と思っていた団員が実は敵であるという衝撃があまりにも大き過ぎて意識するどころではなかった。

 

「そ、それよりも!! お茶するって話は忘れてないわよね!!」

 

「うん、忘れてないよ。いつにする?」

 

「あ、明日とかどう?」

 

「いいよ」

 

「じゃ、じゃあ明日の12時にバベルの前に集合でいい!?」

 

「わかったよ、明日の12時だよね?」

 

(や、やったわ……!!)

 

 緊張のあまり鼓動がどんどん速くなっていく中、ダフネはなんとかツナとの約束を取り付けることに成功し、心の中で安堵する。

 

「よし、それじゃあ面接を開始するかな」

 

 ヘスティアは時間がきたことを確認し、【ヘスティア・ファミリア】の入団面接を始める。

 面接が始まるのを確認したツナは玄関の前へ戻って行く。

 その時だった。

 

「ヘ、ヘスティア様ぁー!?」

 

 屋敷の玄関の扉が乱暴に開かれた。そこには1枚の紙を持って慌てた様子の命がいた。

 

「ど、どうしたんだい、命君?」

 

「に、に、荷物の中から……借金2億ヴァリスの契約書がぁ!!」

 

「ぶぅっ!?」

 

「は?」

 

「に、おく?」

 

 命が右手に持った用紙を掲げて叫ぶとヘスティアは吹き出し、リリとヴェルフ、そして入団希望者たちも衝撃のあまりその場で固まってしまう。

 

(ま、まさか……!?)

 

 命が掲げている契約書の内容を見て、ベルはすぐに腰に差している【ヘスティア・ナイフ】を見た。刀身には刻まれたオラリオ随一の鍛冶【ファミリア】である【ヘファイストス・ファミリア】のロゴが刻まれており、2億ヴァリスの借金がこの【ヘスティア・ナイフ】のものだということを即座に理解した。そしてベルは大きなショックで意識を失った。

 

「ベ、ベル様!!」

 

 リリは意識を失ったベルの元へと駆け寄り、体を揺さぶるもベルの意識は全く戻らない。

 

「そ、そんな……せっかく遠征に行ったのに……」

 

「お、おい!! しっかりしろツナ!!」

 

「綱吉君!?」

 

 一方でツナは意識を失うことはなかったものの、それでも膝から崩れ落ちてしまう。

 あの遠征は命懸けだったというのに、【ヘスティア・ファミリア】が2億ヴァリスという膨大な借金をしていたと判明し、苦労が水の泡になったのだから無理もないだろう。

 2億ヴァリスの借金があるということを知り、入団希望者たちは次々とその場を去って行った。

 

「帰るわよ、カサンドラ……」

 

「えっ!? えっ!? ダフネちゃん!?」

 

 ツナと同じ屋敷で暮らせないという心残りはあったが、それでも2億ヴァリスという借金を抱える【ファミリア】に入ろうとは流石に思えず、ダフネはカサンドラの手を引いて【竈の館】を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入団希望者が去った後、ヘスティアはあの借金はヘファイストス直々にナイフを打ってもらった時のものであること、この借金はヘスティアが自力で返すことをヘファイストスと約束したことを話した。

 そしてツナたちは今後の【ファミリア】の方針についての会議を行うことになった。

 

「ホワイトな【ファミリア】だと思ってたが、まさかブラック【ファミリア】だったとはな」

 

「人聞きの悪いことを言わないでくれ!! 僕の【ファミリア】はブラックじゃない!!」

 

「いいえ!! リボーン様の言う通りです!! 2億ヴァリスの借金がある【ファミリア】のどこがホワイト【ファミリア】ですか!!」

 

 自分の【ファミリア】が悪徳扱いされてヘスティアは憤慨するも、リリはリボーンの意見に賛同する。

 リリの所属していた【ソーマ・ファミリア】も主神は無関心、団長や団員たちは私利私欲にまみれ、神酒によって荒れまくっていたブラック【ファミリア】ではあったが、それでも流石に2億ヴァリスという借金まではなかった。

 例え主神と団長たちの人間関係自体は問題なくとも、2億ヴァリスの借金がある【ファミリア】をホワイトと言っていいかどうかは疑問だった。

 

「しかも綱吉様が59階層に遠征に行った頑張りを、一瞬で無駄にしたんですよ!!」

 

「それに関しては本当にすまなかった、綱吉君!! まさか【ファミリア】の為に頑張ろうとしてくれたとも知らず借金のことを秘密にしていて!!」

 

「も、もう大丈夫だから……」

 

 2億ヴァリスの借金が判明した事で、ツナはショックのあまりつい遠征に行った理由を漏らしてしまった。その言葉を聞きヘスティアはツナの言葉の真意を確認した。神であるヘスティアの前では嘘を隠せない事から、ツナは遠征に行った理由を話す。

 そして遠征に行った理由が【ファミリア】の為だと知るとヘスティアは顔が真っ青になり、光の速さで土下座し謝罪したのである。

 

「しかし、まさか沢田殿が【ロキ・ファミリア】と共に59階層に行っていたとは……」

 

 命はツナが遠征にいなかった理由を知らなかった為驚愕すると同時に、ベルたちに怪物進呈(パスパレード)した際にツナがパーティにいなかった理由も理解する。

 

「しょうがねぇな。俺がなんとかしてやるか」

 

「何か考えがあるんですか、リボーン様!?」

 

賭博場(カジノ)で一発当てる」

 

賭博(ギャンブル)に手を出すおつもりですか!? というか赤ん坊の癖に賭博(カジノ)に行こうとしないで下さい!!」

 

 リボーンが自信ありげに言った為、リリは2億ヴァリスの借金をゼロにできる方法があるのかと思い期待の眼差しを向けたが、その方法がまさかの賭博(ギャンブル)だった為、目くじらを立てながらツッコミを入れた。

 

「じゃあツナ。ちょっと深層に行ってこい」

 

「ちょっと、水買って来てくれくらいのテンションで言うんじゃない!!」

 

「深層の怪物(モンスター)の魔石やドロップアイテムを回収すれば何とかなるだろ。それにツナも鍛えられて一石二鳥だしな」

 

「1人で行かせられる訳ないだろ!!」

 

 いくらツナが強いと言えど、流石に1人で深層に行かせることなどできる訳もなく、当然ヘスティアは猛反対した。

 

「借金を隠していたのは確かに悪かったけど……約束するよ。眷属(きみ)たちに迷惑はかけない」

 

「でも……神様は僕の為に借金までしてこのナイフを下さったんですよね……?」

 

 ずっと意識を失っていたベルが目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。

 

「気に病まないでくれよ、ベル君。これは僕が勝手に……」

 

「神様。僕は2人で一緒にお金を返していきたいです」

 

 ヘスティアが勝手にやったこととはいえ、自分の為にこのナイフを用意してくれた。そのことを知りヘスティアだけに借金返済をさせるなんてことは到底できなかった。

 

「お金は僕が何年かかっても必ず返す。だからベル君たちは……こんな僕を倒れないよう支えて欲しい」

 

 ベルの気持ちを理解したヘスティアは折衷案を提案した。

 

「借金まみれの主神(かみ)で悪いけど……いいかなぁ?」

 

「勿論です」

 

「……主神様がこう言ってるんだ。眷属(おれ)たちは逆らえないな」

 

「ふふっ、そうですね」

 

「もうっ、今後こんなことはないようにして下さいね」

 

 ヘスティアの頼みをベルは快く快諾。ヴェルフ、命、リリもベルと同じく了承した。

 

「では【ファミリア】の現状と方針の確認です。綱吉様の遠征と【ガネーシャ・ファミリア】の依頼(クエスト)のお陰で生活費は足りています。ですがギルドへの税金は年数百万は持っていかれるでしょうから、備えが必要です」

 

「今後の派閥の活動も、迷宮探索が主導という訳ですね」

 

「探索の効率を上げる為にも、派閥の団員の強化は急務だな」

 

 今の【ファミリア】の現状と今後の課題を説明するリリ。命とヴェルフとこれからどうするべきかを考え、発言する。

 

「……団員の強化か」

 

(ヤ、ヤバい!!)

 

 ヴェルフの発言を聞き、口元をニヤニヤさせるリボーンを見てツナは悪寒を感じ、すぐその場から逃げようとする。

 

「それなら俺に任せとけ」

 

「なっ!?」

 

「え!?」

 

「うぉ!?」

 

 しかしもう時は遅くツナ、ベル、ヴェルフにロープが一瞬にして巻きつき、身動きが取れなくなる。

 

「これから世話になるしな。その代わり俺がお前たちを鍛えてやる。そうすればダンジョンの奥に行けるようになるし、稼ぎだって上がるだろ」

 

「ひっ!!」

 

 鍛える大義名分を得たリボーンは嬉しそうな笑みを浮かべる。その笑顔を見てベルは悲鳴を上げた。

 

「よし行くぞお前ら、さっそく修行だぞ」

 

「お、おい待て!! 俺はまだやるって言ってねぇぞ!!」

 

 リボーンは3人を引っ張り地下にある修行部屋へ連行する。

 ヴェルフは抵抗するもリボーンの力に全く抗うことができず、そのまま一緒に連れて行かれる。

 

 その後、リボーンがトラウマになる者が一人増えたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 




次回はダフネとのデート回です。

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