ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか 作:薔薇餓鬼
入団面接が失敗に終わってから次の日。
「そろそろかな……」
ツナはダフネとの約束通り、バベルの前でダフネを待っていた。
「お、お待たせ……」
「え……!?」
そして約束した時間の5分前、ついにダフネが現れた。だがいつものダフネと違い彼女は柔らかなピンク色のワンピースを纏っていた。胸元からウエストにかけて繊細なレースがあしらわれ、ふんわりと広がるスカートが歩くたびに優雅に揺れる。肩には淡いベージュのカーディガンを羽織り、少し大きめのシルエットが彼女の華奢な体を包み込む。首元には控えめに輝くゴールドのダブルネックレス、左手には細身のブレスレットがきらりと光る。白いチェーンバッグを手にした姿は、夕暮れに溶け込むように柔らかく、それでいて目を引く美しさを放っていた。
初めて見る私服姿のダフネに、思わずツナは目を奪われていた。
「な、何よ!! い、言いたいことがあるなら言いなさいよ!!」
「い、いや……私服姿を見るの初めてだったから、つい見とれちゃって……」
「お、お世辞なら良いわよ……!!」
「お世辞じゃないよ、似合ってると思うからそう言っただけだよ」
「っ!?」
お世辞抜きで似合っていると言われたダフネは顔を赤くし、しおらしくなってしまう。
気の強い性格のせいか今まで異性とここまで親密な関係になることはなかったが、初めて意識した異性に衣装を褒められただけでダフネの頬は熱くなり、鼓動が速くなっていくのを自覚する。
「い、行きつけのカフェがあるから、ついて来て……!!」
「う、うん」
ダフネがそう言い、彼女の案内の元ツナはダフネが贔屓にしてるカフェに向かう。
そして歩くこと20分。目的地であるカフェに辿り着いた。2人は向かい合った状態で座った。
「遠慮せす、好きなの頼んでいいわよ」
「え……でも……」
「流石に2億ヴァリスも借金がある【ファミリア】の団員に払わせる訳にはいかないでしょ。第一、これはあんたへのお礼なんだから。それに心配しなくても、もしもの時の為に自分の生活費くらい貯めてるわよ」
「あ、ありがとう」
ツナはダフネの厚意に甘えることにし、目についた物を注文する。
「昨日はなんかごめんね。せっかく面接に来てくれてたのに……」
「あんたが謝る必要なんてないわよ……あの様子だとヘスティア様が借金をしていて、あんたたちに迷惑をかけない為に黙っていたってトコでしょ」
注文したメニューが届いたところでツナは昨日のことについて謝罪した。ダフネは昨日のツナたちの反応から、概ね【ヘスティア・ファミリア】の現状は察しており、特に責めることはしなかった。
「それにミアハ様が自分の【ファミリア】に入らないかってウチとカサンドラに声をかけてくれたし、問題ないわ」
「えっ? そうなの?」
「まぁね……ミアハ様のところも借金はあるけど、それでもあんたたちの【ファミリア】には比べれば大分マシだからね」
(ミアハ様のところもそうなんだ……)
ツナは【ミアハ・ファミリア】が借金をしていることを初めて知り驚くと同時に、団員がナァーザしかいないことや、その
「他の人はどうだったの?」
「私たちみたいに他の【ファミリア】から
「そうなんだ……」
あの入団希望者の中に落ちぶれた人がいると知り、ツナは罪悪感を感じ暗い表情を浮かべた。
「あんたたちのせいじゃないわよ……元はと言えば私たちが喧嘩を売ったせいでそうなったんだから。第一、オラリオで冒険者になるって決めた以上、こうなる覚悟だってできてたはずよ」
「……」
淡々と呟くダフネであったが、それでもツナは完全に納得できない様子だった。
「……そういえば、アポロンに忠誠を誓ってた人たちはどうなったの?」
ツナはアポロン派の団員たちがアポロン以外の【ファミリア】に移籍するとは考えにくかった事から、彼らがどうなったのかを尋ねる。
「ギルドの制止を振り切って、アポロン様を追い掛けて行ったわ」
「え? なんで都市外まで追い掛けるのはダメなの?」
「冒険者が都市外に出たらダンジョンによって得られる利益が減るからよ。それにLvの高い冒険者や特別なスキルや魔法を持ってる人が他の国に渡れば、オラリオにとっての脅威になるかもしれないし。だからオラリオは基本的に冒険者を極力外へ出さないようにしてるのよ」
「そっか……」
ダフネの説明を聞き納得すると同時にツナは思い出す。この世界のどこかにいるであろう自分の世界の人間が死ぬ気の炎を他国に伝え、近い将来オラリオに進軍するかもしれないことを。
「後はルアンの奴ね。あいつもミアハ様に入団しないかって誘われてたにも関わらず誘いを断ったわ」
「ルアンって……あの
「ええ、けど借金のある弱小【ファミリア】になんて入れるかって言って、勧誘を蹴ったのよ。他の【ファミリア】に入れる訳ないのにね」
「え? 何で?」
「あいつ、弱い癖に【アポロン・ファミリア】の所属であるのをいいことに偉ぶってたのよ。だから他の【ファミリア】からすれば、あいつの印象は最悪なのよ。なのにまだプライドは捨てられないみたいね。せっかくあんたが誤解を解いてくれたっていうのにね」
(あれは俺じゃなくてリリなんだけど……)
先の
一応ダフネとルアンにそれぞれ変身したツナとリリが一緒にいた時間があった筈なのだが、その時はベルとヒュアキントスの戦いに注目が向いていた為、その時のことは中継に映っていなかったのである。
「そういえば、あの助っ人のエルフのことなんだけど」
「ど、どうしたの……?」
料理を食べながらダフネはリューの話題に移行する。まさかリューが【疾風】だと気づいたのではないかと思いツナは不安になる。
「一体あんたとどういう関係な訳?」
「え……?」
覆面をしていたもののエルフである以上、容姿端麗であることはほぼ間違いない。であれば自分の障壁になり得る人物であるとダフネは判断した。彼女はツナからライバル候補の情報について探りを入れ始める。
「と、友達だけど……」
「本当に?」
「う、うん……」
「じゃあどこの【ファミリア】の人間?」
いくら都市外の【ファミリア】と言えど、50人を相手にできる程の実力者などそうはいない。あれからダフネはリューの情報を調べてみたが、彼女の情報を得ることは一切できなかった。
「そ、それはちょっと、言えないんだ……」
「何でよ」
「本人が目立ちたくないって言ってるから……」
「訳ありってこと?」
「ま、まぁ……」
「ふーん……」
ツナの話からを聞いて、これ以上彼女の事を詮索することは止めることを決めるも、ダフネからすれば秘密を共有する仲であるというのは面白くない話でもあった。
その時だった。
「お待たせしました。カップル限定のパフェになります」
「「はい!?」」
店員がパフェを2人の席に持ってくる。しかし2人はそんなパフェなど注文していない為、驚きを隠せない。
「あちらのお客様がお2人にと申されたので、お持ちしたのですが……」
店員が説明しながら視線を移した。2人が店員の視線と同じ方向に目を向けると、そこにはサングラスと帽子という下手な変装をしたカサンドラがいた。2人が自分に視線を向けている事に気づいたカサンドラは、慌ててメニュー票で顔を覆った。
(カ、カサンドラ!?)
(何か勘違いされてる!?)
ダフネはカサンドラが遠回しに気を回したということをすぐ察して顔を赤らめ、動揺する。
その一方でツナは自分がダフネと付き合っていると思われている事に気づき、ダフネと同じように動揺する。
カサンドラは2人がデートするということを知っていたため、こっそり2人の後を尾けていた。そしてダフネの為、カップル限定パフェを2人に提供するよう店員に頼んだのだ。
「えっ? やっぱりあの2人って……」
「そういうことでしょ、恋人用のパフェなんて頼んでいるんだから。それに服装もかなり気合い入ってるし」
(し、しまった!!)
まさかこうなるとは思わなかった為、服装に気合いを入れてきたことに対しダフネは少しだけ後悔した。
そして店内にいた者たちが次々とツナとダフネに注目し始める。
「た、食べるわよ……」
「ええ!? で、でも!!」
「この状況で食べないなんて選択肢はないでしょ!!」
「そ、それは……!!」
流石に皆が注目するこの状況でいらないと言える程の勇気はない為、2人は諦め、一緒にパフェを食べ始める。
「見て見て、めちゃくちゃ緊張してるわ」
「付き合って間もないカップルって感じでいいわね」
「クッソー!! 見せつけやがって!!」
「俺には出会いすらねぇってのに!!」
(なんかめちゃくちゃ食べ辛いんだけど!!)
店内はきごちない動きながらパフェを食べる2人を見てテンションを上がる女性陣、モテない嫉妬で号泣する男性陣に別れる。
周囲に恋人認定され、あまりの羞恥からツナは少しでも早く食べ終える事に専念する。
(カサンドラ……後で覚えてなさいよ!!)