ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)108 修羅場(ベルム)

 

 

 

 

 

 散々だった遊覧船の観光が終わり、ツナとダフネはようやく恥辱という名の檻から解放された。

 

「ご、ごめん……俺が余計なことをしちゃったせいで……」

 

「い、いいわよ別に……謝らなくて……」

 

 ツナは自分がレイダー・フィッシュを退治した事で、ダフネに恥ずかしい思いをさせてしまうハメになったことを謝るが、自分を助ける為にしたことだった事は理解していた為、ダフネは責めることはしなかった。

 

「それに、格好良かったわよ……」

 

「え? 何か言った?」

 

「な、何でもないわよ!!」

 

 ダフネはツナに聞こえないくらいの小声で呟くがそれを聞かれ、照れ隠しに否定する。

 

「と、とにかく!! た、助けてくれてありがとう……ツナ……!!」

 

「っ!?」

 

 レイダー・フィッシュから護ってくれたことに対し礼を言うダフネ。

 強気な彼女がしおらしくなりながらもお礼を言うその姿を見て、ツナはついドキッとしてしまった。

 

(そういえば……)

 

 ダフネはこれまでツナのことを幻術や回復を使える後方特化の冒険者だと思っていた。しかし先程一撃でレイダー・フィッシュの急所を正確に撃ち抜く技量を見せられ、ツナへの認識を改めていた。

 

(私の目が間違ってなければ……)

 

 ダフネはフィンには到底及ばないもののかなりの頭脳の持ち主であり、冒険者としてもそれなりに死線を乗り越えている。故にツナはもしかしたらベルや戦争遊戯(ウォーゲーム)の助っ人のエルフよりも強いのではないのかということに気付く。

 

「じゃあ次はどこに行く?」

 

「……ねぇ。あんた何者なの?」

 

「え?」

 

「私、あんたのことをてっきり後方支援担当だと思ってた。けどさっきのレイダー・フィッシュを一撃を仕留めたのを見てわかったわ……あんた、ベル・クラネルより強いでしょ?」

 

「そ、それは……」

 

「やっぱり」

 

 言葉を詰まらせるツナの反応から、ダフネは自分の推測が正しかったということを確信する。

 

「何でわざわざあんな真似をしたのよ?」

 

 いくらツナが強いとはいえ、この前の戦争遊戯(ウォーゲーム)は【ヘスティア・ファミリア】の方が劣勢だった。にも関わらず実力を見せる事をせず、わざわざ自分たちを裏切らせるという一か八かの賭けをした理由がダフネには全くわからなかった。

 実際、ツナ1人いれば確実に【アポロン・ファミリア】に勝利できていたのだが、流石に第1級冒険者以上も強いことまではダフネでも見抜くことはできなかった。

 

「今回はベルの戦いだったし、もし俺が戦うって言ったとしても、ベルは絶対に譲らないってわかってたから……それにあの後時は戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わったら国に帰ると思っていたから、俺がいなくなった後、みんなが俺の力なしでも戦えるようにする為に裏方に回ったんだ。もしもの時は俺がなんとかするつもりだったけど」

 

「成る程ね……事情はわかったけど、それで良かった訳? せっかく自分の名をオラリオ中に知らしめる絶好の機会(チャンス)だったのに」

 

 国に帰ると思っていたのなら、やり方次第では最後に戦争遊戯(ウォーゲーム)でその名を残すこともできた筈、なのにそれをしなかったことにダフネは疑問を覚えた。

 

「確かに死ぬ気になれば少しは喧嘩が強くなるけど……それを武器にこれからの人生を生きようとは思わないんだ。俺は大きな地位も名誉も、お金もいらない。自分が楽しいと思える小さな幸せがあればそれでいいんだよ」

 

「地位も名誉もいらないって……じゃあ何の為に冒険者になったのよ?」

 

「恩返しかな」

 

「恩返し?」

 

「俺、色々あって前の本拠(ホーム)の前で倒れていたんだ。そんな俺をベルとヘスティアが助けてくれて【ファミリア】に入れてくれたんだ。けどウチの【ファミリア】は相当貧乏な【ファミリア】だったからさ、俺が冒険者になれば2人を楽させてあげられるかなって思ったんだ」

 

「でも2億ヴァリスの借金があるって判明したんだから、助かったのかどうかわかったもんじゃないわね」

 

 行く宛のないツナに居場所をくれたのはいいものの、2億という負債を背負っていた【ファミリア】に助けてもらったことが果たして運が良かったと言えるのかどうか、ダフネにはなんとも言えなかった。

 

「ねぇ、あんたは【ヘスティア・ファミリア】以外には改宗(コンバージョン)する気はない訳?」

 

「ないかな……それに俺はまだ入団して1年も経ってないから、どのみち改宗(コンバージョン)はできないし」

 

「そう……」

 

「何でそんなこと聞くの?」

 

「べ、別に!! ただ2億ヴァリスの借金がある【ファミリア】にいるのが大変かなって思っただけよ!!」

 

 それらしいことを言うダフネだったが、本心ではツナを【ミアハ・ファミリア】に勧誘しようと考えて始めていた。

 多額の負債を背負う【ヘスティア・ファミリア】に入団する気はない以上、ダフネがツナと一緒にいられる方法はツナを【ミアハ・ファミリア】に入団させるしかない。今は出来なくても、改宗(コンバージョン)できる期間まで待てば自身の望みは叶う。

 

「もしかして、俺のことを心配してくれたの?」

 

「な、何よ!! わ、悪い!?」

 

「ううん。優しいんだね、ダフネって」

 

「っ!?」

 

 不意に優しいという言葉をかけられだけで、ダフネは顔を真っ赤になり心臓の鼓動がどんどん早くなっていく。

 

「せ、責任取りなさいよね……!!」

 

「責任?」

 

「ウチをこんなこと風にした責任よ!!」

 

「な、何の話……?」

 

「もうっ、鈍いわね!! ウチは……あんなことが……!!」

 

 これだけ言ってなお何もわかっていない様子のツナを見て痺れを切らしたダフネは、顔を真っ赤にし鬼の形相を浮かべる。そして覚悟を決めた。

 が、

 

「つ、綱吉様……!?」

 

「ア、アンナ!?」

 

 ダフネが告白しようとしたその矢先、とある女性がツナの名前を呼ぶ。ツナが振り向くと、そこには顔を真っ青にしながら全身を小刻みに震わせている、アンナの姿があった。

 

「い、一体……その方とはどのような関係……? ま、まさかその方が綱吉様の……!?」

 

「ち、違うよ!! 俺とダフネはただの友達だって!!」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「う、うん!!」

 

「良かった……それならまだ私にもチャンスがあるんですね。綱吉様の彼女になれるチャンスが」

 

「は?」

 

 ダフネが友達だと知り安堵するアンナだったが、一方でダフネはアンナがさらっととんでもない発言をした事で、ダフネの表情から一気にその感情が消える。

 

「……ちょっと誰よ、その女」

 

「いででででで!!」

 

 浮気された彼女のような発言をしながらダフネはツナの頬を引っ張る。

 

「ら、乱暴なことは止めて下さい!!」

 

「なっ!?」

 

 それを見たアンナは両手でツナの腕を掴むとダフネから引き剥がす。

 

「大丈夫ですか、綱吉様?」

 

「う、うん……」

 

「良かった……」

 

「それで綱吉様……一体何をされていたんですか?」

 

「何って……普通に遊んでただけだよ。前にダフネからお茶しようって言われてさ」

 

「そういうことですか……そういえば戦争遊戯(ウォーゲーム)の時に綱吉様に助けられてましたもんね……」

 

「っ!?」

 

 ツナの言葉を聞き、アンナは全てを理解する。ツナが自分をテッドの呪縛から解放してくれたように、ダフネもツナによってアポロンの呪縛から解放されたことを。そして自分と同じようにツナに惚れているのだということも。

 一方でアンナに自分の気持ちを気づかれたダフネは何も言い返すことができない。

 

「あ、あなたにも負けませんから!! たとえ相手が冒険者様でも!!」

 

(なっ、何なのこの子!?)

 

 会って間もない初対面のアンナにいきなり宣戦布告され、ダフネは大きく困惑する。

 

(ん……? あ、あなたにも(・・)?)

 

 動揺していたダフネであったが少ししてアンナの先程の発言を思い出し、その言葉に違和感を覚える。

 

「ツ、ツナ……!?」

 

 すると荷物を落ちる音と震えた女性の声が聞こえる。そこには先程のアンナと同じように、顔を真っ青にしながら全身を震わせているリューがいた。

 

「い、一体ここで何をして……!?」

 

(あれは豊穣の女主人の……? ってまさか!?)

 

 買い出しで買った食材が地面に転がっていくも、リューはそれを拾うどころではなかった。なぜならツナに想いを寄せる2人が彼の傍にいる光景がリューの視界に映り、思考を停止してしまっていたからだ。

 名前は知らなかったが、リューが豊穣の女主人の店員だということをダフネは知っていた。そして先程のアンナと同じような反応したリューも見て、彼女もまたツナに惚れているのだとすぐ理解した。

 

(まさか、あのエルフ以外にもいたなんて……)

 

 まさか戦争遊戯(ウォーゲーム)の時に現れた助っ人のエルフ以外にもライバルが2人もいるとは思ってもいなかった為、ダフネは頭を抱える。

 ダフネはライバルが3人だと思っているが、あのエルフと目の前にいる豊穣の女主人の店員が同一人物だということをダフネは知らない為、実際には2人である。

 

(一体どれだけの女を誑し込んでるのよこいつは!!)

 

 こうしてダフネはツナと付き合うまでの道のりが如何に困難かと言う事を、嫌という程味わったのだった。

 

 当然この後更にカオスな状況になったのは、言うまでもないだろう。

 

 

 




という訳でダフネとのデート回はこれで終わりです。オラリオって娯楽が少ないから書くのが難しかったです。もっと自分に才能があればなー。

次回から春姫篇を本格的に入っていきます。


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