ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)109 同郷(コンパトリオ)

 

 

 

 

 

 ダフネとのデートが終わったその日の夜。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ツナは【竈の館】の地下の修行場で恒例のリボーンのしごきを受けていた。

 現在ツナは右膝を地面につけ、肩で息をしていた。そしてツナの目の前には息1つ乱れていないリボーンがいる。

 

「おっ、いたいた。やっぱりここだったか」

 

 そんな中、バイトから帰って来たヘスティアが修行場にやって来た。

 

「修行の邪魔だったかい?」

 

「いや、そろそろ一息つきたいと思ってたところだ。気にすんな」

 

「そうかい。それよりベル君たちがどこに行ったか知らないかい? どこを探してもいないんだよ」

 

 2億ヴァリスの借金が判明して以降、ヘスティアは借金を早く返済しようと残業をしている。なのでここ最近ツナたちはヘスティアが帰る前に夕食を済ませることが多くなっている。

 

「ベルたちなら命を追ってどこかに行ったよ」

 

「命君を? どういうことだい?」

 

「夕食を食べ終えてから命の様子がおかしくってさ……その後、俺たちに何も言わずに出て行ったんだ。それで心配になったベルたちが、命の後をこっそりとついて行く事になって……でも流石に誰か本拠(ホーム)に残らないといけないって話になったから、俺とリボーンが残ることになったんだ」

 

「そういう事か……いやしかしどこへ行ったというんだ……? そもそも何の為に」

 

 ツナは(ハイパー)化を解き、ベルたちがいない理由について説明する。命が誰にも何も言わずどこかへ行ってしまった理由をヘスティアは考えるも、これといった理由が浮かばない。

 

「他派閥の男と付き合い始めたんじゃねぇか? 確か他の【ファミリア】との過度な干渉は禁じられてんだろ? それなら他人には言えないだろ」

 

「こ、恋人!? 命に!?」

 

「た、確かにそれなら筋は通るが……」

 

 リボーンの推測を聞いてツナは顔を赤らめ動揺し、ヘスティアもリボーンの言っていることはあながち嘘ではないと感じた。

 

「いずれタケの所に帰るとはいえ、今は僕の眷属だ。僕個神としては命君の恋を応援してあげたいが……しかし派閥として、それを許していいのかどうか……」

 

 ヘスティアは腕を組みながら命の恋を応援するべきかどうか本気で悩み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、リリ、ヴェルフ、命の三人はその日の内に帰還した。だが何故かベルだけが帰って来ず、次の朝になってようやくヘロヘロの状態になって帰って来た。

 

「歓楽街に行って朝帰り~? ほらベルくぅん、申し開きはあるのかい?」

 

 そして現在、ベルは正座させられていた。なぜなら朝帰りした理由が歓楽街に行っていたからである。

 ヘスティアはベルの前で鬼の形相で仁王立ちし、自慢のツインテールが逆立っていた。

 

「ヘ、ヘスティア様!? 全て自分の私用が招いたことで!!」

 

「命君は黙っているんだ」

 

 この状況は元を正せば自分のせいである為、命はなんとか助け舟を出そうとするもヘスティアは聞く耳を持つ気はなかった。

 

「それでぇ……娼婦と寝たっていうのかぁい?」

 

「あ、遊ぶ気なんてなかったし、してもいません!? 誤解なんですぅ!?」

 

「ではどーして、朝早くに歓楽街から帰って来たのですか?」

 

 しかし怒っているのはヘスティアだけではない。リリもヘスティアと同様怒っており、視線だけで射殺さんとばかりの勢いでベルのことを睨みつけている。

 

「あ、あのさ……」

 

「「何だい!?/何ですか!?」」

 

「ひっ!!」

 

 ツナが何か言おうとした瞬間、鬼の形相を浮かべたヘスティアとリリがツナの方に視線を移す。2人の鬼気迫る迫力の矛先が自分に向いた事で気圧され、ツナは悲鳴を上げる。

 

「そ、その……歓楽街とか娼館って、何……?」

 

「「は?」」

 

「お、お前……」

 

「さ、沢田殿……」

 

「ツナ……」

 

 ツナの純粋な疑問を聞いた途端、ヘスティアとリリの怒りは綺麗さっぱり無くなり、ヴェルフ、命、ベルは唖然としていた。

 

「そんな事も知らねぇのか、本当にしょうがねぇ奴だな。まぁいい。家庭教師(かてきょー)としてちゃんと教えておいてやる。まず歓楽街ってのは……」

 

「待て待て!! 赤ん坊の癖に何でそんなこと知ってんだ!?」

 

「これくらい一般常識だろ」

 

「歓楽街や娼館のことを知ってる赤ん坊がいてたまるか!!」

 

 何故か赤ん坊でありながらそういう知識を当たり前のように知っていることに対し、ヴェルフはツッコミを入れる。

 

「え、えっと……」

 

「沢田殿は何も知らなくていいんです……できるならこのまま何も知らないで下さい……」

 

 リボーンとヴェルフの話に全くついていけず困惑するツナだったが、命は右手をツナの右肩に置きながら呟いた。

 

「サポーター君、この話は止めだ!! これ以上は綱吉君に悪影響だ!!」

 

「や、止むを得ませんね……」

 

(た、助かった……)

 

 正直色々とベルに追及したい事はあったが、予想以上に純粋無垢なツナにアレコレ聞かせる事はできない上に、流石に歓楽街や娼館について1から説明する勇気はヘスティアとリリは持ち合わせておらず、ベルの尋問は中断する他なかった。

 まさかこんな形で尋問が中断するとは思っておらず、しかしこれ以上問い詰められないで済むと知り、ベルは心の中で安堵した。

 

「それと例の物(・・・)は即刻処分するんだ。!! 無論、綱吉君に悟られないようにだ!!」

 

「は、はい……!!」

 

 名称こそ口にしなかったが、ヘスティアの言っている例の物が何なのかリリは即座に理解し、小声で返事をしながら首を縦に振った。

 

「どうしたの、2人共?」

 

「な、何でもない!! 女の子同士の秘密の会話ってやつだ!! な!? サポーター君!?」

 

「は、はい!! ダメですよ綱吉様!! 乙女同士の会話を聞き耳を立てるような真似をしては!!」

 

「そ、そう……? 何かごめん……」

 

 2人が小声で話すのを見たツナは何かあったのかと思い、話しかける。2人は引き攣った笑みを浮かべながら慌てており、傍から見ても何か隠しているのはバレバレだったが、変な所で鈍感なツナは2人の真意に気づくことはなかった。

 

((な、なんとか誤魔化せた……))

 

 ツナに自分たちが隠し事をしていることがバレずに済んだことに安堵すると同時に、全身が疲労感に襲われた。

 その後、ヘスティアからベルにはひとまず罰が与えられることとなり、一同は解散した。

 

「それで結局、命は何しに行ってたの?」

 

「……実は故郷の知り合いと似てる方がいるということを、千草殿から聞いたんです。確証もない上、同郷の問題だったので他の方々を巻き込む訳にはいかないと思い……」

 

「それでその仲間には会えたのか?」

 

「いいえ、色々とあったものでして」

 

 昨日本拠(ホーム)にて留守番をしていた為、事情を知らないツナとリボーンに命はこっそり出て行った理由を語った。

 

「別人っていう可能性はないのか?」

 

「その方は高貴な方で、かつ狐人(ルナール)という珍しい種族なので、他人の空似というのは考えにくいんです」

 

狐人(ルナール)?」

 

「自分の故郷である極東を始めとした、限られた地域にしかいない少数種族です。種別が多い獣人の中で唯一の魔法種族(マジックユーザー)でもあります。そしてエルフとは違った独特の魔法を使えることから、極東では妖妖術師や術使いなどと呼ばれています」

 

「へー……そんな種族もいるんだ」

 

 オラリオに来て種族については一通り知ったつもりだったが、まだ自分が知らない種族がいるという事を知るツナ。

 

「だがそんな高貴な地位の奴が何でオラリオにいるんだ? 普通、そんな地位にいる奴が自分の国を出てここに来るなんて、周囲の奴が許さないだろ」

 

「その方……春姫殿という名前なのですが、訳あって家から追い出され……その後行方がわからなくなってしまったんです」

 

「成る程な……そして昨日、そいつがオラリオにいるかもしれないってことを知った訳か」

 

「はい……」

 

「だがその様子だと、再会できてめでたしっていう感じじゃなさそうだな」

 

 行方知れずだった春姫がいるかもしれないというのに、命は全く嬉しそうな表情をしていない。何かあったのだということにリボーンはすぐに気付く。

 

「……春姫殿はおそらく【イシュタル・ファミリア】という【ファミリア】に所属しています。ですが望んで所属しているとは思えません。できることなら春姫殿を助けたいというのが自分の本音です。過ごした時期は僅かでしたが、それでも大切な友人なのです」

 

「……」

 

 なんとしてでも助けたいという強い気持ちが命の表情から伝わり、ツナはなんとも言えない気持ちになってしまうのだった。

 

 

 




ツナが春姫と会うシーンがどうしても思いつかなかったのでこういう形にしました。

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